ベガを一回りするのに、然程時間はかからなかった。

  日が昇ろうとしている時間に行動を開始して、終ったのは日が真上に輝く頃だった。

  結果、ベガに太陽はいない。

  ただ、重要な手がかりは見つけることができた。

  太陽は一度この街に来た。

  そして、一泊した後、出ていったらしい。

  どこに向かったのかは詳しく分からなかったが、予想はつく。

  来た方にもう一度行くやつなんてそうそういない。

  それに、もしそうだったらオレ達と出会ってたっておかしくは無いはずだし。

  んで、そうなるとそれ以外の方角という事になるが。

  ここからだと、どこに行くにもある街を通らないと日数がバカにならないらしい。

  ってことで、そうなりゃ、普通そこに行くものだ。

 

  そして、オレ達もその例に漏れず、次の街、『アルタイル』へと歩を進めることとなった。

 

 

 

  STORY25 アラーストノウタ

 

 

 

「ってコトで、オレ達はアルタイルへ向かう事にします」

  と、ベガを一周し、情報を集めきったオレ達は、リースの家でその家の主にそう告げた。

  オレ的には結構突然言ったつもりだったのだが、彼女にとっては特に驚く事でもないらしく、静かに微笑むだけだった。

  そんな、ちょっと拍子抜けする別れの挨拶だったわけだが、

「分かりました、それじゃあ私も準備がありますので、もうちょっと待っててもらえますか?」

  そんな、意味のよく分からない台詞によって出発はまだできそうに無くなった。

「……あぁ、リースさんもアルタイルに用があるんですか?」

  とまぁ、突然の彼女の発言にも、なんとか無い頭を回転させて解答に辿り着いた。
 しかし、彼女はカバンに色々と詰め込みながら、ただただ終始微笑を繰り返すだけだった。

「それはもちろん用があるから向かうんでしょう? 何を惚けていらっしゃるんですか」

  ふふっ、なんて笑っている彼女。

  いや、正直、本当にわけが分からない。

「オレ達は用事があるから行くんですけど、リースさんも用事があるから、ついでに一緒に行こう、と……そういうわけですよね?」

「貴方達の用事は、そのまま私の用事になるでしょ? だから……まぁその言い方は間違ってはいないですねぇ」

  ……若干、話がかみ合っていない。

  いや、彼女は知っててそれをやっている。

  意味が分かっていないのはオレの方だけだ。

「リース姉。ついてくる気なら、止めるぞ」

  突然、もう一度考えていたオレの背後から声が。

  いつもと違う口調が、いつも聞く声質だったのに、少し戸惑いを覚えながら、オレは彼の方を振り返った。

「あら、お遊びはもう終り? いつからそんなに短気になったの、キユリー」

  閉じられた瞳をこちらに、そして後ろにいるユリに向ける彼女。
 彼女の顔は、さっきまでと一切変わっていない。

「俺達はお遊びで旅してるわけじゃないし、兄貴の探してるタイヨウさんを見つけるのもその仕事のうちの一つなんだ。
 だから、リース姉が思ってるような、そんなのじゃない。迷惑になるから、ここで大人しくしといてくれ」

  そんな、表情を一切変えない姉弟達の会話。

  ユリのお陰でリースの行動はどういうことかが分かった。
 そして、オレもユリの意見に賛成だ。迷惑というか、こんな体力の必要な事に、リースさんを巻き込むわけにもいかない。

「キユリー、あなた」

  不意に真面目な声になった彼女に、皆が注目する。

  そして、そんな彼女の口から出てきた言葉は、

「サンちゃんが何をするために旅をしているか、そして彼女がなんなのか、知ってて言ってるのかしら?」

  オレ達全員に、それぞれの反応を示させた。

  サンは少し怯え、オレはそれを知っているからか少し焦り。

  ユリはリースに睨み返すし、ディーネとマースはよく分かりきっていない顔をしている。

 

  彼女はその反応を一瞥して、ふぅ、と一度溜息を吐き、もう一度その分だけ息を吸った。

 

「アラーストノウタ」

  突然紡ぎ出されたその言葉には、オレ以外が同じ反応した。

  はて、一体なんの名前だ?

「私、それを訳す仕事をしてるんだけどね、私以上にこの話を知っている人、そういないと思うわよ?」

  くすっ、と笑いかける彼女。
 未だにオレは話が掴めていないわけだが、オレ以外はどういうことか分かっているみたいだ。

  とは言っても、サンはその怯え方を ――外には出さないが―― 一層強めていることだけは、オレにもわかった。

  それを見て、オレはリースを止めたかった気持ちもあったが、それ以上に、この話をしっかりと聞いて、把握したかった。

  だから、オレは――サンを見て見ぬフリをした。

「ね? 連れて行って損はさせないし、それに私の治癒葉術、役に立つとは思うけど……どうかしら」

  詳しく聞きたかった話はスルーされてしまったみたいだ。
 詳しく言わなくてもみんな知っているような話だからだろうか。それなら後でディーネにでも訊けば良い。

  それよりも、今のリースの話。
 オレは今の彼女の説得によって、先程とは逆に天秤は傾いてた。

  確かに、あの時リースがいなかったらサンは危なかった。
 これからもああいうことが起こらないとは限らない。その時、リースがいなかったら……想像は容易い。

「――ん。ついてきてくれると言うのなら……別に悪い話じゃないと思うけど……どうかな?」

  と、オレの考えを口に出してみる。

  出すと同時に、みんなの顔色を伺っていくわけだが、ユリ以外は概ね賛成みたいだ。
 サンが少し怖がってる節があるみたいだが、仲も良かったし助けてもらったからか、そこまでの拒否は感じられなかった。

「兄貴! 本気ですかぃ!?」

  まぁ予想通りの反応だ。

「まぁオレは本気だ。リースのお陰でサンが今ここに立ってられてるわけだし、な」

  と、それを言われると弱いのか、ユリは下を向いて黙り込んだ。

「で、どうだ? みんなは」

「私はもちろんいいですわよ。居てくださった方が何かと安心でしょうし」

  それに、マースは一度頷く。

「うん、私もいいよ。イヤだって言う理由もないし」

「よし、なら後は……」

  リースの方を一度ちらりと見ると、彼女は一度頷いた。
 それを確認して次にユリの方に視線を向けると彼は納得しきってない風を出してはいたが、
 やはりオレとサンが賛成したからか、イヤだ、とは言えないみたいだ。

  一人でも反対してるなら連れて行きたくは無いけど……今回は事情が事情だ。
 サンのこれからのためにも、彼女の力は必要だろう。

  それに、さっき聞いた 『アラーストノウタ』 という単語も気になる。

「……ん。なら決定だ。これから宜しく、リース」

「ええ、姉弟共々、宜しくお願いしますね」

 

  こうして、オレ達は五人から六人へと人数を増やし、アルタイルへと向かう事となった。

 

 

 

 

 

  人数が増えるのは良いことだ、なんて単純に考えてたオレが死ぬほど馬鹿だったことに気付くのは………

 

 

  

  まだまだ、先の話になる。

 

 

 

 

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