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蘭の栽培

*好きな株を購入する。
 お奨め商品は安価だったり綺麗だったり育て易かったり、しかし大して来るものが無い植物は概して飽きる。貰い物は更に飽きる(知り合いに植物を送らないよう釘を刺すべき)。ショップが「こりゃ難しいよ」と言っても気に入ったのであればそれを入手・栽培法を猛勉強するとよい。ネット接続環境であれば当日中に条件が判断出来る筈。翌日には必要な器具・用土をホームセンターに買いに行こう。栽培技術の向上には「好きな植物を購入」が一番。

*原種・交雑種
 通常交雑種は原種より栽培容易である。親の属に比較すれば100%容易。

*分類学的位置を特定する。
 学者の真似事をやれというわけではない。手持ちの個体のみでよい。何故ならグループ毎に栽培方法が非常に似通っている為だ。更にグループ内の異端児特定(暑い地域の蘭だがこの種のみ高地産種など)には種までのデータが要る。気に入った株の属を特定すると、同属に大抵次のお気に入りが出来る。尚、ラベル無しの植物にはなるべく手を出さないよう。

*分布地域
 低地産種は高地産種よりも管理が容易である。低緯度産種は高緯度産種よりも管理が容易である。高温性種は相当の低温に耐えることが出来るが、低温性種は高温に耐えられない。冬越しは容易(容器内を暖めるだけ)だが、夏越しは難しい(冷やしながらの湿度確保は機械を使用しても困難)。ちなみに我が国の低地は自然環境が低温性、栽培場は高温性になりやすい。

*置き場所
 屋外(雨曝し・庇の下や軒下)、室内、温室、水槽などがある。湿地性種・地生種は通風必須な為屋外がよい。着生種の場合強風で乾燥するので余程の耐乾種以外は不可(国内産除く)。地生種の内林床内に分布するものは庇の下が無難。園芸的改良品種は室内管理でよい。室内は無風・乾燥・一方的な光線なので原種群には辛い。温室は着生種全般に有効。温度調節さえ上手くいけば万能。水槽は着生種の内熱帯性・高温多湿を好む小型種に限る。大問題は通風なので、腐り込み易い種類には使用しない。小型ファンは必須だろう。
 長く続けていると鉢数が多くなる。場所が無い・金が無いは貧乏栽培家共通の悩み。熱心な人は工夫してラックや水槽を改造・色々細工をして部屋中・ベランダいっぱいに飼育容器を積み上げる。凄い。凄過ぎる。もう栽培設備作りが趣味なのだろう。実は筆者は駄目。空間認知能力が無いので工作出来ない(プラモデルを完成させたためしが無い)。面倒臭がりなのでいちいち容器を回ってのこまめな世話も出来ない。日に数回いじるので一回で済ませないと気力が続かない。だから大きな温室を作った。一度の出費はでかいが後の手間を考えれば安いもの。農業用の温室は手が出ないので、サンルームをそのまま使っている。水をザバザバかけても大丈夫な床にした。お陰で音を上げることなく今日まで栽培を継続中。まあ、考え方は人それぞれですので、ご自身にあったプランでどうぞ。

*鉢
 ビニールポットは着生種のみ使用可能、地生種の栽培には向かないので使用しない(用土が動く為)。プラスチックの鉢(プラ鉢)は乾燥に耐えられない地生種・超小型の着生種に向く。根の通気を好む大型着生種には向かない。白色は最も涼しく管理出来、濃色・特に黒色は蒸れ・煮えが夏季を中心に起こるので避ける。素焼き鉢の内朱温鉢は色々な種類に適する。駄温鉢はプラ鉢並みに乾き難い。柔らかい蘭鉢は乾燥甚だしい。地生種には駄温鉢・着生種には蘭鉢が向くが、外出気味で余り水が遣れない場合は着生種にも駄温鉢を用いる。蘭鉢では干からびてしまう。釉薬のかかった鉢は駄温鉢と同じ。
 ラン科植物は古い茎節の根を枯らし、茎節を更新してそこに新たに根を付ける性質がある。偽鱗茎を有する種類は移動が緩慢なので鉢植え可能だが、Vandaグループはどんどん茎節を伸ばすので基質付けがよい。

*用土
 水蘚は過去によく使用されていたが、持ちが悪い(腐る・臭い)・通気性が悪い・高価・真菌症による健康被害等の理由で最近は使用されない。第一水蘚自体が希少植物である。赤玉土・鹿沼土は清潔で通気性・保水性に長けたよい用土である。混ぜて使用するのが一般的だが、単用も問題ない。基質(ヘゴ・流木・軽石)は着生種・特にVandeae植物に有効。但しどの基質も何れ駄目になるので注意。籾殻・燻炭・バーミキュライトは適宜(健康上使用を控えたほうが良いとのこと)。ダンボール片は難物に使用。

