魔法少女リリカルなのはA's ―― Knight Of Gale ―― Case1:夜天の主と疾風の騎士 ずっと君と一緒に居よう、そう誓ったのはいつだっただろうか 傷つき、嘆き、悲しみ・・・・・痛みを乗り越えて、今、ここにいる 思いは力となり・・・・・そして、闇を打ち払う、一陣の希望の旋風となる これは、一人の青年と一人の少女を取り巻く、普通とは一歩違った、そんな物語・・・・・ present by 藤祭(since2007/05/18)
1.[普通と異端、それは表裏一体であり、いつ、どこで、入れ替わるかは、その人間次第である] 魔導杖パラドクスと契約してから一週間ほどたち、晴樹は途方に暮れていた 自宅で初歩的な訓練をしていたのはいいが、バイトをやめさせられていた事実に気がつく ごく普通の一般人を目指していたのだが、両親は他界しており、顔見知りの親戚が資金援助をしてくれている けれどもバイトをして、もらった仕送りは貯金していたので手持ちの金は現在六百七十円 自宅にある非常食などを食べていても一ヶ月も持たない状態で餓死寸前になるだろう だから、貯金を下ろさなければいけないのだが・・・・・ 「・・・・・・・・・・そう言えば、暗証番号・・・・・分からないんだった」 『マスター・・・・・だめだめですね』 「い、言うな! 俺が生まれてからずっと両親が貯金管理していたから・・・・・暗証番号なんて、分からない」 『と、いうことは・・・・・仕送りが来るまで我慢しなければいけないのですね?』 「いや、仕送りは一応振り込みの形だから・・・・・だから、無理」 そう、相手方はこちらが暗証番号を知っていると思い込んで仕送りを振り込んでいる しかも銀行に振り込めといったのは、暗証番号も分からない晴樹本人 かなりアホである、本人も自分の頭を殴って悶絶している 『マスター・・・・・どうします?』 「はぁ・・・・・とりあえず、バイト・・・・・探さないとなぁ」 『ですね』 パラドクスを首にかけ、晴樹はそのまま私服に着替えて自宅を出る 早めにバイトを探さないと水道料金やらなにやらを支払わなければいけない 日雇いでもいいから探さなければと、思っていたのだが・・・・・ 『で、マスター・・・・・なんで私たちはスーパーの前にいるのですか?』 「・・・・・・・・・・空腹は敵なんだ・・・・・少なくても食材を買わなければ」 『・・・・・そうですか、頑張ってください』 「・・・・・・・・・・・・・・・おーぅ」 時刻は丁度タイムセールをやっている時間、ここなら安く買える そんなことを考えつつ中に入ると、自分の認識が甘いことに気づく 成り行きで魔導師という、戦場に向かうような職業になってしまったが、ここは違う意味で、戦場だったのだ 『・・・・・・・・・・マスター、早くしないとお目当ての材料・・・・・買えませんよ?』 「無理だ・・・・・俺には、無理だ・・・・・おばちゃんの波に逆らうなんて・・・・・無理だっ」 『・・・・・・・・・・マスター』 がくりとうな垂れ、晴樹は籠を置いてぼーっと立つ 目当てだった安売りの鶏肉は既に売り切れ・・・・・安くて美味いが取り得なのに、どうしてくれる これで夕食が無くなった、と考えていると、くいくいと服を引っ張られる 「・・・・・あ、あのぉ・・・・・どないしたんですか?」 「え、あ? あ、ああ・・・・・ちょっとな・・・・・」 「ちょっとって・・・・・かなり悲観的な顔してたんよ?」 「あー・・・・・すまんな、心配してくれたんだ」 「はい・・・・・あ、わたし、八神はやていいます」 晴樹に話しかけてきたのは車椅子に乗っている可憐な少女 心の中で晴樹は可愛いな、と柄にもなく思ってしまう 名を八神はやて、彼の救世主となる人物になるのだろうか・・・・・ 「俺は春日井晴樹・・・・・うん、まあ・・・・・人生に悲観しているところだ」 「・・・・・・・・・・なんで悲観しておるんですか?」 「あー・・・・・実は」 なんで小さい少女にこんなことを言っているのだろうかと思いつつ、ことの経緯を話す 仕送りを全部銀行に振込んでおり暗証番号不明、バイトをしていたが辞めさせられていて収入ゼロ 手持ちのお金は六百七十円で早くバイトを探さないといけないということ、全てを話した 「それは困ったなぁ・・・・・あ、そや! シャマル! こっちきてな」 「どうしたんです、はやてちゃん・・・・・っと・・・・・この人は?」 