1人の少年がいた

 幼いころから雪の降る街で育ち

 普通すぎる道を歩み、普通すぎる記憶を綴っていた少年が


 少年の名は、「早沢 真名斗」 現在18歳

 黒い短髪に整った顔立ち、優しそうな瞳にスラっとした体型

 いかにも好青年という感じの少年だった

 

 

 少年は記憶を失くした

 雪の降る中で

 今までに紡いできたものすべてが

 闇の中に消え去った

 足元から崩れ去った

 それ故少年は、また歩き出す

 ハジけたものを

 また紡いでいくように……




 そしてまた……





 春が来た……




               「あなたと綴るユメと記憶」
              第1話 〜ハジけた記憶は闇の中〜




 4月という春の訪れを迎えた日本でも、

 この北の大地には春らしさが感じられるにはもう少しかかりそうだった

 


 そんな北の大地の街を、真名斗は歩いていた

 真名斗は鞄を肩にかけ、夕陽で緋色に染まる街並みの中を1人静かに歩いていた

 一歩一歩、台地をしっかり踏みしめ、

 自分の存在を確かめるように……



 

 しばらくすると家に着いた

 すると家の扉に1人の少女がもたれ掛かっていた

「沙夜さん……」

 真名斗が声をかけると、少女は真名斗に気付き、顔を緩ませて

「あっ、真名斗!やっと帰ってきた〜 遅いよ! もう」

 と言いながら真名斗に近づいてきた

 沙夜は微かに吹く風に、茶髪でウェーブのかかった肩までの髪をなびかせていた

 身長は真名斗の肩までしかなく、真名斗を見上げて喋っていた

「すいません」

「大学ってそんなに忙しいの?」

「ええ……まあ…」

 真名斗は沙夜の問いに微かに笑みを浮かべながら答えた 

 そしてそう言いながらポケットに手を突っ込み

 鍵を出して扉を開けた

「どうぞ」

 真名斗がそう言うと、沙夜は嬉しそうに家に上がり、さっさと2階に上がってしまった

 それを横目に、真名斗は一旦リビングに向かった

 そして家着を取り出しそれに着替え、

 沙夜の待つ2階へと足を運んだ





「真名斗、これ見て見て」

 真名斗が部屋に入るやいなや、床に座り込んで本を広げている沙夜は手招きで真名斗を呼んだ

「何ですか?」

 真名斗はそれに答えるように沙夜の横に座り込んだ

「これ、高2の時の修学旅行。
最終日買い物してたら雨が降ってきてズブ濡れになっちゃったんだよ ね〜」

 沙夜はそう言いながら1枚の写真を指さす 沙夜が開いていたのはアルバムだった

「…………」

 しかし真名斗に反応はない

「……あっ、それからこれ!
高1の時の文化祭で私たちのクラスダンス踊って優勝しちゃったんだよ〜
あの時はホントに嬉しかったよ〜」

 そう言って沙夜は別の写真を取り出して見せるが、真名斗は口を閉じて下をむいたままだった

「あっ! それからっ「すいません」

 さらに何かを言おうとした沙夜の言葉を真名斗の言葉が遮った

「何も……思い出せない……何も…わからないんです…すいません」

 真名斗は高3の冬に事故で記憶を失っていた

 その記憶は大学入学後の今も戻ることはなかった
 

「……あっ…謝らなくていいのよ! ツラい思いしてんのはアンタなんだから!」

 そして幼なじみである沙夜は、何とか記憶を戻そうと必死だった

 しかしそれは容易なことではなかった

「…………」

「…………」

 二人は黙り込んでしまっていた

 そして部屋に沈黙が流れるかと思いきや、

 窓の外を何台かの車が走り、

 エンジン音がけたたましく部屋に響いた…


 そして車が通り過ぎるとともに、

 沙夜は口を開いた


「……じゃあ今日は帰るね。 あといい加減敬語は止めなさい
幼なじみなんだから じゃあバイバイ」
 
 そう言って沙夜は部屋を出て行った

 扉の閉まる音が虚しく部屋に響く

 沙夜が部屋を出ていった後、真名斗は1人うつむいていた

「何で……こんな……」





「真名斗……くんの……お父さん……」

 家を出た沙夜は、門の前で真名斗の父親と鉢合わせをしていた

「来てたのか、沙夜ちゃん」

 真名斗の父親で、洋一という名のこの男は、

 身長は若干真名斗より低めだが、その分ガッチリとした体格で

 いかにも一家の大黒柱だというオーラが出ていた

「またアイツの記憶を戻そうとしてくれてたのか?」

 洋一は沙夜の横をすり抜け、扉へと向かいながら喋りだした

「あっ…はい…でもぜんぜんだめで……」

「だろうな………」

 洋一は扉のノブに手をかける

「いつもありがとう だけど今は何をやっても無理だろう  だから今はそっとしといてやってくれ  アイツもいろいろ考えてるみたいだから」

 洋一はそう言い残すと扉を開け、家の中に入ってしまった

「…………」

 沙夜は閉まった扉をしばらく見つめ、

 そして家をあとにした




 木漏れ日が眩しい


 春の日のことだった……



to be continued



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−あとがき−

 はじめまして〜 フェンリルでーす

 小説を書くのはこれが2作目なのですが、相変わらず書くのはムズイ……

この「あなたと綴るユメと記憶」は、

 当面の目的は20〜30話に設定しておりますので読者の皆様、

 最後までお付き合いお願いします

 ちなみに不定期更新となるとおもうので……

 感想はここのサイトの掲示板に書き込んでいただければ嬉しいです

 でわよろしくお願いします

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