魔法少女リリカルなのはA's ―― Knight Of Gale ―― Case1:夜天の主と疾風の騎士 ずっと君と一緒に居よう、そう誓ったのはいつだっただろうか 傷つき、嘆き、悲しみ・・・・・痛みを乗り越えて、今、ここにいる 思いは力となり・・・・・そして、闇を打ち払う、一陣の希望の旋風となる これは、一人の青年と一人の少女を取り巻く、普通とは一歩違った、そんな物語・・・・・ present by 藤祭(since2007/11/02)
12.5[傷ついた騎士は帰還を望む] 目が覚めるとそこは熱風が吹き荒れる砂漠地帯であった その砂漠地帯の空気、雰囲気、荒れ狂う熱風は、晴樹の記憶に根強く残っている それもそのはず、だってこの場所は・・・・・ 「・・・・・・・・・・シグナムと特訓した管理外世界、だったよな、ここ」 『はい、地質、空気圧、周辺情報から察するに、98%の確率で』 「・・・・・なるほどね」 起き上がり、体中に鈍い痛みを感じ、晴樹は自分の身体を見下ろす バリアジャケットは七割がた破壊され、その部分だけ還元されているのか、私服が見え隠れしている 慌ててバリアジャケットに魔力を注ぎ、修復、だがそれまでだった 「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・魔力が、無い・・・・・」 『それはそうです、ただでさえ消費魔力の高いフルドライブ、そしてエクスプロードまで発動させたんですから』 「・・・・・カードリッジの補助があったから、大丈夫じゃないのか?」 『カードリッジは一時的に使用者の魔力を爆発的に増幅させるだけです、魔力が無くなれば意味ないですよ?』 「・・・・・・・・・・あー・・・・・なるほどね」 要するに、元々魔力の低かった晴樹がカードリッジを使用しても、元の分を増幅させただけなのだ なのはたちのように膨大な魔力が無いため、直ぐに魔力残量に底が見えてしまうということ それだけパラドクスの魔力消費は大きいのだ 「ある意味で、燃費が悪いってことなのか・・・・・パラドクスは」 『まあ、それもありますが・・・・・まだ私の能力は完全解放されていませんから』 「・・・・・え?」 『魔力増幅、防衛プログラム、この二つは解放されています・・・・・しかし、まだ一つ解放されていないものがあります』 「本当なのか? ってかそれが解放されたら俺には扱えないほどになっていそうな気がするんだが」 『マスターが頑張ればよいのですよ、ふふふ』 フルドライブ状態から通常モードに移行したパラドクスはふふふとただ笑うだけ そんなダブルセイバー状態のパラドクスを眺めながら、晴樹はため息を吐く そしてそのまま地面に腰を下ろした 「とりあえず、ここから脱出して・・・・・地球に戻らないとな」 『ですね』 「と、いうことで・・・・・パラドクス、ここに来たように転送魔法、頼む」 『それがですね、無理なんです』 「・・・・・へ?」 『先ほど言いましたよね? マスター・・・・・フルドライブとクラゼヴォ・モルは魔力消費量が多いと』 「・・・・・・・・・・もしかして」 『はい、転送を行なう際に最後のカードリッジ弾丸を使用しましたので・・・・・残量ゼロです』 どんまいです、マスターというパラドクスの声に、晴樹はがっくりとうな垂れる ひゅーっと熱風ではなく、少々涼しい風が晴樹の頬を通り抜けていく うな垂れていた晴樹はため息を吐き、ただただ空を眺めるだけだった 一時間ほど休憩しただろうか、晴樹は伸びをしつつ起き上がる 体力は回復しているが、肝心の魔力が殆ど回復していない これはもともとのタンク量も少ないため、回復量も少ないためである 「とりあえず、回復した魔力をカードリッジ弾丸の作成に全てまわさないと・・・・・」 『ですね、まさかマスターがカードリッジの弾丸を作成できるとは思っても居ませんでしたが』 「まあな・・・・・シャマルさんには感謝だ、あの人から教わっていなかったら、今頃死んでいたかもしれないし」 