天高く雲は流れる その雲は白く輝き、永遠の美しさを思わせている そんな中、その少し下には水色が覗いている 澄み切った青い空、そんな色に負けないように 少しだけ覗かせている淡い水色 それは俺の目を惹き、そして魅了する けれど俺は目を逸らす その水色を見る視覚があるのは、あの人たちだけ 日のあたる場所に居る人だけが、それを見ることが出来る 日の当らない場所に居る俺には、そんな資格は・・・・・ない
D.C.O.S.U 〜日々の理想郷〜
最終章「永遠と日のあたる場所」
珍しく目が覚めたと思ったら、俺は床で倒れていた たぶん今までのツケがきたのだろうと思った 神威正蔵逮捕から既に一週間が経過していた 正蔵本人は容疑を認め、近々裁かれる予定になっている そこまでは良かったのだが、一つだけ問題が起きてしまった 神威正蔵は表でも裏でもかなりの権力を持っていたので、その権力争いが起きた そしてその権力争いに勝ち残ったのが、神威 そう、神威泉・・・・・汚れた神威を復活させる、人のためになる神威になると、夢を持った 強制されたからではない、教育されたからではない 自分のやりたいことをする、今の泉はそれを実行したまでだった 雪絵「っあれ誰・・・・・あっとゆーさんでした、そろそろ面会の時間です」 裕也「・・・・・・・・・・ああ、行ってくるよ」 雪絵「はい〜」 神谷が言った"面会"とは、俺が神威正蔵と話をするということである まああれだ、事情聴取の延長戦と言ったようなものだ しかし一瞬見えた神谷の困惑した顔 あれが・・・・・始まったのか おっと・・・・・考えても仕方がない、一度は話しておかないといけないからな、あいつとは そんなことを考えつつ、俺は部屋に入る・・・・・そしてそこには驚きの顔をしていた正蔵の姿があった 俺が現れると同時に中に居た誠二郎は扉を開けて俺と入れ替わる 俺はそのまま中に入り、正蔵の正面にある椅子に座った 机を挟んでの距離1mと少し ここまで近くに来た事は、せいぜい赤ん坊の頃ぐらいだろう 裕也「さて・・・・・何年ぶりかな?」 正蔵「・・・・・ざっと、12、3年というぐらいか」 裕也「12年か・・・・・その間にすっかり俺は影森家の一員になっていた」 正蔵「影森か・・・・・それがお前の本当の姿」 そういった正蔵に俺は首を振る 本当の姿は影森では、ない 裕也「違うね、どこまで行っても・・・・・俺はずっと神威だ」 正蔵「だが・・・・・」 裕也「血のつながりがある、それだけで俺は神威・・・・・死んでも、俺は神威だ」 正蔵「・・・・・・・・・・」 じっと正蔵の顔を見る 逮捕したときよりも若干痩せたように見えるが、まだ生気は保っていた まだまだ長生きしそうだな、このおっさんは そんなことを考えながら、俺は言葉を放つ 裕也「知ってるか? 泉が権力を取り戻したこと」 正蔵「っ・・・・・私の、せいだ・・・・・私が、強制したか「違う」・・・・・え」 裕也「泉はこう言った、汚れてしまった神威を復活させる・・・・・人のために役立つ神威になるのだと」 俺は立ち上がる、そして正蔵を見てまた一言 そう、これが言いたかったのだ・・・・・俺は 裕也「過去に捕らわれるな、洗いざらい罪を流したのなら・・・・・泉を助けてやれ、バカ正蔵」 正蔵「なっ!?」 裕也「生憎俺は日の当たる場所には居ないんでね、それに・・・・・」 正蔵「・・・・・それに?」 裕也「・・・・・俺はまだ、過去に捕らわれているから」 最後に正蔵を見て、俺は部屋の扉を開ける その後ろから正蔵の声が聞こえてきた 正蔵「今更だが・・・・・一言いいたい、すまぬ・・・・・と」 裕也「気にするな、昔は昔・・・・・今は今、だ」 そう言って俺は部屋から出て行った 扉から出るときに誠二郎が神妙な顔つきで俺を見ていたのは、あえて気にしなかった 声をかけたら自分がだめになりそうだから あれが本当だったら・・・・・俺は「消える」から 面会も終り、俺は私室に戻る そこではいつも通り神谷が鞄を持って待機していた 雪絵「面会、終わりました?」 