呼吸器・胸壁・縦隔疾患
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〜感染性疾患〜
■細菌性肺炎
■肺炎:肺炎球菌 Streptococcus pneumoniae
・成人の肺炎の中で最多.地域感染性肺炎のひとつ
・乳児(0〜3歳)に気管支肺炎を起こすことがある
・大葉性肺炎を呈する ・髄膜炎を合併することがある
・鉄さび色≠フ喀痰,稽留熱 ・ペニシリンGによる治療
■肺炎:黄色ブドウ球菌 Staphylococcus aureus
・全年齢で重症化し,特に乳児では急性膿胸,
巨大気腫性嚢胞(ニュ−マトセル)をきたし,重篤になりやすい
・ニュ−マトセルは自然消失する例が多いvanishing lung
・地域感染性肺炎のひとつ
■ 肺炎:黄色ブドウ球菌
・気管支肺炎を呈する.空洞形成(+)
・急速な呼吸困難,敗血症性ショック(理学的所見に比して重症)
・メチシリン,オキサシリンによる治療(ペニシリンGは無効)
・MRSA→コレラ様下痢をきたす.バンコマイシン静注
・表皮剥奪素→弛緩性水疱がみられ,SSSSをきたす(5歳以下)
■肺炎:インフルエンザ桿菌 Haemophilus influenzae
・小児(0〜6歳)の肺炎の中で最多.中高年男性の喫煙者にもみられる
・地域感染性肺炎のひとつ
・慢性気道感染症の急性増悪としてみられる
・肺炎球菌との混合感染がある(2次感染)
・気管支肺炎を呈する
・中耳炎,髄膜炎,喉頭炎を合併することがある
■肺炎:インフルエンザ桿菌 Haemophilus influenzae
・チョコレ−ト寒天培地
・アンピシリンによる治療
※髄膜炎にはクロラムフェニコ−ル
■ノカルジア肺炎 YnH-51
【診断】
@免疫不全・悪性腫瘍患者あるいは免疫抑制剤患者(日和見感染)に
A咳、痰、呼吸苦、発熱がみられ、
B胸部X線にて肺浸潤影、空洞形成等の肺病変を呈し
C喀痰検査にてグラム染色陽性のフィラメント状菌がみられたとき
→ノカルジア肺炎と診断する。
【治療】
・ first choice→サルファ剤
・ 腫瘍のある時は外科治療
※細菌性肺炎は,通常,粘液膿性痰,湿性ラ音を呈する
【地域感染症】マイコプラズマ,肺炎球菌,結核菌,インフルエンザ菌,嫌気性菌
【院内感染症】緑膿菌,ニュ−モシスチス・カリニ,CMV,真菌,
腸内細菌(レジオネラ,クレブシエラ,セラチア),MRSA
■肺炎:緑膿菌 Pseudomonas aeruginosa
【概念】・慢性気道感染症の急性増悪としてみられ,難治性
・院内感染症のひとつ(日和見感染)
【症状】・気管支肺炎を呈する
・肺化膿症,胸膜炎を合併し,新生児では敗血症,DICをおこす
【治療】・広域合成ペニシリン・・・カルベニシリン,スルベニシリン
・第3世代セフェム系・・・セフォペラゾン,セフォタキシム
・アミノグリコシド系・・・ゲンタマイシン,トブラマイシン
■肺炎:クレブシエラ Klebsiella pneumoniae(肺炎桿菌)
・中高年の男性に多い.セフェム系乱用による菌交代症として
日和見感染をおこし,急激に発症するのが特徴.腸内細菌のひとつ
・大葉性肺炎を呈する ・粘稠痰,褐色・ゼリ−状痰
・治療:第1世代セフェム系orアミノグリコシド系(ゲンタマイシン)
■肺炎:セラチア Serratia marcescens
・腸内細菌のひとつ.日和見感染をおこす
・赤色痰,寒天培地で赤色色素産生
・第3世代セフェム系による治療
■肺炎:レジオネラ Legionella pneumophilia
・中高年の男性に多い
・日和見感染をおこす.塵埃感染により集団発生することがある
・精神症状,小脳失調,胸膜炎,肝障害,比較的徐脈
・B−CYE培地
・治療:エリスロマイシンorリファンピシン
■ マイコプラズマ肺炎 YnI-50 YnAtlasP.207
【概念】
マイコプラズマによって生じる肺炎。本性は健康な小児〜成人の肺炎の主要原因のひとつで、自覚症状(咳、胸痛)が強く、X線上もスリガラス様陰影を呈する等、臨床症状が強いにもかかわらず、ラ音等の理学所見に乏しい疾患である。5〜25歳に好発するが、5歳以下の乳幼児にはまれである。健常人に罹患しやすく、一般に予後良好。
・原発性非定型(異型)肺炎 ・4年周期で流行
・健康人に発症する地域感染性肺炎のひとつ
・若年者に好発するが5歳以下ではまれ.
【症状】
激しい乾性咳嗽,発熱,咽頭痛
鼓膜炎、中耳炎
※自覚症状,理学所見が乏しいわりに胸部X線写真が派手
【検査】
オウム病との鑑別が重要。確信はペア血清による補体結合反応
orマイコプラズマDNAの検出
<血液>寒冷凝集素↑→約50%は発症1〜2週間後に上昇する
IgM↑,ESR↑
マイコプラズマ抗体↑→補体結合反応(CF)を用いる。
※WBCは正常
<胸写>スリガラス様陰影(間質性肺炎)
・・・一側性下葉に多く気管支肺炎像を呈する
<PPLO寒天培地>M.pneumoniaeの分離・・・陽性率は低い
【合併】
鼓膜炎,髄膜炎,中耳炎,Stevens-Johnson症候群,
Guillain-Barre症候群,胸膜炎,関節炎,発疹,胸水
▽Q176 マイコプラズマ肺炎の合併症
マイコと会うと@スティーブンがAギラギラしてBすっかり困っちゃうC
@マイコプラズマ肺炎 AStevens-Johnson症候群 BGuillain-Barre症候群
C水泡性鼓膜炎
【診断】
@健康な小児〜青年(5〜25歳に好発)に、 ←基礎疾患なし
A激しい乾性咳(頑固に続く)で始まる発熱、胸痛が見られ、 ←細気管支炎による
Bスリガラス状陰影を呈する胸部X線に比し、 ←間質性肺炎による
胸部理学所見(聴診)に乏しく、 ←他覚所見に乏しい
CWBC→、赤沈↑、CRP(+)で、
寒冷凝集反応(+)のとき、(非特異的)
→マイコプラズマ肺炎 を考える。
・ 確定診断はペア血清による補体結合反応(血清マイコプラズマ抗体価を見る)
またはマイコプラズマDNAの検出による
【治療】
・細胞壁を持たないため、ペニシリン系、セフェム系抗生剤は無効!!
・マクロライド系やテトラサイクリン系の抗生剤が第1選択薬である。
@エリスロマイシン Aテトラサイクリン(ミノサイクリン)
*妊婦にはエリスロマイシンなどのマクロライド系抗生剤を使用する。
禁忌Kids P.60 小児のマイコプラズマ肺炎では、まずマクロライド系抗生物質から用いる。
禁忌Kids P.61 マイコプラズマ肺炎では副腎皮質ステロイド薬は禁忌であるため、副腎皮質ステロイド薬を用いる過敏性肺臓炎との鑑別に注意する。
▽ Q176.マイコプラズマ肺炎の特徴
若者が@舞妓にA熱上げBまくってC席でしつこくD手をとってもE無理さF、「結構です」とG冷たくされてHわびしいだけI
@若年者、学童に多い Aマイコプラズマ B激しい発熱 Cマクロライド系
D頑固な乾性咳 Eテトラサイクリン F無細胞培地(PPLO寒天培地)で培養
G健康人に発症 H寒冷凝集素価↑ IWBC正常
■副作用
・アミノグリコシド系 ・・・腎障害,神経筋接合部障害,第[脳神経障害
・セフェム系 ・・・腎障害,アナフィラキシ−
〜慢性閉塞性肺疾患〜
■慢性気管支炎 YnI−64
【概念】
慢性に経過する上気道感染(咳・痰)が2年以上にわたり、冬の3ヶ月以上ほぼ連日見られるものと定義されている。加齢、喫煙、大樹汚染(窒素酸化物)、感染などが本症の発生増悪に関与している。
気管支に粘液分泌過多があり、これにより閉塞性換気障害を来す。
【誘因】
大気汚染(SO2,NOx,O3),喫煙,加齢,火薬
【症状】
・呼吸器症状+炎症による症状→症状が強い
@呼吸困難,喘鳴,多量の痰
・・・2年以上(3カ月以上/年),起床時に多い
A慢性副鼻腔炎の合併・・・特にDPBのとき
【検査】
<胸写>初期は過膨脹,進行期は網状索状または粒状陰影
<聴診>全肺野にcoarse crackle(水泡音)
<肺機能検査>1秒率↓,%VC↓・・・混合性呼吸障害(DPBのとき)
【診断】
@ 数年来の咳嗽と喀痰に、 ←慢性に経過する上気道感染症状
A 呼吸困難(軽度)、チアノーゼ(著明)がみられ、
B 肺機能検査で、FEV1.0%↓、残気量↑
肺コンプライアンス↑、残気率↑ 閉塞性換気障害
C 動脈血ガスで、PaO2↓、PaCO2↑がみられ、
D 胸部X線で、両下肺野を中心とした索状影、
および気管支壁肥厚(tram lime shadow)が見られた時、
→慢性気管支炎 を考える。
・高齢者の男性に多く、喫煙量と大気汚染が重視される
【治療】
病因の除去、排痰(去痰薬、気管支拡張薬、体位ドレナージ)
・ 肺炎が合併した場合は、広域抗生物質がfirst choiceである。
→セフェム系抗菌薬(セファメタゾン、パンスポリン等)
・ 急性呼吸不全を呈した場合には、呼吸管理が重要となる
■びまん性汎細気管支炎DPB
【概念】
細気管支領域にびまん性慢性炎症をきたす慢性閉塞性肺疾患で、原因は不明。大気汚染、喫煙、自己免疫と関係、若年発症、細菌感染も原因の一つである。
初期には肺炎球菌、インフルエンザ桿菌などが感染菌となりやすく、長期経過後は、菌交代現象を起こし、緑膿菌感染(肺炎)になりやすい。