そう、ヴィータ、ザフィーラ、シグナム、シャマルから稽古をつけてもらっていた晴樹 だからこそこうやってギリギリの状態でも生き延びていられるのだ そしてシャマルから教わったカードリッジ弾丸の作成、これも晴樹の命を延ばすこととなる 『ですが、あまりにも遅すぎるのですが・・・・・』 「わ、悪かったな・・・・・未だに弾丸の先から水が溜まるイメージってのがいまいちつかめないんだよっ」 『下がとがったコップに水を注ぐ感覚、それで十分のはずですが』 「なんかなー・・・・・何気なく水は注いでいるだろ? 注意とかしていないし・・・・・な」 『なるほど』 カードリッジに魔力を注ぎつつ、一発の弾丸を作成していく晴樹 だが、一発の弾丸を完成させるにはかなりの時間が掛かる まして、回復した魔力を即座に使用するため、他の維持がままならないのだ 「はぁ、はぁ・・・・・さ、さすがに・・・・・限界だ・・・・・とりあえず、ギブアップ」 『はぁ・・・・・ぎりぎり使えそうな一発になっただけよしとしましょう・・・・・・転送魔法には使えそうにも無いですが』 「げ・・・・・本当かよ」 『ええ、普段使用している弾丸の二分の一ほどの出力しか出ないので』 「うは・・・・・シャマルさんは偉大だってことか」 ぐったりとうな垂れて、晴樹は近くにあった巨大な岩壁に身体を預ける ごつごつしているが、ちょっと暖かい、そんな巨大な岩 直射日光でも浴びて暖かくなっているんだなと晴樹は納得して、そのまま目を瞑る 「んー・・・・・・・・・・ちょっと休憩、だな」 『この方が温厚でよかったですね、マスター』 「・・・・・・・・・・え?」 『言っておきますが、マスターが寄りかかっているのは魔導生物ですから、巨大な』 「・・・・・・・・・・うぉっ!?」 巨大な岩壁だと思っていたものは魔導生物 亀の甲羅のようなものが上下左右についており、足が四本 ゆったりとした雰囲気でその場に鎮座していた 「ごつごつした感覚は・・・・・甲羅だったのか」 『ええ、とりあえずこちらに敵意が無いことが分かっているようで、襲ってはこないようです』 「ほっ・・・・・よかったぁ・・・・・ここで戦闘なんかやったら軽く死ねる」 『あはは、冗談はほどほどにですよマスター・・・・・ほら、お客さんです』 完全に岩状態となり、カモフラージュしている魔導生物の周囲に三体ほどのワーム形態の魔導生物 その目線は完全に晴樹を捕らえており、ぎらぎらと目を光らせている この視線はいわゆる捕食者の視線であり、晴樹は食われる側に位置していた 「おいおいおい・・・・・洒落にならんぞ」 『ふぁいとですマスター・・・・・どうやら亀さんも応戦してくれるようですし』 「・・・・・え?」 ずしん、という大きな音を立てて巨大な生物が起き上がる 体長、およそ20m・・・・・晴樹の遙か上に甲羅部分が存在している その生物は、温厚な表情とは裏腹な巨大な声をだして、威嚇している 「・・・・・・・・・・す、すげぇ・・・・・俺、なんか場違い」 『とりあえず、威嚇してくれているようですし・・・・・この間に仕留めてしまいましょう』 「・・・・・逃げるっていう選択肢は無いわけ?」 『せっかく援護してくれたあの方の善意を無駄にするというのなら』 「あー・・・・・うん、パラドクスは戦うために威嚇してくれたという考えなわけね・・・・・ああ、納得」 がくりとうな垂れつつ、晴樹はゆっくりと立ち上がる そして片手でパラドクスを握り、構えながら怯んでいる相手を盗み見る まだ相手の威嚇に警戒しているようで、目線が晴樹から外れていた 「とりあえず、シグナムと一緒に戦ってた要領で行くぞ、パラドクス!」 『了解です、マスター・・・・・Blade Form展開します』 変形機構をカートリッジ装着時から魔法技術で補っているが、さすがロストロギアと言ったところであろうか なのは達は変形機構を利用する際、カートリッジにより魔力増幅を施しつつ、形態変化をさせる だが、パラドクスの場合はそのカートリッジにおける工程を無視する形で、形態変化をしたのだ 「とりあえず、先手必勝! ・・・・・斬り刻めっ!」 