雨と君と あぁ、あれはいつのことだっただろうか・・・・・ 今思えば・・・・・懐かしい、遠くて、近い、そんな記憶 present by 藤祭
ザァー、ザァーと雨が降りしきる中、俺は一人で歩いていた 時折電線や軒先から落ちる雨粒が、黒い傘を叩いていく 何時ものように変わらぬ帰路を歩き、ふと足を止める 毎日、毎日歩いていたが、ふと、思い出される雨の日々 電柱の脇で、段ボールに入れられて、惨めに濡れていた君 にゃぁ、にゃぁと、力なさげに、鳴いていた 小さくてちいさくて、まだまだ子供だった君を、俺は抱き寄せていたんだっけ 濡れないように、傘を差して・・・・・そう、この傘だったな 動物を飼ったことが無いくせに、一人前だと自分に言い聞かせたりして 二十歳なんて、まだまだ青臭い少年のままなのに、一人前だと言い聞かせたりして なれない読書をしながら、君を毛布でくるんであげて、柄にもなく微笑んだり 好き嫌い激しかったよな、喜怒哀楽も激しかったよな、いい思い出だよ けど、夜な夜な布団にもぐりこんできて、にゃぁと俺を呼んでくれたとき、嬉しかったんだ ただ自己満足で君を拾ってみたけれど、そう簡単にはいかないと、現実に打ちひしがれていたから 呼んでくれて、嬉しかったんだよ・・・・・本当に 小さい身体で、必死に構ってもらおうとして、いたずらも沢山したよな カーテンに爪をひっかけて、とれなくなって鳴いていた 花瓶を倒して、びっくりして階段から転げ落ちたりして、怒られて 空から水が降ってくるのを不思議そうに見ながら、テーブルから落ちたりして 紙袋に入って出れなくなって、ずたずたに引き裂いたりして・・・・・好奇心旺盛だったよな 君と過ごした日々は、あっという間だったけれど、俺は幸せだったんだ なのに、なんでだろうな・・・・・俺は生きて、君はいなくなって、ただただ時間は過ぎていく 本当に偶然だったんだよな・・・・・病気だなんて、知らなかったんだよな 話せないって辛いよな、痛いのに伝えられないのって、辛いよな? だから、これから・・・・・俺はここを通るとき、一年に一回は、必ず君を思い出すよ 無邪気にはしゃいで、テレビに映った人を追いかけたり いたずらして怒られて、しゅんとして擦り寄ってきたり 寒い夜には布団にもぐりこんで、一緒に寝たりした君を・・・・・思い出すよ だから、さ・・・・・もう一度でいいから、鳴いてくれよ あの頃よりも、立派になったんだよって俺を安心させてくれるようにさ にゃぁって・・・・・元気に鳴いてくれよ ただただ俺が言いたいのはさ・・・・・もう一度・・・・・君に会って、一日でもいいから・・・・・暮らしたいんだ ふと顔を上げると、空は晴れ渡っていて、君の姿は見当たらない 空の向こうで君は俺を見ているのかな? もっと遊びたいと思っているのかな? そうだとしたら、鳴いてくれ 一緒にまた、遊ぼうぜ? 雨上がりの空の下、にゃぁと子猫の声がした おしまい。
〜後書き〜 2007/03/15〜28のどこかで雨が降っていたんです、そう、雨がザァー、ザァーと降っていたんです。 そんな中、どこからか子猫の声がしたんです・・・・・不思議ですよね、何も無いのに。 周囲を見渡しても、子猫なんて見当たらないのに、空耳なのに、気になって。 だからでしょうかね、こんな風に短編を打鍵してみました。 もしも子猫が捨てられていたのだとしたら、こんな優しい飼い主に拾われて欲しいです。 身勝手ですが、優しい人に拾われれば、きっと幸せになれるでしょう。 そんな思いを込めて、打鍵してみました・・・・・心の片隅に、ちょっとだけの悲しみを込めて。 では。 (2007/03/29)打鍵完了。