強い光でまぶたの奥にある目が眩しくなり、世界が真っ白になる。
 目を少し開けるとテントの上から太陽がオレを照らしていた。重い体をゆっくりと起こす。

 少しぼんやりとした頭で、この体のダルさの原因を考える。

 昨日なにがあったっけ……

「そうだ……月だ……」

  二つある月を見た。しかもそれは月なんて名前じゃなく『ユピテル』と『テュール』なんていう名前だった。
 オレは泣いて……サンがオレを抱いて……そして泣きつかれて――

  そうだったな。ここは過去とか、未来なんかじゃなかったんだ。空間自体が違う世界だったんだ。
 それで繋がりを絶たれたような気がして

――どうしようもない絶望感だった。
 そしてこの世界に一人ぼっちになったような孤独感。孤独には慣れていたつもりだったけど、それがあんなにも泣くなんてな……

  頭の整理のついたオレは外から良い匂いがする事に気がついた。
 テントの外に出てみると少し離れたところにテントの中にいなかった二人が朝食……昼食を作っていた。
 オレはその昨日とはまた、違った良い匂いにつられて少しだけ足を進めた。

 

 

 

 

STORY12  居場所

 

 

 

 

 

「あ、おはようっす! もう大丈夫っすか? 昨日はビックリしやしたよ!」

 ユリがオレに気づき、大きな声でしゃべりかけてくる。

「ねっ、姐御?」とサンに相槌を求めたようだが、サンは「……うん」とコクンと頭を下に下げただけだった。

  サンが昨日の事を気にしているのだと分かり、オレも恥ずかしさで下を向く。
 ユリが下を向いたまま無言の二人を、訳がわからなそうに目を往復させている。

 オレはそんな二人を上目遣いで見て

『ああ、オレ、一人じゃないんだ』

  なんて事を思う。すっごく清々しい。
 ここには、この世界には友達、仲間がいる。そう思うとなんだか元の世界よりよく思えてきてしまった。
 「さすがにそれはダメかな?」と少し笑った。

 駆け足でサン達の元へ行き、

「おっす、早速今日の昼食の味見を……」

 と、サンが作っていたジャガイモ料理をつまみ取る。

「あっ! ちょっ――待ちなさい!」

  逃げるオレに向かって葉術を使って追撃してくるサン。
 そんな馬鹿な事をするだけでオレとサンはいつも通りになった。
 ユリが笑ってオレ達を見ている。
 この仲間達と、この世界を生きていくのも満更でもないな。

 そしてサンの葉術の水鉄砲を後頭部に喰らって地面に倒れこむ。

「討ち取ったり! さぁ、さっきとったもんを返しなさーい!」

  オレの胸に片足を乗っけてサンが息切れ切れに言う。
 口を大きく開けてから「もう食った」と言うと、「今日は飯ぬき!」と口元を緩めながら料理していたところに戻っていった。

 そのまま空を見上げて「あの太陽も、太陽なんて名前じゃないんだろうな」と、ちょっと感傷に浸ってみる。柄じゃないか。

「「いただきます!」」

 と大きな声が聞こえた。

 オレも食べに行こうと起き上がり、二人分が用意してある食卓に……二人分?

「ホントに飯抜きは無いって!!」

 と、オレは自分の居場所へと走って帰っていく。

 

 

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