かつて、慢性気管支炎が多かったが、最近はほとんど見られなくなった。それに変わって目立ってきたのがDPBである。
※慢性副鼻腔炎の合併に注意
【診断】
@中年以上の男性で、
慢性副鼻腔炎の既往があり、 ←約80%以上に慢性副鼻腔炎を合併A呼吸困難、咳、80〜100ml/日以上の痰を伴い ←呼吸症状+炎症症状
B聴診上、湿性ラ音と乾性ラ音が混在し、
C胸部X線で、両側下肺野を中心にびまん性粒状陰影が見られ、
D呼吸機能では、残気率↑、A−aDo2↑、PaO2↓に加え
一秒率↓、パーセント肺活量(%VC)↓の
拘束性障害+閉塞性障害の混合性障害を呈するとき、
→びまん性汎細気管支炎(DPB)を考える。
【治療】
・感染の継続は病状の増悪、進行を招くので、感染対策が最も重要。
1.原因となりうる因子の除去、去痰療法、気管支拡張剤、酸素療法(従量式)
2.感染対策:エリスロマイシン(EM)の少量長期療法
3.肺性心となり右心不全を生じたときは、心不全対策が必要となる。
→参照:68C−12
■肺気腫 YnI-64
【概念】
終末細気管支よりも末梢の気腔の異常拡大と肺胞壁の破壊により肺の過膨脹と呼気閉塞をきたす.中高年の男性に多く喫煙とも関係する。
・肺の弾性線維の断裂→コンプライアンス↑
・支持組織↓=気道牽引力↓(ベチャっとつぶれる)→抵抗↑
【分類】 alveolar type bronchial type
頻度 10% 90%
汎小葉型 小葉中心型
成因 α1−アンチトリプシン欠損症(AR) 喫煙,感染による
肺胞の破壊(check valveと関係) 呼吸細気管支の破壊
肺性心,RBC↑ まれ しばしば(チアノ−ゼ,ばち指)
胸写 気腫性変化(肺野透過性亢進) 炎症性変化(網状索状陰影)
呼吸機能 FRC↑,TLC↑ %VC↓
年齢 比較的高年 比較的若年
※先天的要素が強い
【症状】
@初発症状→労作時呼吸困難,咳嗽,粘稠喀痰,喘鳴(ときどき)
Aチアノ−ゼ,ばち指・・・肺性心の時(SaO2<80%,PaO2<50mmHg)
B意識障害,幻視・・・肺性脳症の時(CO2ナルコ−シス)
【検査】
<打診>鼓音・・・慢性閉塞性疾患に特徴的
<聴診>呼気延長(口すぼめ呼吸),呼吸音減弱(笛声音)
Up亢進(肺性心合併時)
<胸写>ビ−ル樽胸郭(上肺野の横径拡大),横隔膜低位,滴状心,肋間腔開大
<肺機能検査>1秒率↓(<70%),残気量↑,肺コンプライアンス↑,
胸腔内圧↓,末梢気道抵抗↑(V*50/V*25 >3)
※肺胞壁の破壊→肺弾性収縮力,気道牽引力の低下
→肺過膨脹,呼気時の気道虚脱(閉塞性肺疾患)
<血ガス>PaO2↓,PaCO2↑(初期はPaCO2↓),AaDO2↑
・・・肺胞低換気(呼吸性アシド−シス)
<肺血流シンチ>欠損像
【合併】
@肺性心 B自然気胸 D胃潰瘍
A肺性脳症 C呼吸器感染症
【診断】
@ やせた高年の男性で、
A 数年来徐々に増悪した労作性呼吸困難、咳嗽、痰があり、
B チアノーゼ、呼気の延長、口すぼめ呼吸 呼吸機能喪失と呼気閉塞現象
乾性ラ音(笛声音)、打診上鼓音が聴取され、
C 胸部X線で、肺過膨張、肺野透過性の亢進、横隔膜の平低下、
D 肺機能検査で、FEV1.0%↓、残気率↑、肺コンプライアンス↑
E 動脈血ガスで、PaO2↓、PaCO2→or↑、pH↓、 ←呼吸性アシドーシス
A-aDO2↑、DLCO↓を示す時、 ←拡散障害
→肺気腫 と診断する。
【治療】
@禁煙,感染の予防
A呼吸法の練習(口すぼめ呼吸,腹式呼吸),在宅O2療法
・・・ただ安静→CO2ナルコ−シス(低濃度O2(1〜2 l/min)投与)
Bβ−刺激剤(気管支拡張剤)・・・alveolar typeに対して.即効的
C緊急手術・・・生後6カ月以内の乳児でalveolar typeの場合
※気管支拡張剤(エアロゾル)による1秒量改善は0.5 g以下
〜閉塞性肺疾患〜
■肺線維症,間質性肺炎 YnI-72
【概念】
・肺胞壁など間質の炎症と構築異常を主とする疾患で,広範な線維化をきたす
【分類】
@特発性(IPF)・・・50〜60歳の男性に多く,家族性あり
・急性びまん性間質性肺炎
(Hamman−Rich症候群,発症後6カ月以内で死亡)
・慢性びまん性間質性肺炎
A続発性
1)過敏性肺臓炎
2)塵肺症(アスベスト,珪素,ベリリウム)
3)サルコイド−シス
4)膠原病(PSS,RA,SLE,PM/DM,Sjogren症候群)
5)放射線肺臓炎
6)パラコ−ト中毒
7)薬剤(ブレオマイシン,ブスルファン,メトトレキセ−ト,金製剤)
8)ウイルス,マイコプラズマ
【症状】
@初発症状→発熱,乾性咳嗽,呼吸困難 A慢性期→チアノ−ゼ,ばち指
【肺線維症になるまでの経過】
・PSS →Raynaud症状 →肺線維症
・食道癌 →ブレオマイシン →肺線維症
・悪性リンパ腫→放射線 →肺線維症
・自殺未遂 →パラコ−ト →肺線維症
【検査】
<聴診>velcroラ音(吸気終末,下葉)
<肺機能>%VC↓(<70%),残気量↓,コンプライアンス↓,DLCO↓
・・・拘束性障害+拡散障害,硬くて小さな肺
<血ガス>PaO2↓,PaCO2↓〜正常
・・・呼吸中枢の刺激により過換気状態(呼吸性アルカロ−シス)
<末梢血>WBC↑,LDH↑,ESR↑・・・膠原病に似る
<胸写>初期→網状輪状陰影(両側下葉)
中期→スリガラス状
末期→honey−comb lung
<Gaシンチ>びまん性の集積
【診断】
@乾性咳嗽と発熱、徐々に増加する労作性呼吸困難があり、 ←初発症状
A両側下肺野に吸気後半を中心にfine crackle(Velcroラ音)を聴取
BLDH↑、CRP↑(特に分画の3)、赤沈↑がみられ ←病状を反映
C胸部X線、胸部CTで両側下肺野の網状、多発輪状陰影 ←蜂窩肺像
D肺コンプライアンス↓ ←広範な線維化
%VC↓、FEV1.0%正常 ←拘束性障害(+)閉塞性障害(−)
PaO2↓、PaCO2→or↓ ←低酸素血症、過換気
A−aDO2の開大、DLCO↓ ←拡散障害
がみられる時
→間質性肺炎を考える
【治療】
急性または急性増悪の時に行う.慢性時は経過観察.
病態が免疫複合体形成であるため,ステロイドが有効.
【予後】
呼吸不全,右心不全(肺性心),肺癌(扁平上皮癌,10%合併)
■塵肺 YnI-74
【概念】
粉塵の吸入による肺の線維増殖性変化を主体とする疾患を言う。粉塵の量・種類・吸入時間で、症状は異なる。また、粉塵による障害は拡散障害だけでなく、small air−way diseaseなどの閉塞性障害も引き起こす。
呼吸器障害は数年〜数十年かけて生じ、最終的には肺線維症に至る。
【診断】
@ 長期にわたる粉塵の吸入があり、
A 乾性咳、呼吸困難を来すことがあり、
B 下肺野を中心にfine crackleを聴取し
C 拡散障害(DLCO↓)、拘束障害(%VC↓)による呼吸障害が見られ
胸部X線に、肺野陰影が見られとき、
→塵 肺を考える。
・塵肺には珪肺、石綿肺、ベリリウム肺等がある。」
■石綿肺 YnI-75
【概念と定義】
・ 天然に存在する線維状の珪酸塩鉱物の総称である石綿を吸入する
→肺の不可逆性進行性びまん性肺線維症
【原因】アスベスト
【症状】呼吸困難,乾性咳嗽(早期に出現),ばち指,fine crackle
【胸写】両側下肺野に線状〜網状陰影,進行すると微細顆粒状(スリガラス状)
胸膜肥厚,石灰化,胸水(間質性肺炎に似る)
【合併】肺癌,悪性中皮腫,胸膜炎
【治療】対症療法
■珪肺 YnI−75
【原因】珪酸,トンネル塵肺∞出稼ぎ塵肺
【症状】呼吸困難(進展しても無症状のことあり),RAを合併=Caplan症候群
【胸写】両側中肺野に結節状の粒状陰影,
肺門リンパ節に卵殻状石灰化(egg shell calcification)
【合併】肺結核
【治療】対症療法
■無気肺 YnI‐76
【概念】
何らかの原因によって,含気量が減少した肺をいい,よってガス交換に関与しない血流が心に還流することになり,肺内シャントが増加する。
【分類】
@閉塞性無気肺(術後無気肺,喘息,異物,腫瘍)
・・・気道閉塞により,末梢領域の肺胞内ガスが周囲に吸収されるため
A圧迫性無気肺(気胸,肺気腫,腫瘍,胸水,横隔神経麻痺)
・・・肺が直接圧迫されるため
B粘着性無気肺(ARDS,IRDS,肺水腫)
・・・サ−ファクタントの活性低下による
C瘢痕性無気肺(肺線維症)
・・・間質の炎症,線維化による
【検査】
<聴診>呼吸音減弱
<検査>WBC↑・・・急性期反応として上昇していることが多い
<血ガス>AaDO2↑・・・拡散面積減少のため
<胸写>肺区域に一致した透過性低下
縦隔患側偏位,患側横隔膜挙上,健側の代償性過膨脹
【診断】
@喀痰排泄不良時,異物誤嚥時,肺腫瘍患者等が
A呼吸苦をきたし,
B聴診上,肺胞呼吸音の減弱と、
C胸部Xp上,肺区域・肺葉に一致した透過性の低下,
患側への縦隔変移,患側の横隔膜挙上が見られたとき
→無 気 肺 を考える
・原疾患の検索上,最も有用な検査は気管支鏡検査である。
【治療】
・原疾患の治療が最も大事!!
