「存在の風 ―卒業―」


何のために泣いているんだい。
白い建物を通り過ぎると、もう引き返すことはできなかった。

時間が止まっているのか。
僕は、仲間と遊び、騒いでいたんだ。
僕は僕にいつも言いきかせていたつもりだったのに、
とってもあっけなく過ぎてしまったのだ。
奴等は、いつも陽気だった。
それなりに楽しく、うれしかったよ。
奴等とわかち合った時間は、多かったな。
「人生」なんてとても語ることなどできなかったけれど、
「若さ」を語ることはできたんだ。
若さに身を委ねてきたけれど、手探りでも真実を探すことは、
していたつもりだったよ。

後悔はある。でも、この涙の意味を今、見つけたいんだ。

僕は確かに好きだった。あの娘が。
そこには己の迷いと寂しさも共存していたけれど。
あの娘は、僕に身を任せてくれたんだけれど
僕は必死に受けとめようとしたあまり、
あの娘の求めていたものが何だったのか、
知ろうとしなかったみたいだ。
君は僕の幼い過ちを理解してほしい。
君に出会うためにあの一年は無駄ではなかったんだから。
僕はもう幼くはない。

あの時、存在した僕は、今も存在している。
しかし、変化があった。
三年という歳月の経験だったんだ。
幼かった僕にとって大きかったもの。

何のために泣いているんだい。
白い建物を通り過ぎると、もう引き返すことはできなかった。

そこにいたのは、僕、そして君・・・。

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