裕也「ああバッチリだ」 俺は神谷から鞄を受け取り、部屋の鍵を渡す いつもと同じ行為・・・・・これも慣れか 雪絵「では、いってらっしゃいませ〜」 裕也「ああ・・・・・行ってくる」 これもいつもと同じ・・・・・そう、これからも変わらないだろう同じこと それが何故か・・・・・今は心を締め付けていた 胸の痛みを忘れるように歩き、俺はいつの間にか学園の近くまで歩いていた 本当に・・・・・習慣は恐ろしいな そんなことを考えていると、後ろから話し声が聞こえてくる 振り向くと、そこには笑顔で話していることりと泉、浩平と長森さんが居た ことり「・・・・・それでね――あれ、誰・・・・・・・・・・あっと、裕也君だ」 瑞佳「本当だ、えとえと・・・・・・・・・・久しぶり、裕也君」 浩平「だな、心配させんじゃねーっての」 俺の肩を叩いてくる浩平と、笑顔の長森さん そして、心配そうに俺を見ることりと泉 だがそれ以上に気になったのがことりと長森さんの反応 浩平は何も気にしていないが・・・・・やはりあれが関係していそうだ 泉「兄様・・・・・なにか、あったのですか?」 ことり「裕也君・・・・・ちょっと様子変だよ?」 泉とことりから同じような指摘を受ける まったく・・・・・鋭いな、この二人は 裕也「なんでもないさ・・・・・ただ」 浩平「ただ?」 裕也「まだ俺の心は、過去に捕らわれっぱなしだなぁーって・・・・・思っただけだよ」 そう言って俺は驚きで移動を止めた四人を置いて歩いてく ・・・・・まだ俺は、あそこに入る資格はない 俺はまだ、日の当らない場所に居るから みんなの笑顔が、本心が・・・・・眩しすぎるから いつも通りのHR、そしていつも通りの授業を受ける 隣に座っていることりは終始俺を気にしていた 心配そうな顔ばかりしていたので教師から保健室に行くか?とも言われていた まあその時は流石にことりも否定していたけどな 浩平「なあ裕也」 裕也「ん?」 浩平「ちょっと放課後、付き合えや」 裕也「んー、告白以外なら付き合ってやるんだが?」 俺はふざけたように言う、だが俺の目は真剣だ 対する浩平の目も真剣だ まあ・・・・・これであらぬ誤解を受けそうになるが、まあ代償と思っておこう そう思っていると、浩平の口から言葉が紡がれる 浩平「ちぃとばかし・・・・・昔話、だな」 裕也「・・・・・了解」 昔話、たぶん浩平と俺のことに関係していることだ しょうがない・・・・・誠二郎には後で謝っておこう そんなことを考えつつ、俺はふとある人物のことを思い出す そう、ずっと俺を遠くから静観している人物・・・・・影森美津恵さんのことを 裕也「・・・・・・・・・・んで、何か用で?」 美津恵「いや、だって美津恵ちんの出番が無かったからさぁ・・・・・うぅ」 かなり久しぶりに美津恵さんの声を聞いた気がする ってか・・・・・つい最近まで存在忘れていたし 美津恵「いいもんいいもん、署に乗り込んで一緒に寝てやるんだからっ」 ことり「そんなこと私が許しませんっ!」 美津恵「うえっ・・・・・恋する乙女は、強いよぉ〜」 よよよと崩れ落ちる美津恵さん・・・・・ってかシリアスぶち壊しだな美津恵さん まあ・・・・・この人は真っ向からぶつかっていく人だからな、大丈夫だろう 俺みたいな暗い人ではない・・・・・そう、逆だ 俺が闇なら美津恵さんは光・・・・・もしくは太陽だ 美津恵「こら、ネガティブ思考はご法度だよ?」 