・また,分泌物,痰による無気肺の場合には,
気管支ファイバースコープ下に分泌物・痰を取り除く。
■中葉症候群 YnI−77
・右肺中葉気管支の閉塞により,無気肺をおこすもの
・胸写上,右第2弓(右房)のシルエットサイン(+)を示す
・再発が多く,ときに左葉(S4,5)でも起こる
〜嚢胞性肺疾患〜
■気管支拡張症 YnI−78
【概念】
中等大の気管支が不可逆性に拡張し,周囲に慢性炎症を伴うもの。咳、痰、時に喀血を呈する。慢性副鼻腔炎の合併が多い。本症の原因は先天性要因によるもの、後天性要因によるものに2分される。本性は気管支壁の弾力線維および筋肉の破壊が見られ、脆弱部分が拡張して生じる。
【分類】
@先天性(学童期,青年期に多い)
・Kartagener症候群・・・線毛運動障害.副鼻腔炎,右胸心,男性不妊
・無γ−グロブリン血症
A後天性
・特発性
・続発性:肺結核(50%),肺化膿症(30%),
塵肺症,麻疹,百日咳,
アレルギ−性気管支肺アスペルギルス症(好酸球増加+喘息)
【症状】
@咳嗽(起床時),多量の膿性〜血性喀痰,喀血
A慢性副鼻腔炎の合併
【検査】
<聴診>coarse crackle(水泡音)
<胸写>下肺野に線維化,索状陰影
<気管支造影>気管支の拡張所見・・・これで確診
【診断】
@ 数年来、100ml/日以上に及ぶ大量の膿性〜血性の痰、喀血、
起床時に多く起こる咳があり、
A 聴診上、粗い水泡音(ぶつぶつ音、carse crackle)が聞かれる時、
→気管支拡張症 を疑う。
・確定診断は、両側肺の気管支造影にて、
棒状、念珠・紡錘状、嚢胞状の拡張がみられることによる
【治療】
@抗生剤:エリスロマイシン(これが主)
A体位ドレナ−ジ、去痰薬、背中のtappingによる排痰
B喀血には、止血薬、内視鏡的薬物注入
これがだめなら気管支動脈塞栓術
C喀血、感染を繰り返し、病巣が限局している場合には外科的療法
→同一肺葉に限局⇒肺葉切除術,
同一肺区域に限局⇒拡大(肺区域)切除術
■肺分画症 YnI-79
【概念】
・肺の一部(分画肺)が肺内の気管支と交通を持たずに大動脈から分枝した異常血管によって栄養されるもの
・左下葉(とくにS10)に好発する
・肺葉内肺分画症(85%)と肺葉外肺分画症(15%)がある
【分類】
@肺葉内肺分画症(85%)
・正常肺に囲まれたもので,血流は,
腹部大動脈→分画肺→肺静脈と流れる
・呼吸器感染を繰り返し,2次的に気管支と交通することがある
A肺葉外肺分画症(15%)
・固有胸膜に覆われ,正常肺とは完全に分離される
・腹部大動脈→副肺葉→下大静脈(80%)・奇静脈(20%)
・横隔膜ヘルニア,横隔膜弛緩症の合併が多い
【症状】
繰り返す肺炎様症状
【胸写】左下肺野に嚢胞様陰影
【診断】
@ 小児期より肺炎を繰り返し、
A 胸部X線で、肺野に嚢胞様の陰影がみられ、(左下葉とくにS10が好発部位)
B MRAあるいは胸腹部大動脈造影により、
肺への異常動脈が確認された時、
→肺分画症 と診断する。
【治療】外科的切除術
■進行性気腫性嚢胞 YnI-80
=巨大気腫性嚢胞
【概念】
両肺尖部に出来た多発性の嚢胞(ブラ)が次第に大きくなり、健常肺を圧迫・縮小させるため、進行性の労作時呼吸困難を呈する疾患である。健常肺が徐々に縮小し、あたかも消えていくように見えるため、Vanishing lungを呼ばれる。
【診断】
@ 数年の経過で、無症状から徐々に労作時呼吸困難が見られ、
A 胸部X線にて、肺紋理のない嚢胞状の透過性亢進領域と、
正常肺の縮小・圧排象が見られた時、
→進行性気腫性嚢胞 を考える。
※ 気胸との鑑別には、肺の編縁が内に凸であることをみる
【治療】
まず、対症療法(抗生物質、去痰薬、体位ドレナージなど)
・心症状(+)、自然気胸を繰り返す症状がみられた時には、嚢胞の外科的切除を考慮する
■肺良性腫瘍
★全肺腫瘍中の5%を占める
■肺過誤腫 YnI-82
【概念】
肺内の正常組織(上皮成分と間葉性成分)の異常増殖により形成された良性腫瘍である。
・主として軟骨成分からなる
・無症状のことが多い
・胸写で,ポップコ−ン状の石灰化像
・腫瘍核出術,部分切除術
【診断】
@ 無症状で
A たまたま胸部X線にて、単発で境界明瞭な類円形陰影が発見され、
(ときに腫瘍内のポップコーン状石灰化)
B 切除標本では、軟骨、脂肪、血管、線維、平滑筋などの非上皮成分と、
肺上皮、気管支上皮などの上皮成分とからなる時、
→肺過誤腫 と診断する。
・ 増大傾向の認められるもの、また、肺癌を完全には否定できない時には、経気管支的肺生検or 開胸肺生検 をおこなう。
【治療】
・ 腫瘍核出術、肺部分切除を行なう。
▲肺硬化性血管腫 YnI-82
・中年女性に好発.右下葉に多い.増大傾向あり.
・無症状のことが多い
■原発性肺癌 YnI-84
【概念】
肺に発生する悪性腫瘍。60~70歳代にピークがあり、男性に多い。罹患率、死亡率は男女徒もに増加傾向にあり、男性の統計で肺癌による死亡数は胃癌を上回り、悪性新生物中第一位となっている。
病因として、喫煙(扁平上皮癌、小細胞癌で関連大)、職業因子(クロム、アスベストなど)が重要である。
組織型によって、扁平上皮癌(40%)、腺癌(40%)、小細胞癌(10%)、大細胞癌(5%)などに分類される。
■扁平上皮癌 YnI-84
【概念】
扁平上皮癌は重層扁平上皮に類似し、癌細胞が扁平化している。
喫煙と密接な関係にあり、特に男性に多い。
肺門部の比較的太い気管支での発生が多く(一部は末梢側に発生)、そのため、比較的早期に症状(咳、血痰、胸痛)が出現する。連続的に周囲に浸潤する傾向が強い。
【頻度】40% 【性差】男(喫煙)
【部位】肺門(中枢),ときに末梢(肺野,肺尖)
【進展】気道内腔を埋めるように進展し,気道閉塞.構造破壊あり
【転移】周囲組織への直接浸潤 【症状】喀痰,呼吸困難(早期より著明)
【転移症状】Pancoast症候群(肩〜前腕の疼痛,Horner症候群),
意識障害(高Ca血症,PTH↑),無気肺,閉塞性肺炎,ばち指,
嗄声(左反回神経麻痺)
【胸写】空洞形成,辺縁鮮明の腫瘤(早期には正常のことが多い)
【診断】
@ 多喫煙歴のある40歳以上の男性に、 ←喫煙歴
A 咳・喀痰・血痰があり、 ←比較的早期に症状
B 胸部X線にて、肺門部orその近傍に腫瘤陰影が見られ、 ←肺門癌
無気肺、空洞形成を伴っている時、
→扁平上皮癌(腺癌) を疑う。
・ スクリーニング法では、喀痰細胞診が最も有効である。(80%以上に陽性)
・ 確定診断は、
腫瘍マーカー(SCC)、喀痰細胞診、気管支ファイバーなどで行う。
【治療】
1.病期T・U期では、外科切除(肺葉切除+肺門リンパ節郭清)
2.病期VA期では、T3N1M0では完全切除を前提として手術、それ以外は手術適応なし
3.病期VB・W期では、手術適応なし。化学療法・放射線療法。
【予後】(肺癌の中では)最もよい
▲腺 癌 YnI-85
【概念】
腺癌は腫瘍細胞が菅腔形成を示す。
喫煙との関連性は明らかではなく、女性の肺癌の70%を閉める。
肺野(末梢)に好発し、発育は遅いが、血行性転移(骨、脳)を占めやすい。抗癌薬、放射線の感受性は低い。
【頻度】40% 【性差】女(非喫煙)
【部位】末梢
【進展】既存構造を置換しつつ,胸膜,血管を集束しながら進展
【転移】血行性転移
【症状】胸痛,胸水 【転移症状】癌性胸膜炎(LDH↑)
【胸写】胸膜嵌入像,孤立結節状の陰影(coin lesion),血管集束像
【診断】
@ 咳、喀痰、血痰、胸痛があり、(しばしば無症状である)
A 胸部X線にて、肺野にnotching sign,spiculationを伴う腫瘤性陰影
胸膜陥入像を呈する時、
→肺腺癌 を疑う。
・ 確定診断は、喀痰細胞診、擦過細胞診、
気管支ファイバースコープ、経皮生検等で行う。
【治療】抗癌薬、放射線の感受性は低い
1.病期T・U期では、外科切除(肺葉切除+肺門リンパ節郭清)
2.病期VA期では、T3N1M0では完全切除を前提として手術、それ以外は手術適応なし
3.病期VB・W期では、手術適応なし。化学療法・放射線療法。
↑扁平上皮癌と一緒。
【予後】やや悪い
▲肺胞上皮癌
【頻度】1〜5% 【性差】女(非喫煙)
【部位】末梢 【進展】肺胞壁に沿って内側に進展
【転移】管内性転移 【症状】漿液性痰
【胸写】air bronchogram,スリガラス状陰影(肺炎様)
【治療】手術療法 【予後】やや悪い
▲大細胞癌
【頻度】5% 【性差】男
【部位】末梢 【転移】血行性・リンパ行性
【症状】胸痛,女性化乳房(hCG↑)
【胸写】Notch sign(八つ頭状陰影),大型陰影
【治療】手術療法 【予後】悪い
▲小細胞癌 YnI-86
【概念】
小細胞癌は小型の腫瘍細胞がびまん性に並ぶ。
比較的中枢性に発生(肺門部に好発)し、発育・転移(血行性、リンパ行性)が早く、最も予後不良。しばしば異所性ホルモン産生(ACTHやADH)やEaton−Lambert症候群の合併など、多彩な腫瘍随伴症状を伴う。
扁平上皮癌と同様に喫煙に関係があるとされている。男性に多い。
【頻度】15% 【性差】男(喫煙)
【部位】気道粘膜に沿うように進展し気道閉塞.構造破壊はない
【転移】血行性・リンパ行性(早期より著明)
【症状】喀痰,呼吸困難(進行時)
【転移症状】SVC症候群(顔面・頸部浮腫,頸静脈怒脹)
Eaton−Lambert症候群
Cushing症候群(ACTH↑)
SIADH(ADH↑,Na↓,Cl↓)
【胸写】BHL・縦隔リンパ節腫大,辺縁鮮明の腫瘤
