暗かったあそこから鳥は羽ばたいた 幸せを詰め込んで、美しく羽ばたいた それはとても悲しげで、とても幸せで そして・・・・・幸せを運んでいく
D.C.O.S.W 〜思いはいつまでも〜
EP「 日々日常 」
全てが終わり、また新たな日常が始まりつつあった 何もかもが元通り、とはいかないが、理乃の周りには何時も以上に笑顔が溢れている それはあの子が願ったことでもあり、彼女自身も願ったこと・・・・・本当に、心から願ったものだった 「理乃ーっ、そろそろ出ないと遅刻するよーっ!」 「・・・・・まって、お姉ちゃんっ!」 靴を履きながら、理乃は姉である雅の背中を追って走り出す 途中で躓いて転びそうになったが、すぐ近くに居た雅が、そっと理乃を支えた 「あはは、そんなに急がなくても・・・・・私は行かないよ?」 「うー・・・・・・・・・・いじわる」 「いじわるで結構っ、あはは♪」 笑って雅は理乃の手をとって一緒に走っていく 時間は遅刻ギリギリ、理乃も血相を変えて走り出す けれども、二人はいつの間にか笑顔になっていた 教室に入ると、にこにこと笑って抱きついてくる一陣の風 否、自分の大切な親友が、理乃に抱きついていた 「おはようございまーすっ!」 「・・・・・うん・・・・・おはよ、美春」 「おはよう、理乃・・・・・今日はちょっとギリギリ?」 「あはは・・・・・・・・・・うん、ちょっとね・・・・・っとおはよう、アリス」 自分のとても大切な親友、天枷美春と、月城アリス 元々大切な親友だったが・・・・・今ではとても大切な親友になっていた 「理乃ちゃん理乃ちゃんっ、風歌堂で春の果物祭りがあるんですよーっ!」 「・・・・・へぇ・・・・・ってことは・・・・・放課後に?」 「その通り・・・・・さすが理乃、わかってる」 「それじゃあ・・・・・・・・・・私と、アリスと、美春・・・・・三人ってことだね」 「はいーっ・・・・・楽しみですーっ!」 ぱたぱたと子犬が尻尾を振っているようにも見えてしまう美春 そんな美春を見て、理乃とアリスは顔を見合わせて笑った うららかな春の日差しを受けながら、ぐっすりと机の上で眠る青年 それを隣の席で微笑ましそうに眺めている少女は、そっと青年を揺り起こす 「ゆうやくーん、そろそろ起きないと、危険ですよ?」 「んぁ・・・・・もう、時間か?」 「はい、そろそろHRです」 にっこりと微笑んだ恋人のことりに起こされて、裕也は起き上がる ぱきぱきと背骨の音が聞こえたが、ここは無視する方向だった 「なぁんか最近・・・・・ちょっと裕也君、怠けてません?」 「そうだな・・・・・走りすぎて、休憩しているんだよ・・・・・うん」 「あはは・・・・・そうですね、突っ走ってましたからね・・・・・真っ直ぐ、ずっと」 裕也に抱きつきつつ、ことりは微笑む そんなことりに微笑みかけながら、裕也は口を開く 「放課後、どこか寄ってくか?」 「んーっ・・・・・今日は、裕也君のおうちで十分です」 「そうか・・・・・決まりだな」 「はいっ」 職員室でお茶を飲みながら、さくらはこっくりこっくりと船を漕ぐ そんな光景を微笑ましそうに他の教員は見ながら、過ぎ去っていく かくりと首が落ちそうになり、目を覚ましたさくらは、頬を真っ赤に染め上げた 「あちゃぁ・・・・・また眠っちゃいそうだったよ・・・・・春の陽気は、暖かすぎだよねー、うたまる?」 「にゃぁ」 「うんうん・・・・・こんなに暖かいと、授業をお昼寝にしたい気分だよ・・・・・もう」 「なぁに言ってんださくら・・・・・そんなことしたらダメだろうが」 「あれれ、お兄ちゃん? なんでこんなところに?」 さくらの前に立っていたのは、面倒くさそうにしている純一の姿 片手には鞄がもたれているのが分かる 「遅刻したんだよ、ち・こ・く・・・・・んで、遅刻カード取りに来たんだ」 「ありゃりゃ・・・・・美咲ちゃんはどうしたのかな?」 「鷺澤も遅刻・・・・・二人揃って寝すぎたんだ、目覚まし掛け忘れでな・・・・・はぁ、かったりぃ」 どうやら純一は美咲の分まで遅刻カードを取りにきていたようで、さくらは苦笑い 気が緩んでいたのは、自分だけではなかったようだった 「はいどーぞっ、今度は遅刻しないよーに!」 