ヒトカケラの思い出と、ヒトカケラの感情 貴女には、大切にしたい何かが在ったと、私は思う だから、私は呼びかけてあげるの・・・・・ここから出ようって そうすれば・・・・・きっと、全てがうまくいくから・・・・・
D.C.O.S.W 〜思いはいつまでも〜
第九章「 宝石夢想 」
Side―裕也 最近思考があやふやになって困る、という相談を裕也は純一から受けることになる 今日は土曜日で学園が休みということもあり、朝から純一は美咲を連れ添って影森家に来ていた 恋人であることりは現在、声楽部のメンバーで遊びに行っている最中だった 遊んだ後一人で歌を歌ってくるとも言っていたので、帰りは夕方になるだろうとのこと 「で・・・・・思考があやふやになるってのは・・・・・いつごろからだ?」 「・・・・・・・・・・理乃ちゃんに、告白まがいのことをされた時から・・・・・だな」 「なるほどね・・・・・確かその時、鷺澤が駆けつけたんだっけ?」 「いえ、私はちょうどお買い物が終わったときに、純一さんを見かけたんです」 美咲曰く、純一が手を伸ばしてそのまま硬直しているところを発見していたようである それは、理乃の言葉に反応して咄嗟にとめようとしていたときの構図というような感じであろう そう裕也は考えた 「思考があやふやというと・・・・・例えば、どんな感じになる?」 「そうだな・・・・・丁度音夢のことを考えようとすると、自然と理乃ちゃんに思考がずれるんだ」 「・・・・・ほう?」 「自分でもかなりおかしいというのは分かっている・・・・・かったるいがな」 「お前みたいな純粋な魔法使いがこういうことに晒されるとかなり困惑するんだよな・・・・・まったく」 裕也はため息を吐きつつ、お茶をついで二人に渡す そして自分も一息つきつつ、口を開いた 「お前の話を聞いての結論からすると、お前は理乃に能力を使われている」 「・・・・・・・・・・理乃ちゃんに・・・・・能力を?」 「そうだ・・・・・理乃の能力、お前にも分かるよな?」 「・・・・・・・・・・確か・・・・・・・・・・拒絶、だったか?」 「拒絶? 拒絶って・・・・・あの拒絶ですか?」 能力のことを一切知らないのだから美咲が困惑するのは当たり前だろう そう考えて裕也は説明することにする 一応は、美咲もこの騒動に関わっているのだから・・・・・ 「そう、一種の超能力みたいなものと考えてくれればいい・・・・・そして理乃は全てを拒絶することが出来る」 「・・・・・・・・・・た、例えば・・・・・どんなものなんですか?」 「そうだな・・・・・交差点でトラックが突っ込んできたとしよう・・・・・そして咄嗟に嫌だと普通人間は拒絶反応を示すよな?」 「・・・・・はい、普通は避けようとか思いますけど・・・・・」 「理乃の場合避けなくてもいい・・・・・嫌だと念じて拒絶すれば、トラックが勝手に理乃から離れるようにして突っ込んでいく」 「・・・・・・・・・・え」 「病気もそうだ、風邪をひいたらそれを拒絶すれば綺麗さっぱり無くなる・・・・・簡単にな」 とても便利な能力だから、こわい能力でもある 悪用してしまえば・・・・・どんなことにでも使えてしまうから そう・・・・・今の純一のように 「結論はこうだ、純一は拒絶の力を使われて・・・・・音夢への罪悪感を消されている」 「なっ!?」 「そんな・・・・・そんなことが・・・・・」 「そして、その拒絶の力は・・・・・きっと、愛情にまで向けられるんじゃないのかな」 「裕也・・・・・・・・・・なんでそんなことまで分かる」 「簡単だ、理乃の行動を見ていれば分かるだろう? 明らかに、純一を狙っている・・・・・何か行動を起こすのも、時間の問題だ」 ため息を吐きつつ、裕也はお茶を飲み干す 冷たくなっていたので、もう一杯暖かいお茶をついで、一口飲む そんな裕也に、純一は震える声で問いかけていた 「どうにか・・・・・・・・・・できないか?」 