【診断】
@ 咳、喀痰があり、
A 胸部X線で、中枢側の腫瘤性陰影と ←肺門型
肺門・縦郭のリンパ節腫大を呈し、
B 喀痰細胞診で、リンパ球様小型細胞or燕麦細胞が見られ、
C Eaton−Lambert症候群、上大静脈症候群
←多彩な随伴症状
内分泌症状(ACTH↑、ADH↑)などを伴う時、
→肺癌(小細胞癌) を考える。
・確定診断は、喀痰細胞診、擦過細胞診、気管支ファイバーなどで行う。
【治療】化学療法(PVP,CAV療法)・放射線療法がfirst choice
※抗癌剤は全身投与ないし気管支動脈注入法(BAI)などの投与法で行う。
【予後】最も悪い
▲化学療法
・PVP・・・シスプラチン,エトポシド
・CAV・・・サイクロフォスファマイド,アドリアマイシン,ビンクリスチン
▲遠隔転移
対側肺>肝>脳(多発性)>骨
▲手術禁忌
・1秒率<40%,%VC<40%
・遠隔転移,鎖骨上窩リンパ節転移,対側縦隔リンパ節転移
・心タンポナ−デ,悪性胸水,反回神経麻痺,横隔神経麻痺
・SVC症候群,肺動脈主幹への浸潤,気管への浸潤
■転移性肺癌 →YnI−92
【概念】肺は全静脈血をうけるため,血行性転移を最もうけやすい
一般に多発性のほうが多い
【X線による分類】
@大結節型: 単発性・・・大腸癌,腎癌,骨肉腫(まれ)
多発性・・・絨毛癌,骨肉腫(肺野に多い.石灰化),対側肺癌,肝癌
A小結節型 (粟粒結核型)
多発性・・・甲状腺癌,前立腺癌
Bリンパ管炎型(癌性リンパ管症)
単発性・・・胃癌
多発性・・・乳癌(間質に多い.胸水貯留)
【頻度】対側肺癌>絨毛癌>骨肉腫>腎癌>乳癌
【診断】
@ 咳嗽血痰があり、
A 肺X線にて肺野に多発性の結節性陰影が出現した時 ←もうこれでいいでしょう
→転移性肺癌 を考える
【治療】
・ 化学療法
・ ホルモン療法→乳癌(男・女性ホルモン)、前立腺癌(女性ホルモン)、甲状腺癌
・ 外科的切除:肺部分切除(核出術)が標準術式となる。
・ 肺門部リンパ節転移のある症例では、肺葉単位の系統的切除が標準術式となる。
(リンパ行性進展をしている)
・ 大腸癌転移例は、葉切除+リンパ節郭清が基本(肺癌と同じ)
・ アプローチは 片側性 ならば後側方切開が一般的。
両側性 ならば胸骨縦(あるいは横)切開。
■気管悪性腫瘍
【概念】
・気管腫瘍中の90%を占める
・転移性気管腫瘍>原発性気管腫瘍 ・原発性の中では腺様嚢胞癌が多い
【症状】呼吸困難(気管内腔の狭窄が70%をこえるとき)
【検査】
・胸写→air bronchogram
・flow−volume曲線→ピ−クの平坦化(上気道の閉塞)
【治療】気管管状切除術(最大で気管全長の1/2=6cm)=端々吻合術
■気管支腺腫
・良性腫瘍中で最も多い
・中でもカルチノイド型が多く,発育は緩徐で転移しにくく,良性の経過
・空洞形成(−)
・ただし円柱腫型は浸潤性発育をし,リンパ節転移をする(30%)
・ヒスタミン産生による喘息様症状
・治療:根治的肺葉切除術+リンパ節廓清
■粘表皮癌 YnI−83
*低悪性度肺腫瘍の一種
1.カルチノイド
2.気管支腺癌
@腺様嚢胞癌 A粘表皮癌
・20〜30歳代に見られるまれな腫瘍で、葉気管支に好発し、気管支内腔に突出するポリープ状の境界明瞭な腫瘍を形成する。
・ 粘液産生する(ものが多い)。
・ 一般に予後は良好
【症状】
・ 咳、痰、喀血、呼吸困難、無気肺など
【治療】
・ 肺癌に準じた根治肺葉切除術。
〜アレルギ−性疾患〜
■気管支喘息 YnI-95
【概念】
・種々の刺激に対する気道の反応性の亢進により,広範囲の可逆性の気道閉塞がみられる
・全人口の1.2〜1.5%
・外因型(アトピ−型)と内因型(感染型)がある
【分類】
@外因型(アトピ−型)
・アレルゲン(ダニ,ハウスダスト,アスピリン,プロプラノロ−ル)
・IgEが関与するT型アレルギ−.1〜2歳に多く,遺伝的素因あり
・発症年齢が低いほど予後不良だが思春期までに自然治癒することが多い
A内因型(感染型)
・細胞性免疫による炎症反応 ・40歳以上に多く遺伝的素因(−)
【症状】
@発作性呼吸困難:秋,春.夜間〜早朝.呼気性喘鳴を伴う.無色透明の喀痰
A起坐呼吸,チアノ−ゼ,意識障害(重症の時)
【検査】
<聴診>呼気性連続音(笛声音)+呼気延長,呼吸音減弱(重症時),奇脈
<検査>IgE↑,鼻汁中好酸球↑ <肺機能検査>1秒率↓
<血ガス>初期は過換気状態 :PaO2↓,PaCO2↓(呼吸性アルカロ−シス)
時は肺胞低換気:PaO2↓,PaCO2↑(呼吸性アシド−シス)
<吸入誘発法>抗原吸入後,1秒率が15〜20%低下すれば陽性
【診断】
@ 発作性に起こる吸気性呼吸困難で ←狭窄によるcheck valveが生じるため
A 乾性ラ音、喘鳴があり、
B 血液検査にてIgE↑、好酸球↑があり、 ←T型アレルギーによる
C 気道過敏性、気道狭窄の可能性が見られた時
気道過敏性→メサンコリン、アセチルコリン吸入により喘息発作が誘発される
気道狭窄の可能性→β−刺激剤よりFEV1.0が20%以上改善する
→気管支喘息 と診断する
*重症になると呼吸音源弱、チアノーゼ、意識障害、気障呼吸、奇脈を生じる
【治療】
・ 小発作or中発作に対しては
→β刺激薬の吸入、更にテオフィリン(アミノフィリン)と5%ブドウ糖をゆっくりと点滴し、必要に応じてはステロイドを追加する。
・ 大発作に対しては
→まずエピネフリンを皮下注射し、必要があれば気道を確保し、ベータ刺激薬の吸入、続いて上記の内容と同じ点滴を開始する。
*テオフィリンは血中濃度が判定できるので、10〜20um/mlを維持する。
・ 発作重積状態(発作24時間以上,エピネフリンに無反応のとき)
→輸液+ステロイド+O2療法
【慢性喘息の管理について】
ピークフロー値(PEF)を毎朝夕2回測定し、測定値が基準値の80%以上、日内変動が20%以内になるようにコントロールする。
・ PEFで基準値の80%以上but日内変動が20%以上
→β2刺激薬の吸入
・ 測定値が基準値の80%以上となった
→β2刺激薬の吸入+吸入ステロイド剤の開始
・ 測定値が基準値の70%以下になった
→吸入ステロイド剤の量を増やしたり、経口ステロイド剤を投与
【予防】
@アレルゲン対策 ・・・ダニ退治,カビ対策
A抗ヒスタミン剤 ・・・発作中には用いない(喀痰が粘稠化)
B抗アレルギ−剤 ・・・クロモグリク酸(インタ−ル(R))
C抗生物質 ・・・成人に多い感染型に使用
■ アスピリン喘息 YnI−99
【概念】
アスピリンを始めとする酸性非ステロイド系抗炎症薬の服用により誘発される喘息である。アレルギー性のものではなく、プロスタグランジン生成阻害による気道の狭窄によるとされている。
【診断】
@感冒薬服用後 ←アスピリンなどの酸性非ステロイド系抗炎症薬の服用
A強い呼吸困難、喘息、チアノーゼが出現し、 ←気道の狭窄
B動脈血ガスで、PaO2↓、PaCO2↑の時、
→アスピリン喘息 を疑う
【治療】
酸性非ステロイド製抗炎症薬からの回避が重要である。
・発作時には、β−受容体刺激薬(アドレナリンの皮下注)がfirst choiceである。
次いで、テオフィリン、ステロイド剤を使用する。
また、減感作療法を行うこともある。
■ PIE症候群 YnI-101
【概念】
末梢血への好酸球増加(白血球数の6%以上、または400個/mm3以上)を伴う、肺組織への好酸球の一過性増加を示す疾患の総称。T,V,W型アレルギーが関与している。
【分類】
1.単純性肺好酸球増多症 →Loffler症候群
2.遷延性肺好酸球増多症
3.喘息性肺好酸球増多症(アレルギー性気管支肺アスペルギルス症)…最多
4.熱帯性好酸球増多症(Weingarten症候群)
5.アレルギー性血管炎
a.結節性多発性動脈炎に伴うPIE
b.アレルギー性肉芽腫性血管炎(Chrug&Strauss症候群)
c.Wegener肉芽腫症
【診断】
@ 微熱、咳、痰、
A 末梢血・喀痰中の好酸球増加、血清IgE↑を示し、
(WBCの6%以上ないし、400個/mm3以上)
B 胸部X線で、異常陰影を伴い、(末梢性の反復する移動性の浸潤影が多い)
C 抗生物質投与にて改善がみられない時、
→PIE症候群 を考える。
【治療】
一般にステロイドが有効(Loffler症候群は経過観察)
▲アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(PIE症候群)
【概念】
・アレルギー性気管支喘息に肺浸潤や好酸球増加がみられる
・T型,V型アレルギー ・中心性気管支拡張
・PIE症候群に属する
【検査】
・Grocott染色 ・・・真菌の証明によい
【診断】
@ 発作性呼吸困難(喘息)があり(ときに発熱を伴う)、
A 血液検査にて、IgE↑、好酸球↑ ←T・V型アレルギーによる
B 肺機能検査にて、%VC↓、FEV1.0%→、DLCO↓ ←拘束性換気障害
C 胸部X線にて、反復する一過性肺浸潤(移動する肺の浸潤影)
気管支造影にて、中心性気管支拡張が見られる時(特異的)
→アレルギー性気管支肺アスペルギルス症 を疑う。
・ 確定診断は、喀痰よりアスペルギルスを同定すること。(Grocott染色)
他にアスペルギルス沈降抗体(+)、
アスペルギルス抗原に対する即時型皮膚反応(+)も診断に役立つ
【治療】
ステロイドの全身投与にて諸症状の改善がみられる。(不可欠)
■過敏性肺炎 YnI-102
【概念】
・有機塵埃の反復吸入により感作され,びまん性間質性肺炎を主とするV+W型アレルギ−反応.
