ふ、とガラス越しに感じた眩しさ。

  それの正体へと視線を向けた。

  直視するには眩しすぎて、無視をするには眩しすぎる。

 

  そんな、俺の大好きな――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『逝き遅れ宅急便。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ、司。子供の名前、何にするとか考えた事あったりする?」

  何を突然。

  でも、俺だって子供の頃にそんな話をしたことあるわけだし。

「うん……あるなぁ。んで、どうした? そんな中学生が話すようなこと聞いてきて」

「いんや、意味は特に無い。ただ中学生の話をしたかっただけ、だ」

  なんて言っていつもどおり笑う和也。

  そんな彼と、彼の彼女と教室へと向かってるわけだが、笑いながら歩いていく彼の後ろ姿を見ているとさっきの質問の続きが気になった。

「なら、和也は何にするか決めてるのか?」

「そうだな……里実に任せるわ」

  なんて言って顔色一つ変えないのはこいつのすごいところだと思う。

  任された本人――里実は顔を赤くして、あんたの子供作る気は無い、なんて拗ねてたんだけど。

「で」

  そこで会話が終わるとなんとなく思っていた俺はその言葉ににやけていた顔を正す。

「司は決めてるの? 子供の名前」

 

 

 

  うん。

  もう決まってるんだ。

 

 

 

 

 

  ずっと遠くの記憶の片隅。

  タンスの一番奥に忘れられた靴下みたいな記憶。

 

 

  誰かと、そんな約束をした。

 

 

 

 

 

  そんな約束した、気がするんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

delivery NO.−2  『いつかの口約束』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇねぇ、司ー。子供の名前何にするか、とか話したことある?」

  細い歩道に薄く積もった雪に4つの足跡をつけながら彼女は聞いてきた。

  彼女はいつも突然なのだが、ま、さすがにいつもなら慣れてくるもので。

「んー……中学生の時にそんな話した覚えもあるけど……そんな適当に決めたのをつけたくないしね」

  うん、と一度頷くと、彼女も一度頷いた。

「だから、話したことはあるけど決めては無い、ってのが答えで良い?」

  彼女はさらにもう一度頷いた後、僕の顔を覗き込んで。

「じゃ、考えてみて。宿題だよー」

  ……まぁ、この展開はある程度予想してたけど……。

「ん、分かった。涼夏は決めてたりするのか?」

  その言葉ににこっと笑いかけて――それに僕が心拍数を少し上げたことなんて気付くはずもなく――その笑みを悪戯っぽく変えた。

「内緒ー。司が宿題をちゃんとしてきたら私も言うね」

  ふむ。

  これはちゃんと考えてこないとな。

 

 

 

 

 

 

 

  それから数日が経った日曜日、僕たちは映画を見ていた。

  映画館のでかいスクリーンではなく、涼夏の家にある、少し小さめのテレビでDVD鑑賞会だ。

  その映画は涼夏が借りてきたものなんだけど、なるほど、涼夏が借りてきたものだった。

 

  ある、一組の男と女。

  どこにでもいる、そんな二人は、なんでもない、友達の恋の成熟のための遊びに付き合わされたただの他人同士だった。

  ま、それで出会った二人がなんやらかんやらで付き合って、ふんにゃらほんにゃらで結婚するまでを描いた恋愛もの。

  それ自体には、普通に感動を覚えたわけだが、それに出てくる女性の役の名前がなにか、響きが好きだった。

「響子、かぁ……」

  案‐1、かな。

  涼夏はツボだったらしく、チャプター再生なるものでプロポーズのシーンを繰り返し見ていた。

 

 

 

 

 

  さらに数日後。

  友達から借りた本をベッドに寝転がりながら読み始めたのだが。

  これがなかなかどうしておもしろい。

  明日は平日。明日は早い。明日読めば良いじゃないか。

  なんて考えて、いや、今はキリが悪いから……あ、もうこの章終っちゃった。こんなに早く終るとは思ってなかったし、もう一章読もう。

  なんてやってしまった。

  お陰で読み終わったのが深夜3時。

  でも、それほどその本は面白かったのだ。

  これも恋愛小説で、主人公の男の子が年上の女性に恋をするわけだ。

  そして、この女性の名前も僕の心に残った。

「かれん、ねぇ……」

  案‐2、だ。

  あ、もちろんその日は一限サボりました。

  それで涼夏に拗ねられたのも、まぁ苦い思い出としておこう。

 

 

 

 

 

 

  んで、更なる数日後。

  家でゴロゴロして、考えてみる。

  今まで良いなと思った名前は、全部女の子の名前か。

  男の子の名前も考えないといけないなぁ。

  と、思うのだが、何度考えようとしても女の子の名前を考えてしまう。

  これは自分が男だからなのかな?

