全ての物語が終わりを告げる そしてそれは全て過去のものだった 過去の物語は、談笑とともに受け継がれ、語り継がれていく そう・・・・・これは元々一つの物語・・・・・ D.C.O.S.T〜W 〜それはきっと、語り継がれる物語〜 ALL−EP「 思いはいつまでも 」 うららかな春の日差しが差し込んでくる中、ある部屋の中は真っ暗だった カーテンは硬く閉じられ、そしてベッドの中では一人の青年が眠っている ベッドの傍らにある目覚まし時計は午前八時を示しており、かなり起きる時間としては遅かった 「あれ? まだ寝てる・・・・・しょうがないなぁ」 ドアを遠慮がちに開けたのは、ピンク色の髪の毛が美しい一人の少女 その少女は風見学園の制服を身に纏っており、白い帽子がチャームポイントだった 「おかあさーんっ・・・・・お父さんまだ寝ているけどいいのー?」 「ごめん優美子、起こしてくれるー?」 「はぁーいっ」 優美子と呼ばれた少女は、部屋の中に入り、お父さんと呼ばれた青年の前まで歩いていく そっと優美子が覗きこむと、青年は何も反応せずに、そのまますやすやと眠っている 気持ち良さそうに眠っている父親に少々罪悪感を感じつつ、優美子は助走をつけた 「せーのっ!」 「ぐほっ!?」 ぼすんっという少々重めの衝撃と共に優美子は青年の上にのしかかる いくら女子だからといっても、やはり学園に通うぐらいの女子は体重がある 40kg前後だとしても、加速しているのだから、なおさら重いのだ 「ぐっ・・・・・・・・・・ゆ、優美子・・・・・俺に、何か恨みでも・・・・・あるのか?」 「ううん、お母さんからお父さん起こせって・・・・・言われただけだよ?」 「そ、そうか・・・・・」 優美子をどかしつつ、青年は起き上がる 艶やかな黒髪を靡かせつつ、目をこすりながら、青年は口を開いた 「おはよう、優美子・・・・・今、何時だ?」 「おはようお父さん・・・・・えーっと、今は八時五分ね・・・・・って私そろそろ行かないと遅刻っ!?」 ばたばたと父の部屋を出て優美子は鞄を引っつかんで玄関に駆け出していく そんな優美子を呼び止める声がかかった 「優美子、お弁当忘れているわよー?」 「わっとっと・・・・・ありがと、お母さん」 「ううん、それじゃあ・・・・・行ってらっしゃい」 「うん、いってきまーすっ」 元気欲駆け出していく優美子に対し、母――ことり――は微笑ましく見送る そう、優美子の本名は影森優美子、そして母は旧姓白河、現在影森ことりを名乗っている 優美子が学園に出かけた後、父である青年――影森裕也――は着替えを終えてリビングに出現する そこには丁度、妻であることりがニュース番組を見てうんうんと頷いているのが分かる その光景に苦笑しつつ、裕也は隣まで歩いていった 「おはようことり・・・・・って言っても、結構遅い時間だけどな」 「うん、おはよう裕也・・・・・今日は仕事休みだっけ?」 「ああ・・・・・久しぶりの休暇をつぶされそうになったから・・・・・頑張ったさ」 「あはは、確か武彦さん、引退したんですよね・・・・・それから検挙率が下がったとか」 「まあな・・・・・でも元々ここは犯罪なんて起きないからな・・・・・平和だ」 ソファに腰を落としつつ、裕也はあくびをするようにして言う 影森裕也は初音島警察に勤めており、現在エリート階級一直線 けれどもそれを鼻にかけるわけでもなく、検挙率もかなり高い腕の立つ人間になっていた そして今日は本当ならば仕事だったが、これ以上休日をつぶしたくないということで、強制的に休みを入れた そうでもしないと、休めないのが彼の日常だったのだ 裕也の話を聞きつつ、そんな彼の妻であることりはただただ微笑んでいるだけだった 「あ、知ってます? 倉本さん・・・・・じゃなくて、さくらちゃんの息子さん、アメリカの大学に飛び級だそうです」 「へぇ・・・・・ってことは親と同じってことか、エリート一家だなぁ」 「でもさくらちゃんと結婚した人との子供は、そんなには、と思ってましたけど・・・・・やっぱり血ですかねぇ?」 