「春日井晴樹さんっていうんやけど・・・・・ちょっとわたしの話、聞いてくれな」 あははと笑いながら、八神さんはシャマルという女性になにやら話している こちらをちらちらとうかがっている辺り、晴樹に関係することなのだろう 二人を見ながら、晴樹は首をかしげてうーんと唸っていた 『マスター・・・・・話かけられていますよ』 「ん? ああ、ごめんごめん・・・・・んで、話は纏まったのかな?」 「はい、はやてちゃんの要望で・・・・・少々不本意ですが、これから一緒に暮らしませんか?」 「・・・・・・・・・・・・・・・へ?」 「迷惑やないやろ? 食事も出来るし、一人より皆や」 にこにこと笑ってこちらを見てくる八神はやて・・・・・ここまでお人よしはいないだろう それはそうである、出会って間もない謎の男を一緒に生活しないかと誘っているのだ、非常識である そんなことを考えたが、自分も非常識人間だと知り、言葉に甘えることにする、背に腹は変えられぬのだ 「わたしも両親おらんけど・・・・・シャマルたちが居るから寂しくないんや」 「・・・・・そっか・・・・・んじゃ、ほかの住人に聞いてから住むことにするよ」 「・・・・・・・・・・晴樹さん? なんでそんなこというん?」 「あのな、八神さんはいいっていうけどさ・・・・・他の子がイヤだって言ったらだめだろう?」 そう、根本的な問題である。見ず知らずの男がいきなり自分の家に住むのだ、誰だって驚くだろう それに色々と問題はどんどん出てくる・・・・・だから、率直に決めてはいけないのだ これだけは、譲れない・・・・・晴樹は結構強情なのだ 「んー・・・・・しょうがないなぁ、それじゃあシャマル、先に帰って聞いてきてな」 「はやてちゃん?」 「わたしは晴樹さんと一緒に帰る、話聞いて晴樹さんを沢山知っておくんや」 「・・・・・分かりました、それでは晴樹さん・・・・・はやてちゃんを頼みます」 「・・・・・任せておいてください」 駆け出していくシャマルを見送りつつ、晴樹は八神はやての車椅子を押す そして八神はやての家に到着するまで、色々と自分たちの話しをするのであった・・・・・ 八神家に到着すると、玄関の前では三人と一匹の家族が出迎えてくれていた ただ今はやて――話をしているときにそのまま呼べといわれた――が紹介してくれている 赤髪の小さい少女はヴィータ、ピンク色の髪の女性はシグナム 青色をした狼のような犬はザフィーラ、そして金髪の女性がシャマルである 「シャマルさんから聞いているみたいだけど・・・・・俺は春日井晴樹、よろしく」 「主はやて、晴樹はどのような人物でしたか?」 「晴樹さん? 晴樹さんはなんていうか・・・・・優しい人やな」 「・・・・・・・・・・優しい、ひと?」 「そうや、シグナムも話していれば分かるかもしれんな・・・・・うん、絶対分かると思う」 にこにこと笑って車椅子を自分で動かしてくはやて そんなはやてを見つつ、晴樹はそのまま三人と一匹にお辞儀をする これが最低限での礼儀、これからここに住まわせてもらうのだから・・・・・ 「なあ、はるきとかいったよな・・・・・お前、何者だ?」 「こらヴィータちゃん・・・・・一体何を言っているの?」 「そうだぞヴィータ、あまり喧嘩ごしにならないほうがいい」 「そ、そうじゃねーよ! ただ、何となく・・・・・あーもうっ! なんか気になんだよ」 うーっ! と唸りながらこちらを見つめてくるヴィータとやら 背が小さいためか、かなり可愛く見える 撫でてみたい、そんな気持ちが芽生えてしまったのだろうか、自然と手が伸びていた 「なっ、なっ!?」 「あー・・・・・すまん、つい・・・・・な」 撫でられてヴィータはかなり不快そうな顔をしている 子ども扱いはいけなかったなと、謝りつつ晴樹は手を離す すると、ぷっとシャマルが噴出しているのが分かった 「なるほど、はやてちゃんの言うとおりでしたね」 「・・・・・シャマル、お前も分かったか?」 「はい、本当に・・・・・」 にこにこと笑うシャマルに、ふっとクールに笑っているシグナム その二人が何故笑っているのか分からない晴樹とヴィータは、いつの間にか顔を見合わせている ザフィーラははやてを追いかけてそのまま中に入ってしまっていた あれからしばらくして、晴樹たちは八神家の中に入る 中では丁度はやてが夕食の準備をしているようでトントントンと包丁の音が聞こえてくる その音を聞いて慌ててシャマルはエプロンをつけて台所に向かっていた どうやら一緒に料理を作るのが日課のようである 「でだ、ちょっと気になったんだが・・・・・なあシグナム」 「どうした晴樹、ザフィーラばかり見て」 「ザフィーラって・・・・・犬? 狼?」 