血液・造血器疾患まとめ
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■血液総論
▲白血球5,000〜8,000/mm*3 ※寿命→1日
・好中球:40〜60% ・好酸球:1〜5%
・好塩基球:0〜1%
○リンパ球:25〜45% ○単球:2〜8%
▲ 赤血球
♂400〜500万/mm*3 ※寿命→120日
♀380〜480万/mm*3
▲MCV,MCH,MCHCの正常値
・MCV:80〜100fl
・MCH:28〜32pg
・MCHC:31〜35%
小球性低色素性 正球性正色素性 大球性正色素性
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MCV ↓ → ↑
MCH ↓ → ↑
MCHC ↓ → →
▲網赤血球
・生の血液をニューメチレンブルーなどの塩基性色素液と混合する超生体染色により,青色に染まる網状ないし顆粒状構造を有する赤血球。赤血球の中で最も若い。
・正常値は赤血球の1〜2%,約5万/μlである。5〜2
・赤血球産生が亢進する溶血性貧血,急性出血後などで増加し,赤血球産生の低下する再生不良性貧血などで減少する。
【赤芽球の成熟過程】
前正赤芽球 → 好塩基性正赤芽球 → 多染性正赤芽球 → 正染性正赤芽球
─(脱核)→ 網赤血球 →→→ 赤血球
▲血小板15〜30万/mm*3 ※寿命→7〜11日
▲ヘモグロビン ♂14〜16mg/dl ♀12〜15mg/dl
▲ヘマトクリット ♂40〜50% ♀35〜45%
▲網赤血球 5〜160/00
・出血時間:2〜6分 ・凝固時間:8〜12分
・フィブリノーゲン:200〜400mg/dl
・FDP:10μg/ml以下
・APTT(内因系):30〜40秒
・PT(外因系):11〜15秒(80〜110%)
▲フェロキネティクス
・鉄は,十二指腸および空腸上部で吸収される
@血清鉄 :80〜150μg/ml.血中ではトランスフェリンと結合
A不飽和鉄結合能(UIBC):190〜240μg/ml.遊離トランスフェリン量
B総鉄結合能(TIBC) :280〜380μg/ml.トランスフェリンの総量
C血漿鉄消失時間(PIDT1/2):70〜120分.鉄が赤芽球に取り込まれる時間
D赤血球鉄利用率(%RCU):85%.鉄がHb合成に用いられる%
▲鑑別
血清鉄 UIBC TIBC フェリチン 鉄芽球
↓ ↑ ↑ ↓ ↓ 鉄欠乏性貧血,真性多血症,
血管内溶血
↓ ↓ ↓ ↑ ↓ 症候性貧血
(感染症,膠原病)
↑ ↓ ↓ ↑ ↑ その他のすべての貧血
PIDT1/2 %RCU 症候
↓ ↑ 鉄欠乏性,真性多血症
↓ ↓ 鉄芽球性,巨赤芽球性,溶血性→無効造血
↑ ↓ 再生不良性,赤芽球癆
※通常では,Fe+UIBC=TIBCの関係が成り立つ
▲止血機構
【1次止血(血小板による)=出血時間に反映】
血管内皮下損傷によるコラーゲンの露出
→vonWillebrand因子([因子)により
コラーゲンとvWF受容体(GpTb)間の架橋形成(=粘着)
※リストセチンにより促進される
→血小板がフィブリノーゲン受容体(GpUb-Va)により
フィブリノーゲンを介して,他の血小板と結合(=凝集)
※ADP,コラーゲン,エピネフリンにより促進される
【2次止血(凝固系による)=凝固時間に反映】
@内因系:血漿中に存在する凝固因子による止血.APTTに反映される
A外因系:TPL(組織トロンボプラスチン)による止血.PTに反映される
内因系より早く凝固できる
・APTT延長,PT正常 →[,\,]T,]Uの異常
・APTT正常,PT延長 →Zの異常
・ビタミンK依存因子 →U,\,Z,](肝由来)
※凝固因子のWは欠番
※T:フィブリノーゲン,U:プロトロンビン,V:トロンボプラスチン
▲線溶系
・血管内のフィブリン量はプラスミンにより調節される
・プラスミンが増量すると出血傾向となる
トロンビン,ウロキナーゼ
↓
プラスミノーゲン→プラスミン
↓
フィブリン→FDP
▲凝固抑制★トロンボテストで評価,5〜15%
@ATV :\,],]Uを抑制
Aヘパリン :ATVを活性化(抗トロンビン作用)→速効性
Bワーファリン:U,\,Z,]を抑制(ビタミンK依存因子抑制)→維持
CproteinC :X,[を抑制.プラスミノーゲンをプラスミンにする
▲血小板異常
@血小板破壊亢進(血小板数↓):骨髄巨核球→正常or増加
ITP SLE TTP
DIC 肝硬変 薬剤(RFP,ヘパリン,キニジン)
A血小板産生障害(血小板数↓):骨髄巨核球→減少
再生不良性貧血 急性白血病
悪性貧血 鉄芽球性貧血
B血小板機能異常(血小板数正常):骨髄巨核球→正常
血小板無力症 vonWillebrand病
Bernard-Soulier症候群 尿毒症
アスピリン
▲pancytopenia★当然出血傾向をきたす
@血清鉄↑,TIBC↓,UIBC↓,フェリチン↑,鉄芽球↑
+PIDT1/2延長,%RCU低下 →再生不良性貧血
+PIDT1/2短縮,%RCU低下(無効造血) →鉄芽球性貧血
巨赤芽球性貧血
APIDT1/2短縮,%RCU低下
+間接ビリルビン↑,尿中ヘモグロビン↑ →PNH
B末梢血,骨髄で白血球の芽球(+) →急性白血病
C末梢血,骨髄で赤芽球(+) →赤白血病
D末梢血で赤芽球,白血球の芽球(+)+骨髄で癌細胞(+) →癌の骨髄転移
▲出血傾向
@感冒様症状に続いて,突然の鼻出血,皮下出血
+出血時間延長,血小板数↓ →ITP
A幼児期からの抜歯後止血困難,鼻出血,皮下出血
+出血時間延長,血小板数正常 →血小板無力症
+出血・凝固時間延長,APTT延長,PT正常,
血小板数正常 →vonWillebrand病
B幼児期からの抜歯後止血困難,関節の腫脹
+凝固時間延長,APTT延長,PT正常,血小板数正常
→血友病
C癌,急性白血病(APLetc.)の基礎疾患があって出血
+出血・凝固時間延長,APTT延長,PT延長,血小板数↓
→DIC
▲破砕赤血球がみられる疾患
@DIC ATTP BHUS
▲巨大脾腫
@白血球↑↑,赤血球↑,血小板↑,骨髄過形成
+NAP値↓,ビタミンB12↑,Ph1染色体(+) →CML
A白血球↑↑,赤血球↑,血小板↑,Ph1染色体(-)
+NAP値↑,ビタミンB12↓,drytap →骨髄線維症(MF)
B白血球↑,赤血球↑↑,血小板↑
+NAP値↑,ビタミンB12↑ →真性多血症(PV)
PBCと2Mと覚える
@P(PV) AB(Banti症候群) BC(CML) CMF(MF、Malaria)
▲ 巨大脾腫
@CML CBanti症候群
A骨髄線維症 Dマラリア
B真性多血症 ※脾臓は,5cm以上腫大すると触知できる
▲Banti症候群
・脾腫,貧血,白血球減少,消化管出血,腹水を呈する疾患群の総称
・特発性門脈圧亢進症とほぼ同義.病因は従来脾原説,肝原説などがあったが門脈末梢枝の狭小化,潰れなどの変化が主因といわれる.
・40歳前後の成人に多く,男女比は1:3
・偶然脾腫が発見され,数年後に低色素性貧血と白血球減少をみる.
▲NAP値
好中球が成熟すると,特殊顆粒中のアルカリフォスファターゼが
増加するので,NAP値は上昇する
▲drytapをきたすもの
@骨髄線維症 A癌の骨髄転移 B急性白血病
▲脾臓摘出
・適応・
遺伝性球状赤血球症 PK欠損症 AIHA
ITP 原発性骨髄線維症 脾動脈瘤
脾海綿状血管腫 Banti症候群 Fanconi症候群
Felty症候群 Gaucher病 サラセミア
Hodgkin病 鎌状赤血球症
◆禁忌◆
再生不良性貧血 巨赤芽球性貧血 TTP
PNH 慢性白血病 食道静脈瘤
▲Felty症候群
・RA+脾腫+リンパ節炎
・白血球減少と貧血を伴う
・RAの5%以下
・下腿に潰瘍をつくりやすく,また感染をうけやすい
・45〜65歳に好発
▲リンパ節腫脹
@発熱,出血傾向,動悸,息切れ
+白血球↑or↓,赤血球↓,血小板↓,異常芽球細胞(+)
+ペルオキシダーゼ(+),Auer小体(+) →AML
+ペルオキシダーゼ(-),PAS染色(+) →ALL
A発熱,出血傾向,動悸,息切れ
+白血球↑,赤血球↓,血小板↓
+NAP値↑,Ph1染色体(+),drytap →CMLの急性転化
B老人,易感染性,動悸,息切れ
+白血球↑(特にリンパ球↑),赤血球↓,血小板正常
+AIHA合併 →CLL
CPel-Ebstein型発熱,発疹
+リンパ球↓,Reed-Sternberg細胞(+) →Hodgkin病
※Pel-Ebstein型発熱=3〜10日の弛張熱→3〜10日の平熱
→弛張熱と平熱を不規則に繰り返す
〜赤血球系の疾患〜
■貧血総論
【定義】
成人男性:13g/dl以下 成人女性:12g/dl以下
妊婦:11g/dl以下
乳児:11g/dl以下 新生児:13g/dl以下
▲赤血球恒数
MCV=Ht/RBC×10*3 80〜100
MCH=Hb/RBC×10*3 28〜32
MCHC=Hb/Ht×10*2 30〜35
▲小球性低色素性貧血
★MCV≦80,MCHC≦30
鉄欠乏性貧血 鉄芽球性貧血 サラセミア
無トランスフェリン血症 未熟児貧血 慢性炎症に合併する貧血
食道裂孔ヘルニア 消化性潰瘍 若年性関節リウマチ
▲正球性正色素性貧血
★80<MCV≦100,30<MCHC≦35
再生不良性貧血 溶血性貧血 赤芽球癆
鎌状赤血球症 失血 腎性貧血
多発性骨髄腫
▲大球性正色素性貧血
★100<MCV,30<MCHC≦35
巨赤芽球性貧血(ビタミンB12欠乏性貧血,葉酸欠乏性貧血)
■鉄欠乏性貧血 YnG-20
【概念】
★鉄の欠乏→貯蔵鉄(フェリチン)↓,血清鉄↓→骨髄鉄芽球↓→赤血球↓
★貧血の中で最も多く,若い女性に多い
★小球性低色素性貧血
【原因】
・需要増大:成長期女性,妊娠,乳児,未熟児
・摂取不足:胃切除後,吸収不良症候群,牛乳の過飲,離乳
・排泄増大:子宮筋腫,消化性潰瘍,鉤虫症,月経過多,食道裂孔ヘルニア
【病態生理】
@ 貯蔵鉄の減少 →血清フェリチン↓『貯金が無くなった!!』
貯蔵鉄=フェリチン+ヘモジデリン
血清フェリチンは貯蔵鉄のフェリチンが血中に出てきたもの。
血清フェリチン↓は貯蔵鉄↓の反映である。
A血清鉄の減少 →貧血 『財布の中に金もない!!』
ヘモグロビン鉄の減少 血清鉄=トランスフェリンと結合した鉄
B組織鉄の欠乏 →さじ状指、Plummer−Vision症候群
『家具も持っていかれた!!』
*Plummer−Vision症候群=鉄欠乏性貧血+口角炎、嚥下
【症状】
@皮膚蒼白 APlummer-Vinson症候群
Bspoonnail C異食症pica・・・特に鉤虫症の時
D高拍出性心不全,頻脈
O2運搬量↓を補うために心拍出量,心拍数が増加
【検査】
・ TIBC↑(代償的に) UIBC↓
→せめて運び手だけでも増やそうとする考え 『人海戦術』
*TIBC=UIBC+血清鉄
TIBC=トランスフェリン量=トランスフェリンに結合しうる鉄の量
(Total iron binding capacity)
UIBC=鉄と結合していないトランスフェリン量
(unsaturated iron binding capacity)
血清鉄=鉄と結合しているトランスフェリン量
鉄欠乏性貧血ではともかく血が足りないために起こる疾患なので、まず血清鉄↓。
そして赤血球合成のためにより少ない鉄をかき集めてこようとして、トランスフェリン量が減少する。
・ PIDT1/2短縮 %RCU↑
* PIDT1/2=血漿鉄消失率(時間)
静注された59Feがは造血に利用されるか、貯蔵鉄となるかして血漿中から消失する。血中の59Feが投与量の50%に経るまでの時間をPIDT1/2と定義する。PIDT1/2が減少している=赤芽球の鉄の取り込みが盛んである=赤血球の産生が盛んに行われている。
* %RCU=赤血球鉄利用率
59Feを利用した赤血球が、投与後一週間ぐらいで血中に出現する。ことの時の循環赤血球中の59Feを、投与量で割ったものが%RCUである。
鉄欠乏貧血ではただ鉄が足りない状態なので、%RCUは上昇する。
造血↓ ←再生不良性貧血、赤芽球癆
%RCU↓ 赤血球が出来ない ←無効造血
造血↑ できるがすぐ壊れる ←溶血性貧血
無効造血・・・鉄芽球性貧血、巨赤芽球性貧血、骨髄異形成症候群
・ 赤血球中遊離プロトポルフィリン↑
<鉄欠乏のため、プロトポルフィリンが遊離。
プロトポルフィリンは鉄と結合してヘムとなる。
鉄が無いので手持ち無沙汰になる=赤血球遊離プロトポルフィリン↑
・ 赤芽球系細胞の過形成
鉄芽球の減少、貯蔵鉄の減少
・骨髄→赤芽球(まん中に核があって丸い)↑,鉄芽球↓
・末梢血→菲薄赤血球↑,大小不同,奇形RBC
⇒赤血球の凹みが大きすぎる。⇒画像診断!!