『ブーストアクセル及び、Katzbalger発動します!』 付与された心もとない魔力刃が勢いよく相手を切り裂いていく 晴樹とワーム形態の魔導生物の体格差は分かりきっている、だが、それ以上に晴樹は成長していたのだ 一撃離脱、その戦法を活用しつつ、相手の体力を削っていく 「ちまちま削るのは苦手だが・・・・・さすがにカートリッジが使えないんじゃ、しょうがないよな」 『というかですねマスター、修行の頃はその機構は付いていませんでしたよ』 「だよな・・・・・ってことは、付いたその時から、俺は頼りすぎていたってことか」 『魔力の少ないマスターにとっては、喉から手が出るほどの機構ですからね』 迫り来る相手の攻撃を必死で避けつつ、今までの自分のことを晴樹は振り返っていく 自分が最初にこの場所で戦闘したとき何を言われたのか どのような気持ちで戦場に赴いたのか、それを振り返っていた 「せぁっ! ・・・・・ちっ、きりが無いか」 『さすがに、仲間が居ない状態というのが辛いですね』 「ああ」 右から襲い掛かってきた相手の胴体を避けつつ、晴樹は後方に飛ぶ そして着地した瞬間、真横を謎の熱源が通り過ぎていく ぶわっと熱風が舞い上がり、晴樹はあまりの熱さに地面に倒れ伏した 「あ、熱い・・・・・・・・・・一体何が・・・・・って、うぇ!?」 『・・・・・火を吹く亀ですか・・・・・初耳です』 熱源の元を探すと、晴樹の後方でこちらに向かって大きな口を開いている魔導生物の姿 その口からは灼熱の溶岩のようなものがぐつぐつと煮えたぎり、球体を作っている そして数秒後、こちらの後方にいる魔導生物に向けて、その熱源が放射されていたのだ 「なあパラドクス」 『なんでしょう、マスター』 「あの魔導生物、かなり強いよな・・・・・俺って要らなくないか?」 『・・・・・・・・・・ど、どんまいですマスター』 「・・・・・ちょっと待て、どんまいとか・・・・・俺の苦労は何だったんだ!?」 一発放射されるごとに、燃やし尽くされ、地面に突っ伏していくワーム形態の魔導生物たち 晴樹が攻撃するよりも確実に相手を削り、三発打つ頃には既に全ての魔導生物が倒れ伏していた さすがの晴樹もこの攻撃力には圧倒されたようで、がっくりと肩を落としていた 「・・・・・・・・・・なんか、自信なくなってきた」 『そのようなことを言ってはダメですよ、ほらほら、さっさと蒐集行為をしましょう』 「・・・・・・・・・・蒐集行為?」 『ええ、魔力がないなら相手から貰いましょう・・・・・死なない程度にですけどね』 パラドクスの言葉が終わると同時に、黒こげ状態で倒れ伏していた魔導生物たちのリンカーコアが出現 そしてパラドクスが光を放つと同時に、その魔力は全てパラドクスに注がれていく 最近やったばかりの行為に晴樹は罪悪感を覚えつつ、パラドクスを眺めていた 『ふぅ、これで十分でしょう・・・・・大量に居てよかったですね、マスター』 「あのなパラドクス・・・・・やって良いことと、悪いことがあるんじゃないのか?」 『でしたらマスターは、どうやってこの世界から脱出するつもりで?』 反論した晴樹に対し、絶対的な理論で反撃してくるパラドクス さすがロストロギアと言ってよいものか 晴樹はただただため息を吐くだけだった 「はぁ・・・・・やっぱり、俺は犯罪者なんだなぁ」 『何を今更・・・・・もしかしたら守護騎士たちよりも罪は重いですね』 「げ・・・・・やっぱり?」 