・日本では夏型過敏性肺炎(Trichosporon cutaneum)が多い
※PIE症候群と混同しないこと。本性では血液検査でIgE、好酸球は正常
【検査】
<聴診>velcroラ音
<肺機能>%VC↓,コンプライアンス↓,DLCO↓・・・拘束性障害+拡散障害
<ツ反>陰性 <検査>ESR↑,ときにACE活性↑
<胸写>びまん性粒状陰影(全肺野)
<TBLB>間質に肉芽腫性病変を形成
【診断】
@ 発熱、乾性咳嗽、捻髪音、労作性呼吸困難があり、 ←間質性肺炎症状
A WBC↑、CRP(+)、赤沈↑がみられ、 ←炎症所見
IgE/抗酸球は正常、血清補体価→、ツ反陰転化
B %VC↓,FEV1.0%→,PaO2↓,DLCO↓ ←拘束性障害+拡散障害
C 胸部X線で両側スリガラス状orびまん性散布性粒状陰影がみられ ←異常間質陰影
→肺線維症
D 環境を変えただけで(入院や転地)、数日以内に軽快し、
E 気管支肺胞洗浄(BAL)で
著明なTリンパ球数の増加、CD4/CD8比↓がみられ ←免疫学的所見
特異抗体(Trichosporon cutaneumに対する)陽性な時 ←夏型過敏性肺炎
→過敏性肺炎 と診断する。
※ただしTrichosporon cutaneumに対する抗体陽性なのは夏型過敏性肺炎にかぎられる。
【治療】
原則は抗原の暴露を避けること。
なお改善が遅い症例ではステロイドが適応となる。→肺線維症の予防
通常予後は良好。
※減感作療法は効果なし
■サルコイド−シス YnI−104
【概念】原因不明の全身性非乾酪性肉芽腫性疾患
細胞性免疫の低下を伴う.20歳代に多く,北(寒冷地)に多い
【胸写による分類】
・T期(A病型:肺門型,70%) ・・・BHL
・U期(B病型:肺門・肺野混合型,20%) ・・・BHL+肺野病変
・V期(C病型:肺野型,10%) ・・・肺野病変
(最終的には肺線維症)
【症状】
@発熱,乾性咳嗽(通常無症状)
A霧視,視力障害,ブドウ膜炎,角膜に豚脂様沈着物 ⇒眼科で頻出
B頸部リンパ節腫脹,肺門リンパ節腫脹(リンパ節病変)
Cサルコイド結節,結節性紅斑 ⇒皮膚科
D心伝導障害,心不全(心病変・・・死因となる)
E末梢神経障害,顔面神経麻痺(神経病変)
F骨格筋障害
G髄膜炎,脳症
※サルコイド結節=乾酪壊死を伴わない類上皮細胞浸潤⇒瘢痕浸潤を起こす
【検査】
<聴診>fine crackle
<血液>Tリンパ球↓(<80%),ACE活性↑,
血清Ca↑・尿Ca↑(ビタミンD↑による),
γ−グロブリン↑,リゾチ−ム↑
<ツ反>陰性
<胸写>びまん性粒状陰影(全肺野) ・・・肺野病変のとき
BHLpotato like lesion ・・・肺門病変のとき
<生検>TBLB,Danielリンパ節(前斜角筋リンパ節)から採取
非乾酪性肉芽腫・・・ラングハンス巨細胞,類上皮細胞
<Gaシンチ>病変部に集積(マクロファ−ジ活性と平行)
【診断】
@ 20歳代と40~50歳代で(女性に多い) ←2峰に分かれる
A まず眼前霧視、眼痛、視力障害、 ←眼症状:ブドウ膜炎
ついで乾性咳、 ←呼吸器症状
結節性紅斑、サルコイド結節、 ←皮膚症状
B その他、発熱・倦怠感などの全身症状
心症状、無痛性耳下腺腫脹、表在リンパ節腫脹が見られ、
C 血中リンパ球↑、赤沈↑、ツ反陰転化、Ca↑、ACE活性↑
D 気管支肺胞洗浄(BAL)中のTリンパ球↑(CD4/CD8↑)
E 胸部X線にて、両側肺門リンパ節腫大(BHL)
←第T期−肺門型
or全肺野びまん性粒状影がみられた時、 ←第2期−肺野型、肺線維症
→サルコイドーシス を疑い、リンパ節生検にて、
非乾酪性類上皮肉芽腫を確認すれば、診断は確定する。
【治療】
@経過観察・・・自然寛解が多い
Aステロイド・・・肺野病変の進行時,または肺外病変(眼病変・心病変)の出現時
※妊娠によって,症状は一時改善
■Goodpasture syndrome YnI-106
【概念】
肺と腎に対する共通の抗基底膜抗体(IgG)が産生される自己免疫疾患の一種。肺出血,糸球体腎炎(RPGNも少なくない)を主張とする。U型アレルギーが関与。
【病理】
抗基底膜抗体の沈着→@肺障害
A糸球体腎炎
@肺胞隔壁基底膜障害・・…肺胞腔への出血、喀痰中の担鉄細胞、
肺胞壁肥厚(拘束性障害+拡散障害+換気障害)
→喀血(初発)、血痰、鉄欠乏性貧血
A糸球体基底膜障害…・・糸球体病変、*尿細管病変は(−)、半月体形成
(増殖性壊死性腎炎)
→血尿,蛋白尿,浮腫,高血圧
【診断】
@20代以上の男性で,
A初発症状として,喀血,血痰が見られ, ←肺障害が人障害より先行
B胸部X線でび慢性間質性肺炎像(肺門部〜下肺野)を呈し, ←肺胞隔壁基底膜障害
C蛋白尿・血尿・高血圧等が見られるとき ←糸球体基底膜障害
→Goodpasture’s syndromeを疑い,確認検査を行う。
【治療】
・ステロイド,免疫抑制剤,血漿交換療法(抗基底膜抗体の除去),透析療法を行う。
▽血痰・喀血をきたす疾患(7つ)
が@けのA上でB決断C,宮中のD格調E高い拘束にFグッバイG
@癌 A結核 BWegenr肉芽腫症 C血痰 D肺吸虫症 E気管支拡張症
F肺梗塞 GGoodpasture
▽Goodpasture症候群について
Goodなピッチャーは@BGM中A、けったいなB鉄CバットDの若いEにーちゃんにF三塁線上Gに速いHヒットを打たれる。
@Goodpasture A抗GBM(糸球体基底膜)抗体陽性 B血痰 C担鉄cell D予後不良
E20歳代に好発 FU型アレルギー GC3,IgGが線状に沈着(liner pattern)
〜肺循環障害〜
■肺塞栓・肺梗塞 YnI-107
【概念】
下肢静脈血栓(60%)や心腔内の血栓(30%)など,静脈血中の塞栓子(血栓,脂肪,腫瘍細胞etc.)により肺動脈を 閉塞した状態を肺塞栓といい,その末梢領域の出血性壊死をきたした状態を肺梗塞という
※栓子が大きい→急性肺高血圧・急性肺性心→右心不全
※右側下肺野に好発する(∵血流が多い)
※誘因:静脈病変,術後,長期臥床,肥満,糖尿病
【症状】
・突然の呼吸困難,血痰,喀血 ・胸痛,胸水
・頻呼吸(過換気),失神,チアノ−ゼ
【検査】
<血液>LDH↑ (∵肺酵素逸脱) ビリルビン↑(∵局所の溶血)
GOT正常(心筋梗塞との鑑別) WBC軽度↑
FDP↑ (血栓症のとき) 抗凝固因子抗体陽性
<血ガス>PaO2↓,PaCO2↓,A−aDO2↑・・・呼吸性アルカロ−シス
<聴診>Up亢進 <ECG>異常Q波,右脚ブロック,右軸偏位
<胸写>肺血管陰影↓,knuckle sign(肺動脈近位部の拡大)
※正常なX線のことも多い
<肺シンチ>血流シンチ(99mTc−MAA)で梗塞部に欠損があるのに,
換気シンチには異常なし
<肺血管造影>欠損像,血流途絶あり
【診断】
@ 下肢の静脈血栓症や骨折、癌、手術後などの患者で、 ←塞栓子の形成
A 急に出現した胸痛、呼吸困難、血痰があり、
チアノーゼ、頻呼吸、瀕脈が見られ、
B LDH↑、血清ビリルビン↑、GOT正常 ←血液学的trias
C 血液ガスはPaO2↓、PaCO2↓、pH↑を示し ←呼吸性アルカローシス
D 聴診で、Upの亢進があり、 ←肺高血圧
E 胸部X線にて、肺動脈主管部の拡張、右心拡大が見られる時 ←非特異的
→kunckle sign →cardiomegaly
→肺塞栓症 を疑う。
・確定診断は肺血管造影or 肺血流・換気シンチのミスマッチによる。
【治療】→治療の大原則は、血栓に対する線溶療法ないし抗凝固療法である。
但し急性期には呼吸困難、胸痛等に対する対症療法(O2投与や鎮痛剤)も行ないながら、次の@,Aを行なう
@ 血栓に対する治療
まず血栓溶解療法(t-PA,ウロキナーゼ)と抗凝固療法(ヘパリン)を行なう。
凝固線溶検査で異常がなくなったら、ワーファリン、抗血小板剤を投与。
A 右心不全に対する治療
Fowler体位にして、O2投与、輸液を行なう。
*massiveに詰まると→急性肺性心、肺高血圧→右心不全→心拍出量↓→shockにいたる。
■肺性心 YnI−110
【概念】
各種の肺疾患や肺血管性疾患などにより、2次的に右心系の障害(右心不全など)を起こした病態を言う。
【診断】
@ 肺塞栓症、原発性肺高血圧症 (肺血管障害型) 肺に基礎疾患
慢性閉塞性肺疾患、胸郭変形などがあり、 (換気障害型)
A ばち指、呼吸困難、チアノーゼ、 右心不全症状
頚静脈怒張、四肢・顔面の浮腫、肝腫大等を呈し、
B 検査上、肺高血圧症と同様に右心系負荷の所見があり、
心電図:右軸変異、右室肥大、肺性P波
心 音:Up↑
胸部X線:肺動脈中枢部拡大、肺野末梢血管陰影↓
C 心カテ
RA圧↑(肺動脈平均圧>20mmHg) のとき、
PAWP正常
→肺性心 を考える
【治療】基礎疾患の管理が最も重要!!