【診断】
@頭痛、めまい、動悸、息切れ、易疲労感、眼瞼結膜蒼白などがあり ←貧血症状
Aスプーン状爪、異食症、舌乳頭萎縮(赤い平な舌)をきたし、 ←組織鉄欠乏
B時に舌炎、口角炎、嚥下障害を伴い、 ←Plummer−Vinson症候群
CMCV↓、MCHC↓ ←小球性小色素性貧血
D血清フェリチン↓ ←貯蔵鉄↓
血清鉄↓(40ug/dl以下) ←トランスフェリン結合鉄↓
UIBC(不飽和鉄結合能)↑、TIBC(総鉄結合能)↑ ←鉄利用亢進
E末血標本で大小不同の菲薄赤血球、 ←ヘム合成障害
F骨髄で、赤芽球↑、担鉄赤血球↓(5%以下)のとき、 ←代償性造血
⇒鉄欠乏性貧血 と診断する。
【治療】
★鉄剤の経口投与
・Feは空腸上部で吸収されるので,胃切除でも経口が有効
・潰瘍性大腸炎,胃切除直後は鉄剤の静注
※体内総鉄量は3〜4gで,70%がHb(血清鉄)として存在し,
30%がフェリチン,ヘモジデリン(貯蔵鉄)として存在する
■鉄芽球性貧血 YnG-21
【概念】
★鉄利用障害
・ピリドキシン(ビタミンB6),ヘム合成酵素(δ-ALA,PBG)の
欠乏により,赤芽球でのヘムの合成,赤芽球に入った鉄のHbへの変換が
できず環状鉄芽球となる
・小球性低色素性貧血
・先天性(骨髄異形成症候群のひとつ)と後天性(アルコール中毒)がある
【病態生理】
δ―ALA合成酵素とヘム合成酵素の活性低下が見られる
→ヘムの合成が障害される。
→ヘムと鉄が結合できない→ミトコンドリアに鉄がたまる。
→環状鉄芽球が出現する。 ⇒画像診断!!
【症状】
・ 慢性貧血の症状
・ ヘモクロマトーシス ←輸血の繰り返しによる
→網内系のみならず,全身の実質臓器にヘモジデリンが過剰に蓄積した状態。
@ 鉄が肝臓に沈着を起こす→肝障害,肝硬変
A 鉄が膵臓に沈着→膵島の破壊→インスリン分泌能の低下→糖尿病
B 鉄が皮膚に沈着→皮膚の色素沈着(皮膚がブロンズ色)
【検査】
@2相性貧血,無効造血・・・大球性貧血と合併して2相性となる
A汎血球減少
血清鉄↑ TIBC↓ 血清フェリチン↑
PIDT1/2短縮 %RCU低下
【診断】
@動悸、立ち眩み、頻脈に加え、貧血が見られ ←慢性貧血症状
A末梢血塗抹標本で、正球性と小球性の貧血の混在があり、 ←二相制貧血
B血清フェリチン↑、血清Fe↑、UIBC↓、TIBC→ ←鉄の利用障害
C血漿Fe消失時間(PIDT1/2)は短縮、 ←無効造血パターン
赤血球鉄利用率(%RCU)は低下し、
D骨髄で、環状鉄芽球(ringed sideroblast)が15%以上見られる時
⇒鉄芽急性貧血 を考える。
【治療】続発性の場合は、薬物や毒物などの原因からの回避を行う
@ピリドキシン(ビタミンB6)
A蛋白同化ホルモン
Bステロイド
■無トランスフェリン症 YnG-24
・トランスフェリン欠乏による小球性低色素性貧血
・血清鉄↓,TIBC↓
※エリスロポイエチンは通常,
@貧血
あるいは
A低O2血症 に反応して上昇する
■巨赤芽球性貧血 YnG-24
【概念】
・ビタミンB12または葉酸欠乏によるDNA合成障害により,巨赤芽球(細胞質は成熟し好塩基性,核はやわらかく未熟)が出現
・大球性正色素性貧血
・汎血球減少
【病態生理】
VitB12・葉酸の欠乏→チミン(AGCTのT)の欠乏etc
→造血器(細胞分裂の回数が多い)に障害
→赤血球のみならず、様々な血球の障害
→さらに皮膚や消化管の障害(全身的な疾患)
【原因】
@ ビタミンB12欠乏の原因
ビタミンB12の吸収過程
・ 食物が胃に入る。→胃酸によって、VitB12が遊離
→十二指腸で胃内因子(IF)と結合 ≪原因T
→IF−VitB12複合体を、回腸粘膜に存在する受容体を
介して吸収 ≪原因U
→IFから遊離し、蛋白と結合して血中へ
→余ったVitB12は肝臓へ。
・そこで吸収障害の原因T〜V
T)胃内因子欠乏
←悪性貧血、胃切除後
U)回腸異常
←回腸切除。 回腸の炎症、消化不良など。
V)競合
他の生物(腸内細菌など)によって奪われてしまう場合。
→blind−loop syndrome(ビルロートU法の後におこる盲端症候群)
での腸内細菌の異常繁殖
広節裂頭譲虫の寄生
A 葉酸欠乏の原因
アルコールなど(特にいらない)→大酒家が多い。
【検査】
@ 末梢血
・ 大球性貧血 →MCV120以上
・ 汎血球減少 特に好中球の減少
・ 過分葉好中球(5個以上)
A 骨髄像
・ 赤芽球系の過形成(代償的に)
・ 巨赤芽球の出現
→核―細胞質分離(細胞質が成熟、核は未熟)
→PAS染色陰性(M6との鑑別) *M6でも巨赤芽球が出現する。
B 無効造血の反映
細胞質は成熟、核は未熟→Hbをある程度合成
→しかしこれ以上成長せず破壊される。
→溶血と同様の所見が得られる。
・ 間接ビリルビン↑ ・ハプトグロビリン↓ ・ウロビルノーゲン↑
・ LDH↑ ・PIDT1/2短縮、%RCU低下(無効造血パターン)
C Schilling試験
巨赤芽球性貧血に特異的な試験 →出てきたらこれを疑う!!
Co60を用いてVitB12の吸収能を見る。
【症状】
@ 貧血の一般症状
A 軽度の黄疸(間接ビリルビン優位)
B DNA合成障害 →白髪
→上皮の萎縮→舌炎(Hunter舌炎)、舌乳頭萎縮
C 神経症状(大事!!)
→VitB12の欠乏によって起こる(鑑別)
脊髄の後索と側索が障害される。
・ 後索の障害・・・振動覚↓
位置覚↓(Romberg兆候+)
・ 側索の障害・・・錐体路兆候
(膝蓋腱反射+ バビンスキー反射+)
D 舌炎・・・舌乳頭筋萎縮により起こる。
表面平滑で、灼熱感を特徴とする。
→Hunter舌炎
【診断】
@頭痛、めまい、動悸、息切れ、易疲労感、眼瞼結膜蒼白などがあり、 ←貧血症状
A接触時の舌の染みる感じや痛みなどの舌炎、 ←Hunter舌炎 消化器症状
舌乳頭萎縮、無胃酸症を来し、
B時に年齢に不相応な白髪 ←皮膚・粘膜症状
C末梢四肢の強い痺れ、 ←末梢神経障害
深部知覚障害、歩行障害 ←後索障害 亜急性連合性脊髄変性症−神経症状
Babinski反射(+) ←側索(錐体路)障害
痴呆などが見られ
D末血にて大球性正色素性貧血、網赤血球↓
白血球および血小板↓、4分葉以上の過分葉好中球
壁細胞、内因子に対する自己抗体(+)で、
血清Vit.B12↓が見られ、Schilling試験で貧血の改善を呈し、
E骨髄にて、巨赤芽球(+)を見る時、 ←DNA合成障害
⇒巨赤芽球性貧血 と診断する
【治療】
・Vit.B12欠乏に対してはVit.B12製剤の筋注
⇒Vit.B12一回投与で数日後に網赤血球分離が認められ、
次いで赤血球↑し、骨髄中の巨赤芽球も急速に消失する
(造血亢進にしたがって鉄が利用され鉄欠乏が起こるので鉄材の投与も行う)
※経口投与はVitB.12の吸収障害の為、無効!!
