魔法少女リリカルなのはA's ―― Knight Of Gale ―― Case1:夜天の主と疾風の騎士 ずっと君と一緒に居よう、そう誓ったのはいつだっただろうか 傷つき、嘆き、悲しみ・・・・・痛みを乗り越えて、今、ここにいる 思いは力となり・・・・・そして、闇を打ち払う、一陣の希望の旋風となる これは、一人の青年と一人の少女を取り巻く、普通とは一歩違った、そんな物語・・・・・ present by 藤祭(since2007/08/03)
10.5.「番外編」 暖かい、そんな場違いな感覚に包まれながら、フェイトは目を覚ます 目に入るのは美しい天井、そして暖かな日差しが差し込む大きな部屋 窓から差し込む光はとても美しく、楽園へと誘っているかのようにも思えた 「・・・・・・・・・・・・・・・ここ、は?」 自分はどうしてここにいるのだろうか、先ほどまで闇の書と戦っていたはず 親友であるなのはは、一体どこに行ってしまったのか そして、ここは一体どこなのだろうかと、頭の中が混乱する 「・・・・・・・・・・・・・・・え・・・・・う、そ」 辺りを見回し、ふと、隣を見ると、そこにはありえない人間が眠っていた 自分と瓜二つ、否、自分の姉とも言える人物 アリシア・テスタロッサという存在が、気持ち良さそうに寝息を立てている そして近くには使い魔であるアルフが子犬のような形になり、眠っている どうして、どうしてこのようなことが起きているのか フェイトの頭は混乱していた 「フェイト、アリシア、アルフ・・・・・朝ですよー」 「・・・・・・・・・・っ!? まさ、か」 部屋の扉から聞こえるのは、懐かしい声 失って久しく、そして、遠くに行ってしまった日々の声 その声の主はゆっくりと部屋の扉を開けていた 「おはようございます、フェイト、アリシア」 「んぅ・・・・・眠いよぉー」 「もう、また夜更かししたんですか? 早起きのフェイトを見習ってくださいね」 ちょっと怒ったような顔をしつつも、笑っている人物 そう、リニスという存在 遠い記憶においてきた、家族の記憶・・・・・ 「・・・・・・・・・・あ、あの・・・・・リニス?」 「なんです? フェイト」 「・・・・・・・・・・あり、しあ?」 「んー? おはよう、フェイト」 昔のように笑いかけてくれるリニス そして、本来生きていたらそうであろうと思われる笑顔を浮かべるアリシア どうしてここにいるの? そんな気持ちがフェイトの中で溢れていた 「はぁ・・・・・前言撤回です、今日はフェイトもお寝坊さんです」 「あははっ」 「んー・・・・・眠いよぉ、もっと寝かせてよー」 「こらアルフ、貴女も起きなさいっ」 ゆさゆさとアルフを揺さぶるリニス、そしてそれを見て笑うアリシア 暖かい日常の風景、それが今ここに存在していた 紛い物であっても・・・・・確かに、存在していた 広い廊下を通り過ぎ、食堂と思しき場所に到着する 長いテーブルの先にはありえない人の姿 それを確認するのは、ほんの少し先になる・・・・・ 「おはようお母さんっ」 「おはようございます、プレシア」 「おはようアリシア、リニス」 「っ・・・・・・・・・・」 プレシア、プレシア・テスタロッサ・・・・・その言葉にフェイトの心は鷲掴みにされたように冷え固まる 思い出されるのは数々の痛みと悲しみ・・・・・そして、後悔 そのプレシアが何故ここに居るのか・・・・・あの日、母と呼ばれた人間は、確かに消えてしまったのに 「聞いてくださいプレシア、今日は雪か槍が降りますよ」 「・・・・・どうかしたの?」 「きっとフェイトは勉強のしすぎなんだよっ、ね、アルフっ」 「うんうん」 フェイトとリニスから呼ばれ、フェイトはおずおずと近くまで歩み寄る 近づけば近づくほど鮮明に蘇る過去の記憶 けれども、あの雰囲気を持つ母は、居なかった 「どうやら悪い夢でもみたようで・・・・・今が夢か現実か、混乱しているようです」 「そう・・・・・フェイト、こっちにいらっしゃい」 「っ・・・・・」 優しく手招きするプレシア 怖い、けれども近づきたい・・・・・そんな気持ちがフェイトの中でぐるぐると回る そして、優しい母の手招きに・・・・・フェイトは答えた 「・・・・・怖い夢を見たのね」 「・・・・・・・・・・・・・・・」 「でも、もう大丈夫・・・・・私達がここにいるから・・・・・ね?」 