「まあ本人の努力もあるけど、親を見て子は育つっていうからな」 芳乃さくらはごく普通の家庭で育った青年と結婚し、現在はアメリカに住んでいる そして生まれた子供は現在優美子と同い年なのだが、アメリカの大学に通っているとのこと かなり頭のよい少年だということが分かる 「朝倉くんたちは相変わらずでしょうし・・・・・あまり実感わきませんね」 「そうだなぁ、いつまでも学生気分ってのがあるし・・・・・まあでも、子供を持つと、実際変わるもんだな」 「そうですね・・・・・優美子ちゃん優美子ちゃんって、思考が全部優美子ちゃんよりになるし」 「それは同感、だから親ばかって言われるのかもしれないな」 「あはは・・・・・」 苦笑いで答えてくることりに対して、裕也はそっと微笑んでいる そんな二人を、うららかな日差しが・・・・・包み込んでいた 学園で授業を受けていた優美子は、現在かなり悩まされている状況にある それは目の前に書かれているプリントの一行、かなり面倒だった 「なんで、なんで今頃になって・・・・・両親の学生時代を聞いて来いだなんて・・・・・あぅ」 「あれ、どうしたんだ影森・・・・・くらぁい顔してるけど」 「あ、政木・・・・・えーっとね、これこれ」 優美子は話しかけてきた朝倉政木に対して、手に持っていたプリントを見せる それを見る政木は、なるほどといったようにうんうんと頷いていた 「これな・・・・・俺も困ってるんだよ・・・・・あぁ、めんどくせぇ」 「でも両親の学生時代って・・・・・結構気になるよねー」 「まあなぁ・・・・・あ、そうだ、杉並に聞いたらどうだ?」 「俺様を呼んだか? 朝倉よ」 「うおっ!?」 優美子と政木の間にぬっと現れたのは、あの杉並と水越眞子の息子 やはり名前は公開されていないようで、苗字の杉並とだけ皆は呼んでいる そして誰も違和感を持たないのだから・・・・・かなり謎なのだ 「ふむ・・・・・両親の過去か・・・・・詮索は野暮だが、聞いてみる価値はあるな」 「そんなに波乱万丈ってことはないよね?」 「なに、父上の大佐殿と一緒に旅に出たことはかなり貴重な価値があったぞ」 「・・・・・・・・・・あ、あえて聞かないことにするよ」 「影森、それが上策だ・・・・・あいつに語らせると・・・・・めんどうなことになりかねん」 「ふむ、残念だな・・・・・ムー大陸のことなど、よく分かったものだが・・・・・」 ぶつぶつという杉並にたいして、政木と優美子は苦笑い そしてチャイムが鳴り、授業の教師が入ってくるのであった・・・・・ 授業も滞りなく終わり、優美子は音楽室に足を向ける 音楽室にはドラムやギター、ピアノなどが置かれており、優美子はドラムの前に座る そしてスティックを持ち、音源を鳴らし、その曲に合わせてドラムをたたき始めた 影森優美子の担当はドラム、本当はヴォーカルだったが、本人が拒否 そして現在ヴォーカルは親友である佐伯涼香が担当している ギターはもう一人の親友である斎藤梓鶴が担当である 密かにこの三人は三人とも親が親友同士で同じようにバンドを結成していたという過去がある だからだろうか、三人の息はぴったりと合わさっている ただし、ヴォーカルが違っていたが・・・・・それは気にしない方向 「んー・・・・・もうちょっと力強いほうがいいかなぁ」 「なぁに言ってるのよ優美子、それぐらいで十分十分・・・・・他の男子に引けをとらない力強さだから」 「そう?」 「うんうん、優美子の音に負けないように弾かなきゃいけないから・・・・・うん、大変だよ」 あははと笑う梓鶴に対して優美子は苦笑い ヴォーカルである涼香も声を張り上げるようにして歌っているのが分かる 素人判断でも、三人の領域はかなりのものだといえるだろう 「あ、そうそう・・・・・二人の両親の学生時代って・・・・・どうだったの?」 「どうって言われても・・・・・私のお母さんの思い出ってことよりも、ことりさんの思い出が多いかも」 「え・・・・・お母さんの?」 「あ、私もーっ・・・・・だっていつもいつもお母さんから出てくる言葉ってことりさんと裕也さんのことだもん」 学園では有名だったんだよ? という梓鶴に対して、うんうんと頷く涼香 そんな二人に対し、優美子は信じられないとばかりに驚いていた 「お父さん達・・・・・一体なにしてたの?」 「詳しいことは知らないけど・・・・・結構いろいろやってたみたい」 「うん、結構波乱万丈だったみたいだよ? 