「へいへい・・・・・んじゃ、またな・・・・・さくらせんせっ」 「はーいっ、授業にはちゃんと出るんだぞ、あさくら君っ!」 いつも通りに授業が終わり、思い思いの余暇を過ごしていく 理乃たち仲良し三人組も皆と同じようで、三人で風歌堂まで足を運んでいた 考えてみれば、何度この風歌堂に足を踏み入れていたのだろうかとも、理乃たちは考えていた 「そう言えば知ってます? ここの抹茶ミルクが一番の売れ筋みたいです」 「そうなんだぁ・・・・・・・・・・それじゃあ・・・・・私は、それで」 「理乃がそれなら・・・・・私はこのプリン、かな」 「美春はバナナでらっくすをお願いしますーっ」 三人で思い思いの注文をした後、雑談開始 内容はいつも通りで、とても楽しい話題ばかり 暗い話など、一度も出なかった 「へぇ・・・・・アリスのお弁当って、瀬馬さんが作っているんだ?」 「うん・・・・・シェフ顔負けの料理の腕って本人が言ってた」 「すごいですねーっ・・・・・ってことは、前お夕飯をご馳走になったときも、アレを瀬馬さんが!?」 「うん、その通り・・・・・すごいよね」 あははと三人で取りとめもない会話をしつつ、笑顔で笑う こんな何気ない時間が、今の三人にとってはとてもかけがえのないものになっている それは誰もが言わなくても・・・・・分かることだった 風歌堂を出て、時間が許す限り三人ははしゃいで遊びまわっていた ファンシーショップを覗いて、バナナ型のぬいぐるみを見て美春が叫んでいたり 店員に苦笑いで見られつつ、理乃たちは縮こまっていたり 古ぼけた人形店に入って、アリスがフランス人形を見つけて目を輝かせたり 人形店の店主がアリスを人の等身大サイズの人形だと勘違いして仰天していたり 主人に人形みたいで可愛らしいと言われ、アリスが顔を真っ赤にしていたり 三人にとっても、誰にでも何気ない、ただただ遊んでいるだけの時間 けれども、そんな時間もあっという間に過ぎ去ってしまう 一日という時間は・・・・・とても、短いのだ 三人は誰から言うまでもなく、黙々と歩き続け、ある場所にまで移動する そこは、夕暮れ時には誰も居なくなってしまう桜公園 そこに、三人は立っていた 「ここで・・・・・・・・・・色々と、あったね」 「はい・・・・・理乃ちゃん、泣いてましたね・・・・・ここで」 「私はここで、理乃に脅されたけどね・・・・・あはは」 今まで起きていた不思議な出来ごと、それを感じながら三人は今までのことを話す あの時自分はどう思っていたのか、どんな気持ちで向き合っていたのかと ずっと話していた 「ねえ理乃・・・・・」 「・・・・・・・・・・なに、アリス」 「理乃は・・・・・暗い心の中で・・・・・何を見ていたの?」 アリスは今までずっと聞きたかったことを、ここで聞くことにする いつもは何事も楽観的な美春も、アリスの言葉を真剣に聞いている そんな二人を見つつ、理乃は口を開いた 「・・・・・・・・・・夢・・・・・かな」 「夢? 夢って・・・・・美春たちがよく見る、あの夢ですか?」 「そう・・・・・あの子の夢を・・・・・ずっと見てたの」 「・・・・・・・・・・そう、なんだ?」 少々言葉に詰まるアリスを見ながら理乃はにこりと笑う 大丈夫だよと、そんな風に言っているようにも思えた 「あの子が生まれたときからの記憶を、ずっと見ていた・・・・・力として生まれたその日からを」 「・・・・・・・・・・・・・・・」 「何かが入ってきても、全て黒が塗りつぶして・・・・・何も入ってこない」 「・・・・・・・・・・」 「手を伸ばしても暗闇、声を上げても誰も答えてくれない・・・・・だから、光が羨ましかった」 だんだんと辺りが暗くなってくるうちに、風も冷たくなってきた ちょっとだけ震えている理乃に安心させるように、アリスは右手を握る それにつられるようにして、美春も理乃の左手を握った 「でも、彼女にも幸せはあったの・・・・・自分を使ってみんなの隣に居ればいいっていう幸せが」 「・・・・・・・・・・」 「だから、私は決めたの・・・・・あの子と一緒に、ずっと生きていくって・・・・・そうすれば、あの子の隣に居ることができるから」 「・・・・・・・・・・そう、だね」 「私が幸せになれれば、あの子も幸せになれる・・・・・だから・・・・・私、幸せになろうって思ってる」 ふふふと笑って理乃は左手の美春、右手のアリスを見る 二人も、理乃を見て、笑った 「あ、そうだっ・・・・・今日さ、お姉ちゃんが料理作りすぎたって言ってたんだけど」 「大丈夫ですよ、瀬馬さんには言ってありますから」 「美春も大丈夫です、お母さんも大丈夫って言ってましたから」 「そっか・・・・・・・・・・じゃあ・・・・・三人で帰ろ?」 