※Vit.B12欠乏に葉酸は禁忌!!(神経症状の悪化を来すため)
▲悪性貧血(VB12欠乏性貧血)
・原因→胃切除後,blindloop症候群,広節裂頭条虫症,胃癌,
白斑症,亜急性連合性脊髄変性症,甲状腺機能異常症
・症状→Hunter舌炎,萎縮性胃炎(ヒスタミン不応性無酸症),
黄疸(尿中ウロビリノーゲン増加)
・血液→抗壁細胞抗体(+) 抗内因子抗体(+)
尿メチルマロン酸↑ Schilling試験(+)
・治療→ビタミンB12筋注・静注による治療
※経口では無効 ※葉酸は禁忌
▲葉酸欠乏性貧血
・原因→アルコール中毒,吸収不良症候群,フェニトイン,笑気
・肉ばかり食べて野菜不足の人≠ノ多い
・尿FTGlu↑,神経症状(-)
・葉酸の経口投与
※VB12→肉,魚,卵 葉酸→野菜,果実
・VB12は,壁細胞から分泌される内因子と結合して回腸末端より吸収される
■サラセミア YnG-27
・グロビン合成のmRNA欠乏による小球性低色素性貧血,
・グロビン鎖(α鎖とβ鎖がある)の合成が抑制される先天性疾患。
・標的赤血球(的のような形の赤血球)の出現。
・HbFが上昇!!
・貧血、黄疸、脾腫の出現。
・無効造血
→血清鉄↑ TIBC↓ UIBC↓ PIDT1/2延長 %RCU低下
■再生不良性貧血 YnG-28
【概念】
★脂肪髄による造血能低下により汎血球減少をきたす
★正球性正色素性貧血
・ 全能性レベルでの骨髄造血能が低下(T細胞による自己免疫性の幹細胞障害)
→骨髄低形成+汎血球減少
【分類】
・特発性・・・原因不明.0〜4歳に発症
・先天性・・・Fanconi貧血(常劣.多発奇形,知能低下)
・続発性・・・クロラムフェニコール,ベンゼン,サルファ剤,
抗痙攣剤,抗癌剤,放射線,A型肝炎ウイルス
【症状】
@発熱,易感染性・・・WBC↓による
A貧血,動悸・・・RBC↓による
B鼻出血,出血傾向・・・Plt↓による
※肝脾腫(-),リンパ節腫大(-)
【検査】
・正球性正色素性貧血
・赤血球が少ないので、鉄が余る
→本来造血に使用されるはずの鉄が、トランスフェリンに結合したままになっている。→TIBC− 血清鉄↑ UIBC↓
→あまった鉄が貯蔵鉄にまわされる。→血清フェリチン↑
→PIBT1/2延長 (鉄を投与しても吸収されない)
→%RCU↓ (放射鉄を投与しても造血に利用されない)
→赤芽球に余計に鉄が沈着 →鉄芽球の増加
→相対的にリンパ球が増加。
・骨髄中の造血にかかわる細胞の減少→有核細胞(特に骨髄巨核球)が減少
・骨髄低形成のため、脂肪に置き換わる →脂肪髄(骨髄低形成)
・血中・尿中エリスロポエチン上昇 (代償的に)
・臓器腫大(肝脾腫、リンパ節腫大Etc)を伴わない。←特徴的!!
・HbFが上昇している!!→サラセミアと一緒
・汎血球減少→出血傾向など
・溶血なし→LDH、間接ビリルビン、網状赤血球の増加はない。
【診断】
@末梢血での汎血球減少があり、
正球性〜大球性正色素性貧血(網赤血球↓) ←貧血症状
白血球減少(特に好中球)⇒相対的リンパ球↑ ←易感染性
血小板減少 ←出血傾向
A骨髄低形成(有核細胞減少、脂肪髄化)が見られ ←骨髄での造血能↓
(∵血清鉄↑、PIDT1/2延長、%RCU↓⇒鉄の利用障害)
B急性出血が無く、貧血を来す基礎疾患がみられないとき
⇒再生不良性貧血 を考える
※汎血球現象の原因となる他の疾患が除外されることにより診断される
【治療】重症度の判定は治療法の根拠となるので重要!!
1.軽症例には、アンドロゲン療法(造血刺激療法)を行う
2.中等症〜重症例には、免疫抑制療法、骨髄移植、補助療法が行われる
a.免疫抑制療法
@蛋白同化ステロイド
A抗胸腺細胞グロブリン(ATG)
Bシクロスポリン+副腎皮質ステロイド
b.骨髄移植(50歳以下、HLA合致が条件)
c.補助療法(高度の貧血に対しては赤血球輸血
血小板減少による重篤な出血傾向には血小板輸血を行う)
▲骨髄移植
@再生不良性貧血 AALL BCML
■赤芽球癆 YnG-29
【概念・症状】
・赤芽球-赤血球系細胞だけが障害されることを特徴とする貧血。骨髄では赤芽球だけをほとんど認めない。
→白血球、血小板数は正常
骨髄赤芽球の激減が見られる。
・先天性の例をBlackfan-Diamond症候群(ブラックファン・ダイアモンド貧血)と呼ぶ。
・急性に起こる例はウイルス感染が関与し,慢性の例は胸腺腫を合併する例や自己抗体が証明される例があるので自己免疫疾患(赤血球系前駆細胞に対するTcellの自己免疫反応)と考えられている。
・治療としては免疫抑制療法。胸腺腫のある症例では摘出。無効な場合は抗胸腺細胞免疫グロブリン(ATG)を投与することもある(→再生不良性貧血の治療)
・胸腺腫が高率に合併!!(後天性では)
【診断】
@貧血があり(正球性正色素性)
A網赤血球が著減し、 ←溶血性貧血の否定
B白血球・血小板正常で ←再生不良性貧血の否定
C骨髄で、赤芽球のみ低形成をしている時
⇒赤芽球癆 と診断する。
【治療】
1.胸腺腫合併例では摘出術
2.免疫抑制療法:副腎皮質ステロイド、蛋白同化ステロイド
3.輸血(赤血球の補充)
※頻回の輸血によるヘモジデローシスに注意する
■溶血性貧血
【概念】
★赤血球の破壊亢進により骨髄中に幼弱な網赤血球(赤芽球)が増加
★血管内溶血と血管外溶血(主に脾での赤血球の破壊)
〜溶血性貧血に共通した所見〜
→溶血性貧血だから赤血球が壊れる。Hbが出てくることになる。
壊れる場所が血管内か、血管外かでだいぶ異なる。
@ 正球性正色素性貧血(サラセミアは小球性低色素性貧血)
A 骨髄中の赤芽球過形勢
B PIDT1/2短縮
→骨髄での需要が高いため、鉄が血中から速やかに消失する。
C%RCU低下
→赤血球の寿命が短い。
B+C=無効造血パターンに似ている。
溶血性貧血では末梢血中までいくのだが、その後すぐ壊されてしまう。
広義には無効造血としてもよい。
D症状として脾腫、胆石、黄疸は胸痛
E著名な溶血→網赤血球の増加
網赤血球増加→赤血球造血の亢進を表す。
〇血管外溶血が起こる疾患
自己免疫性溶血性貧血(温式)、遺伝性球状赤血球症、PK欠損症、サラセミア
〇血管内溶血が起こる疾患
赤血球破砕症候群(DIC、TTPなど) G-6-PD欠損症、PNH,PCHなど
●血管内溶血と血管外溶血の両方で見られる所見
血中間接ビリルビン↑(直接ビリルビンは増加しない)
LDH1、2増加 ハプトグロビン減少、尿中ウロビリノゲン増加
尿中ビリルビン(−)
●血管内溶血のみで見られる所見
ヘモグロビン尿 ヘモジデリン尿
■遺伝性球状赤血球症(HS) YnG-31
【概念】
・赤血球膜異常(Naポンプ異常)により赤血球が球状化し,容易に脾に捕らえられ破壊されることによる。(血管外溶血)⇒画像診断
・変な形をした赤血球は脾臓でつかまる=血管外溶血
・常染色体優性遺伝。わが国の先天性溶血性貧血で最も頻度が高い(約70〜80%)。
・感染(ヒトパルボウイルスB19伝染性紅斑 など)を契機に貧血が急速に増強するこ
とがある(aplastic crisis) → 骨髄での赤芽球の低形成が著明で,"赤芽球癆"様を呈する。
・5歳以上にしかしない。
【症状】
・脾腫 ←血管外溶血が起こるため
・肝前性黄疸(間接ビリルビン↑)
・胆石(ビリルビン結石) ←間接ビリルビン↑←多量の球状赤血球破壊
・貧血(→必発ではない)
・骨髄で赤芽球過形成 ←溶血性貧血と一緒
【検査所見】
・血清間接ビリルビン↑ (→肝でのグルクロン酸抱合が間に合わない)
・LDH,GOT↑ (→赤血球に含まれる酵素)
・血清ハプトグロビン低下 (→放出されたHbは血清中でハプトグロビン結合)
・赤血球浸透圧抵抗性減弱
【診断】
@間接ビリルビン優位の黄疸や脾腫、胆石があり、
LDH↑、ハプトグロビン↓、網赤血球↑
を伴った正球性正色素性貧血を呈し、 ←溶血所見
A末血塗抹標本で、赤血球の大小不同、小型球状赤血球が見られ、
B赤血球浸透圧抵抗性減弱、自己溶血試験(+)、直接Cooms試験(−)
C骨髄にて赤芽球過形勢が見られ、
D家族歴を認めれば ←常染色体優性遺伝
⇒遺伝性球状赤血球症(HS) と診断する
【治療】
1.脾摘 !!(脾臓は免疫臓器でもあるので脾摘後に免疫能↓→易感染性)
ただし、球状赤血球は残る
2.胆石や副脾合併例では、摘脾時に胆嚢・副脾を摘出する
■G6PD異常症 YnG-32
・G6PD欠損 ・伴劣
・Heinz小体(+) ・ストレス,酸化的薬剤を避ける
■PK欠損症 YnG-32
・PK欠損によりATP産生が障害される
・常劣 ・赤血球形態の異常はない
・自己溶血試験・・・ATPで補正可能.ブドウ糖で補正不可能
・摘脾による治療
▲HS&PK
【遺伝形式】 【自己溶血試験】
常優 ぶどう糖で補正可能 →球状赤血球症(HS)
常劣 ぶどう糖で補正不可能
ATPで補正可能 →PK欠損症
■発作性夜間血色素尿症(PNH) YnG-33
・後天的に赤血球膜が補体に対して過敏性を示すことによる
・早朝のワイン色尿,腹痛(血栓による) ・汎血球減少,NAP値↓
・Hamtest:酸性(pH6.5〜7.0)で補体の吸着をみる
・sugarwatertest:等張ショ糖溶液で溶血をみる
・Achエステラーゼ活性↓
・Coombs試験(-)
【診断】
@かぜ、ストレスなどを契機として
A汎血球減少、黄疸、貧血があり、 ←血管内溶血
B早期ワインカラー尿が見られ、 ←ヘモグロビン尿、ヘモジデリン尿
CHam test(+)(特異的)、sugar-water test(+),
D赤血球膜のアセチルコリンエステラーゼ活性↓、好中球のNAP↓の時
⇒発作性夜間血色素尿症(PNH) と診断する。
【治療】根本的治療は骨髄移植である
1.軽症例では、無治療経過観察で良い
2.中等症では、発現する症状に応じて随時医療処置が必要
3.重症例では
・ 造血促進・溶血抑制には、蛋白同化ステロイド、副腎皮質ステロイド
・ 貧血には、洗浄赤血球輸血(全血は補体が入っているから禁忌)
・ 血栓症の予防には、抗凝固薬の投与
※脾摘は禁忌!!⇒脾摘で更に血栓症が誘発される
※慢性の経過を辿り、出血、感染、血栓が主な死因となる
▲赤血球破砕症候群 YnG-35
【概念】
赤血球が物理的に破壊される症候群で、血管内溶血を来す。末梢血中に破砕赤血球が見られる。原因としては、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、溶血性尿毒素症候群(HUS),DICなどの細血管障害や、人工弁置換等等が挙げられる。
【診断】
@ DIC,HUS,TTPが存在した場合や、 ←細血管障害
人工弁置換後に
A溶血所見があり、
B末血に多数の破砕化赤血球、奇形赤血球が認められた時、 ←血管内溶血
⇒赤血球破砕症候群 を考える
【治療】
基礎疾患に対する治療と同時に、急性腎不全に対する対処が必要
▲汎血球減少pancytopenia
再生不良性貧血 鉄芽球性貧血 巨赤芽球性貧血
白血病 MDS PNH
SLE+ITP 脾機能亢進症
▲ハプトグロビン
・溶血により放出されたヘモグロビンと結合し,ヘモグロビン尿による尿細管障害を防ぐ.