・O2吸入、強心薬、利尿薬、テオフィリンなどを用いる。
▲肺性心をきたす疾患
@原発性肺高血圧症 C肺線維症
A肺塞栓症 D睡眠時無呼吸症候群
B慢性肺疾患 E胸郭変形
■原発性肺高血圧症 YnI−109
【概念】
・原因不明の肺高血圧症(肺動脈圧>30mmHg)をいう
・30歳代の女性に多く,これによる右室肥大を肺性心という
【検査】
<聴診>Up亢進
<ECG>肺性P波,右軸偏位
<心カテ>肺動脈圧↑,PAWP(=左房圧)は正常,
肺血管抵抗↑,O2含量正常
<胸写>肺血管陰影↓,右心拡大
【診断】
@ 20~50歳代の女性で、(男女比1:1.4~1.7) ←比較的若年の女性に好発
A 労作時呼吸困難、動悸、易疲労感、咳・痰、チアノーゼ、胸痛
喀血、失神、進行すれば右心不全症状を呈し、
B 聴診で、Up亢進、Graham Steel雑音が聞かれ、 ←右心系負荷
C ECG上、右軸偏移、右室肥大、肺性Pが見られ、
D 心カテで、肺動脈圧が上昇(平均圧25mmHg以上)
肺動脈楔入圧が正常(12mmHg以下)
右室−肺動脈収縮期圧格差(−)で、
E 心エコーで、右室内腔の拡大と、右室前期駆出時間の延長所見があり、
F 肺性心をきたすような呼吸器・胸郭疾患がない時
→原発性肺高血圧症 を考える。
【治療】根治的治療はない。低O2血症例には酸素療法を行う
@基礎疾患の治療
A強心剤(ジギタリス),利尿剤(フロセミド)
B在宅酸素療法
※β−ブロッカーは心不全の悪化をきたすこともあり、禁忌!!
※予後不良 ※妊娠は禁忌
▲肺高血圧をきたす疾患
@原発性肺高血圧症
A僧帽弁狭窄症
B甲状腺機能亢進症
■肺動静脈瘻 YnI−110
【概念】★肺動静脈間にシャントが形成され,右→左シャントとなっている
【分類】
・先天性・・・遺伝性出血性毛細血管拡張症=Osler−Rendu−Weber病(常優)
・後天性・・・転移性肺癌,肝硬変,放線菌症etc.
※10〜20歳代の男性 ※単発性(60%)と多発性(40%)
【症状】
@労作時呼吸困難(最も多い主訴)
Aチアノ−ゼ B多血症
C血管雑音・・・吸気時には肺血流量が増加するので増強,
呼気時には減弱(心収縮期にも増強)
【合併】
喀血,血胸,脳膿瘍
【検査】
<血液>PaO2↓,SaO2↓・・・シャントによる
<胸写>coin lesion・・・両側下葉に多い
<心カテ>心拍出量↑,肺動脈圧は正常〜↑
<肺血管造影>これで確診
【治療】
局所摘出術,区域切除術(再発の可能性あり)
■肺水腫 YnI−113
【原因】
@肺毛細血管透過性亢進による(非心原性肺水腫)
→ショック肺(ARDS),外傷,
薬剤(ヘロイン,モルヒネ,ヒスタミン,刺激ガス)
A静脈還流量の増加による(心原性肺水腫)→僧帽弁狭窄症,拡張型心筋症
B血漿膠質浸透圧低下による→肝硬変,ネフロ−ゼ症候群
【症状】
・呼吸困難(夜間に多い)
・ピンク色泡沫状痰
・血痰を含む大量の漿液性喀痰(ARDSのとき)
【検査】
<聴診> 水泡音(湿性ラ音)
<肺機能検査>%VC↓,残気量↓↓・・・シャントによる(非心原性のとき)
<胸写> butterfly shadow,Kerley's B line
vanishing tumor(利尿剤で消失),white lung(ARDSのとき)
<心カテ> PAWP↑(心原性のとき:30mmHg以上)
【診断】
@ AR,MS,左心不全などの心疾患、 ←心原性肺水腫
術後、重症多発外傷、敗血症、ネフローゼなどに続いて、 ←非心原性肺水腫
A 就眠後数時間して、呼吸困難(起坐呼吸)、喘鳴等が出現し、
ピンク状の泡沫状痰を伴い、
B 聴診上、胸部に大~小水泡性ラ音が聞かれ、
C 血液ガスで、PaO2↓、PaCO2↓(重症例ではPaCO2↑) ←呼吸性アルカローシス
D 胸部X線にて、両側性にButterfly shadow,Kerler‘s B line,
Vanishing tumorがみられた時、
→肺水腫 を考える。
【治療】基礎疾患の治療と誘因の把握が、治療方針決定の上で重要
@基礎疾患の治療
APEEPによるO2投与・・・静脈還流量,心拍出量ともに減少させる
Bsemi−Fowler位(半座位)による排痰・・・臥位,体位ドレナ−ジは禁忌
Cステロイド,モルヒネ,フロセミド(利尿薬),ニトログリセリン,
エチルアルコ−ル,ジギタリス,アミノフィリン
D非心原性の時には、ARDS(ショック肺)の治療を行うが、
腎不全が原因の時には、まず血液浄化法(ECUM)による脱水を考える。
生理食塩水輸液は禁忌!!
〜機能的呼吸障害〜
■過換気症候群
【概念】
・若い女性に多い
・心因性ヒステリ−が原因で,発作時に肺胞過換気状態を生じるもの
→呼吸性アルカローシスを来たす
【症状】発作時のみ症状が出現し,かつ発作が30分〜1時間と長い
呼吸困難,頻呼吸,テタニ−,口唇・手のシビレ,失神
※血痰,チアノ−ゼはみられない
【検査】
<血ガス>PaCO2↓↓,PaO2↑・・・呼吸性アルカロ−シス
<肺機能検査>正常
【診断】
@ 若年の女性で、精神的ストレスを受けやすい人に、
A 急に呼吸困難、多呼吸がみられ、
B 指尖部・口周囲のしびれ感が30〜1時間続き、
不穏興奮状態で軽度の意識混濁を来たし、 ←テタニー
C PaCO2↓↓、pH↑を示した時、 ←呼吸性アルカローシス
→過換気症候群 を疑う。
・診断は、器質的疾患の除外(YGテストなどの性格検査、心電図・脳波も重要)
自発的過換気などでの発作誘発、
呼気再吸入やCO2吸入での発作軽快により行なう。
【治療】@紙袋反復呼吸(CO2投与)・・・2gの袋
A低濃度CO2投与・・・5%CO2と95%空気の混合ガス
■肺性脳症(CO2ナルコ−シス)
【概念】
・肺胞低換気→CO2蓄積→脳症状
・PaCO2>50mmHg,PaO2<60mmHg
・慢性肺疾患(COPD,喘息,感染)・肥満・胸郭変形を有する患者に
対する高濃度O2投与(>3l/min),睡眠剤,鎮静剤を契機として発症
【症状】
@発汗,皮膚紅潮 ・・・末梢血管の拡張による
A頭痛,血圧上昇,意識障害,情緒障害,
羽ばたき振戦,傾眠,うっ血乳頭 ・・・脳血流増大による
【検査】
<脳波>徐波出現
<髄液>圧上昇
<血ガス>PaCO2↑↑,PaO2↓・・・呼吸性アシド−シス
HCO3−↑ ・・・代償作用
【治療】
@低濃度O2投与(0.5〜2 l/min)
A人工呼吸器による強制換気
▲PaO2<60mmHg(=呼吸不全)でPaCO2<50mmHgのとき
・原因:換気血流不均衡,拡散障害,シャント
・治療:高濃度O2投与(3〜4l/min),PEEP
※room airでPaO2<60mmHgのときを呼吸不全という
■ 睡眠時無呼吸症候群
【概念】
1晩(7時間以上)の睡眠中に30回以上の無呼吸が、REM、non−REM期の両方に出現する疾患。ここで無呼吸とは10秒以上の口と鼻での気流の停止と定義されている。@閉塞型とA中枢型、及びそれらのB混合型に分類される。閉塞型は肥満、アデノイド、下顎発育不全などにより気道が閉塞するものであり、本症の多くはこれによる。
【診断】
@ 壮〜中年の男性で、(肥満者が多い)
A 睡眠中のいびき、10秒以上の呼吸停止、異常な体動、 ←上気道の閉塞による
日中の傾眠がみられ、
さらに二次性赤血球増多症、チアノーゼ、右室肥大を伴い、
B 血液ガスにて、PaO2↓↓、PaCO2↑↑、pH↓の時、 ←呼吸性アシドーシス
→睡眠時無呼吸症候群 を疑い、確認検査を行なう。
・確定診断はポリソムノグラフィー(PSG)による。
【治療】
まずは減量
減量してもまだ駄目な場合は・・・
1.睡眠中の経鼻的持続陽圧呼吸(nasal CRAP)が有効
→鼻マスクを装着し睡眠し、気道に5〜15cmH2Oの陽圧をかける
軽症ならば薬物療法(プロゲステロン(呼吸刺激薬))を試みる。
2.閉塞型では咽頭部の形成術を行なう。
■Pickwick症候群
【概念】気道閉塞などの基礎疾患がないのに,肥満によって肺胞低換気を生じるもの
【症状】trias→肥満,傾眠,周期性呼吸
Cheyne−Stokes呼吸,チアノ−ゼ,痙攣
多血症(PaO2↓による),右室肥大(肺性心)
【検査】
