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 昨年、ピンソールの開発者・竹濱さんに提案したピンソール・ミニが製品化された。今回、早春の山釣りで2回、計6日間の山ごもりで実地テストを行った。杣道、雪渓、崩壊した斜面、急峻な脇尾根の獣道、雪代で沸き返る沢、滝の高巻き・・・ハードな山釣りルートのほとんどでテストしてみた。ピンソールを使っている人から見れば、わずか4本の小さなピンで大丈夫か・・・と不安に思うだろうが、結果は◎。理由を一言で言えば「シンプルイズベスト」

■昨年提案した内容(2004年5月29日)・・・ピンソールは、山釣り用としてほぼ完璧に近い。しかし、不完全な簡易アイゼンでも不満をもらしつつ代用している人も多い。この両者の特質を半分づつ取り入れ、やや機能性に欠けるものの、もっとコンパクト、軽量、携帯性、簡易な着脱を優先したものも考えられるのではないか。
▼左:ピンソール・・・ピンが前6本と後4本、合計10本で、締め付けも靴全体を利用する方式をとっている。つまり渓流足袋にピンソールを装着するとスパイクシューズに変身する。長期の山釣りには、最適。ただし、靴の種類、大きさ、形状に合わせて、中央の鎖の長さを調節するなど、初心者にはちょっと面倒な作業が伴う。

▼右:ピンソール・ミニ・・・ピンは4本、ワンタッチで着脱できる。ベルトを調節することによって、後の踵部と土踏まずのいつずれかにセットできる。テストの結果は、土踏まずの位置がベストだった。初心者の利用を考えると、土踏まずの位置に初期設定して置くべきだと思う。
▼左:4本爪アイゼン・・・低価格で、着脱も簡単だが、急斜面の上り下りでは、ズレやすい。ズレないようにきつく締めると足が痛い。沢では、岩への衝撃も大きく、滑り台のような岩盤では逆にブレーキが効かない。つまり水陸両用タイプとして×。

 さらに爪が大きい分、自然へのダメージも大きい。世界自然遺産の白神山地や屋久島など、ローインパクトを心掛けなければならない場所では×。これら4本爪アイゼンの欠点を全て克服した製品がピンソール・ミニだ。
 ピンソールが片足130gに対してミニは55gと超軽量。収納サイズもタバコサイズよりやや大きい程度でコンパクト。機能性を除けば、コンパクト、軽量、携帯性、簡易な着脱の点でピンソールより優れている。
 左がピンソール、右がピンソール・ミニ。昨年、大川〜赤石川〜暗門の滝を一周した時は、5泊6日の長期に及んだ。もし山越え途中でピンソールのベルトが切れたり、金具が折れたりすれば・・・そんなアクシデントを考えると、予備でピンソール・ミニを持っていれば安全かつ安心だ。ミニは、シンプルなだけに、カラビナに通して腰やザックの横に下げていても邪魔にならない。
 杣道・・・山人たちが歩いた踏み跡を杣道と呼ぶ。山釣りでは、定番のルートである。長年の風雪や雪崩で所々崩壊している箇所があったり、小沢を歩いたりしなければならない。つまり、水陸両用の靴を履かねばならない。渓流足袋にピンソール・ミニを装着すれば、重い荷を担いでいても安全かつ快適に歩くことができる。
 残雪、雪渓の急斜面・・・こんな場面は、空身で登るのと重い荷を背負って登るのとでは、雲泥の差がある。雪渓でのブレーキは、もちろんピンソールが勝っているが、ミニ程度のブレーキで問題なし。
 落差数百メートルに及ぶ藪の急斜面下降・・・こんな場面は、最もピンソール・ミニに負荷が掛かる。締め付けた足首が痛くなったりしないか。ズレたりしないか。滑って転んだりしないか・・・そんな心配はご無用だった。昨年、同一ルートで簡易アイゼンを何度も使用したが、その時痛感した欠点を全て克服していると感じた。
 沢を歩く・・・ミニを外さず、そのまま沢を歩いてもほとんど違和感を感じない。ピンソールよりピンが少ない分、沢歩きではミニが勝っている。本来は、着脱が簡単だから、高巻きや斜面の山菜・キノコ採りなどに着脱すればベストの使い方だとは思うが、常に装着していても問題なし。怠け者にはピッタリ。
 脇尾根の獣道・・・最初、ミニを踵部にセットして登った。オーバーハングに近い急斜面では、つま先部分で登ろうとすると、滑る危険があった。そこで、土踏まずの位置に移動したら、ぐ〜んと楽に登れた。ミニの場合、最初から土踏まずの位置にセットするのがベスト。
 こんな急斜面でも、ミニを土踏まずの位置にセットすれば、問題なく下降できる。
 老夫婦が履いていたスパイク付き長靴・・・これは、一見水陸両用タイプに見えるが、増水した渓を渡渉することはできない。靴の中が蒸れるなど、山釣りには不適。なお、ピンソールミニが活躍するその他の場面を以下に記す。
 山菜を撮る、採る。  倒木に生えていたキノコを撮る、採る。
 斜面に群生する山野草を撮る。  野生動物を追い掛ける。
 高い木に登って設営する。  急斜面で薪を集める。
 早春の渓は、雪解け水でやたら冷たい。スパイクシューズは、保温性がなく、早春の渓を歩くには×。渓流用胴長は、ハードな山釣りには不適。今回は、渓流足袋+ライトαタイツ+カッパズボン+スパッツ+ピンソール・ミニという足ごしらえで早春の渓を歩いた。
 ピンソールは、渓流シューズ、渓流足袋をスパイクシューズとして使用できるスグレモノ。だからハードな山釣りでは、ベストの商品だと思う。しかし、ピンソール・ミニは、コンパクト、軽量、携帯性、ワンタッチの着脱、靴に合わせた面倒な調節が不要など、ピンソールにはない優れた点が多々ある。シンプルイズベストの商品であり、特に初心者には使いやすい製品だと思う。

 いずれにして、一年前、私が「もっとコンパクト、軽量、携帯性、簡易な着脱を優先したものも考えられるのではないか」という提案に、ピンソール・ミニは見事に答えを出してくれた。一つだけ不満は、価格が高いこと。ステンレスを採用した耐久性や国内生産にこだわる竹濱さんのモノづくりへの真摯な姿勢を考えると、やむを得ない気もする。販売が軌道に乗れば、自ずと価格の問題もクリヤーできるだろう。
詳細は下記HPの「ピンソール・ミニ」をご覧ください。
▼PIN-SOLE http://www.syoei-pro.co.jp/

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