・よって,溶血のあるときには減少する
■AIHA YnG-34
・自己赤血球に対し抗体を産生し,これが直接赤血球を障害する
・U型アレルギー
・抗体の性状によって温式と冷式に分かれる
▲温式AIHA
★IgG,血管外溶血
・以下の疾患に続発
SLE RA CLL 悪性リンパ腫
薬剤(ペニシリン,α-メチルドーパ,L-ドーパ)
・Coombs試験(+),球状赤血球,補体価↓
Evans症候群=≠`IHA+ITP
【診断】
@貧血、脾腫、黄疸があり、 ←溶血所見(+)
A直接Coomsテスト(+)で、 ←自己抗体の存在
B同種免疫性溶血性貧血(不適合輸血、新生児溶血性疾患)
および薬剤起因性免疫性貧血が除外されたとき
⇒温式自己免疫性溶血性貧血(温式AIHA) を考える。
【治療】まず、副腎皮質ステロイドを投与する
反応しない場合には、脾摘や免疫抑制剤を投与
※Cooms試験陰性化には数ヶ月から数年を要する
▲寒冷凝集素症(CAD)
★IgM,血管内溶血(冷式AIHA)
・以下の疾患に続発・・・マイコプラズマ肺炎,伝染性単核症
・寒冷凝集素価↑
・Coombs試験(+)
▲発作性寒冷血色素尿症(PCH)
★IgG=Donath-Landsteiner抗体,血管内溶血
・以下の疾患に続発・・・梅毒,麻疹,水痘,伝染性単核症
▲急性獲得性溶血性貧血Lederer貧血
・小児に特有
・貧血,黄疸,発熱,頭痛で突然発症し,脾腫を伴う
・ときに,ウイルス性肺炎,伝染性単核症に続発
・直接Coombs試験(+)
・ステロイドの有効なことが多い
▲赤血球が球状
→ AIHA
HS(hereditaryspherocytosis)
▲シュガーウォーターテスト(ショ糖溶血試験)
・赤血球の補体過敏性を検索するための検査。
・発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)患者の赤血球では,この補体感受性が亢進していることから,本試験陽性所見を示す。
・PNH患者ではショ糖溶液試験と酸溶血試験の両者ともに陽性であって,しかもその程度も強いことが多く,ほぼ同程度の陽性を示すことが普通である。
▲ハム試験;Ham's test (酸溶血試験)
・酸性条件下における被検赤血球の易溶血性をみる検査である。
・発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)では,患者赤血球が補体に対して過敏性を有するが,酸性条件下ではさらに亢進するため,本検査はPNH診断上有用である。
▲クームス試験;Coombs'test
・抗赤血球自己抗体を検出する目的で考案された検査の一種で,直接試験と間接試験とがある。(詳しくは省略)
・冷式抗赤血球抗体の存在する場合には,それ自身でクームス血清を加える以前に赤血球凝集を生じていることが少ない。
・自己免疫性溶血性貧血の診断確定には不可欠の検査であり,重症では直接・間接ともに強陽性となる。
■未熟児貧血 YnG-36
@早期貧血(5〜8週)
・出生によりPaO2上昇→Epo↓→骨髄造血抑制
・正球性正色素性貧血
・輸血による治療
A後期貧血(4〜5カ月)
・貯蔵鉄の欠乏による鉄欠乏性貧血
・小球性低色素性貧血
・鉄剤による治療
■二次性貧血 YnG-36
【概念】
種々の慢性疾患(慢性感染症、膠原病、悪性腫瘍、肝疾患、腎疾患、内分泌疾患など)によって二次的に起こる貧血であり、発症機序は様々である。貧血は軽度〜中等度である事が多く、特異的な所見に乏しい。
【診断】
@慢性の経過を取る基礎疾患があり、
A貧血が見られ
B骨髄検査などで
鉄欠乏性貧血、再生不良性貧血、巨赤芽球性貧血
溶血性貧血などが否定されたとき、
⇒二次性貧血 と診断する
【治療】
基礎疾患の治療が優先する
1.通常、腎性貧血以外では、貧血自体が軽度である事が多いため、経過観察する事が多い。
2.腎性貧血ではエリスロポエチン(EPO)の皮下注などを行う。
■感染性貧血 YnG-36
・感染のストレスにより骨髄造血が抑制され,鉄利用が障害される
・小球性低色素性貧血
・血清鉄↓,TIBC↓,UIBC↓,フェリチン↑
・抗生剤+輸血による治療 ※鉄剤は無効
〜白血球系疾患〜
■急性白血病 YnG-39〜
【概念】
白血球、単級、リンパ球、赤血球、巨核球などよりなる造血系細胞が無制限の増殖を呈した病態を白血病という。
急性白血病は疎の内増殖細胞が成熟障害を伴うもので、そのため幼弱芽球の単一増殖を呈する(白血病裂孔(+))
FAB分類では、骨髄性(AML)をM0~M7、リンパ性(ALL)をL1~3に分類している
・白血球系の細胞が腫瘍性増殖し(白血病細胞),分化成熟障害を伴う
・骨髄芽球と成熟細胞のみが存在="白血病裂孔"
・正常の造血は著しく障害され,赤血球↓,血小板↓をきたす
※ペルオキシダーゼ→緑.骨髄性
エステラーゼ →茶.単球
PAS →赤.リンパ性
【総論】
芽球の3%以上がMPO反応陽性 →AML
naphthyl butyrate esterase染色陽性
Auer小体の存在→非リンパ性白血病
【病体生理と臨床症状】
→ALLも共通
『成熟障害のある幼弱な細胞が増殖』
⇒正常造血の抑制→ 貧血→息切れ、全身倦怠感
顆粒球減少→易感染性による発熱
血小板減少→出血傾向
*貧血、発熱、出血傾向は症状のTrias
⇒多臓器への浸潤→ 肝臓、脾臓、リンパ節への浸潤→肝脾腫、リンパ節腫大
中枢神経系に浸潤→頭痛、嘔吐
皮膚浸潤→皮疹
【症状】
@正球性正色素性貧血
A易感染性:緑膿菌,クレブシエラ,CMV,水痘,
P.cariniiによる日和見感染で重症化
B出血傾向:DIC ←APL,AMoL
C肝脾腫,リンパ節腫大 ←ALLのとき(巨脾にはならない)
D歯肉腫脹,口内炎,皮膚浸潤←AMoLのとき
E骨の自発痛,咽頭痛,関節痛
【診断】
@発熱、倦怠感、 ←感染、腫瘍細胞の崩壊
A貧血(∵赤芽球↓↓→赤血球↓↓)
易感染性(∵骨髄芽球↓↓→白血球↓↓) 骨髄機能障害
出血傾向(∵巨核球↓↓ →血小板↓↓)
B肝脾腫orリンパ節の腫脹が見られ、 ←腫瘍細胞の各種臓器への浸潤
C末梢血で、幼弱白血球の異常増殖に加え、白血病裂孔を伴い、
D骨髄塗抹May−Giemsa染色で、芽球が30%以上見られるとき
⇒急性白血病 と診断する
【治療】“total kill theory”⇒投薬・休薬を繰り返し、腫瘍細胞の減少を目指す。
(1)白血病細胞の根絶を目的とした治療
@寛解導入療法・・・・・初診時あるいは再発時に行う、完全寛解を目的とした治療
A寛解後療法
*寛解とは
・骨髄中の芽球が5%以下→完全寛解
・顆粒球、巨核球系の生成が回復
・末梢血から白血病細胞が消失→塗抹標本上で判断
・末梢血の白血球、赤血球、血小板数が正常値
・白血病の症状が相退する。
⇒白血病細胞を根絶したわけではないが、残っていても悪さをしない状態。
寛解導入療法によって寛解に至っても、そこで治療を止めずに治療を継続する必要がある。
⇒寛解後療法
@地固め療法→寛解到達後に行う強力な化学療法
A強化療法・維持療法→残存白血病細胞を消す。間欠的に行う
(2)化学療法が効かないとき
骨髄移植のみ
(3)支持療法
→貧血、易感染性、出血傾向に対する予防と治療
貧血、出血傾向→成分輸血
感染症→抗生物質の経静脈投与
好中球↓にたいしてG-CSFを慎重投与
DICに対して→ヘパリン+アンチトロンビンV
化学療法によって、白血病細胞が大量に殺される。
→DNAの大量放出
→DNAの代謝産物である尿酸↑
→高尿酸血漿
これに対してアロプリノールと尿酸薬を投与。
■予後不良
@2歳以下,10歳以上 AWBC20,000以上
B男児 CPh1染色体(+)
D中枢病変,縦隔腫瘍 E骨髄性またはL2,L3
※小児の白血病は横ばい〜減少傾向.40歳以上が増加中
▲特異的療法
・分裂期に入っている細胞を,正常白血球,白血病細胞を問わずたたき投薬をやめると,正常白血球が先に分裂期に入って回復する.