<血ガス>PaCO2↑↑,PaO2↓↓・・・呼吸性アシド−シス(重症)
<肺機能検査>1秒率↓,FRC↓・・・閉塞性疾患
<ポリソムノグラフィ−>これで確診
【治療】
@減量,食事療法,側臥位
ACPAP
Bプロゲステロン製剤・・・換気を促す
〜原因不明の肺胞疾患〜
〜縦隔腫瘍〜
■縦隔腫瘍
【概念】
・胸腺腫>奇形腫>神経原性腫瘍の順に多い
・胸腺腫はしばしば悪性化(遠隔転移)が認められ,
かつ良性でも経過不良のものもあるbut外科的に摘除可能例が多い
・神経原性腫瘍は横隔神経麻痺をきたさない
・心膜嚢胞は心横隔膜角に好発するが,心圧迫症状は少ない
・気管支嚢胞が気道と交通することはまれ →内容物は液体のことが多い
・交通があると2次感染が多く,内容物は空気となる
・単発性が多い
【部位】
@上縦隔:胸腺腫,甲状腺腫 (2T)
A前縦隔:胸腺腫,甲状腺腫,奇形腫 (3T)
B中縦隔:悪性リンパ腫,気管支嚢胞,心膜嚢胞
C後縦隔:神経原性腫瘍,消化管嚢胞
【症状】
@SVC症候群
A反回神経麻痺(嗄声)
BHorner症候群(小児に多い) ・・・神経原性
Ccafe−au−lait spot,皮下結節(von Recklinghausen) ・・・神経原性
D嚥下障害,眼瞼下垂,複視(重症筋無力症) ・・・胸腺腫
E異所性ホルモン産生(ACTH,カルシトニン)(Cushing症候群) ・・・胸腺腫
F赤芽球癆,低γ−グロブリン血症 ・・・胸腺腫
【治療】
@外科的切除術・・・良性腫瘍,悪性リンパ腫以外の悪性腫瘍
・上縦隔→頸部襟状切開(甲状腺腫)
・前縦隔→正中切開
・中縦隔→腋窩切開(心膜嚢胞),側方切開(気管支嚢胞)
・後縦隔→後方開胸切開(神経原性腫瘍)
A放射線,化学療法・・・悪性リンパ腫,胸腺腫,奇形腫はよく反応する
※副作用・・・放射性肺臓炎
(放射線照射に一致した間質性陰影,ステロイドによる治療)
▲肺門・シルエットサイン(+)が多い,滑らか,広茎 →縦隔腫瘍
・シルエットサイン(−)が多い,鋭角な腫瘤 →肺門癌
■ 胸腺腫
【概念】
縦隔腫瘍の中でもとも頻度が高い(30%弱)。病理組織型では、上皮細胞優位型、リンパ球優位型、混合型に分類される。周囲組織への腫瘍浸潤により限局被包方と浸潤型に分け、良悪性の基準にしていたが、被包型にも経過が不良なものがあり、現在胸腺腫は基本的に悪性と考えられている。
合併症として、重症筋無力症(約30〜75%)、赤血球労、低〜無γグロブリン血症、Cushing症候群などが知られている。
【診断】
@ 咳、呼吸困難、 ←呼吸器症状
上大静脈症候群 ←循環器症状 腫瘍の圧迫症状
嗄声 (反回神経麻痺) ←神経症状
Horner症候群(交感神経麻痺)がみられ、 ← 〃
A 時に眼瞼下垂、筋力低下が見られ、 ←重症筋無力症の合併
B 胸部X線orCTにて、前縦隔or上縦隔に腫瘤性病変が見られる時、
→胸腺腫 を考える。
【治療】胸腺腫は50%以上摘除し得る。さらに術後放射線照射を行なう。
1.
外科的治療
外科的切除(胸骨正中切開、拡大胸腺摘除術)
非浸潤型・・・・・完全摘除の可能性が大となる
浸潤型・・・・・・・不完全摘除に終わる場合もある
※重症筋無力症では胸腺腫がなくても拡大胸腺摘出術を行なう。
2.放射線療法・・・・・・放射線感受性は高い。完全切除不能例や再発例に行なう。
3.化学療法・・・・・・・・最近は化学療法が効く例もある。
■神経原性腫瘍
【概念】
神経構成要素である神経線維、神経節等に由来する腫瘍。ほとんどは良性腫瘍で、無症状が多い。
【診断】
@ 特別な自覚症状は見られず、
A 胸部X線にて、後縦隔に腫瘤性病変が見られた時 ←後縦隔はこれのみ
→神経原性腫瘍が最も考えられる。
【治療】
・ 良性のものが90%を占め、根治手術可能例が多い。
・ 早期に外科的に腫瘍摘出→後方開胸術を用いる。
〜胸膜・胸壁疾患〜
■胸膜炎(胸水貯留) YnI‐124
【概念】
胸膜に炎症が起こり、臓側胸膜と壁側胸膜の間の胸膜腔に滲出液(胸水)が貯留する病態を言う。原因として、結核性、癌性、細菌性などがある。
【診断】
@発熱,乾性の咳,深呼吸時に痛みが増強する胸痛,呼吸困難があり,
A打診上,濁音界とその上部の鼓音帯を認め
B胸部X線上,肋骨横隔膜角が鈍化しており,
異常陰影が体位により変動する。
Cエコー(CT)にて胸壁下に体位により変動する低エコー領域(低吸収域)を認めるとき
→胸膜炎 を考える
*A〜Cは胸水の存在を示唆している。
胸水が認められれば,まず,悪性腫瘍と結核を第一に疑う。(両者で全体の2/3)
・確定診断のために胸水穿刺を施行し,細胞診,細胞培養を行い,同時にCEA,ADA,糖,ヒアルロン酸等を測定する。
さらに胸膜生検を行うことがある。
【治療】原疾患に対する治療を優先させる
1.安静・対症療法
2.胸腔穿刺
3.癌性胸膜炎などでコントロールが困難な時には、排液後にOK432、
アドリアマイシン等を注入する。(胸膜癒着療法)
■胸膜中皮腫
【概念】
・胸膜原発の腫瘍で,悪性びまん性および良性限局性がある
・悪性胸膜中皮腫は,中年以降の男性に多く,石綿(アスベスト)が関与
【症状】
胸痛,咳嗽,呼吸音減弱
【検査】
<血液>LDH↑
<胸写>胸膜肥厚斑,胸水,肺野透過性↓
<胸水穿刺>血性.ヒアルロン酸の検出
【治療】
外科的切除術・・・予後不良.50%が1年以内に死亡
※悪性(びまん性):@アスベストと関連 A胸水中にヒアルロン酸を含む
良性(限局性) :@アスベストとは無関係 A肺性肥大性骨関節症の合併
■ 悪性胸膜中皮腫 YnI-125
【概念】
悪性胸膜中皮腫瘍は石綿(アスベスト)の関与が示唆されており、肺癌と同様増加傾向にある。
【診断】
@ 石綿加工業に従事していた中年以降の男性で
A 労作時息切れと胸痛、咳が漸増し
B 胸部X線CTにて胸膜肥厚、胸水所見があり
C 胸水が血性で、ヒアルロン酸が陽性、LDH↑
D 喀痰中にアスベスト小体が見られた時 ←肺癌でも見られる
→悪性胸膜中皮腫 を疑う
*確定診断は胸膜生検による
【治療】
・ 限局性中皮腫は外科切除し、予後良好である
・ びまん性中皮腫は対症療法が主で、予後不良である
〜外傷性肺疾患〜
■自然気胸
【概念】
・ブラ,ブレブの破綻により胸腔内に空気が存在する状態
・特発性は20歳代の細長型体型の男性に多い
・再発しやすいが予後は良好
・気管支喘息,気管支拡張症,肺塞栓を合併しやすい
【原因】特発性,肺結核,肺癌,肺化膿症,子宮内膜症,
宮崎肺吸虫症(以上は左右差なし),月経(右に多い)
【症状】@突発する胸痛,呼吸困難,ときに胸水
A血胸・・・胸膜癒着部の断裂による
※気縦隔の合併はまれ
【検査】
<打診>患側の鼓音
<聴診>呼吸音減弱,声音振盪↓
<胸写>縦隔の健側偏位(呼気で著明),肺紋理消失,
肺の虚脱,肺透過性亢進
【診断】
@ 20歳前後の細長型体形の男性で、
A 突然の呼吸困難と胸痛、乾性咳がみられ、
B 打診上、胸腹側で鼓音を呈し、
聴診にて、呼吸音の減弱が見られる時、
→自然気胸 を考える。
・ 確定診断は、胸部X線・胸部CTで、患側肺の虚脱、縦隔の健性偏位をみることにより行なう。
※診断は、一般には胸部平面写真だけで十分である
(胸部のCTはブラ、ブレブの微小病変だけを診断する)
【治療】
@経過観察・・・軽度のもの
A胸腔ドレナ−ジによる脱気・・・緊張性気胸のとき
B嚢胞切除後肺縫縮術・・・再発を繰り返すとき,
または多数のブラ・ブレブのあるとき
■外傷性気胸
【@閉鎖性気胸】 【A外開放性気胸】 【B内開放性気胸】
病 態 ・損傷部から空気が ・胸壁損傷部を介して ・肺,気管支損傷部を
侵入したあとに, 外界と胸腔内が交通 介して外界と胸腔内が
損傷部が閉鎖 ・肺は完全に虚脱し, 交通
対側肺も障害
縦隔動揺 (−) (+) (+)
振子空気 (−) (+) (−)
奇異呼吸 (−) (+) (−)
★縦隔動揺=縦隔が吸気時に健側へ,呼気時に患側へ移動
★振子空気=空気が吸気時に健側へ,呼気時に患側へ移動
★奇異呼吸=患側胸壁が吸気時に陥凹し,呼気時に突出
【C緊張性気胸】
・胸壁および肺・気管支損傷部が弁状のため一方通行(check valve)
となり,吸気時に胸腔内に入った空気が呼気時に排出されないもの