  そうなると涼夏は男の子の名前を考えてるのだろうか。

  もしそうなら僕は女の子の名前を考え続けていいんだけど……

  響子、かれん、と案を出して、その後名前占いとかで画数やら色々含めて考えてみると、案‐3として「優」なんてのも出てきた。

  これも、間違いなく女の子の名前だ。

  特に誰にも、女の子の名前! なんて言われてないのに。

  勝手に女の子の名前ばっかり考えてるのは、どこかで子供が女の子であるようにと願ってるんだろうか。

 

 

  そう、きっと。

 

  涼夏みたいな子であるようにって。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「考えた?」

  僕の家で晩飯を食べた後、彼女は水に濡れた手をタオルで拭きながら僕の隣に座った。

  こうやって、彼女はやはり突然なんだけど、彼女が何を聞いているのかはすぐに分かった。

  それを毎日のように考えていたからなんだろう。

「んー……考えて案も何個かできたんだけど……」

  しっかりは決まってないし、なにかしっくりこない。

  と、言うのが僕の正直なところだった。

  でも、宿題だったし、解答用紙は白紙よりも何か書いたほうが心象点もいいわけだし。

「一応考えれたよ」

  と返事をする事に。

  そっか、と満足そうな笑みを残したまま、彼女は僕から目を離さない。

  ま、そうなるよな。

「響子」

「きょうこ」

  僕の言った名前を繰り返す。

  うんうん、と二回頷いて顔を上げた。

「かれん」

  と、とたんに僕が違う名前を口にしたもんだから、彼女は少し驚いた様子を示して、何か言おうとしていた口を閉じた。

「かれんちゃん」

「うん、んで。優」

「ゆう、ちゃん……?」

  全員が女の子の名前という事に気づいたんだろうな。

  ゆうくんかゆうちゃんかがまだはっきりしていないみたいだけど、「ちゃん」と言ったからには女の子として受け取ったんだろう。

  そして、その事実に突っ込まれた時のために、僕は言い訳、というか理由というか、そんなのを頭の中で静かに整理していた。

  んだけど。

 

「うん。ちゃんと考えてくれたんだ。ありがとー」

  珍しく、追撃は無いみたいだった。

  男の子の名前は良いの?

  訊こうかと思った。

  でも、わざわざそんなこと訊いて、訊かれたら訊かれたで決めてない、なんて言うのも変な話しだしここは黙っておこう。

「その中だったら私はかれんが好きだなぁ」

  お、僕もそれだ。

  それも伝えようかと思ったけど、わざわざ一緒だよ、なんて言うのも演技っぽいというか……涼夏ならわかってくれてるかな、なんて解決したりして。

  結局は笑って一度頷く事にしておいた。

「で、涼夏が考えてたのは、なに?」

  そう。

  僕はこのために頑張ってきたと言っても過言ではない。

  ってか、ホントその通り。

  これが知りたかったから頑張った。

「あ、そだね。約束だったもんね」

  えーとね、とこちらに顔を傾けて耳の辺りを僕の肩に当ててくる。

  そんな軽いスキンシップでも、やっぱり僕はドキドキしてたりする。

  彼女はそんな僕を知ってて、わざとしてるんじゃないのか、なんて考えてみたり。

「私の名前は、涼夏。涼しい夏と書いて、涼夏」

  何を突然。と一瞬思ったけど、これは多分子供の名前を言う前フリなんだろうと思うのに、そう時間はかからなかった。

「で、司は、つかさどるって意味の司。合ってる、よね?」

  よね? と共に向けられた視線にやはりどきりとするのだけど、そんなのを見せるわけにもいかないので、落ち着いたフリして頷いた。

  いや、別に見せたって良いんだろうけど……男に意地というか、なんというか……ね?