・これを利用したもの →totalcelltheory
@寛解導入療法
・AMLDCMP<hノマイシン(DM)
シトシンアラビノシド(Ara-C),
メルカプトプリン(6-MP)
プレドニゾロン(PSL)
・ALLVP<rンクリスチン プレドニゾロン
A地固め療法・・・より完全な寛解をめざす
B維持療法・・・長期使用できる薬剤を使用する
※AML→JALSGAML87,ALL→L10protocol
【補助療法】
@濃厚赤血球輸血,血小板輸血 ・・・Hb7.0g/dl以下,血小板2万以下のとき
A広域抗生剤 ・・・即刻開始
Bアロプリノール ・・・化学療法による細胞破壊→高尿酸血症
CATV+ヘパリン ・・・DICに対して
D骨髄移植 ・・・特異的療法無効例で,適応のある者に行う
E分化誘導療法 ・・・APLに対して
★ALLの寛解期に白血病性髄膜炎をおこすことがある
・治療→MTX髄腔内注入
※小児の慢性白血病は非常にまれ
▲副作用
・サイクロフォスファマイド :出血性膀胱炎,骨髄抑制,脱毛
・ビンクリスチン :末梢神経炎,脱毛,麻痺性イレウス,SIADH
・メトトレキセート :口腔粘膜障害,肺線維症,骨髄抑制
・ドノマイシン,アドリアマイシン:心筋障害,脱毛
【各論】
▲急性前骨髄性白血病:M3
(acute promyeloctic leukemia:APL)
【概念】
・ azure顆粒の豊富な前骨髄様の異常細胞が増殖する。
・ Auer小体が束になって存在する→ファゴット(fagot cell)
これを見つけることがM3の診断になる。→画像診断!!
・ 前骨髄球の異常増加→崩壊
→細胞内のトロンボプラスチンの遊離、線溶亢進
→DICをおこす。
・ 染色体異常→t(15;17)
→遺伝子再構成→レチノイン酸受容体の機能停止→細胞の分化がとまる
→芽球のまま増殖→急性白血病
【検査】
・骨髄穿刺⇒急性白血病の治療で最重要!!
・血清FDP⇒DIC合併のため。
DIC→血清中のフィブリン,フィブリン分解産物が増加。
【診断】
@発熱、貧血、易感染性、出血傾向などがあり ←急性白血病症状
A骨髄像(May-Giemsa染色)の鏡検にて、 ←特異的
アズール顆粒の存在と、faggot body(Auer小体の束)が見られ
Bぺルオキシターゼ染色(++) ←骨髄性
C特異的エステラーゼ反応(+)で ←M1~M4
D著しい出血傾向を起こしている時(fibrinogen↓、FDP↑) ←DICの合併
⇒急性前骨髄性白血病(APL,M3) と診断する。
【治療】
1.寛解導入療法→分化誘導療法
ATRAを大量に投与することで、止まってしまった分化を誘導する。
DICの悪化を防ぐことが出来る。
2.地固め療法・・・・・Ara−Cなど
3.維持強化療法
4.骨髄移植
▲骨髄単球性白血病:M4
・ 顆粒球系と,単球性の2系統がある。 顆粒球+単球
・ 骨髄系の芽球がNECの30%以上。
単球系細胞がNECの20%以上存在する。
・ 末梢血での単球増加が見られる。
→血清・尿中リゾチームの上昇
NaFで阻害される非特異的エステラーゼ反応陽性。⇒骨髄性と単球性(M0~6)
・歯肉腫脹が見られる。<ポイント>
▲急性単球性白血病:AmoL、M5
単球系の細胞がほとんど
【概念】
単球系細胞の異常増殖による白血病である。組織浸潤が強く、その臨床上の特徴は歯肉腫脹であり、また、皮膚浸潤、腫瘤形成である。
・ 歯肉腫脹に注意!!
・ M5aとM5bに分かれる。
M5bではMPO反応が陰性のことが多い
・ 末梢血での単球増加が見られる。
→血清・尿中リゾチームの上昇
NaFで阻害される非特異的エステラーゼ反応陽性。
・ 「核に切れ込み像」→核がくびれた細胞を認めることが多い。
【診断】
@発熱、貧血、易感染性、出血傾向などがあり ←急性白血病症状
A歯肉腫脹、皮膚浸潤、扁桃腺炎があり、 ←白血病細胞の浸潤
B血清、尿中リゾチーム↑
C骨髄像(May−Giemsa染色)の鏡検で、 特異的
切れ込みを有する核と空胞(+)、豊富な細胞質がみられ、
Dぺルオキシターゼ染色(+)、 ←骨髄性
E非得意的エステラーゼ染色(+)の時、 ←単球系=M4・M5
⇒急性単球性白血病(AMoL、M5)と診断する。
※M4は単球・骨髄球両方あるため、特異的エステラーゼ染色でも陽性
【治療】APL(M3)以外のAMLに共通する治療を行う
1.寛解導入療法→BHAC−DMP
または、IDA+Ara−C
2.地固め療法・・・・・Ara−C大量療法など
3.維持強化療法
4.骨髄移植
▲赤白血球病:M6
赤芽球が多い
・ 赤芽球が全有核細胞の50%以上。
芽球がNECの30%以上存在する。
・ PAS染色陽性>MDSとの鑑別が必要。
→PAS染色陽性巨赤芽球出現
▲巨核球性白血病:M7
巨核芽球が多い
・ MPO反応が陰性>ALLとの鑑別が必要。
→電顕PPO反応が陽性
CD41が陽性。
・ 骨線維症が合併することが多い。
■ALL(急性リンパ性白血病)
【概念】
骨髄でのリンパ球系細胞の異常増殖による急性白血病である。ALLの芽球は円形で粗剛に染まる核と比較的大きい核小体を持ち、組織化学にて、Peroxidase反応(−)を特徴とする。
芽球の形態により、L1(小細胞均一型)、L2(大型細胞不均一型)、L3(バーキット型)に分類される。L1は小児に多く、比較的予後良好である。L2は成人に多く、予後はやや不良である。L3はバーキット型リンパ腫の白血病化したものであり、予後不良である。
・小児(2〜4歳)と高齢者に多い
・ミエロペルオキシダーゼ3%以下
・PAS陽性 ・血清LDH↑,TdT陽性
・予後は小児のほうが良く,寛解率も白血病の中で最も良い
【分類】
L1:小細胞型リンパ芽球性白血病 小児に多い t(9:22)
L2:大細胞型リンパ芽球性白血病 大人に多い t(9:22)
L3:バーキット型 空胞を有する t(8:22)
▲骨髄標本 →May-Giemsa染色
・APL(M3):アズール顆粒,faggotcell,Auer小体(+++),核網線維が点描状
・AMoL(M5):グローブミット様核,切れ込みを有する核,空胞(+),
微細なアズール顆粒
・赤白血病(M6):多核の大きな巨赤芽球(異型性強い),環状鉄芽球,PAS陽性
・ALL :核網線維がべったりした感じ,好塩基性,Auer小体(-)
【診断】
@発熱、出血、易感染性、出血傾向などがあり、
Aリンパ節腫脹が見られ、
B骨髄塗抹May-Giemsa染色で芽球が30%以上みられ、
Cぺルオキシターゼ染色(−)、
D細胞表面抗原検査でリンパ系特異的マーカー(+)のとき、
⇒急性リンパ性白血病 と診断する。
【治療】小児ALLの治療成績が良好なのに比べ、成人ALLは大幅に劣る
1.寛解導入療法・・・・・Ad VP療法(adriamycin,vincristine,prednisolone)
小児では90%、成人では80%の寛解率
(長期生存率は小児70〜80%、成人20〜35%)
2.白血病性髄膜症の予防・・・・・MTXの髄注、頭蓋放射線照射など
3.地固め療法・・・・・Ara−C(cytarabin),MTX(methotrexate)等の多剤併用
4.維持強化療法
5.骨髄移植
■慢性白血病(CL)
【概念】
白血球、巨核球などよりなる造血系細胞が無制限の増殖を呈した病態を白血病という。慢性白血病はそのうち増殖細胞が成熟障害を伴わないもので、そのため各成熟段階の細胞の増殖を呈する。(白血病裂孔(−))。骨髄性(CML)とリンパ性(CLL)に分類される。
・骨髄球系およびリンパ球系の細胞が腫瘍性増殖をし,分化成熟障害を伴わないもの
・白血病裂孔(-)→すべての成熟段階の細胞が末梢血中に出現
・CML→成人に多い ・CLL→老人に多い
■CML(慢性骨髄性白血病)
【概念】
骨髄多能性幹細胞の一部が突然変異(Ph1変異)を起こし、骨髄球系の成熟障害を伴わない腫瘍性増殖を来した疾患である。特に急性転化時の診断、治療が重要である。急性転化はほぼ必発で予後不良であるが、慢性期の同種骨髄移植により約50%は治癒を期待しうる。30〜40代に多い。
・骨髄幹細胞の一部が突然変異(Ph1染色体,t(9:22))を起こし,骨髄球系が異常増殖したもの
・慢性に経過し巨脾をきたすが,発症後2〜3年で急性転化し,白血病裂孔の出現(骨髄芽球↑)をみる
【検査】
・Ph1染色体
小児型は陰性で予後は悪い.急性転化しても(+)のまま
・sudanblackB染色(+)
急性転化するとしばしば(-)となる(ALL転化時)
★NAP値↓↓,ビタミンB12↑,尿酸↑,LDH↑,好酸球↑,好塩基球↑
※急性転化すると,NAP値↑,TdT活性↑,drytapとなる
【診断】
@30〜40歳代に多く、
A微熱、全身倦怠感、体重減少(代謝亢進症状)、食欲不振、
B腹痛・腹部膨満症状を訴え、巨大脾腫を触れ、
CWBC↑↑↑(各成熟段階の顆粒球↑=白血病裂孔(−)、好産球・好塩基球↑)
血小板↑、Vit.B12↑、血清好中球アルカリフォスファターゼ(NAP)指数↓
⇒慢性骨髄性白血病(CML) を疑う。
・染色体分析にて骨髄細胞のPh1染色体〔t(9:22)〕を同定するか、
遺伝子解析にて末梢血白血球or骨髄細胞のbcr/abl遺伝子再構成を確認すれば、診断は確定する。
【治療】同種骨髄移植が根治を期待しうる唯一の方法
1.同種骨髄移植:HLA適合ドナーが見つかればfirst choice
約50%の症例で長期生存可能
2.インターフェロン(IFN−α)治療:約30%の症例でPh1が減少し、約10%で陰性化が見られる。
3.従来の化学療法:ハイドロキシウレア(ハイドレア)、ブスルファン、
シクロフォスファミドにてWBC数をコントロールする。
■急性転化 blasticcrisis
【概念】
慢性骨髄性白血病の経過中に、芽球が増加し、白血病裂孔も出現して急性型になることを言う。発熱、貧血、出血傾向などの急性症状も同時に呈することが多い。
・CMLの経過中に,芽球が増加し,白血病裂孔も出現して急性型になること
・発熱,貧血,出血傾向などの急性症状も同時にみられる
・doublePh1染色体などの染色体異常が出現
・CMLは多能性幹細胞の疾患で,増加する芽球も骨髄芽球やリンパ芽球の場合があり後者ではTdT(terminalDNAtransferase)活性が上がり,Vinca剤の有効性が高い
【診断】
@CMLの経過中に
A発熱、脾腫増大、リンパ節腫脹の増大、関節痛悪化
B末血、骨髄における幼弱芽球の著増(白血病裂孔の出現、しばしばdry tap)
血小板・赤血球数の減少、白血球数の増加、CRP(+)
NAPスコア↑、LDH↑、尿酸↑の時、
⇒CMLの急性転化 を考える。
【治療】TdT活性の有無により、主として次のような多剤併用療法を行う
2/3で(−):AML type⇒DCMP療法、BHAC−DMP療法
TdT活性