「これは俺が解決できる問題ではない、といいたいが・・・・・無理だろうな・・・・・うん」 「・・・・・・・・・・裕也さん」 「せめて、彼女の目的が分かればいいんだが・・・・・いかんせん、隙が無い」 「は? 理乃ちゃんなら普通に話してくれるんじゃないのか? 自分のことだろう?」 「ああ、理乃"だったら"・・・・・普通に話してくれるだろうな」 「・・・・・・・・・・え?」 空になった湯飲みをくるくると回しながら話を聞いていた美咲は手を止める そして疑問を持ちながら、裕也を見た 「今一番確率の高い答えは・・・・・今の理乃には、もう一人の理乃がいる・・・・・これが答えだ」 Side―裕也End Side―アリス アリスは久しぶりに鶴ノ瀬家に足を運んでいた 本当ならば瀬馬に車を出してもらい、そうしていくのが普通だったが、今回は違っていた 一人で、行ってみたかったのだ 「ごめんね・・・・・理乃、最近遊びに出かけること・・・・・多くなったから」 「いえ、構いません・・・・・私が話したかったのは、お姉さんのほうですから」 「・・・・・・・・・・え?」 アリスの目的はただ一つ、姉である雅は一体今回のことをどう思っているのかということ 数日前、自分は何らかの違和感を持っていたが、それが理乃と触れ合っていると消えてしまうというのが分かった それでは何かが危険である、そう察知した自分の勘を頼りに、ここまでの距離を歩いてきたのだ 「一つだけ聞きたいんです・・・・・理乃・・・・・ここのところ、何かおかしくありませんか?」 「・・・・・・・・・・え」 「私からすると・・・・・全く持って別人です、普段の生活から何から・・・・・理乃のマネをしているようなそんな、感じがするんです」 「そう・・・・・なんだ・・・・・・・・・・アリスちゃんも・・・・・そう、感じているんだ?」 「私"も"ということは・・・・・雅さんも?」 「うん・・・・・・・・・・最近おかしいの・・・・・あんなに男の人が嫌いだったのに・・・・・平気で話せるようになったし」 「ええ」 「それにね・・・・・言動がかなり違っているの・・・・・すごく、明るくなって・・・・・だから、不安なの」 今の理乃の決定的な違いは話し方にもある 今までの理乃はかなりおどおどしたような話し方が特徴だった けれども今の理乃はどうだろうか、積極的に話しかけ、そして頻繁に笑っているのだ 「そう言えばアリスちゃん・・・・・別人のような感じって言ってたけど、それ・・・・・どうして?」 「授業中ですが・・・・・いつも理乃はどんな問題でも失敗をしませんでした」 「・・・・・・・・・・そう、みたいだね」 「けれども今の理乃はおかしいです、以前解けた問題でも間違えたり、分かっていても時間がかかったり・・・・・」 「・・・・・・・・・・」 「まるで一夜漬けをした人みたいなんです・・・・・必死に記憶から掘り起こそうとしている、そんな感じなんです」 「・・・・・そっか・・・・・やっぱり、理乃はおかしいのかな」 心配そうに呟く雅に対して、アリスは不謹慎だが少々笑う こんなにも心配してくれる人が居て、本当に理乃は幸せ物なのだろうと そして、心配する人の中に自分も居ることを忘れないで欲しいとも思ってしまう 「相談って・・・・・したんですか?」 「うん、裕也さんとことりにね・・・・・今裕也さんが色々と調べているみたい・・・・・」 「そうですか・・・・・・・・・・それなら、安心です」 「・・・・・え?」 