任務開始



あのニュースから二年が経ち、日本の経済は安定期を迎えるが、

未だ近隣の国家間の外交政策に目途が経たず、いつ戦争がはじまっても

おかしくない状況が続いている。政治に興味が薄い主権者達は、自己中心的な活動を

続けていた。

 そんな中、自衛隊は何の問題も無く、仕事といえば災害被害者の救助や支援をする程度だった。

こんな生活に三原二佐は退屈を覚えていた。

「こんなことをするために防衛大学出たわけじゃないのにな〜。」

これは彼の口癖でもあった。彼はきっとお国のために闘いたかったのだろうが、

生憎防衛国日本ではお国のために戦うことが出来なかった。

 ある日、三原の部下で階級は三尉の「真井袈流(まさいかりゅう)」が

話し掛けてきた。

「知っていますか?二年前のあのスパイ事件がまた話題になっているらしいですよ。」

三原は煩わしそうに返事をした。

「興味全然わかない。」

だが真井は少し楽しそうだった。

「僕が話を持ちかけたらいつもそう言うじゃないですか〜。実は三原二佐も

好きなんじゃないんですか、僕の話。とかいって!」

三原は図星を付かれた顔をしたが、返事はしなかった。

「今回のスパイ事件は半端ないそうですよ。何でも計画を実行するそうで、必要とあらば

殺すことも辞さないそうです。三原二佐逃げた方がいいんじゃないですか?(笑)」

「自衛隊員だろうが、一応俺たちは軍人だろ。逃げるなんてしてみろ、脱走刑に処せられることは

なくても町で後ろ指差されることは必至だし、それなら殉職する方がましだ。」

簡単そうに話したが冗談ではなかった。

「さすが二佐!でも今回は集められないんですかね、俺たち。」

「さあ?それより後二十分後に飛行訓練始まるぞ。変なこと考えすぎて墜落しない用にな。」

「了解!!」

それはこれほどにない敬礼だった。

 

 飛行訓練が始まり、三原も操縦席に座りヘルメットをかぶった。ウインドウが上から

降り、離陸準備が整うまでの間、真井の言葉を思い返していた。GOサインがでれば

墜落してはいけないので、飛行操縦に集中し空へと飛び立った。

 彼にとって空は自分だけの物のように感じ、いつまでもこの状態でいたいと思っていた。

飛んだことのない人間には分かる事の出来ない、快楽なのだろう。



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