辺境の村「ワーム」

  サンにつれてこられた村は、歴史の授業で習った昔の日本の家っぽいのが並んでいた。
 木で作られた家がぽつぽつと建っている。家の数、人の数は相当少ない。
 村って言うより人がちょっと集まっただけって感じだ。その何人かは涼しくなったからか畑仕事をしていた。

「こっちこっち! あの家だよ〜」

  サンが呼んでいる方へ歩いていく。その途中、畑仕事をしている人達からの視線をやたらと感じていた。

  まぁこんな田舎に始めて見る人が来たら見ちゃうよなぁ……

  オレはその視線が少し恥ずかしく、歩くのが少し速くなった。サンも歩くのが速い。
 サンに追いつくと、オレはサンの速度にあわせて少し早歩きで並んで歩いていった。

 

 

 

 

 

STORY3  家族

 

 

 

 

 

 

「はい! 到着〜! 入って入って!」

  サンの家はこじんまりしてはいたが、誰か一緒に住んでるのかもしれないと思ったので、お邪魔しますと少し気弱に言った。

「いらっしゃい、こっちに来て」

  サンは自分に言ったのだと思ってか、少し可笑しそうにオレの言葉に対応してくれた。
 そしてそのままリビングらしきところに連れて行かれる。部屋の中はキレイに整理整頓されていて、女の子の家だなぁと思った。

「じゃあとりあえず手当てしよっか」

  そう言うとサンは布を水で濡らしてやけどした部分を軽く叩いてきた。
 ひんやりとした感触が気持ちいい。火照っていた頬が一気に冷える。

「ふぅ、気持ちい……」

「じゃあ後はこれ塗って終わりっと」

  火傷した部分に顔を近づけ、塗り薬を頬に塗り始める。
 『いいこだなぁ…』なんて思っているとまた火傷した部分が痛くなってくる。頭に血が上ってるのがよく分かる。

「あははっ、どうしたの? そんなに顔赤くして。もしかして私にこんなことしてもらってるが嬉しいからかな? なんてね」

  はい。正解です。なんて言えるはず無くますます顔を赤くする。そんな会話をしているうちに手当ては終った。

「ありがと。助かったよ。お礼に何かすることあるかな?」

「え? ん〜、特にないかなぁ。それにお礼なんていいよ。これくらいのこと気にしないで」

「そういうわけにはいかんなぁ。これでもオレは律儀ってキャラで通ってるんだ」

  とか言ってみる。もちろんそんなこと言われたことなんて無いけど。

  そんなオレのギャグには突っ込みも入れずサンは何か考えている。

  とりあえずここは関西地区では無いんだな。それを知るためにさっきのは言ってみたんだなぁ、うん。
 なんて意味の無い自分へのフォローなんてもんを入れてみる。悲しい。

「んっと、じゃあ裏の畑からジャガイモ取ってきてくれるかなぁ? 今日の晩御飯は二人分作るから材料が足りないからね」

「二人分っていうと……オレ?」

  ちょっと顔が笑っている。直そうとしても顔はにやけ続けたままだった。

「ははっ、そんなに嬉しいの? 期待してていいよ! これでも私は料理の腕は結構自信あるんだ。じゃあ待ってるね」

「はいよ、了解! すぐ帰ってくるな」

  そういうとサンは「いってらっしゃい」と言ってくれた。なんだかそれがとても嬉しくオレも「いってきます」と少し照れながら言う。
 多分それは親も兄弟もいなくて、一人暮らしのオレにとっては久しぶりな響きだったからだろうな。なんだか晩御飯が楽しみになってくる。

 

  逸る気持ちを抑えきれずに、オレは走って畑へ向かった。

 

 

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