*水遣り
 通常鉢と同量以上の水を流す。前回分の滞留水・生じた微塵・老廃物を全て流す。地生種も同様。従って液肥は灌水後に与える。高山性種は鉢内温度を下げる為にも鉢の2倍以上を流す(特に夏季)。腰水は湿地性種のみ可。この場合も毎日の水遣りは欠かさない。鉢内の水を新しいものに入れ替える必要は他種同様。水温上昇が避けられない場合は腰水は避ける(特に高地湿原性)。留守がちなど止むを得ない場合、更に大きな鉢の中に入れる・水盤を地中に埋め込むなどする。ヘゴ付けには特に念入りな頭上潅水を行う。ヘゴの繊維の隙間を洗い流すように行うとよい。必要性が理解出来ない場合には臭ってみるとよい。
 屋外の栽培場であれば頭上灌水可。屋内では如何に通風が取れていても用土に水差しで与える(腐り込み防止)。特に花・新芽・葉腋・袴には水をかけない(かかったらティッシュで吸い取る)。段が組んであるミニ温室等では上から順番に潅水、下段のものは上段からの水を洗い流すくらい念入りに行う。下段が湿っているからと潅水を中断すると鉢内が腐敗・株の崩壊に繋がるので注意する(ウイルス病も呼ぶ)。

*肥料
 地生種は肥料喰い。油粕(蟲がわく)・粒状化学肥料を表面に置く。用土には埋め込まない。肥料が無いと増殖に繋がらない。用土への腐葉土混入は地植え以外には無効(水捌け悪く根詰まり状態と同じになる)。着生種には肥料不要(葉水肥料も不要)。問題無く育つ。但し栽培困難種には針葉樹系腐葉土混入(4〜5割)。特に難物種ではないが腐葉土で菌をバックアップしたい場合、鉢の縁の一部の用土を抜き取りそこに充填する。農薬は決して散布しないこと。

*植え付け
 偽鱗茎と塊茎の違いは根の出方に有り、偽鱗茎は通常緑色で頂部から葉・茎が出、下部から根が出るのに対し、塊茎は通常褐色で葉・茎・根とも頂部から生じる。偽鱗茎は接触して次世代が生じるが、塊茎は通常走出枝を伸ばし、その先端に新しい塊茎を生じさせる。着生種・地生種に限らず基本的に偽鱗茎は表土から露出させる。緑色をした部分は埋めない。例え自然界で埋まっていても栽培下では埋めないのが基本。エビネ類・アツモリソウ類はむしろ例外(偽鱗茎の役を余りなさない)だが、これらも深く埋め込んではならない(表土から1センチ程度まで。顔が出るくらいでもよい)。湿地性種などの塊茎は表土より1〜2センチくらいまで埋め込む(寒冷地では深めに。上下を間違えない)。花茎が垂れるものは垂らす。支柱を立てたりすると株が疲労する・花着きが悪くなるなど悪影響が出る。花茎の長大なものは鉢を吊る。

*植え替え
 年一回。根詰まりやウイルス病発生予防。通常春先・花後。花と株の充実は普通同時では無い。地上部を枯らす種類は必ず枯れてから行う。地上部がある状態で植え替えを要するときは必ず表土の線を以前と同じ場所に(すっぽ抜け防止)。

*病害虫
 出さない事。日照・通風・適正な水遣りで病気は出ない。アブラムシ・貝殻蟲は手やブラシで落とす。ハダニは湿度を高める。黴類は環境を改善する(通風や同居の花の蜜等を洗い流す)。薬剤は最終手段。ラン菌に影響を与える薬剤は可能な限り使用しない。特に難易度の高い原種では徹底して避ける(植物体も薬害を受け易い)。ウイルスは諦めてうつらぬよう管理。

*増殖
 株分けやバルブ吹かしと呼ばれる方法が一般的。この場合偽鱗茎を最低3個維持する(根が付いている事も確認)。欲を出して細かく分けると全く成長せず、かえって増殖効率を落とす。大株に育てた株の方が増殖率は格段に良い。出芽掻きは高芽(Dendrobium類)・基部からの発芽(Vandeae等)を待って行う。挿した部分から根が出るわけではないので、どれだけ芽が大きくなっても根が出るまでは切らない。切断する場合の刃物は毎回消毒・若しくは一日空けながら。切り口は可能な限り小さく。走出枝を伸ばすものは植え替え時に切り分ける。芽と根が付いていれば最小単位で分けてよい。
 種子繁殖は人為的な受粉・自家受粉で得られた種子を用いる。大量に増殖可能。人為的な受粉は花粉塊を剥いで柱頭に接着。セルフ(同一個体)・シブリング(異個体)どちらでも。果実は完熟するまでに相当かかる。得られた種子は親株・他の蘭の根元に撒く(成功率低)か、フラスコ(無菌)培養(成功率高)を行う。フラスコは壊さねばならなくなるので、通常は広口ビンを使用。手順は専門書でどうぞ。これの応用で成長点培養(メリクロン)が出来る。大量の苗を増殖可能。種子繁殖・幾つかの培養は多くの原種に無効な場合が間々ある。始める時は成功例のあるものから。


*栽培難易度の目安
 ランクA+:何をしても無駄。環境(野生状態)から切り離せば枯れる。ex.腐生ラン・無葉ランなど。
 ランクA:強い北方系の性質・腐生菌依存度が高いなど、数年で消えるように消滅。金銀系、一葉蘭系、采配蘭系。
 ランクB:北方系で耐暑性が著しく低い。手を尽くすと栽培が可能。ex.敦盛草類(Cypripedium)、木曾海老根系(北方系Calanthe)、鈴虫草類(北方系Liparis)。
 ランクC:手間をかけると普通、気を抜くと枯れる。ex.螺旋花類、北方系繻子蘭類。
以上研究機関・熟練栽培家向き。
 ランクD:一般のラン。
 ランクE:雑草並みの増殖力。耐性が強光・高温(30℃以上)・低温(5〜8℃まで)・乾燥・過湿の内4つ以上。
以上初心者・一般栽培家向き。


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