・胸腔内圧↑→大血管・心臓も圧迫→上大静脈圧↑,チアノ−ゼ
・縦隔動揺(−),振子空気(−),奇異呼吸(−)だが,縦隔が健側へ著しく偏位
・患側の横隔膜低下
・緊急に胸腔ドレナ−ジで脱気
・開胸ドレナ−ジをすることもある(開心術後)
・間欠的陽圧呼吸(IPPV)は気胸を増悪するので禁忌
■緊張性気胸
■flail chest:胸壁動揺 YnL-27
【概念】
『3本以上の肋骨が、一本で2ヶ所以上骨折→胸壁の支持力を失う。』
・ 吸気時に患側の空気は一部健側へ、呼気時に健側の空気は患側へ移動する。
(つまり胸郭が弱いので容易に膨らんだり縮んだりする。)
→空気の振り子様移動 pendulum air
・ 縦郭は吸気時に健側へ、呼気時に患側へ移動する(縦郭動揺)。<肺の逆
→CO2に富んだ空気が両側肺を往復するため、換気不全が生じる。
* 肺損傷を伴っていることが多く、気胸、血腫、肺挫傷などに注意が必要。
【症状】@低換気性呼吸障害(PaO2↓,PaCO2↑)
・・・CO2の多い空気が両側肺を往復するため
Aチアノ−ゼ,ショック・・・重症例
【診断】
@ 胸部外傷後、
A 胸部X線にて、肋骨の多発性骨折が見られ、
B 左右不同の胸部運動(奇異性呼吸)、呼吸苦を呈した時
→flail chestを考える。
【治療】
・ 早期に的確な治療を行なう必要がある。
・ 気管内挿管し、人工呼吸で間欠的陽圧呼吸(IPPB)による内固定を行なう。(最重要)
→ついで、持続吸引して肺膨張をはかる
■ 縦隔気腫
【概念】
気管支喘息の発作時や外傷などによって生じる。縦隔内に空気が存在する病態のことであり、前胸部痛、皮下気腫を呈する。軽度の場合には経過観察で、臓器の損傷が疑われれば開胸術を行なう。
【診断】
@ 気管支喘息発作時or胸部外傷後
A 突然胸痛が生じ、
その後前頚部〜前胸部に握雪音が効かれ
B 心臓部で心音に同期したバリバリという雑音が聴取され ←Hamman’s sign
C 胸部X線にて皮下気腫が認められた時、
→縦隔気腫 を考える。
【治療】
1.気腫の程度が軽少なら経過観察
2.気管、気管支、食道、心臓などの損傷が疑われたら、開胸術が必要。
▲皮下気腫
★胸壁,肺・気管支・食道の損傷により,空気が皮下組織に侵入
・坐位,立位で空気が頸部に達することがあり,皮膚が膨隆する
・心拍に一致した捻髪音,握雪音が特徴
・気管支鏡によって確診
■人工換気法について YnI-32〜
▲PEEP
人工呼吸の様式ではなく、呼吸終末にかける圧そのものの呼称
→機能的残気量を増加させ、無気肺を防止または軽減
→血液の酸素化を良好にさせる。
・PaO2を指標にし、通常2.5〜15cmH2O程度の陽圧を呼気終末にかける。
・静脈還流↓ → 心拍出量↓ → 脳虚血 → 神経細胞は低酸素血症、乳酸↑により アシドーシス化 → 脳浮腫誘発 → 脳圧亢進
適応)無気肺(気道肺胞間の閉塞)、急性肺水腫(溺水など)
▲CPAP →自発呼吸+PEEP
▲IMV →自発呼吸の補助を行なう。
〜乳腺疾患〜
■線維腫症(葉状腫瘍)
【概念】
若年者に多い乳腺の良性腫瘍。悪性化はきわめて稀。
【診断】
@20〜30代の女性で ←乳癌より発症年齢は若い
A乳房のしこりがみられ、
表面平滑、境界明瞭、弾性硬で移動性があり、圧痛(−)であり、
Bマンモグラフィーに手、辺縁明瞭な腫瘤陰影があり、
腫瘤内にしばしば粒状石灰化像を伴う時
→線維腺腫 を考える。
【治療】
成長が急速のもの、癌細胞のあるもの→手術適応(腫瘍核出術)
■乳 癌
【概念】
・大きく3つに分かれ,中でも硬癌が最も多い
・40〜60歳代に好発する
【分類】
@非浸潤癌・・・乳管,小葉内に限局する.乳管癌,小葉癌
A浸 潤 癌・・・間質に浸潤する.乳頭腺管癌,充実腺管癌,硬癌
BPaget病
・乳頭,乳輪の表皮内浸潤癌 ・早期乳癌(<2cm)に含まれる
・大型のPaget cell.リンパ節転移は少なく,比較的予後良好
・乳頭付近の慢性湿疹様変化(びらん・痂皮)
・ときに乳頭下に腫瘤
【症状】
@腫瘤触知・・・一側の外側上1/4円に最も多く,表面凸凹,硬ないし弾性硬,
境界不鮮明,移動性(-)
ADimpling sign・・・腫瘤表面の皮膚が陥凹する,えくぼ症状
B橙皮様皮膚・・・ 浸潤が真皮層に達すると,血行・リンパ行障害により,皮膚の発赤・浮腫・光沢を示す
C乳頭異常血性分泌
【検査】
<mammography>濃厚な腫瘤陰影,辺縁の放射状陰影(spicula),微細石灰化像
<エコー>malignant halo(massより低エコー),後方エコーの消失
・・・3cm以上の癌なら診断率80〜90%と高い
<細胞診>塗沫標本をPapanicolaou染色して判定
【転移】
@リンパ節転移 ・・・同側腋窩,対側乳腺,鎖骨上窩
A遠隔転移 ・・・肺(多発性),肝,骨(高Ca血症)
【診断】
@ 40〜50歳代の閉経期前後の女性で、 ←ホルモン依存性
A 乳房に腫瘤を蝕知し、
皮膚の陥凹、橙皮様皮膚が見られ、
乳頭からの血性分泌があり、
B マンモグラフィーで、濃淡不均一な腫瘤性陰影、辺縁の放射状陰影(specula)
時に微細石灰化像がみられ、
C echoで、後方エコーの減弱or消失が見られる時、
→乳 癌 を疑う。
・ 確定診断は、乳頭分泌があれば細胞診を行ない(Papanicolaou染色)
診断困難な場合は、穿刺吸引細胞診or腫瘤摘出術 を行なう。(試験切除)
【治療】
@定型的乳房切断術(乳腺+大小胸筋+腋窩リンパ節)・・・これが主
・術後合併症→リンパうっ滞による患側上肢浮腫,リンパ節転移,遠隔転移
A放射線療法,抗腫瘍薬(アドリアマイシン,エンドキサン)
・切除不能例,再発癌,根治手術の補助.あまり有効ではない
Bホルモン療法・・・再発癌,stage Wに有効
・抗エストロゲン剤(タモキシフェン) ・・・閉経後5年以上の女性
・男性ホルモン(テストステロン) ・・・閉経前の女性
※ほかに卵巣摘出術,副腎摘出術がある
【予後】
・良好なもの・・・髄様癌,乳頭腺管癌,Paget病
・不良なもの・・・男性乳癌,妊娠・授乳期の乳癌,炎症性乳癌
▲定型的根治的乳房切断術
・乳腺を皮膚,皮下ならびに乳腺周囲脂肪組織,および大胸筋,小胸筋とともに広範に切除し,これらと一塊としたまま(en bloc)で同側の腋窩リンパ節を郭清
・皮膚切開の方法には,Halsted法,Meyer法,Stewart法が繁用されており,腫瘤の位置,大きさを考慮して適当な方法を選択
・長胸神経と胸背神経を確認して温存することが大切
▲非定型的根治的乳房切断術
〔Patey手術〕
大胸筋を温存し,小胸筋を切除して腋窩リンパ節およびRotterリンパ節を郭清
〔Auchincloss手術〕
大胸筋,小胸筋をともに温存して腋窩リンパ節を郭清
■ Paget病
【概念】
大型で明るいPaget細胞が特徴的な表皮内癌であり、中高年女性に多い乳房内Paget病と老年男性に多い乳房外Paget病に分けられる。乳房内Paget病は乳頭を中心に湿疹様紅斑、びらんを生じるもので、診断がつけば乳癌として外科的治療を行なう。
【診断】
@ 中高年女性で、
A 乳頭の発赤を伴う周囲の慢性湿疹様びらんがみられ、
B 乳腺内に腫瘤を蝕知せず、
C 生検にて、PAS染色陽性の
明るく大型なPaget細胞が見られた時
→Paget病 と診断する。
【治療】
癌として外科的切(乳房切除術) を行なう。
■乳頭腫瘍(papilloma) YnI−136
【概念】
乳管(特に輸出管膨大部)に好初する乳頭腫
【症状】
・ 40歳前後の婦人に好発。
・ 乳輪の圧迫により、乳頭からの異常分泌(血性or漿液性)をきたす。
* 血性分泌物をみたら→@乳癌 A管内性乳頭腫 B乳腺症を考える。
・ 腫瘤は触れ難い。
【診断】
・ 乳管造影、分泌物の細胞診、生検により確診する。
生検)乳管内壁に発生し、内腔に突出する乳頭状腫瘤を形成している。
同大で極性の保たれた上皮細胞の単層or二層性の配列像が見られる。
【治療】
→良性腫瘍であり、腫瘤を含む乳腺の部分切除を行なう
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