面白そうにお母さんは語ってたけど」 「あぅ・・・・・・・・・・でも、ちょっと気になるかも」 「だよねー・・・・・ことりさんに聞いてみたらどうかな、分かるかも」 「あ、それいいかも・・・・・じゃあ帰ったら聞いてみるね」 うんうんと嬉しそうに頷いた優美子はさっさとドラムの調整をして片付ける それにあわせるようにして、他の二人も片づけを始める 正門の部分で二人と別れ、優美子は一人で自宅まで帰宅する 途中、クレープ屋に寄って、毎週買いに来てくれる子が買っていくバナナクレープを買っていく それを食べつつ、優美子は自宅に到着する 「ただいまぁーっ」 「おかえりー、優美子」 「ん? お、帰ってきたか・・・・・お帰り、優美子」 「ただいま、お母さん、お父さん」 出迎えてくれた母のことりと父の裕也に優美子は笑顔で言う そして靴を脱いで、三人でリビングに集合していた 「あ、そうそう・・・・・授業で課題が出たんだけど・・・・・手伝って欲しいの」 「課題? 私達の頃は結構簡単なものが多かったけど・・・・・どんなものなの?」 「えーっとね、両親の学生時代の出来事を書いて来いっていう・・・・・やつなんだけど」 「あー・・・・・・・・・・大変そうだ・・・・・なぁ、ことり?」 「ですねー・・・・・特に優美子ちゃんだと、かなぁり大変かもしれません」 意味深に言う二人に対して優美子は首を傾げるばかり そんな優美子に対して、ことりはふふふと微笑むだけ 裕也は携帯電話を取り出し、焦ったような顔をしていた 「すまんことり・・・・・急用だ」 「どうしたの?」 「新人警察官が自分の彼女が捕まったからってそいつ、逃がしたんだ」 「あちゃぁ・・・・・」 「んで、捕まえるのに初音島警察総動員ってやつだ・・・・・んじゃ、行って来るよ」 「いってらっしゃい、気をつけてね?」 「おう・・・・・優美子も課題のことはことりに教えてもらえ、もしあまり理解できないなら、俺の部屋にある本でも見ろ」 「本?」 優美子の答えを待たずに裕也はコートを羽織って駆け出していく 慌しいなぁ、と苦笑いで見送りつつ、優美子は母であることりを見た 「あ、本のほうが説明早いかも・・・・・ちょっと待っててね」 「うん・・・・・」 ことりが席を外し、三分ほど経ったとき、ことりが四冊の本を持ってくる けれども本と言ってもただの分厚いノートが四冊といったところで、これのどこが本なのだろうかと優美子は苦笑い そんな優美子に対して、ことりはノートを差し出した 「これを読めば全部分かるようになってるの・・・・・簡単だけどね」 「えーと・・・・・・・・・・桜の魔法と恋物語?」 「そっ、今までの過去での出来事が全て書かれているの・・・・・裕也が記録していたみたいだけどね」 「へぇ・・・・・あ、お父さんの中学三年のころから始まっているんだぁ・・・・・わぁ」 「ね? 分かりやすいでしょう?」 「うん・・・・・ありがと、お母さん」 「いえいえー」 ことりに本を貰いつつ、優美子は自室に向かって歩いていく そして自室に入った後、夕食が出来上がるまでずっと読み続けているのであった 夕食後も読み進め、寝る時刻になるときには全てを読み終えていた 最後のページまで読みきっていた優美子の目には涙が少々浮かんでいるのが分かる 「ぐすっ・・・・・うぅ、ちょっと・・・・・というか、かなり悲しい物語だったような・・・・・気がする」 涙をぬぐいつつ、優美子は最後のページを読み直す そこにはたった一文だけ、書かれていたのだ 「これにて物語は全て終わりを告げる、願わくば、終わり無きダカーポのような物語が紡がれないことを、切に願う・・・・・か」 父の過去や母との出会い、そしてそれを取り巻く友人達の過去の軌跡 それが全て詰め込まれているこの四冊は、とても大切なものになると、優美子は思う ぎゅっと本を抱きしめるようにして持った優美子は、ぼそりと呟いた 「私にも・・・・・・・・・・こんな、大切に出来るような恋が・・・・・出きるのかな」 こてんっとベッドに横たわり、天井を優美子は見上げる 密かにこの部屋は以前父の部屋だったらしく、改装が施されている けれども全ての仕掛けを見たわけでもなく、ただただ優美子はこの部屋で過ごしている 「んー・・・・・お父さん達って・・・・・大変だったんだなぁ」 あははと苦笑いを浮かべつつ、優美子は布団を被ろうとする けれども、それを一瞬でやめた 「ただいまーっと・・・・・・・・・・あ゛ー疲れた」 「お帰り裕也・・・・・あはは、お疲れ様」 疲れた声を出して、自分の大好きな父が帰ってきた声を聞いた 先ほどのノートを見てしまったせいでもあるが、今は父に何時も以上に優しくなれるような、そんな気がしたのだ だから、優美子は階段を下りていった 「お、優美子か・・・・・まだ起きていて大丈夫なのか?」 