晴樹が質問をした瞬間、ぶっとヴィータが噴出す どうやら二つの問いは違っているようで、かなり面倒なことになりそうだった 目の前に居るザフィーラからは哀愁が漂っているようにも思える 「そうだな・・・・・ザフィーラは犬でも狼でもない、としか言えんな」 「そうか・・・・・まあいいや・・・・・よろしく、ザフィーラ」 こちらがそういうと、こくりと頷くザフィーラ、賢いなと晴樹は関心 そして、しばらくこの八神家の仕組みなどをヴィータやシグナムに教わりつつ、配置を覚える 中庭が広いようで、何かの訓練にはもってこいだと晴樹は思った 『マスター・・・・・ちょっといいですか?』 "どうした、パラドクス" 『今気づいたのですが・・・・・ザフィーラという存在、アレは使い魔のようなものです』 "ってことは・・・・・この人たち、魔導師?" 『少々違うようですね・・・・・っとそろそろ話をきります、気づかれそうですから』 そう言ってパラドクスは一方的に会話を閉ざす 多少悩みつつ晴樹は顔を上げる、ちょうど夕食が出来上がったようだ ぼーっとテレビを見ていたヴィータを連れて、晴樹はそのまま椅子に座る 「今日は焼き鳥にしてみたんや・・・・・丁度安売りだったんよ」 「流石にあの主婦たちには圧倒されましたが・・・・・これぐらい、なんともありませんね」 「・・・・・・・・・・うぐ」 「はるき、どうしたんだ?」 「いや、その主婦に負けた俺はどうなるのかなーって・・・・・あはは」 「あ、そ、その・・・・・すみません」 「いやいや、シャマルさんが謝らなくても・・・・・あはは」 どうやら晴樹よりシャマルのほうが腕っ節は強いようで 晴樹はそんなカルチャーショックを受けつつも、焼き鳥に手を伸ばす そして一口・・・・・感動した 「・・・・・・・・・・・・・・・美味い」 「そか、ちょっと塩気多いと思ったけど・・・・・大丈夫みたいやな」 「ナイスだはやて・・・・・こんな料理、食べたこと無い」 隣に座っていたヴィータも無言で焼き鳥を食べ、ご飯を口に含んでいる そんなヴィータを見ていると、妹が出来たような気持ちになった 妹など、晴樹には存在しないのだが・・・・・ 夕食後、まだまだ知らないことが多いのでシグナムたちの事を聞く かなり喋ることが制限されていたようだったが、充実した時間だったと思う けれどぼそっとベルカの騎士という単語が出て来て、晴樹はかなり反応していた それは騎士と言われたら普通の男は黙ってはいないだろう かという晴樹も騎士とかそういう系統が大好きだったりするわけで、ついつい反応する それが面白いのか、シグナムもシャマルも、ヴィータさえも笑顔だった 「それじゃあ晴樹さんはこの客間使ってな」 「ああ・・・・・ありがたく使わせてもらうよ」 「それじゃ、おやすみ」 「おやすみ、はやて・・・・・」 はやてに挨拶をしつつ、晴樹はそのまま客間に入る 客間と言っても広いようで、八畳の和室になっていた テーブルも置いてあり、ここで暮らすには何の苦もないようにも感じた 『マスター、やっと会話が出来ます』 「だな・・・・・念話も傍受されたらいけないんだろう?」 『はい、一応は彼女たちも魔導師でしょうし・・・・・万が一のためというわけです』 「なるほど」 布団を取り出しながら晴樹はパラドクスからかなりの情報を聞いている とりあえず、八神家の人々とは仲良くなったので魔導師とばれても何もされないだろう ただ、怒られるという可能性はあるかもしれないが・・・・・ 『マスター・・・・・こちらの部屋に向かってくる気配があります、たぶん金髪の人です』 「シャマルさんか・・・・・一体何なんだろう?」 しばらく布団を直したり荷物整理をしていると、こんこんとノックがある 時刻は午後十一時、夜這いには少々早い時間である そんな意味の無いことを考えつつ、開いてますと声を掛けた 「夜分にすみません・・・・・これからコンビニに買い物にいって来るので、それを伝えにきました」 「なるほど、何か買い忘れでもあったんですか?」 「はい、ちょっと」 「そうですか・・・・・重い荷物ではないんですね?」 