1/3で(+):ALL type⇒VP療法(vincristine,PSL)
■CLL(慢性リンパ球性白血病)
【概念】
一見正常の成熟リンパ球が骨髄で腫瘍性に増殖して、末梢血中に増加し、リンパ節、脾、肝等の全身臓器浸潤する疾患。
60歳以上の男性に多く、B細胞性で、T細胞性は稀である。日本では全白血病の2〜3%を占め、欧米(30%)に比して少ない。
★60歳以上の老人に多い(CMLは成人に多い)
・成熟リンパ球がリンパ節で腫瘍性増殖し,正常の抗体産生を抑え,病的自己抗体を作る
・これにより,AIHA≠合併
・Bリンパ球系が多いが,日本ではTリンパ球系が多い
・続発性免疫不全症(細胞性免疫↓)をおこしやすい
・一般に予後良好だが,半数は4〜6年で感染症によって死亡
★無痛性リンパ節腫脹,γ-グロブリン↓,モノクローナル免疫グロブリン↑
【病理】
核・・・核網が一様に粗で糸くず様にみえる
【診断】
@60歳以上の高齢者で
Aリンパ節腫大・肝脾腫があり、
B末梢血で成熟小Bリンパ球様細胞↑、 ←腫瘍細胞
WBC↑↑↑(著しく増加、時に数十万)、
C時に貧血が見られ、 ←AIHAの合併
DPHAによる芽球化↓や ←細胞性免疫能↓
γグロブリン低下がある時、 ←液性免疫能↓
⇒慢性リンパ性白血病(CLL)を考える。
・免疫学的解析:CD5、CD19、CD20、CD23が陽性
遺伝子解析 :免疫グロブリンH鎖、L鎖のモノクローナルな再構成にて診断は確定する。
【治療】
リンパ節腫大・肝脾腫による圧迫症状or進行性の貧血等があれば化学療法の適応となる
@ステロイド(PSL) ・・・AIHA合併時
Aクロラムブシル,サイクロフォスファマイド
※無症状なら経過観察
▲クロラムブシルchlorambucil
・アルキル化薬
・芳香族化合物にナイトロジェンマスタードを結合させたもの
・CLL,Hodgkin病に有効
■ATL(成人T細胞白血病)
【概念】
RNAレトロウイルスのHTLV−T(human T−cell leukemia virus typeT)感染により起こるT細胞性白血病・リンパ腫で、成人に発症する。Flower cellと呼ばれる特徴的な白血病細胞が出現する。症状は@くすぶり型、A慢性型、Bリンパ腫型、C急性型がある。九州・沖縄などの南西日本に多く、母乳により児に感染する。
・HTLV-TがヘルパーT細胞に感染することによる
・輸血,垂直感染(母乳感染),性交渉による
・九州,四国に多い ・皮膚症状,HAMなどの症状を呈する
・白血球↑(クローバー状の切れ込み),血清Ca↑,LDH↑
・急性白血病の治療を行うが,半年で死亡
【診断】
@発熱・倦怠感 ←感冒様症状
黄疸、リンパ節腫脹、肝脾腫で発症し、
A結節、丘疹、紅斑、紅皮症等を来し、 ←皮膚浸潤による
B高Ca血症、 ←細胞が産生するPTH様物質による
LDH↑が見られ、
C末血WBC↑(核が花弁状の異常Tリンパ球)、
D細胞性免疫低下、血清抗HTLV−1抗体(+)の時、
⇒成人T細胞性白血病(ATL) を疑う。
・確定診断は、DNA分析によりHTLV−TプロウイルスDNAを照明すること。
【分類】ATLの病型分類
1.くすぶり型・・・末梢血に少数の異常リンパ球を認めるのみで、腫瘍病変はない
2.慢性型・・・・・・・末梢血に異常リンパ球の増殖はあるが、経過は緩慢である
時に急性型に移行する。
3.リンパ腫型・・・末梢血に異常リンパ球の増加はなく、
リンパ腫の臨床像(リンパ節腫大)をとる
4.急性型・・・・・・・末梢血に異常リンパ球の増加を伴い、
典型的な臨床像と急激な経過をたどる
【治療】悪性リンパ腫の治療に準じて行なわれる
1.急性型やリンパ腫型には、原則としてVEPA療法
(ビンクリスチン、エンドキサン、プレドニソロン、アドリアマイシン)
2.慢性型には進行性であれば、エンドキサン、プレドニゾロン、IFNなど
※慢性型・くすぶり型では、経過良好な間には、原則として経過観察のみ
3.高Ca血症には、生食大量輸液とフロセミド、骨吸収抑制剤
■類白血病反応(白赤芽球症)leukoerythroblastosis
【概念】
・骨髄内の正常な造血能が低下し,肝・脾における髄外造血が行われ,末梢血に幼弱細胞(赤芽球,過分葉好中球)が出現して, あたかも白血病の所見を示すもの。
・癌の骨髄転移,骨髄線維症,粟粒結核でみられる
【検査】
★すべてに共通→drytap,NAP値↑↑,Ph1染色体(-)
・骨髄線維症のとき→巨脾,骨梁の肥厚,ビタミンB12↓,涙滴赤血球,尿酸↑
・癌の骨髄転移のとき→腺構造をなす異常細胞集団(H-E染色)
【診断】
@癌(骨髄への非血液系悪性細胞浸潤を認める)
重症感染症 基礎疾患の存在
骨髄線維症(骨髄のびまん性の線維性組織増加を認める)
薬剤中毒などが見られた患者に
A末梢血にて、WBC 5万/mm3以上の増加ないし 診断基準
骨髄球以上の幼弱白血球の末血出現がある時
⇒類白血病反応 を疑う。
※基礎疾患の診断、及び白血病の除外が必要である。
【治療】
基礎疾患の治療が原則
【類白血病反応とCMLとの鑑別】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
類白血病反応 CML
癌骨転移 骨髄線維症
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
末梢血:NAP score ↑ or → ↑ or → ↓↓
(多くは↑) (少数で↓)
異形赤血球 (±) (+) (±)
───────────────────────────────────────
骨髄生検像 腺管構造を有する 骨硬化症を伴った 各種成長段階の
腺癌の増殖像 骨線維化 骨髄球著増
───────────────────────────────────────
染色体分析 Ph1 (−) (−) (+)
───────────────────────────────────────
脾腫 (±) (−) (+)
───────────────────────────────────────
Vit.B12 〜 不定 ↑↑
───────────────────────────────────────
■HAM
【概念】
本症は、HTLV-1の感染により、緩徐進行性の錐体路症状、排尿障害、下肢感覚障害などの神経症状を来す疾患である。血清、髄液中の抗HTLV−1抗体(+)であることが多いが、ATLへの移行は少ない。ATLと同様、九州に多い。
【診断】
@緩徐進行性で対称性の
痙性脊髄麻痺、深部腱反射亢進、Babinski徴候(+)を呈し、 ←錐体路症状
A排尿障害、下肢感覚障害があり、
B血清・髄液中の抗HTLV−T抗体(+)で、
C脊髄X線、MRI、ミエログラフィーなどにより、他の脊髄病変が除外された時
⇒HAM と診断する
※九州に多いため、問診での居住歴が重要
【治療】
1.ステロイド(経口PSL療法が約90%の症例で有効)
2.アザチオプリンなどの免疫抑制剤もしばしば有効である。
※生命予後は良好であるが、悪性腫瘍、肺疾患等の合併により、死亡に至ることがある。
■骨髄線維症
【概念】
・ クローナルに増殖したサイトカインによって線維が増殖する?
*一般に骨髄線維症といったら慢性に経過する狭義の特発性骨髄線維症を指す。
血球3系統の生成障害→巨大血小板
【検査】
@ 赤血球系
・ 中等度の貧血(←繊維化による造血不全)
・ 涙滴赤血球。(ヘルメット状赤血球)
・ 末梢血への赤芽球の出現。
A 骨髄
・ 広範囲な繊維化→dry tap
B 生化学的検査
・ NAPスコア―↑
・ 血清VitB12↓(特異的)
・ LDH↓
【症状】⇒3主徴
@ 脾腫 A末梢血のleukoerythroblastosis B骨髄のdry tap
→骨髄線維症,癌の骨メタ,粟粒結核
*末梢血に赤芽球と顆粒球の幼若細胞出現
【病態生理と臨床症状】
骨髄の線維化→骨髄でdry tap
→造血障害 →貧血 →倦怠感、易疲労性
→代償的に髄外造血 →肝脾腫(特に巨脾)
→leukoerythroblastosis
※造血の場が失われるので、代償的に髄外造血が行われる。
【診断】
@貧血、巨大脾腫が見られ、 ←貧血は多血症との鑑別上重要
A末梢血での涙滴赤血球の存在に加え、 ←tear drop cell
幼若顆粒球、赤芽球の末梢血への出現があり、 ←leukoerythroblastosis
BVit.B12→or↓、NAPスコア↓、Ph1(−) ←CMLとの鑑別上重要
C骨髄穿刺ではdry rap、
骨髄生検では、骨髄の線維化、骨硬化、線維芽細胞↑、骨梁の肥厚
Dフェロキネティクスで、脾・肝での髄外造血所見が見られるとき、
⇒骨髄線維症 と診断する。
※本性の診断には、CMLや真正赤血球増加症を除外することが必要である。
【治療】
現時点では、根本的な治療法はない
・対症療法を主に行う。症状が無ければ経過観察。
■MDS
★急性白血病と貧血のあいだの疾患
・骨髄低形成によらない(正〜過形成),原因不明の汎血球減少
(特に難治性貧血)で,しばしば急性骨髄性白血病化をきたす
・無効造血(+),脾腫(-)
・高齢の男性に多く,感染,出血,貧血などの骨髄不全死が多い
・染色体異常をしばしば合併
・多剤併用しても寛解率は低い
■低形成性白血病smolderingleukemia
・50歳以上に多く,急性白血病へと転化していくことが多い
・汎血球減少,骨髄低形成だが,芽球が増加
・脾腫(+)
・経過は長く,非定型性
■本態性血小板血症
【概念】
・骨髄増殖症候群(myeloproliferative disorders)
の範疇に入る疾患.
・慢性骨髄性白血病(CML),真性赤血球増加症(PV),骨髄線維症といっしょ.一般に血小板数が100 万/μl 以上である.
・過剰な血小板による血小板第3 因子活性の抑制,粘着凝集の障害により,また質的な異常により血栓症状,時に出血症状を起こす.
・本態性血小板血症では,骨髄や末梢血での巨核球コロニー(CFU-Meg) 数が増加.加えて成長因子(Meg-CSF;colony stimulating factor)
に対する感受性の亢進が示唆される.
・DDx 反応性(ないしは二次性) 血小板増加症との鑑別が重要.出血,貧血,悪性腫瘍,炎症などに伴う血小板増加は,いわゆるトロンボポエチンを介する血小板産生の亢進に基づくが,一部でエリスロポエチンやインターロイキン6(IL-6) の関与も報告されているらしい.
【症状】
・肝脾腫(40 %).鼻出血や頭痛で初発することが多い.点状出血はまれ(それはITP).脾や下肢の血栓症で受診することも.出血症状は血小板数の多い例で高率.血栓症状は血小板数と無関係。
血小板の100 万/μl 以上の著増,1〜2 万/μl の白血球増加(核の左方移動あり),LDH の増加.一般に貧血は認めない.