「・・・・・・・・・・・・・・・」 優しい問いかけに、うんと頷くフェイト そんなフェイトを見ながらアリシアとアルフはあははと笑う そして、リニスが用意した朝食を暖かな雰囲気の中で食べる 「・・・・・・・・・・・・・・・」 「うんうん・・・・・美味しいよリニスっ」 「そうですか、よかったです・・・・・たくさん食べてくださいね」 「うんっ」 暖かな会話、美味しい料理・・・・・けれどもそれは"夢" フェイトは気がついている、これは自分が思っている夢物語だと 母はあのように笑いかけてくれなかった、あのように手を差し伸べてくれなかった 優しくなかった、ここまで温かい人ではなかった 全てが夢、けれども・・・・・とても暖かい夢 いつまでも包まれていたい・・・・・そんな気持ちにさせる、夢だった 暖かな日差しを浴びながら、家族みんなで道を歩いていく 紡ぎだされる言葉は皆温かなものばかり、笑顔が溢れるものばかり みんな笑顔、とても楽しい・・・・・そんな風景 「んー、やっぱりフェイトはすごいなーっ・・・・・私も負けられないかもっ」 「その前にアリシアは、暗記力をつけないとだめですね」 「むーっ、酷いよリニスーっ」 「ふふっ・・・・・頑張ってねアリシア」 「はーいっ」 リニス、アリシア、プレシアの楽しそうな話 それを一歩はなれたところで聞いているフェイト 近くを歩いていたアルフは少々心配そうな表情でフェイトを見る 大丈夫だよとアルフにいいながら、フェイトは三人を眺める いつか夢見ていた暖かな家族の風景 自分もその中に居ることができるのだろうかという、願望 「フェイト、遅れてますよ・・・・・こっちです」 「・・・・・うん・・・・・今行くよ、リニス」 「今日はフェイトの新しい靴を買ってあげなければいけないわね」 「えー、ずるいよお母さーん」 「フェイトは前回の魔法のテストで満点でしたからね、そのご褒美です」 本当に暖かい、いつまでもここにいたい・・・・・そう感じさせてしまうほどの幸せ その幸せに包まれながら、フェイトはいつの間にか涙を浮かべていた 自分が欲しかったもの、けれども手に入れることが出来ないもの 過ぎてしまった過去はもう戻せない、永遠にこの人たちと触れ合うことは出来ない そう気づいてしまったから、涙がとめどなく流れ出てしまう そんなフェイトを、プレシアは優しく抱きしめていた 「大丈夫、私達がずっといるから・・・・・ね、フェイト」 「うっ・・・・・ぐすっ・・・・・・・・・・ふぇっ・・・・・」 「今日のフェイトは甘えん坊さんですね・・・・・そう思いますよね、アリシア?」 「うんうん、妹らしくていいと思うよ、私はっ」 「それはアリシアが何時もお姉さんらしくない、ということですね」 「うぅ・・・・・やっぱりリニスは厳しいよ」 リニスとアリシアの二人漫才に、プレシアやアルフは笑い出す 自然と笑顔があふれ出すような雰囲気、とても楽しい日々 いつまでも続いて欲しい・・・・・そんな風に思える、夢・・・・・ けれども・・・・・それは、夢 夢であって、現実ではない・・・・・幻という名の夢 幸せであっても、それは本当ではない・・・・・だってそれは夢だから 「・・・・・・・・・・・・・・・夢・・・・・そう、夢なんだ」 暖かな家族に囲まれながら、フェイトは小さくその言葉を言う 今は夢であって、現実ではない・・・・・現実では、待っている人が居る 今も自分を信じて戦い続けている・・・・・大切な親友が フェイトとアリシア、二人揃って巨木の下で空を眺めていた 暖かく、幸せな光を与えてくれる太陽、頬を撫でる優しい風 いつのまにか眠っていたのか、アリシアがフェイトに寄りかかるようにして眠っていた 「・・・・・・・・・・・・・・・んぅ」 「・・・・・起きた?」 「はれれ・・・・・私・・・・・寝てた?」 