「え? あ、はい、軽いものですから」 「そうですか・・・・・んじゃ俺はこのまま留守番していますんで」 そう言ってにこりと晴樹は笑う・・・・・だが内心では違うことを考えていた きっとこの人たちは何かをしている・・・・・それが、知りたいと 「では、いってきますね」 「はい、行ってらっしゃい・・・・・気をつけて」 「・・・・・・・・・・はい」 ぱたんと扉を閉めてシャマルが部屋を出て行く そして数分後、少々物音がして三人と一匹が外に出る音を聞いた なぜザフィーラまで連れて行く必要があるのか、晴樹は疑問を持ちつつ部屋から出る 『マスター・・・・・尾行するならば気をつけてください、彼女たちは手馴れです』 「ああ・・・・・初心者は初心者らしく、地道に行こうか」 『はい、冷静さを欠ければ、かならず隙が出ますから』 パラドクスの意見を聞きつつ、晴樹は夕食後に貰った合鍵で玄関の鍵をかける そしてパラドクスを首にかけて、シャマルたちが向かったであろう場所に向けて走り出す 魔法を使ったら気づかれる、それをパラドクスから教えられているので晴樹はそのまま駆け出した 数分は走っただろうか、街中を彷徨っていると急に人々の姿が消える それと同時に頭に鈍い痛みが走り、それがパラドクスからの警告だということを理解する 咄嗟に路地裏に続くわき道に入り込み、辺りをうかがった 「・・・・・・・・・・パラドクス、前もこんなこと、あったよな」 『はい、これは一種の結界です・・・・・結界があるということは、この周囲一帯のどこかに魔導師が居ます』 「なるほどね・・・・・シグナムたちは何をしているのやら」 『・・・・・現在周囲一帯には十五の魔導師の存在が確認できます・・・・・起動してもよろしいかと』 「んじゃ始めようか・・・・・我が身を包むは矛盾の姿、今ここにその姿を現せ・・・・・パラドクス、起動!」 『詠唱確認、魔導杖パラドクス・・・・・起動します』 自分の周りが黒く包まれると同時に、身体は甲冑に包まれる 機動性が悪いようにも思えたこの甲冑だが、かなり軽量化されているようで動きは軽やか 防御力もあるようで、さすがバリアジャケットと呼ばれるものだと、感心する 「さてと・・・・・パラドクス」 『はい、現在通常クラスの魔導師が十四名戦闘中、中位クラスの魔導師がこちらから一番近い場所に居ます』 「・・・・・一人だけ戦闘していないのか?」 『はい、現状把握かと思われます・・・・・どうします? 行きますか?』 晴樹の目的はシグナムたちが一体何をしているのかということなのだが、ここは敵を拝むのもいいかもしれない シグナムたちが戦っているということは、それ即ち晴樹の敵ということになる まだ一日も経っていないが、シグナムたちは仲間だからな、と晴樹は一人で頷いた 『では・・・・・っ! マスター、中位クラス魔導師、こちらに来ます』 「・・・・・なるほど、気づいたというわけか・・・・・怖いな」 少々腕が震えているが、これしきのことで晴樹はへこたれない・・・・・だって仲間が居るから 助けてくれない仲間だが、居るだけで頼もしいのかもしれない そんなことを考えていると、晴樹の近くに一人の少女が降り立った・・・・・そう、あの少女が 「あなたはっ・・・・・・・・・・今日こそ・・・・・第一種捜索指定ロストロギア、回収させていただきます!」 「以前だったら簡単に渡したが・・・・・今は俺の大切な相棒だ、絶対に渡すものか」 『・・・・・マスター』 「大丈夫だ、お前は俺だけの相棒だ・・・・・絶対に、負けない!」 『はいっ!』 「よし、パラドクス・・・・・モード変更だ!」 『了解、我が主・・・・・BladeForm展開します』 ぐっと自分の魔力がパラドクスに注がれていくのが分かる そして上下についている刃は黒く発色するようになった これがBladeForm・・・・・負けはしない、と晴樹はぐっと前を見る 「くっ・・・・・レミントン、行きます!」 『OK,Let's Go』 ガシャン、という音を立ててレミントンと呼ばれたデバイスが姿を表す それは以前であったときと同じ形態の長い杖だった そして彼女は、レミントンと呼ばれたデバイスを晴樹に向けて、構えた 「私は時空管理局捜査官、リムレット・フェイドラです、そしてデバイスはレミントン」 「俺は春日井晴樹、こいつは俺の相棒のパラドクスだ・・・・・ロストロギアなんて、呼ばせないぜ」 「では・・・・・今日こそ、取り返させていただきます!」 「そうはいかない、こっちだって・・・・・必死なんだ!」 晴樹とリムレットという少女は一緒のタイミングで腰を低く落とす そして・・・・・一瞬にして二人の距離をゼロにした
簡易後書き プロローグっぽい第零話では後書きナシでなんで今回から・・・・・・・・・・っとCase1-1どうだったでしょうか? 藤祭としては、はやてちゃんの話し方がいまいち理解できていない状況で四苦八苦です。 関西弁のようで京都弁まじってるやん? って感じの喋り方ですし・・・・・難しいです。 さて、次回Case1-2はちょっとだけ戦闘です。戦闘シーンは苦手なのですが、頑張ってみます。 ではではーっ