【診断基準】
(1) 血小板数60 ×104/μl 以上が持続する.
(2) ヘモグロビン13g/dl 以下.
(3) 骨髄のコラーゲン線維化は生検範囲の1/3 以下.
(4) フィラデルフィア染色体は陰性.
(5) 反応性血小板増加症と考える原因が認められず,血清IL-6 も正常範囲
【病態生理】
骨髄成分のうち、血小板系が増殖
⇒抹消血の血小板数増加と骨髄の巨核球の過形成が特徴
【臨床症状】
・血小板数の増加→血栓症
・血小板の機能異常→出血傾向
【検査所見】
末梢血の血小板数が100万を越えることが多い。
【治療】
無症状なら経過観察。
血栓症、出血傾向があるとき→インターフェロンα、ヒロドキシ尿素投与。
■真性赤血球増加症
【概念】
・ 骨髄増殖症候群の1 つ.循環赤血球の絶対的増加(男性≧36ml/kg,女性≧32ml/kg),白血球,血小板の増加,脾腫を伴う.
・ 赤ら顔のおじさんのイメージ.50〜60 歳代の男性に好発する.
【症状】
・主な自覚症状は循環血液量の増加と血液粘稠度の亢進によるもので,頭痛,めまい,耳鳴,知覚異常などである.そのほかに高血圧症,鼻出血,消化性潰瘍などもみられる.
・急性白血病に移行することがある.
【検査】
・本症は多能性幹細胞レベルの腫瘍性増殖であり,それ由来の赤血球,顆粒球,血小板が末梢血に出現している.
・赤血球は増加するが, 相対的に鉄欠乏を合併しやすく, 小球性低色素性となることが多い. 白血球数や血小板数は増加することが多い.
相対的な鉄欠乏
→血清鉄↓ TIBC↑ PIDT1/2短縮 %RCU増加
・動脈血酸素飽和度は減少しない→二次性との違い
・赤芽球系前駆細胞のエリスロポエチン感受性が上昇
→赤血球への分化増殖が亢進
→エリスロポエチンはnegative feedbackにより減少。
赤血球が多すぎて逆にエリスロポエチンは減少する。
・好塩基球↑ →血中・尿中ヒスタミン↑
・NAPスコア―↑
【診断】
@中高年に多く、
A頭痛、めまい、耳鳴り、皮膚痛痒感(特に入浴後)
赤ら顔、末梢性チアノーゼ、脾腫があり、
BHb↑(男18g/dl以上、女16g/dl以上)
循環赤血球量↑(男36ml/kg、女32ml/kg以上)
(エリスロポエチン→or↓) ←赤血球↑による反応性の低下
CPaO2≧92% ←二次性との鑑別
D赤血球↑↑↑、白血球↑、血小板↑、NAPスコア↑、Vit.B12↑、尿酸↑の時、
⇒真性赤血球増加症 を考える。
【治療】
潟血、ハイドロキシウレア、ブスルファン、インターフェロン
▲ストレス多血症
【診断】
@ストレス状態にある中年男性で、
A喫煙歴があり、
B赤ら顔、やや小太りで、高血圧、不眠などを呈し、
C赤血球増加症を認めるが、循環赤血球量正常、NAP正常の時、
←循環血漿量↓による見掛け上のRBC増加
⇒ストレス多血症 を疑う。
【治療】経過観察(禁煙、ストレス除去を指導)
☆骨髄増殖系疾患のまとめ
慢性骨髄性白血病 真性多血症 本態性血小板血症 骨髄線維症
(CML) (PV) (ET) (MF)
白血球数 ↑↑↑(数十万/ul) ↑ ↑または〜 ↑↑
赤血球数 〜 ↑↑ 〜 ↓
脾臓 巨脾 巨脾 巨脾はまれ 巨脾
(脾腫は認める)
PH1染色体 + − − −
NAPスコア− ↓(急性転化で↑) ↑ 〜 ↑
ビタミンB12 ↑ ↑ ↑ ↓
▲血小板数が100万以上に増加していた場合には、
@血小板増多症 A真性赤血球増加症 BCML の3つを考え鑑別診断する
■悪性リンパ腫
リンパ組織(リンパ節や脾臓)から発生するリンパ球系悪性腫瘍であり、Hodgkin病とnon−Hodgkinリンパ腫(NHL)がある。
■Hodgkin病
【概念】
・Reed-Sternberg巨細胞の出現を特徴とする悪性リンパ腫
・リンパ腫の10%前後を占め,頸部,胃,縦隔に好発
・細胞性免疫,体液性免疫がともに低下 →ツ反の陰転化
・比較的予後良好で、白血病化する頻度は少ない。5生率は70〜80%であり、NHLの30〜40%より良好である。
【病期】
StageT:限局性リンパ節領域の浸潤
StageU:横隔膜同側≠Qつ以上のリンパ節領域の浸潤
StageV:横隔膜両側≠フリンパ節領域の浸潤
StageW:非リンパ性臓器(肝,脾,骨髄,皮膚)へのびまん性・散布性浸潤
A:全身症状(-) B:全身症状(+)・・・発熱,盗汗,体重減少
【分類】
@リンパ球優性型(LP型)・・・頸部リンパ節(初発)に限局.予後良好
A結節硬化型 (NS型)・・・膠原線維の増生.放射線が特異的に有効
B混合細胞型 (MC型)・・・最も一般的
Cリンパ球減少型(LD型)・・・Hodgkin細胞,Reed-Sternberg細胞
予後不良.白血病化することは少ない
【病理】
★Hodgkin細胞 →大型 単核 核小体(+)
★Reed-Sternberg細胞 →ふくろうの目¥の2核
核小体は大きくhalo≠伴うこともある
【症状】
@リンパ節腫大 ・・・無痛性,無動性,頸部リンパ節が初発
APel-Ebstein熱・・・弛張熱と平熱.1〜3週間の間隔で2〜5日の発熱
B皮疹,皮膚掻痒感・・・Tリンパ球系に多い
C正球性正色素性貧血
【合併】
@帯状疱疹 A吸収不良症候群
Bネフローゼ症候群 C高Ca血症
【検査】
リンパ球↓↓ 血清鉄↓ 血清銅↑
γ-グロブリン↓ 好酸球↑ LDH2,3↑
CRP(+)・・・活動期にみられる.ただしstagingとは関係なし
★病期決定→Gaシンチ,リンパ管造影,骨髄穿刺
【診断】
@頸部の無痛性・無動性・弾性硬・進行性のリンパ節腫脹を初発とし、
A1〜3週間の間隔で2〜5日の発熱(間欠熱)、体重減少、盗汗をきたし
←Pel−Ebstain熱型
Bリンパ球↓、好酸球↑、貧血(正球性正色素性貧血)、LDH2,3↑、 ←細胞性免疫の低下
血清Cu↑、ツ反陰転化のとき
⇒Hodgkin病 を疑い、腫大したリンパ節の生検を行う。
・リンパ節生検で、次のものを認めれれば確定診断に至る
@Hodgkin細胞:大型・単核で核小体が著明である
AReed-Sternberg細胞:Hodgkin細胞が大型、多核化したもの
ふくろうの目¥の2核が認められる。
核小体は大きくhalo≠伴うこともある
・更に病変の広がりを見て病期を決めるため、腹部エコー、CT,MRI、Gaシンチなどを行う
【治療】化学療法と放射線療法が主体!!
血清LDH,赤沈、CRPが活動性、進行性の目安となる
@放射線療法・・・StageT,U
A化学療法・・・StageV,W
※化学療法は多剤併用療法を行う(ABVD療法がfirst choice)
“ABVD”:adriamysin,bleomycin,vinblastine,dacarbazine
MOPP=Fナイトロジェンマスタード、オンコビン(ビンクリスチン)
プロカルバジン、プレドニゾロン
▲プロカルバジンprocarbazine
・メチルヒドラジン誘導体の抗腫瘍剤
・DNA,RNA,蛋白合成を阻害するが,作用機序は明らかでない
・Hodgkin病に対して有効であり,他の抗腫瘍剤と交叉耐性のないことが特徴
・塩酸塩にナツランNatulan(R)
▲リンパ節腫大
・無痛性リンパ節腫大 → 腫瘍性疾患
・有痛性リンパ節腫大 → ウイルス性疾患(肝脾腫を伴う)
■非Hodgkinリンパ腫
【概念】
リンパ球の腫瘍性増殖性疾患の(悪性リンパ腫)のうち、Hodgkin病に属さない病態を言う。わが国では悪性リンパ腫の約90%を占め、B-cell type,diffuse large cell typeが多い。
小児では白血病化しやすく、急性リンパ性白血病(ALL)との鑑別が困難である。
Hodgkin病より予後不良である。
★リンパ腫の90%
・無痛性リンパ節腫脹(頸部,Waldeyer輪)が初発
【分類】
@濾胞性リンパ腫: ・Bリンパ球系のみ
Aびまん性リンパ腫: ・Bリンパ球系,Tリンパ球系がある
・予後不良 ・男児は白血病化しやすい
・Hodgkin病より予後不良
【治療】
@放射線療法:Hodgkin病に比べ効果が低い
A化学療法:CHOP
サイクロフォスファマイド,アドリアマイシン,
ビンクリスチン,プレドニゾロン
【診断】
@頸部、Waldeyer輪、鼠径リンパ節などの無痛性リンパ節腫脹を初発とし、
これが増大傾向を示し、
A体重減少、発熱、盗汗をきたし、
B血液生化学検査で、LDH↑(CRP↑は目立ってない)
C時に白血病症状をきたす時、
⇒non−Hodgkinリンパ腫(NHL) を疑い、病変部の生検を行う。
・確定診断はリンパ節あるいは節外性腫瘤の生検による
病勢、病期の程度を決定するために各種画像診断、末梢血検査などを行う
【治療】放射線治療ないし化学療法がfirst choice
血清LDH値、病変の広がりが予後を左右する。
1.StageTorリンパ節外リンパ腫・・・・・放射線療法
2.上記以外・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・化学療法がfirst choice
化学療法は多剤併用を行う
@低悪性度群には、CHOP療法
シクロフォスファミド、アドリアマイシン、オンコビン(ビンクリスチン)、
プレドニソロン
A中等度悪性度群には、MACOP−B療法
MTX、アドリアマイシン、オンコビン、PSL(プレドニソロン)、ベロマイシン
BLSG4療法(計9種の抗悪性腫瘍薬の併用療法)
▲菌状息肉腫
・皮膚原発のTリンパ球系増殖性疾患
・鱗屑の付着する大小の紅斑が散在
・湿疹と誤診されやすい
・Pautrier微小膿瘍
■多発性骨髄腫
【病態】
・形質細胞の腫瘍性増殖 ・40〜60歳
【臨床症状と病態生理】
1)血中IL‐6の増加
→骨髄腫細胞の増殖に重要な役割を果たしているサイトカイン
2)骨病変
IL‐1、TNF等のサイトカイン
破骨細胞の活性↑
骨芽細胞の活性↓
骨融解 →X線でpunched out lesion⇒画像診断!!
