夜空に輝く満天の星。

君は僕の隣で何を思う?









「星空のメロディ」









古く寂れた田舎の駅。
僕はたった今、この場所に降り立った。
少々汚れた改札機に切符を入れ、外に出る。
夏の暑さが肌を焼き、鞄を持つ右手は汗ばんでいたけれど。
蝉の鳴く声が僕を歓迎してくれているかのよう。
都会に居た時は五月蝿く感じていたこの音も新鮮に聞こえる。
澄んだ空気の味も、心に湧く懐かしさも
外に飛び出さなければ感じることも出来なかっただろう。
あの時の決意に改めて感謝し、見知らぬ土地を歩き出す。
当てのない一人旅。
歩くたびに目に飛び込んでくる風景は目に優しくて。
思わず綻ぶ顔を抑えつける。
しかし、歩き続ければ疲れるというのは当たり前。
丁度大きな木が近くにあるのもあって、僕は休憩をすることにした。
大樹とも言えるその木に自らの背を預け座る。
鞄を横に置き、一息ついて空を見上げた。
広大な空はまるで我が子を見るかのような暖かな眼差しで。
この大空に守られているかのような安心感があった。
だから、そんな安心感が気付かせなかった。
「旅のお方ですか?」



一人の女性が傍にいる事に。



驚き目線を戻すと、少しばかり離れた所にその人はいた。
風で靡く長い髪、どこか落ち着いた様子のその女性はただこちらを見ている。
僕は突然のことで言葉が喉を通らずにいた。
彼女は穏やかな笑みを浮かべるともう一度尋ねてきた。
「旅のお方ですか?」
「まぁ、当たらずとも遠からずって所かな。」
やっと声に出せた言葉は曖昧なものだったけれど。
彼女はそうですか、と呟くとまた穏やかに笑うのだった。
「良い町でしょう、ここは。」
「そうだね、自然に包まれている感じがするよ。」
「そう言って頂けると住民として嬉しいですね。」
僕の返答に満足そうに微笑む姿は、一瞬僕の心を捉えた。
気恥ずかしくなって思わず目を逸らすが、それも大して意味はない。
それでも、今だけは太陽の光に感謝したかった。
「この町の夜空は絶景なんですよ。」
ふと、彼女が呟く。
「満天の星、というのが適切でしょうね。月や星の光が照らしてくれて。
 おかげで街灯要らずなんですよ。」
「そうなんだ。」
彼女がそこまで言うくらいなのだからさぞかし絶景なのだろう。
まだ見ぬ景色に期待はあるが、しかし何時までここにいるかもわからない。
とは言っても全ては気の向くままに、という事だが。
そういった理由もあって。
「ぜひこの町の夜空を拝見していってくださいね。」
その言葉にただ微笑みを返すだけだった。
















綺麗な歌声が聞こえる。
少々重い目蓋を上げれば、もう日は沈み、夜を迎えていた。
どうやら何時の間にか眠ってしまっていたらしい。
未だに聞こえるこの声はとても心地良くて。
しかし、それが彼女の声だとわかるのにそう時間はかからなかった。
彼女はふとこちらを見ると歌うのを止め、歩み寄ってきた。
「お目覚めですか?」
「あぁ、何時の間にやら眠ってしまっていたみたいだね。」
「お疲れになられていたみたいですね。もう熟睡でしたから。」
そう呟く彼女の顔は子供を見守る母親のような表情で。
その穏やかな表情を直視できず、目線を逸らし頬を掻くしかできない。
そんな僕に彼女は微笑み
「寝顔、とても可愛かったですよ。」
まるで頭を金鎚で殴られたような衝撃と気恥ずかしさが体中を駆け巡る。
「み、見てたんだ。」
「えぇ、それはもう目の前でじっくりと。」
さっきとは打って変わって悪戯好きの子供のような表情を浮かべている。
彼女は僕の隣に座り、同じく木に背を預けるとまた歌いだす。

「貴方が光になるのなら 私は闇になりましょう
 貴方が夜空になるのなら 私は月になりましょう
 貴方が小鳥になるのなら 私は籠になりましょう
 貴方が傍に居ることで 私は存在意義を見出せる」

彼女が空を見上げると同時に、僕も空を見上げた。
そこには満天の星がその命を輝かせるかのようにこの大地を照らしていた。
「どうです?この町の夜空は。」
「こんなに綺麗な空ははじめて見たよ。上手い言葉が見つからないなぁ。」
「言葉では言い表せない程の、ということですか?」
「そうだね。正直ここまでとは思ってなかったよ。」
結局は見る事になったこの町の星空。
今ではこの星空を見ずにいるのはもったないと思うくらいで。
その気持ちが伝わったのだろうか。
彼女は微笑むと、その視線を上へと戻す。
二人の間に会話は無く。
僕たちは時間を忘れてただこの星空を見ていた。
でも、何時までもこの空を見ていたいと思うけれど。
僕は何時までもこの町に居るわけじゃあない。
ねぇ、君は僕の隣で何を思う?
僕は視線を空から彼女へ移し。
また、彼女も僕を見た。
時が止まったかのような長い時間が経ち、ようやく僕は言葉を紡いだ。
「この町にもう一度来た時、またさっきの歌を歌ってくれる?」
それは再会への道標。
君が僕の事をどう思っているかは知らないけれど。
「はい!喜んで。」
僕はまたこの町に来ようと心に決めた。
















あの時の事は今も覚えている。

いや、忘れることなどできはしない。

当てもない一人旅。

でも、いつかはまたあの町へ行くだろう。

僕は最近よく彼女の歌っていた歌を口ずさむ。

それは彼女のことを忘れないように。

空を見上げれば綺麗な星空。

彼女も今あの星空を見ているのだろうか。

そんな事を思いながら、僕は歩き続ける。








またあの時の彼女と会える日まで。







どうも、汐-SEKI-改めセイキです。
この作品は、相互リンク記念に送らせていただいた訳ですが。
今回の作品は、暁書房の方に置いてあります短編連作シリーズの
「空を歩く」の第1弾(正確には第2弾)に位置します。
長編作品と共に、これからも書いて行きますので
お気に召してくれたのなら、また暁書房の方まで遊びに来てください。

余談ですが、天川星姫さんとセイキって同じ読みですね。
そんな訳で天川星姫さん、皆様、これからもどうぞよろしくお願いします。

 


 

はいどーもー!

管理人の天川星姫です。星姫の方ですw

この度はリンクをしていただきありがとうございます^^
嬉しい限りデス

このサイトに掲載されていた方がサイトを持って相互してくれる、ってことがものすごく嬉しいのですよw
リンクって良いですね! なんか繋がりを持ったかんじで!w

では! これからも末永く宜しくお願いします

                                       2006 2/6  天川星姫

 

 

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