「・・・・・うん・・・・・ぐっすり」 フェイトの言葉にはにかみながら、たははと笑うアリシア こんな日々が続いて欲しい、本当にそう思ってしまう けれどもアリシアが生きていれば自分は生まれていなかった そう思ってしまう自分も居て、とても嫌になる これは夢であって、現実ではない だからこそ・・・・・嫌になった 「・・・・・・・・・・あれ、暗くなってきちゃった・・・・・ひと雨きそうだね」 「・・・・・うん」 「いこ、フェイト・・・・・お夕飯に間に合わなくなっちゃう」 にっこりと笑って立ち上がり、少々離れて振り返るアリシア そしてフェイトにこっちに来るようにと、優しく手を伸ばす けれどもフェイトは、少しだけ首を振った 「私は、もう少しここにいるよ・・・・・アリシアは、先に帰ってて」 「んー・・・・・・・・・・なら、私もここにいる」 「・・・・・・・・・・」 「二人で一緒に、あーまーやーどーりっ」 フェイトの隣で膝を抱え、早くやまないかなーと空を見上げるアリシア そんな暖かいアリシアに対して、フェイトは思っていたことを言い出す決意をする 今しか、もう・・・・・言えないだろうから これ以上この幸せに包まれていたら、自分が自分でなくなってしまうから 確かにプレシアたちとの暮らしは自分が今まで切に望んできたこと けれども・・・・・今はもう、違うから 「・・・・・・・・・・これは・・・・・・・・・・夢・・・・・なんだよね、アリシア」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん」 フェイトの言葉に、ゆっくりと頷くアリシア 分かっているのだろう・・・・・それはそうだ、フェイトの夢なんだから だからこそ・・・・・言える、全てを・・・・・言うことができる 「これは夢で・・・・・目覚めなくちゃいけない・・・・・母さんもリニスもアリシアも・・・・・もう、居ないから」 「・・・・・・・・・・ねえフェイト、本当に、現実に戻るの?」 「・・・・・・・・・・・・・・・うん」 「ここならお母さんもリニスもアルフも、私も・・・・・ずっと一緒に生きていられるんだよ?」 「・・・・・・・・・・」 「現実は痛くて、冷たくて、怖くて・・・・・悲しいんだよ? ・・・・・それでも、いくの?」 「・・・・・・・・・・・・・・・う、ん」 アリシアの言葉に、フェイトはうんと頷く 自分はここに居てはいけない、自分の世界は外に在るから 幸せは自分で掴まなければいけない・・・・・だからこそ、ここには、居られない 「・・・・・・・・・・そっか・・・・・そう、だよね・・・・・ねえフェイト」 「・・・・・うん?」 「大切な友達・・・・・沢山できた?」 「・・・・・・・・・・・・・・・うん・・・・・いっぱい、いっぱい・・・・・できたよ」 「大切な人・・・・・できた?」 「・・・・・それは、まだかな・・・・・・・・・・でも、きっとみつかる」 立ち上がり、フェイトは空を見上げる まだまだ振り続ける雨は威力を増していて、一向に止む気配は無い そんな中、立ち上がったアリシアは、ポケットからあるものを取り出した 「はい・・・・・・・・・・この子も大切なお友達、だよね」 「・・・・・・・・・・・・・・・うん」 手渡されたのは今まで自分を支えてくれた相棒であるバルディッシュ 主の帰還を喜ぶかのように、胎動をフェイトに伝えてくる そのバルディッシュをぎゅっと抱きしめ、フェイトはアリシアを見た 「・・・・・行くんだよね、大切なお友達のところに」 「・・・・・うん、行くよ」 「それじゃあ・・・・・お別れだね、フェイト」 「・・・・・・・・・・・・・・・うん」 ぎゅっとアリシアはフェイトに抱きつき、涙を流す そして、フェイトもアリシアに抱かれながら・・・・・涙を流す 辛い涙ではない、嬉しい涙・・・・・抱き合うことの出来た、触れ合うことの出来た、涙 「私は死んじゃってもう居ないけど・・・・・フェイトが代わりに生きてくれる」 「・・・・・・・・・・・・・・・」 「フェイト、幸せにならないと・・・・・だめだからね?」 「・・・・・・・・・・うん」 「そうだ、優しいお姉ちゃんらしく、フェイトに一つだけ予言してあげるっ」 涙を流しつつ、アリシアは笑いながらフェイトに言う 一体どんなことを言うのだろうか、そんな風にフェイトは思う そんなフェイトを見つつ、アリシアは泣きながら、言った 「フェイトは、大切な人を見つけられる・・・・・近いうちにねっ」 「・・・・・・・・・・大切な、ひと?」 