裕也「・・・・・」 美津恵「まったくこの子はーもうっ」 パシっと頭を叩かれる、痛くはないがな ・・・・・まあ分かっているんだけどさ、優しさっていう刃物のことが ことり「裕也君・・・・・まだ、戻ってきてくれないの?」 美津恵「そうよー、こんな美少女がお願いしているのに・・・・・それでもダメなんだ?」 二人から言い寄られる俺、しょうがないといえば・・・・・しょうがない これは俺が招いてしまった悲劇、そして・・・・・悲しい物語だから 裕也「しょうがないんだ・・・・・闇に生きる俺にとって、みんなの笑顔は・・・・・眩しすぎるから」 瑞佳「・・・・・裕也君」 裕也「以前の俺を知っている長森さんや浩平、美津恵さんなら・・・・・分かるでしょう?」 浩平「・・・・・まあ、な」 そう、俺はもともと闇に生きる存在だった けれど初音島という存在が少なからず俺を変えてくれた・・・・・でも、それは一時的 魔法が解けたのだと思えばいい・・・・・ただそれだけ 夢から覚めれば、また普段と変わらない・・・・・半年前と変わらないだけなのだ あっという間に放課後になる 浩平の下へ行く前に俺は3年の教室に足を運ぶ 用件は簡単だ、宗谷先輩に会うためだ ・・・・・用件はあれだ、シフト表 宗谷「よう、影森・・・・・だよな? どうした?」 裕也「はいよ、シフト表」 宗谷「サンキュ・・・・・いつも悪いな」 そういいながら先輩は懐にシフト表を仕舞う そして俺を見据えた 宗谷「・・・・・・・・・・」 裕也「・・・・・ん?」 宗谷「そこを動くなよ?」 裕也「何を・・・・・っ!?」 動くなといわれた瞬間、背中に何かがぶつかる感触を覚える 振り向くと、そこには涙目の美帆が俺に抱きついていた 裕也「・・・・・・・・・・美帆」 美帆「お兄さんじゃない・・・・・お兄さんは、もっと優しい雰囲気を持ってるから」 裕也「・・・・・・・・・・・・・・・だな、今の俺は美帆の兄さんではないのかもしれない」 美帆「っ!」 ぎゅっと抱きしめてくる力が増す それに比例するかのように、宗谷先輩の顔から笑顔が消える どうやら美帆の異変には鈍感な先輩でも気が付いているのだろう そして俺のほうを、じっと見る 美帆「・・・・・帰って、来るよね?」 宗谷「美帆の言葉・・・・・お前はどう受け取る?」 裕也「・・・・・・・・・・たぶん、俺の居場所はここにしかないから、帰るさ」 美帆「・・・・・今のは、お兄さんだった」 宗谷「まったく・・・・・早く帰ってこいよ、お前の空白は辛いんだ」 本当にお人好しだなと俺は思う そしてそんな二人と別れ、俺は屋上に向かった 浩平「遅いじゃねーか」 裕也「お人好しに捕まっててね、本当に・・・・・いい親友を持ったよ、俺は」 浩平「それだけ言えれば、まだいいか」 そう言って浩平は以前の俺のようにフェンスに寄りかかる そして、重い口を開いた 浩平「俺には、妹が居たんだ・・・・・死んでしまったけどな」 裕也「・・・・・・・・・・そう、か」 浩平は一つ一つ思い出すようにして過去を話す 元々からだが弱かった折原みさお、それが浩平の妹だった 両親を失ってから家族は二人だけ、叔母である折原由起子さんに引き取られても二人だった だって、血の繋がっているのは・・・・・二人だけだから だから浩平はいい兄で居ようと思っていた、だがそれも敵わなかった 元々からだが弱かったみさおは、死んでしまった そう、入院していた時からずっと言われてきたこと・・・・・それが現実になった そして浩平は永遠を望んでしまった・・・・・妹が生きている、永遠の世界を 自分を思っていてくれる人が居るのに、それを忘れ・・・・・永遠に けれど戻ってきた、一年という歳月を過ごし・・・・・戻ってきたのだ そして悟った、永遠なんて・・・・・ない いや、あってはならないものなんだって・・・・・悟った 昔は昔、今は今・・・・・昔に縛られるのは、ダメだと 今、自分を思ってくれる人が居る・・・・・だから、永遠を求めてはいけないと そして今・・・・・ここでこうやって、会話をすることが出来るのだと 浩平「俺はみさおを失った、けど・・・・・俺を待っていた大切な人を授かった」 裕也「・・・・・・・・・・長森さん、だろう?」 