『ええ、闇の書事件における罪と私を局員から奪ったという罪がありますから』 事実を聞かされ、晴樹は小さくなるばかり それはそうだろう・・・・・やっと帰ることが出来るという矢先のことだ 帰っても自分は犯罪者、ならいっそのこと・・・・・他の世界にでも逃げようかと、そんな風に思うのだ 「・・・・・・・・・・まあ、とりあえず・・・・・帰ろうか、パラドクス」 『ですね・・・・・っと、その前にマスター・・・・・その脇腹の切り傷を縫合しておいたほうが身のためですよ』 「あはは、バレバレか・・・・・縫うのは面倒なんだよなぁ」 『あのですね、真っ青な顔で既に出血量が多いのですから・・・・・少しでもしておかないと、死にますよ』 「・・・・・・・・・・い、痛いけど・・・・・やるしかないかぁ」 必死に避けていたのはいいが、やはり砂漠地帯での戦闘は慣れていない そのため、避けたはずの攻撃を受け、脇腹を斬られていたのだ ぱっくりと割れ、かなりの出血をしていたが、内蔵系統には傷が付いていないのは奇跡とも呼べるであろう 「ぐぉ・・・・・防御機構に痛み止めとか回復魔法とかないかなぁ」 『ありますが、それを使用すると魔力切れで転送できませんよ?』 「・・・・・だよなぁ」 ちくちくとどこからともなく取り出した針で糸を使って縫合していく晴樹 完全に縫合するころには出血も少なくなり、相変わらず真っ青な表情だが、ギリギリといったところであろう そして直ぐに立ち上がり、パラドクスを構えた 「さてとパラドクス・・・・・そろそろ帰ろうか」 『ですね、カートリッジも私が魔力を込めておきましたから、きちんと使えますよ』 「・・・・・・・・・・あの、パラドクスさん」 『はい、何でしょうマスター』 「最初からパラドクスが魔力をこめておけば・・・・・早く帰ることができたんじゃないかなぁーと」 『・・・・・・・・・・・・・・・て、転送魔法陣展開っ!』 「ちょ、お前っ・・・・・ご、誤魔化したな!?」 傷の痛みに耐えつつも、ツッコミを忘れない晴樹 綺麗に展開された三角形の魔法陣と共に、晴樹の姿は消えていく 晴樹の遙か遠くには、のっそのっそと、ゆっくり歩いているあの魔導生物の姿 その後姿に、一礼しつつ、晴樹は目を瞑る 異文化交流も悪くない、そんなことを思いつつ、転送に身をゆだねる 転送後、目を開けた先には・・・・・雪景色が広がっていた 「・・・・・・・・・・さてと、行きますか」 『ですね、マスター・・・・・とりあえず、前方100mに八神はやてを発見です、肉眼でも分かるでしょう?』 「ああ、ばっちりだ」 前方には寒さで赤くなり、痛々しく腫れている手を必死に動かし、車椅子を押すはやての姿 表情は分からないが、その行動からかなり必死であるということが晴樹にも分かった そして晴樹は傷の痛みも忘れ、足早にはやてに近づき、車椅子の後方にある取っ手を掴んだ 「・・・・・・・・・・・・・・・え?」 一瞬どうなっているのか分かっていなかったのだろう、力強く動く車椅子に呆気に取られるはやて そんなはやてがゆっくりと振り返り、驚きの表情を浮かべる 驚いているはやてに少々懐かしさを覚えつつ、晴樹はにっこりと笑い、頭を垂れ、言葉を紡いだ 「・・・・・・・・・・・・・・・お困りかな、我が主」 『ボロボロの体でその言葉は・・・・・ちょっとキザすぎです、マスター』 「う、うるさいっ」 こうして、八神はやてという風の名を持つ少女の下に、疾風の名を持つ騎士が帰還する 主は騎士を優しく出迎え、騎士は傷つく身体をものともせず、主に笑いかけている そして二人は、眼前に迫る別れへと・・・・・進んでいくのであった
〜後書き〜 はい、晴樹くんが転送魔法を使用した後に飛ばされたところ、という場面を打鍵させていただきました。 これを打鍵するにどれだけ時間が掛かっているんだと小一時間問い詰めたい(ぁ さてさて、晴樹くんを強化するために守護騎士たちが必死になった結果がやっと実ったという感じですね シグナムとヴィータから受け継いだ攻撃能力、ザフィーラ直伝の防御能力 そしてシャマルから習ったカートリッジ作成能力を全て生かした結果、今回の生還にたどり着いたと うーん・・・・・強くもなく弱くもない騎士の完成、器用貧乏ともいいますね(;y=ー(゚д゚)・∵. ターン ではではまた次回で会いましょうっ