三人で手を繋ぎながら、桜並木を歩いていく 辺りはすっかり暗くなってしまったが、そんなのは三人には関係のないことだった 繋いだ手のぬくもりがある限り、自分達は決して寂しいとは思わない だから、この手を離さないように、ずっとずっと、握っていようと考える たとえこの手が離れても、きっと心の中では握っている それが親友、友達という関係・・・・・大好きで、大切な人との関係だから そのようなことを考えながら、三人は談笑しながら歩いていく その顔はとても可愛らしく、元気な笑顔 もう、暗い顔など・・・・・彼女達には、似合わないのである 「ねえ、理乃」 「なに・・・・・アリス」 「ちょっと聞きたいことがあるんだけど・・・・・」 手を繋ぎながら、アリスはぽつりと、理乃に言う そんなアリスに対して、美春も口を開いていた 「あっ、美春も聞きたいことがありますっ! でも一緒かもしれませんねー」 「そうかも・・・・・それじゃあ・・・・・一緒に言ってみる?」 「はいっ」 あははと笑うアリスと美春 笑っている二人に、一体何が聞きたいのだろうかと困惑する理乃 困惑している理乃に、アリスと美春は一緒に言葉を紡いだ 「「いま・・・・・幸せ?」」 二人の口から出た言葉は同じもの それに驚きつつ、聞こえた言葉にも驚く理乃 そして・・・・・今までで一番綺麗な笑顔で、言い切った 「うん・・・・・とってもとっても・・・・・私は、幸せ!」
にっこりと笑った理乃に、二人は答えるようにしてこくりと頷く 三人はそのまま手を繋いだまま、家路についていく もう、三人からは悲しみは聞こえてこない・・・・・そう、聞こえてくるはずがない だって大切な人が、今、幸せなのだから 大切な人が幸せならば、彼女達も幸せになれる だから・・・・・これで、物語は終わりを告げる 満開に咲き誇っていた桜は、夜の光にライトアップされ、美しく輝いている そして、その中の一輪の花びらが・・・・・光、輝いた D.C.O.S.W 〜思いはいつまでも〜 『 F i n 』

〜後書き〜 さて、D.C.O.S.WのEP「日々日常」如何でしたでしょうか? これにて完結、と言いたいところですが・・・・・密かにまだ後一話だけ残っていたりします。 完結と言っても、D.C.O.S.Wが完結したわけであって・・・・・全てが完結したわけではありません。 と、いう訳で・・・・・あと一話、T〜Wの総合みたいな感じでエピローグが残っています。 とりあえず、今までのお話を振り返る・・・・・ことはしませんが、とりあえず後一話だけお付き合いください。 まあ見ても見なくても変わりませんが、ちょっと驚くかもしれませんねー(ぇ 今回のエピローグを見てみると、理乃ちゃんってこういう喋り方してたんだ、と思い出す人もいるでしょう。 私も打鍵していて思いましたから・・・・・うん、リノとは全然喋り方が違う。 触れられては居ませんが、リノはずっと理乃の心の中で生き続けています、ただ出てこれないだけです。 理乃の幸せがリノの幸せというように、理乃が幸せになれば、彼女も必然的に幸せになれる。 ならば、理乃が頑張って彼女の分まで幸せになろうと頑張れば、その分彼女も幸せになれるということです。 綺麗事かもしれませんが、私としてはそういう考えも、ありかと思っていたり。 人は皆、苦難を乗り越えてこそ、真の幸せを手に入れることが出来る・・・・・なんてことはいいませんて。 けれども、この物語に出てくる人々は、皆苦難を乗り越えているのかもしれません。 そして、みんな幸せになってハッピーエンド・・・・・うん、ハッピーエンドが一番だね! っという訳で、真のハッピーエンドを迎えるために・・・・・後一話、お付き合いくださるよう、お願い致します。 ではっ!


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