浩平「ああ・・・・・ずっと、俺のことを覚えていてくれた、それが、嬉しかった」 裕也「見たいだな・・・・・だが、恋人にならなかったのは・・・・・自分の気持ちの整理が付かなかったから」 浩平「・・・・・お見通しか、その通りだ」 フェンスから身体を起こして浩平はこちらを見る そして・・・・・言う 多分俺も分かっている・・・・・浩平が言う言葉を 今日だけで散々理解してきた、急激に始まったあのことを 浩平「影森裕也に問おう、お前は・・・・・永遠を望むか?」 裕也「いや・・・・・俺は永遠を望まない、決して」 浩平「・・・・・なぜ、望まない?」 裕也「答えは簡単、お前達が俺を忘れることがないから・・・・・どんなことをしても、忘れないから」 そう言って俺は空を仰ぐ 夕日に染められた雲はうろこ状に連なり、空を悠々と泳いでいる そんな風景を見ながら、俺は言う 言わなければならない言葉を、俺は言う 裕也「永遠はとても幸せな世界、だが反対に何もない世界」 浩平「・・・・・・・・・・」 裕也「生もなければ死もない、全てが止まった流れの世界」 浩平「・・・・・なんで、お前」 裕也「だからこそ、俺は今を望み、永遠を求めない・・・・・それが、俺の答え」 驚いた顔をする浩平を見つつ、俺は言葉を吐く まったく・・・・・困った知識だよな、血塗れの魔術師も 浩平「だったらなんで・・・・・なんでお前は今にでも消えそうなんだよ」 裕也「それは俺が過去に捕らわれているから、過去が根強く心にあるから」 浩平「・・・・・・・・・・くっ、俺は何も出来ないのか!」 裕也「お前が悲観することもない、これは俺が招いた悲劇だ・・・・・落とし前は、自分でつける」 浩平「分かった・・・・・けど、一つだけ聞くぞ」 浩平がいつも以上に真剣な顔をする 生涯でこれ以上真剣な顔を見る機会は・・・・・ないなと薄れながら思う 浩平「お前は今、どこにいる?」 核心を突く問い、だから俺も答えよう 俺が居た証拠だということ、俺がまだ居るということの証に 裕也「俺はまだ、日の当らない場所に居る・・・・・俺には眩しすぎるよみんなは、羨ましいほどにね」 この瞬間、影森裕也という存在は、世界から忘却された・・・・・ 浩平「俺は諦めないぞ・・・・・必ず、連れ戻してやるからな!」
D.C.O.S.U 〜日々の理想郷〜 完結 <to be next story――D.C.O.S.V>

〜後書き〜 藤祭:裕也永遠の世界に行くの巻き 純一:おいおい、最後の最後で大どんでん返しかよ 藤祭:だってこうしないとことりとくっつきそうで怖い 純一:素直にくっつけろよ 藤祭:はっはっは 純一:・・・・・だが、これで一応第二部は完結ってことか 藤祭:ええ・・・・・次回は初音編の第三部です 純一:やっと出番か・・・・・長かった 藤祭:おや、かったるいはずでは? 純一:あいつが居なくなったんだ、しょうがないだろう? 藤祭:ええ"あいつ"が居なくなりましたから 純一:・・・・・おい、名前が浮かんでこないんだが 藤祭:はっはっは、永遠の世界の住民ですから 純一:・・・・・・・・・・ 藤祭:では、次回というか次の第三部で会いましょう 純一:本当に・・・・・誰だっけ


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