「「ごちそう様でした!」」

  夕食を食べ終わりオレ達はそのまま椅子に座りながら話をした。
 オレの時代の事、太陽の事、そしてオレの事。

  この時代の人に「未来から来ました」なんて言っても分ってもらえないと思っていたんだけど
 サンはオレの服装や突然こんなド田舎に食料一つ持たずにいたということから一応分ってくれたようだ。

「ふ〜ん、うんうん……」

  分ってんのか……?

  そして次はサンの事を話してもらう事にした。
 写真の老人はサンの唯一の身内だった人でこの写真を撮った一ヵ月後に亡くなった事。
 そのおじいちゃんと一緒にいた時期の話をサンはとても楽しそうに話していた。

  そしてオレの頬に火傷を負わしたあの火の玉のことだが、あれはオレ達の時代の言葉で言う『魔法』らしい。
 そしてこの時代では『言の葉』や『葉術』と呼ぶ。そして葉術をある程度のレベルまで使える人達のことを『葉術師』(ようじゅつし)と呼び、
 さらにその使える葉術のレベルで細かく分かれているらしい。

  なんか生まれ持っての特性、属性みたいなものがあって、サンは光の葉師でレベルは相当高いと自慢げに言っていた。
 あと、闇以外ならほかの属性も使えるということだ。闇は光の反属性なので闇は全く使えないらしい。

  そういえばガスとか無いはずなのに鍋を沸かしていたのはこれのおかげなんだな。
 オレも頑張れば使えるようになるとか。ホントかな?

 

 

 

 

 STORY5  勇者の紋章

 

 

 

 

 

  それにしても昔の人は魔法が使えたなんて教科書には載ってなかった。
 もしかしたらオレが第一発見者かもしれない。テンションがなんか上がる。
 言の葉なんてものはオレの時代には無いと言ったら、サンは小さく「まだ無いんだ……」と言った。
 オレがどういう意味か聞いたらなんでもないとはぐらかされてしまった。

  そして次にこの写真に写っているサンの右腕にある刺青の事を聞いてみた。
 写真を見たときからすごく気になっていた事なので聞かずにはいられなかった。
 その話題を振った瞬間、サンの顔色が明らかに変わった。良い方にではなく悪いほうに。

  やっちまったか……?

  さっきまで口の中に広がっていたサンのおいしい料理の味が消え、乾いた口の味しかしなくなった。
 オレはすぐに言いたくなかったらいいと言ってみる。
 サンはその言葉に「気にしないで」と笑顔で返事するとまたさっきの様に楽しそうに話し始めてくれた。

「この刺青はね、『勇者の紋章』っていうんだよ。おじいちゃんがいつも寝るときに話してくれたんだ。」

  サンは声色を少し低くして、

「この世界、宇宙が邪悪なものに包まれる時一人の人間に勇者の紋章が刻まれる。
 その紋章を受け継いだものは邪悪なものを燃やし尽くす力を得る。
 昔、この紋章を得た一人の人間が、仲間と共に、紋章の力で悪を打ち滅ぼしこの世界を作った。
 必要の無くなった紋章の力は世界樹に封じられ、また必要になるその時まで眠り続けた。
 そしてサン、今お前の手に紋章の力が与えられたんだ。
 今はまだ大丈夫だがこの紋章が目覚めた今、あと少しでこの世界は邪悪なものによって危機にさらされる。
 それを倒せるのはサン、お前だけなんだ。これからはつらい事も沢山あるだろうが明るく元気に過ごし、時が来たら使命を果しなさい。
 頑張るんだよ。……って毎日ってくらい言われたんだ。だから私は勇者の使命を果すためにもうすぐ旅に出るのだ!」

  と言うと精一杯に笑った。無理している。なぜかそう思えた。
 やっぱり女の子一人でそんな世界の運命を握るような事をするのは想像も出来ないくらい負担になっているんだろう。
 というかどんなやつだってそんな状況になったら気が狂いそうになるはずだ。そう思うとサンがすごい賢人に思えた。

  その後もサンと夜まで話し続け、月の光とサンの葉術の火の玉の明かりだけになった。
 オレがあくびをするとサンが今日はもう寝ようかと提案してきた。オレは「ん」と頷く。
 寝室に行き、サンは寝室でベッドに寝て、オレはその下の床で寝る事にした。
 サンは「一緒に寝よう」と言ってきたが、そんな事されたら絶対に寝れない自信があるのであわてて断った。
 ホントは別の部屋で寝たかったのだがサンがそれは許してくれなかった。寝れるかなぁ……

「おやすみぃ」

  サンが火の玉を消すと同時に言った。オレもおやすみと言って、ゆっくりと目を閉じていく。
 なんだか今日は色々ありすぎてすごく眠い。

 

『今まで生きた中で一番寝れそう……』

  そう思った時にはオレの意識は無かったと思う。

 

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