「こうしてみると」

  関西娘を始末し損ねたオレは、結局またもや一人で晩飯を作った。
 そしてそれらを囲みながら皆で晩飯を食っていると、手塚が口を開いた。

「家族みたいですね」

  味噌汁を噴出しそうになるのを、なんとか堪える。
 でも、目の前に居るのが星野だっただけにそれもありだったかもしれない。

「そうだね。確かにそうかも」

  西村も笑顔でそんなことを。

「豊は頭がいいナー」

  ちょっと違う気もするが、概ねこいつも同意らしい。

「アホ。そんなわけあるか」

  さすがに今の発言には眉間を寄せずに入られなかった。
 そんな平和な考え、認めるわけにはいかないし、認めたくも無い。

「そのとおりだ」

  ん、珍しく手塚のおっさんが真面目な顔してオレに賛成してきた。
 これで皆もこんな考えを持つことは無くなっただ……

「お母さんがいないだろう?」

  殺す。

  すぐ殺す。

 

 

 

 

 

 

 

  かていN  母親不在

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  晩飯ではその後耳を塞ぎたくなるような会話が飛び交っていた。

 ――でも、それも仕方の無いことなのかもしれない。

  手塚は親に捨てられ、リュンヌは父親を探し、西村は一人で生きてきた。

  そんなやつらが集まって、こうして一緒に飯を食っている。
 そりゃそんな幻想を抱くのも仕方の無いことなのかもしれない。

  でも、だ。

  それにオレを含むのは本当に勘弁して欲しい。

  家族とか、お兄さんだとか、そんな言葉が一つ出るたびに、オレの胸に何かが溜まっていく。
 それを吐き出す方法は知っているが、それをすることは、こいつらにとっては残酷なことだろう。

  誰にだって、思い出したくは無い過去の一つや二つは持っているものだ。

  それが軽いか重いかなんて関係は無い。
 そいつ本人にとっては、どんな些細なことも世界が終わってしまうほどのつらい現実だったりするのだ。

  もちろんオレにだってそんな過去はある。
 でも、それを皆に言うつもりはないし、言うメリットも無い。
 もしかしたら家族とかそんな話は出なくなるのかもしれない。
 でも、あいつらのことだ。もっと話に出すなんてこともありえる。

  それは嫌がらせではなく、オレにとっていいことだと信じて。

 

 ……やめたやめた。

  いくら考えたって意味無いことだし、今日一日だけのことだろう。

  そんなことを考えてる暇があったら、もっと現実を見ようか。

 

「リュンヌ、起きてるか?」

  夜、リュンヌの部屋を小さくノックする。

  手塚が寝ているはずなので、起こしたくは無かったからだ。

  それを察してくれたのか、彼女はゆっくりと扉を開けて、廊下に出てきた。

「どしたノ?」

  少し眠そうにオレに問いかけてくる。

「いや、そろそろ目的に向かって進まないといけないなと思ってな」

  はて、と頭を傾げる彼女。
 いや、まぁ予想はしていたが。

「おとーさんを探すんだろ?」

「おオ! その話カー」

「その話だ。明日はお前から話を聞くから、早く起きろよ」

  わかった、と言い残して彼女はもう一度部屋に入っていった。

  よほど眠かったのだろうか、珍しくオヤスミも言わずに扉は閉じた。

  それを確認してから、オレも部屋に戻り、ベッドにもぐる。

 

 

「オヤスミ……」

  誰に言うでもなく、真っ暗な天井に向かって投げ出されたその言葉は。

  コロンと音を立てることも無く、オレの意識と共に闇の中に消えていった。

 

 

 

 

 

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