「だって、美春が言うぐらいですから・・・・・影森先輩にかかれば、どんなこともすぐ解決って・・・・・」 「そっか、そうだよね・・・・・うん・・・・・・・・・・ありがと、アリスちゃん」 「・・・・・・・・・・いえ」 一礼してアリスはそのまま鶴ノ瀬家を後にする かなり長い間喋っていたようで、結構日が暮れているのが分かる そして・・・・・家を出て数分後、公園の中で出会ってしまった 「・・・・・・・・・・・・・・・あ・・・・・・・・・・り・・・・・の?」 「え・・・・・あり、す?」 見つけてしまったのは理乃ではあるが、理乃ではない人物 理乃のようで、理乃ではない、理乃の形をしているが理乃ではない まるで仮面を被っているようで・・・・・本物のような、そんな人物 「・・・・・・・・・・理乃・・・・・じゃない・・・・・・・・・・貴女・・・・・・・・・・誰?」 「っ!?」 一瞬仮面の表情が動いたような、そんな気がする その表情の変化を見逃さないようにして・・・・・アリスはじっと見つめ返した Side―アリスEnd Side―リノ 今日は不発だった・・・・・狙っていた人間が家に居なかったのだ リノは商店街を歩きつつ、少々つまらなそうに辺りを散策していた 「あーあ・・・・・暇だなぁ」 本当ならば純一を誘ってまたデートとしゃれ込み、能力を使って少しずつ愛情を消し去りたかった けれども今日に限って朝倉家には誰もおらず、携帯電話に電話しても留守電になっており、繋がらない しょうがなく諦めて、現在商店街に居るというわけだった 「そう言えば、一人で出かけるのって・・・・・かなり久しぶりだったわね」 何時もはアリスや美春とわいわい騒ぎながら商店街を歩いている そして、その二人が居ないときは純一を誘って一緒に遊んでいるというのが日常だった けれども今はその二つの可能性が無くて、自分ひとりだけで過ごしていた 「ふぅん? こんなお店もあるんだ・・・・・・・・・・ちょっと新鮮ね、一人で歩くのも」 一人で出歩く楽しみも感じつつ、リノはぶらぶらと商店街を歩いていく そして出口に差し掛かり、ふと何かの声を聞いたような気がした 「ん? ・・・・・なんだろう」 ふらふらーっとその声に導かれるようにして歩いていくと、そこは通学路にある公園 そして公園の中に入り、かすかに聞こえる声に耳を済ませつつ歩いていく だんだんと公園の奥に足を運び・・・・・人が来ないだろうというぐらいのところまで来ると、急に視界が開けた 「うわぁ・・・・・・・・・・大きな桜の木」 目の前に広がっているのは、少しだけ桜が咲いた巨大な老木 そして、その老木に寄りかかるようにして・・・・・一人の女性が立っていた 「あ・・・・・・・・・・・・・・・ことりさん」 「あれれ、理乃ちゃん? 珍しいね・・・・・こんなところで」 「あはは、歌声に惹かれて商店街から来ましたー」 「・・・・・・・・・・冗談っすよね? そこまで大声は出していませんし」 正直言うと、本当は気の向くまま歩いていたら声が聞こえてきただけ 商店街から聞こえてきたのはちょっとした頭痛に近い声だったため、不愉快になってその声をたどってきた けれども途中からそれは歌声にかわって、ことりの声ということを理解できたのだ 「綺麗な歌声ですね・・・・・・・・・・聞き惚れちゃいました」 「ありがとう・・・・・この歌、好きなんです」 ふふふと笑いながらことりはもう一回歌い、理乃はそれを聞きながら桜の木に寄りかかる そして歌が終わる頃には、もう日が暮れるぐらいの時間になっていた 「あはは、歌いすぎちゃいました・・・・・それじゃあ理乃ちゃん、気をつけて帰ってくださいね?」 「はいーっ・・・・・あははっ」 ことりと別れてリノは一人で公園を歩く やっと獣道っぽい場所から公園に出ることが出来たリノはほっと一息 そして、前から歩いてくる人物を見て・・・・・絶句した 「・・・・・・・・・・・・・・・あ・・・・・・・・・・り・・・・・の?」 