「うん、まだまだ平気だよー」 「あらら・・・・・優美子、ちょっと泣いてた?」 「ううん、なんでもないよー・・・・・・・・・・っと、お父さんっ」 「おっと? なんだ・・・・・今日は甘えん坊だな?」 裕也に抱きつくと、そこからは優しい父の香りがする それを笑顔で感じつつ、優美子はぎゅっと抱きつく そしてその優美子の後ろからは、ことりが抱き着いていた 「なんだなんだ? やけに今日は気前がいいなぁ」 「えへへ・・・・・お父さん、だーいすきっ」 「私は裕也のこと、ちゃんと愛してますから」 娘と妻に抱きつかれ、裕也は困惑気味 けれども、諦めたようで・・・・・そっと、二人を抱きしめた 「ああ、俺も・・・・・二人のこと、ちゃんと大好きで、愛しているからな・・・・・」こうして全ての物語が終わりを告げる 終わり無きダカーポのような物語は、これにて閉幕することになる けれども彼らの物語は永遠と続き、次の世代に語り継がれていくことになる しかしながら、彼らの苦難の先には、かならず笑顔の未来が広がっているだろう 暗き闇を打ち払い、そして全てを幸せにしていく彼らなら、きっと笑顔の未来を築くことが出来る そして、ずっとずっと・・・・・幸せに過ごすことができるだろう だからこれでこの物語はおしまい。 もう語ることはないだろう 最後に、願わくば・・・・・彼らに永遠の幸せと、そして、多大なる祝福を・・・・・ D.C.O.S.T〜W Thank you for reading!! and... H a p p y E n d ! !
〜後書き〜 さて、D.C.O.S.のALL−EP「思いはいつまでも」如何でしたでしょうか? エピローグは結婚式というよくありがちなものがありますが、一応このお話では次世代にしてみました。 裕也君とことりちゃんの子供である優美子を視点としたエピローグ、かなり面倒でしたけどね(ぇ とりあえず優美子ちゃんの設定は学園の付属二年生、一応15歳ってところでしょうか。 そして色々オリキャラ満載でしたねぇ、朝倉政木とか・・・・・すんごいオリキャラです。 さて、今回のエピローグでのテーマは過去の出来事です。 裕也が四冊ノートに纏めてあったという本には一つずつ題名が綴られています。 一冊目は、『桜の魔法と恋物語』 二冊目は『日々の理想郷』 三冊目は、『夢の再来』そして最終巻の四冊目は、『思いはいつまでも』・・・・・そう、全て第一部からの題名となっています。 いろいろなことを乗り越えて、皆幸せになっていく、そんな物語を紡ぎ出せたかと思います。 そして最終的なエピローグであるこのお話で、次世代である子供の優美子ちゃんが受け継いでいくというわけです。 思えばこのお話を書いたときは、ほんっとうに稚出な文章で、今読み直してみると改訂前はかなり雑文だった気がします。 自分の力量がほんの少しだけ上がったときに改訂作業をして、今の作品までありつけたのが、奇跡のように思えます。 現在まで打鍵できたことに、今は感動するばかりです・・・・・うんうん そして、私の成長と共に、裕也君とことりちゃんたちの成長があったと思います。 ここまで成長するとは私としては思っても居ませんでしたが・・・・・嬉しさがこみ上げてきます。 長い後書きはあまり書くことが出来ないのでそろそろこれで終わりにしたいかと。 これにてD.C.O.S.シリーズは完結します、そしてもうこの物語は続きを書かれることはありません。 けれども、きっと読者の中では優美子ちゃんを主人公にする物語が展開されているのかもしれません。 文中の最後にも書きましたが、これにて終了。 電子の中での文章から生まれた架空の人物ですが・・・・・彼らに永遠の幸せと、そして、多大なる祝福を・・・・・ では、これにて・・・・・ 2007年月日打鍵終了。