更真裏歴
大人になって悪夢で目を覚ますなんて、軍人として最低だ。
そう思いながらも目を覚ましてしまった。寝汗がひどく喉も乾いていた。
忘れることが出来ないのか、それとも後悔しているのか、ずっと自分の中で葛藤が起きていた。
自分にこの舞台は何を伝えるために起き、最後自分は生きていられるのかずっと考えてしまう。
訓練もままならない程で、大好きな曲を聴いても右から左。
食事なんて喉を通るはずがなかった。
未だに厳戒態勢の館内での居心地は以外にもいいものだった。誰かが勝手に守ってくれる信頼感
周りが心配してくれる安心感が自分を正気でいられる状態を作っていたのだった。
部屋で落ち着きを取り戻しつつある三原に、報告が入った。
「三原二佐!死体の解剖結果が出ましたが、いかがなさいましょうか?」
「報告してくれ・・・・。」
「はっ!死亡時刻は昨日の14:23分、死因は焼死であります。」
「そんなことは分かっているさ!」
彼のトラウマにスイッチが入りそうになったが、
「実は、死体解剖中に胃の中から奇妙なものが現れまして・・・」
「奇妙なもの?」
少しだけ彼の表情が普段どうりになってきた。
「はっ!それが、この小さなビンなのですが・・・」
そのビンの中には紙が入っていて、外からでも三原宛だというのが分かるようになっていた
「中身は見たのか?」
「いえ、三原二佐宛だったので、封は明けておりません。」
「報告はそれだけか?」
「あと幕僚長が、23:30(フタ・サン:サン・マル)に部屋にと・・・」
「分かった。どうもありがとう。」
報告員は敬礼をして部屋を出た。
三原には誰が書いたものなのかは見当がついていた。少しの間ビンを眺めていた。
どこか嬉しげな表情をしていた。少し経ってからそのビンを開けた。
三原はその内容に驚いた。送り主はわざわざ名前を書いておいてくれていた。
真井であった。強く奥歯を噛んだ。
「あのやろう、本気で俺は今お前を殺してやりたくなったぞ。」
内容はこうだった。
『背景、三原二佐様。
この手紙を読んでいるということは、おそらくスパイを捕まえられたということでしょう
まずはその勝利を祝わせてもらいますよ。ところで、僕達は今北朝鮮にいます。理由はまだ教えてあげられません。
非常に残念ですよ。早くこの舞台の趣旨を理解してください。きっとあなたなら出来ます。ただ今のあなたはきっと
部下の死により非常に傷心しておられるでしょう。僕の同僚たちや先輩が亡くなったことは遺憾です。
でもこれは仕方が無いことなのです。僕達も出来ればこんな事はしたくはありませんが、責任はあなた方にあるのです
直向に事実を隠しつづける日本自衛隊には、もううんざりと言った所です。その内三原さんにも事実を知ることになると思います
この僕が見込んだ先輩として大いに働いてもらうことを卒に願います。
もう二度と出会うことは無いとおもいますが、一応何処かで逢える事を願いたいとおもいます
では、今度はあなたが手紙を読んだ次の日ということで。 真井袈流 』
怒りを何処にぶつければいいのか分からないまま、彼は幕僚長の部屋へと急いだ。
三原は真井が自衛隊を恨む理由が、きっと陸上自衛隊で起きた殺人事件の事だと思った。ろくな捜査もせず
事件は事故とされ、隠蔽された。殺されたのが真井の知り合いだとしたら、誰でも腹の立つ事ではある。
少し調べていきたくなった来ていた。傷心していた三原も、真井の事件を解決する事によって、死んだ者も報われる
と感じた。
「幕僚長には悪いが、少し遅れていくか。」
そう独り言をつぶやき、そのまま進路を180°転向し、資料室へと向かった。
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