「え・・・・・あり、す?」 歩いてきたのはかなり危険視している人物である、月城アリス そしてそのアリスの目はかなり不振な目つきをしている きゅっと目を細め、鋭い眼差しになったアリスは、呟いていた 「・・・・・・・・・・理乃・・・・・じゃない・・・・・・・・・・貴女・・・・・・・・・・誰?」 「っ!?」 自分の恐れていたことが起こってしまった 必死に隠してきた仮面は、アリスの目の前では意味を成さないことを悟る あとは・・・・・力を使って、目の前の存在をどうやって排除しなければいけないのかを、考えなければいけない 「・・・・・・・・・・・・・・・」 冷や汗を書きつつも、自然とにやりと笑みが浮かんできてしまうリノ そんな自分に楽しさを感じつつ・・・・・リノは笑った 「そうね・・・・・私は・・・・・誰でしょう?」 「・・・・・・・・・・・・・・・っ」 「理乃であり、理乃ではない・・・・・でもリノは理乃で・・・・・理乃はリノなの」 「言っていることがっ・・・・・」 「分からないでしょう? だって貴女はリノじゃないし、理乃でもないから・・・・・分からなくて当然♪」 「っ・・・・・・・・・・」 じっと見つめてくるアリスに対して、リノは笑う そう、にやりと・・・・・嗤う 「自己紹介でもしましょうか? 私は鶴ノ瀬リノ・・・・・そう、もう一人のリノ」 「・・・・・もう・・・・・一人の・・・・・・・・・・」 「こんなに早くばれるとは思っても居なかったけど・・・・・まあいいわ・・・・・今日はこれぐらいにしましょう」 「え?」 「ほら、そろそろ暗くなっちゃう・・・・・暗いところでのお話は、嫌いなの」 そういってリノはアリスの横を通るようにして移動する そして・・・・・ 「また明日・・・・・・・・・・お話・・・・・楽しみよ、ふふふ」 「うっ・・・・・・・・・・あぁ・・・・・・・・・・あぅ」 震えるアリスを尻目に・・・・・嗤いながら公園を後にするのであった・・・・・ Side―リノEnd
〜後書き〜 さて、D.C.O.S.Wの第九章「宝石夢想」如何でしたでしょうか? 裕也君の本領発揮といったようなお話で、何故かことりちゃんが蚊帳の外。 そして自分の異変に気づきつつ相談する純一と、それを心配そうに見つめる美咲さん。 ってか物語の必要上、美咲さんには真実を知ってもらわなければいけなくて、結構悩みました。 一応頼子のお話がこのD.C.O.S.ではありませんから、必然的に魔法関係のこと、彼女知らないんですよね。 ですから、知ってもらおうとのことで、今回影森家に出向いてもらいました。 だんだん物語が加速していくのが分かるかと・・・・・そして今回、アリスと雅の初ツーショット。 妹のがらりと変わった性格にびびる姉と、親友がおかしくなってしまったという不安を抱える二人。 けれどもその二人に希望を与えたのは、またしても裕也君という大きな存在だったりするわけで。 やはり彼は主人公という役柄を果たしてくれているのかと・・・・・うーん、作者も驚きの活躍です。 そして裏理乃ことリノは物事の楽しさを学びつつ、一人で行動してみた寂しさも少々語っていたりします。 まあ、最後の最後でアリスと鉢合わせしてしまったわけですが・・・・・ ってか怖いな最後のリノ・・・・・けれども少々自分の弱いところを隠している発言もあったりします。 一応彼女、暗闇は苦手なのですよ・・・・・だから、暗くなってからのおしゃべりは・・・・・嫌いなのです。 さて、次回からだんだんだんっと物語が加速します・・・・・いまここで加速をkskと打鍵しようとしたことは秘密です(ぇ では、待て、次回っ!


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