「でね。二人のをくっつけて考えてみるとね。夏を司るもの。ってなって」

  右手(多分、夏)と、左手(きっと、司る)が互いに寄っていって、仕舞いには重なって。

「うん。そう考えたんだぁ」

  なるほど。親から一文字づつもらって、ってのは聞く話だけど、親の名前の意味から考えるってのは中々無いかもしれない。

  うん。僕的にはその考えは大賛成……なのだが。

  さらりと言ってのけた僕の名前。

  そこには、「涼夏と僕の子供」にしかつけれない名前という意味だと気づいた。

  そしてそれは、彼女が何を望んでいるかってコトで……うわぁ……なんか一人で恥ずかしがってるのが恥かしい。

「う、うん。でさ、そう考えて?」

  とりあえず落ち着こう。

  そう、落ち着けば彼女がまだ名前を行っていないことに気付いた。

  そして、それを聞くために彼女を促した。

 

 

 

  彼女はその言葉を待っていたのか、もう一度視線を前に戻して、重ねた両手を僕と一緒に覗き込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うん。あのね――……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「太陽」

 

 

 

  俺は、里実の問いかけに一度笑ってから答えた。

「へぇ。太陽、ね」

「うん、良い名前」

  なんだかわからないけど、自分が良いと思った名前を他人に褒められると少し嬉しかったりする。

  それだけで、俺はちょっと幸せな気分になったり。

「男の子? 女の子?」

「どっちでもいける、そんな気がしない?」

「うわ、サボりかよ。こいつ」

「黙れぃ」

  なんてわざとらしく非難する和也にわざとらしく怒ってみせて。

「――誰かと、一緒に決めたの?」

  里実が、今まで俺に向けていた視線を前に戻して訊いてきた。

「うん、誰かと話して決めた気もするんだけどさ。こういう話って結構小さい頃にしたりするだろ? だから覚えてないんだよなぁ」

  と、少し照れながらそういうと、そりゃそうだな、と二人もいつもどおり――にしてはあっさりだったけど――それを素直に受け入れた。

 

 

「さ、のんびり話しながらって時間じゃなくなってきてるぞ。急ぐか!」

  とりゃー、と子供っぽく駆け出す和也。

「恥かしいから止めてよね。別れるわよ?」

  ふぅ、と現実味たっぷりなブラックジョークでそれを追いかける里実。

  それを後ろで苦笑しながら追いかける。

 

 

 

 

 

  ふ、とガラス越しに感じた眩しさ。

  それの正体へと視線を向けた。

  直視するには眩しすぎて、無視をするには眩しすぎる。

  そんな、俺の大好きな――

 

 

  きっと、「太陽」と名付けられた君も、そんな風に輝かしい子になるんだろう。

  誰をも輝かせて、誰からも愛される。

  まぁ、真夏の太陽はちょっと休んでくれと思ったりもするけど。

 

「柴崎! 後5秒でこの扉を越えられなかったら遅刻!」

  突然、向かう方角から怒鳴り声が。

「司! 早くこい!」

「なにやってんの!」

「うわ、やばい」

  あの先生はちゃんと個人の名前と顔を一致させてて、しかも時間に厳しいから厄介だ。

 

  俺は、全力で走っても6、7秒はかかる廊下を走りながら、空から降り注ぐ真夏のそれを感じていた。

 

 

 

 

  いつか、この手で抱いてみたいな。

 

  まだ見ぬ「太陽」

 

  いつだって君から元気をもらっていたんだよ、なんて、言葉も分からないうちに言ってあげよう。

 

 

 

 

  まだ見ぬ「柴崎 太陽」

 

 

  まだこの世にいさえしない俺の子供。

 

  この世に来るかさえ未定ですけど。

 

 

 

  ずっと昔に約束した誰か。

  できるなら、君にも会わせてあげたい。

 

 

 

 

  なぁ、今、君はどこにいるんだ?

 

 

 

 

 

  この太陽の下で、俺みたいに、太陽を感じているのかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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こんにちわー、天川星姫、と言うものでございます。

今回は、この小説をお読みいただいてありがとうございます。

そして、これを掲載してくださっている管理人様。

駄文でスンマセンw

そして、こんな私と交流を持っていただけることに更なる感謝を感じています。

さてさて、このような意味の分からない文で、小説の雰囲気が崩れるのも悲しい話なのでw

挨拶もそこそこに、早々に退散しようと思いますw

それでは、これからも末永くよろしくお願いいたします。

                                       H18 9/3     天川星姫

 

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