「その人は危なっかしくて、でも側に居たいと言える人・・・・・でもね、気をつけないといけないよ」 「・・・・・え?」 「その人はフェイトを待たせてしまうから、きっといーっぱい待たせてしまうから」 「・・・・・・・・・・・・・・・」 「でもあきらめちゃだめ、見捨てちゃダメ・・・・・ずっと信じて、助けてあげて」 「・・・・・・・・・・アリシア」 「い、以上っ・・・・・お姉さんからの予言でしたっ・・・・・・・・・・もう、我慢、できないから・・・・・ね?」 空元気、それが似合うかのようにアリシアは笑う だからだろう、フェイトはぎゅっとアリシアを抱きしめる もう一生抱きしめることが出来ないであろう、暖かい温もりを・・・・・確かに感じて 「・・・・・・・・・・フェイト」 「・・・・・・・・・・なに、アリシア」 ぎゅっと抱きしめられたアリシアは、光に包まれながらにっこりと笑う そのアリシアを抱きしめながら、フェイトは、ずっと涙を流す もう会えない、だから・・・・・涙が流れる 「もしそのまま私が生きていたら・・・・・こうやって・・・・・暮らせたのにね・・・・・あはは」 「・・・・・・・・・・・・・・・うん」 「でも我が侭は言わないよ・・・・・私はフェイトのお姉ちゃんだから」 「・・・・・う、ん・・・・・わが、まま・・・・・いっちゃ、・・・・・だめ、だよ」 「だか、ら・・・・・一言だけ・・・・・いうん、だよ? ・・・・・きかなきゃ・・・・・だめ、だからね?」 震えながら、光に包まれて消えながら、アリシアはフェイトに笑いかける 涙でその表情は既にぐちゃぐちゃで、とても人には見せられない けれども、それはフェイトも一緒で・・・・・二人で涙を流しながら、お互いに、最後の言葉を言った 「・・・・・・・・・・いって、らっしゃい・・・・・フェイト」 「・・・・・うん・・・・・いってきます・・・・・アリシア」 次の瞬間、アリシアの姿は消え去り、空が晴れ渡っていく まるでアリシアが悲しみという名の雲を取り払ってくれたかのように そんなことを思いながら、フェイトは現実に戻るために、動いた 広い室内で、フェイトは一人立っている しんと静まり返った宮殿には、暖かな光が差し込んでいる アリシアが勇気をくれた、だからそれに答えなければと・・・・・フェイトは感じた 「バルディッシュ・・・・・ザンバーフォーム、いける?」 『Yes,Sir!』 「うん・・・・・・・・・・いい子だ」 相棒はいつも快く自分を導いてくれる ならば、その期待に答えるのが自分の仕事 だからこそ・・・・・ここで、過去との因果を断ち切る・・・・・ 「バルディッシュ、ザンバーフォーム!」 『Zamber form・・・・・Set up』 二発のカードリッジがロードされバルディッシュの形態が変化していく 杖を模っていた姿は既に無く、巨大な魔力刃が剣を模っていた ザンバーフォーム、それがこの形態だった 「・・・・・・・・・・過去との因果を断ち切り、ここで・・・・・現実に私は戻る」 刃を振りかざし、フェイトは上段に構える バチバチと帯電した雷が響き渡り、空間が歪んでいく そのような中、フェイトは口を開いた 「大切な人たちの場所へ・・・・・・・・・・疾風、迅雷!」 『Sprite Zamber!』 「スプライト、ザンバーッ!!」 振りかざした刃は全てを打ち砕き、過去との因果を全て断ち切る ・・・・・フェイトは大切な人たちの下に、帰還する そして、最初の目線に飛び込んできたのは・・・・・大切な親友の姿だった
〜簡易後書き〜 うん、ごめんなさい・・・・・脚色ありすぎでフェイト贔屓しすぎだと思うんだ(ぉ さて番外編というか補完編であるCase1-10.5どうだったでしょうか? 藤祭が思うに、アリシアは可愛すぎるんです・・・・・うん、可愛すぎなんだ そしていつもリニスに弄られているんだと勝手に解釈していたりします(ぇ 半分以上私の脚色で出来たこのCase1-10.5ですが、こんな風に本編のフェイトは思ったのではないかと勝手に解釈 いろいろと表現を増やしてみたが・・・・・うん、最後の最後で自分で打鍵して涙ぐんでどうするんだとか自己嫌悪 とりあえず、補完として楽しんでくれると嬉しいです、ではっ