→病的圧迫骨折、腰背部痛
→高カルシウム血症
→・意識障害
・腎障害
3)腎障害
←高カルシウム血症+血漿蛋白の上昇
とくにBence Jones蛋白(BJP)
→尿細管にでたBJPが尿細管に付着し、そこと閉塞させる
→腎障害をおこす。
4)過粘調度症候群
←血漿蛋白の増加←M蛋白の増加
@ 神経症状
A 心不全
B 出血傾向
C 眼底所見
→ソーセージ様静脈怒張
5)易感染性
←正常の免疫グロブリンの減少
6)正常造血の抑制
⇒貧血
【検査】
<原発性マクロブロブリン血症との共通項目>
・単クローン性γ-グロブリン↑,正常γ-グロブリン↓
・総蛋白↑,A/G比↓,ESR↑
・赤血球連銭形成,血小板↓
・尿中BenceJones蛋白(+)・・・60℃以下で白濁,160℃で透明
<多発性骨髄腫のみ>
・IgG↑↑(他のIgは↓),BJP
・CRP(-),尿酸↑ ・高Ca血症(著明)
・Punched out lesion ・M峰形成(免疫電気泳動)
【診断】
@40〜60歳代で、
A徐々に起こる骨痛(特に腰痛)、長期の貧血、倦怠感で始まり、
BM蛋白(Bence−Jones蛋白など)↑ 高γ―グロブリン
それ以外の免疫グロブリン↓
C赤血球連銭形成、赤沈↑、過粘膜度症候群、 ←M蛋白↑による
D蛋白尿
E血清Ca・P↑がみられる時、 ←骨の脱灰による
⇒多発性骨髄腫 を疑う。
・確定診断は、骨髄に異型性の形質細胞(骨髄腫細胞が10%以上)の証明、
免疫電気泳動で血中M蛋白の証明、あるいは尿中M蛋白の証明、
骨X線でpunched out lesion(骨の打ち抜き像)が見られることによる。
【治療】
治療効果の判定は、血中・尿中M蛋白量、骨X線での骨病変の変化による
・MP療法・・・メルファラン,プレドニゾロン
・IFN→骨の疼痛に対しても効果を発揮
・補助療法
a.高Ca血症に対して、輸液+ループ利尿薬
サイアザイド系は禁忌!!→高Ca血症を助長してしまう
b.疼痛には鎮痛剤、貧血には輸血・Epo投与
感染には抗生物質を使用する
c.腎不全が高度であれば、血漿交換療法(plasmapheresis)を行う。
※末血に形質細胞は出てこない
■原発性マクロブロブリン血症
【病態】
・Bリンパ球の腫瘍性増殖 ・60歳以降
【症状】
・過粘稠症候群・・・眼底動脈のソーセージ様変化(ときに多発性骨髄腫でも)
・造血障害・・・正球性正色素性貧血,出血傾向,リンパ節腫脹,肝脾腫
・精神神経障害・・・意識障害
【検査】
<多発性骨髄腫との共通項目>
・単クローン性γ-グロブリン↑,正常γ-グロブリン↓
・総蛋白↑,A/G比↓,ESR↑
・赤血球連銭形成,血小板↓
・尿中BenceJones蛋白(+)・・・60℃以下で白濁,160℃で透明
<原発性マクロブロブリン血症>
・IgM↑↑・・・κ型,λ型
・クリオグロブリン(+)
【診断】
@ 40〜70歳代で、
A頭痛、意識障害、めまい(精神神経症状)
視力障害等の症状があり、 過粘調度症候群
(眼底網膜静脈にソーセージ様変化、眼底出血)
B全身のリンパ節腫大、肝脾腫をきたし、 ←悪性リンパ腫類似症状
C貧血(正球性正色素性貧血)、血小板↓、連銭形成がみられ
D単クローン性血清IgM↑↑
Eリンパ節・骨髄にBリンパ球様の異型細胞の異常増殖があり、 ←B細胞系の腫瘍性増殖
腫瘍細胞の表面・細胞質の単一クローン性IgM(+)のとき、
⇒原発性マクログロブリン血症 と診断する(D,Eがあれば確定診断)
※骨X線は正常を示すことが多く、punched out(−)
【治療】
骨髄腫と類似
・サイクロフォスファマイド,プレドニゾロン(アルキル化薬+副腎皮質ステロイド)
・血漿交換療法(←過粘調度症候群に対して)
▲多発性骨髄腫・原発性マクロブロブリン血症
★A/G比↓かつ総蛋白↑するのはこの2つだけ
【骨髄腫とマクログロブリン血症の鑑別点】
@発症部位
マクログロブリン血症ではリンパ節腫脹、肝脾腫がみられる。
A骨病変
骨腫瘍に特徴的な骨病変に伴う痛み、高カルシウム血症が無い。
B腎障害
マクログロブリン血症ではまれ。
C過粘調度症候群
IgMは5量体なので、骨髄腫に比べて粘調度が上昇。
→・赤血球連銭形成
・出血傾向
・眼底所見
がいずれも顕著に表れる。
D全身リンパ節腫脹
→マクログロブリン血症に特徴的
■無顆粒球症
【概念】
顆粒球、特に好中球が著しく減少し、通常白血球数が1000/mm3以下となった状態のことである。赤血球・血小板数は正常である。原因として、抗甲状腺薬、抗生物質、抗癌薬などの薬剤性が最も多く、またチフス、ウイルス感染、放射線照射、反復輸血などでも生じる。
【診断】
@チアマゾール(抗甲状腺薬)などの薬剤を使用中、
A39〜40℃に及ぶ高熱(重症感染様)、 ←toxic appearance
咽頭、扁桃に白苔を伴う潰瘍があり、 ←儀膜性アンギーナ
強い咽頭痛、全身衰弱などをきたし、
B末梢血でWBC↓↓↓ ※赤血球・血小板は正常
骨髄でも骨髄球系↓↓(回復期↑↑)が見られた時、
⇒無顆粒球症 を考える。
【治療】早期発見、原因薬剤の即時中止が最重要
1.原因薬剤の中止
2.抗生物質大量投与、免疫グロブリン性剤投与
3.ステロイド
4.G-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)
5.必要なら無菌室に収容
〜血小板系疾患〜
■血小板無力症
【概念】
血小板凝集の欠如で,それを仲立ちする血小板膜糖蛋白(glycoprotein;GP)IIb/IIIa 複合体の先天的な量的・質的異常の結果,血小板の生理的止血血栓の形成が障害される.
・ 常染色体劣性遺伝
・ 先天性血小板機能異常症の中では最頻度。
・ 血小板の『機能』がだめ。
【病態生理】
GPUa/Vbの欠損→血小板の凝集がおこらない
→出血傾向
『機能』異状であって『数』には問題がない。
【症状】
粘膜・皮膚・歯肉出血,鼻血など。
【検査】
・ 血小板数,血小板形態は正常。
・ 出血時間は著名に延長
・ 凝集能検査
@ ADP→一次凝集,二次凝集ともに欠如。
A コラーゲン,エピネフリン凝集→欠如。
B リストステチン凝集→正常
【診断】
@幼児期から
A鼻出血・歯肉出血・皮下出血を起こしやすく
B出血時間延長、血小板数正常、血小板形態正常で、
C粘着能↓、退縮能↓、ADP・コラーゲンでの凝集↓
D凝固系正常のとき、
⇒血小板無力症(Glanzmann病) を考える。
【治療】
血小板輸血が唯一の方法 ※ステロイド無効
■Bernard-Soulier症候群
・ 出血時間の延長と巨大血小板を伴った血小板減少症を特徴的とする出血性疾患にちなんで名付けられた先天性血小板異常症.
・ 『数』と『機能』両方だめ。⇒数が少ないのはこれとITP
・ 血小板膜上のvon Willebrand 因子(vWF) 受容体である糖蛋(glycoprotein:GP)Ib/IX/V 複合体の量的・質的異常に基づいた血小板の血管内皮下組織への粘着機能の障害による.
→ 血小板がvWFを介してcollagenに接着できない。
・ 先天性血小板機能異常症のひとつ。(常染色体劣性遺伝)
【病態生理】
血小板の粘着能↓ →一次止血↓
→出血傾向
【症状】
血小板無力症と同様。
【検査】
・ 出血時間延長。APTT正常(vWFは正常なのでVIII因子を安定化することはできる
・ ADP,エピネフリン,collagen(GPIa/IIaを介した直接接着)に対する血小板凝集能は正常。
・ リストステチン凝集の欠如
・ 血小板の軽度減少。形態的には,巨大血小板が出現する。(←vWDとの鑑別)
・ 巨大栓球の出現。
【治療】
・血小板輸血
■von Willebrand病
【概念】
第[因子のco−factorであるvon−Willebrand因子の低下による出血傾向をきたす。
血小板の『機能』異状。
vWFの欠乏 →@血小板と内皮下組織の粘着↓
→一次止血障害
→A第[因子のキャリアー蛋白↓
→血漿中の第[因子活性↓
→二次止血障害
【症状】
・ 鼻出血、歯肉出血、消化管出血等が主体。
・ 関節腔内出血はほとんど見られない。→血友病との鑑別点
【検査】
・ 血小板機能検査
→血小板粘着能の低下、リストセチン凝集の欠如
ADP凝集は正常
・ 血餅退縮正常
・ 出血時間の延長 ←一次止血障害
・ 凝固時間
→APTT延長、PT正常
【診断】
@幼児期よりの ←常染色体優性遺伝
A鼻出血、歯肉出血、消化管出血などがあり、 ←出血傾向
B出血時間延長、血小板数正常、
粘着能↓、リストセチン凝集↓、退縮能→ ←血小板機能的低下
CAPTT延長、PT正常の時、
⇒von Willebrand病 を考える。
・確定診断は、血液凝固第Z因子活性低下(60%以上)
vWF抗原測定を確認することによる
【治療】
※止血困難時以外行わない
@第[因子の補正(vWFを含むもの)
ADDAVP([/vWFの合成を一時的に増強)
→尿崩症の治療薬
※血小板輸血は適応にならない
[血小板無力症] [Bernard-Soulier] [vonWillebrand]
病態 血小板機能障害 血小板膜蛋白異常 vWF↓→[因子活性↓
遺伝形式 常劣 常劣 常優
血小板形態 〜 巨大血小板 〜
出血時間 延長 延長 延長
血小板数 〜 減少 〜
APTT 正常 〜 延長([因子↓)
PT 〜 延長 〜
粘着能 低下 低下 低下
リストセチン凝集能 〜 低下 低下
ADP凝集能 低下 〜 〜
血餅退縮能 低下 〜 〜
症状 皮膚点状出血 粘膜出血,鼻出血,歯肉出血
治療 血小板輸血 血小板輸血 [製剤(クリオプレシピテート)
■ITP(特発性血小板減少性紫斑病)
【概念】
★何らかの機序で血小板自己抗体が産生され,これにより血小板の破壊が亢進(U型アレルギー)して血小板寿命が短縮(1〜3日)する
★このため,骨髄では巨核球が増加
【分類】
・急性型:2〜6歳の小児.先行感染をもって発症.自然寛解が多い
・慢性型:20〜30歳の女性.先行感染はなく,増悪と寛解を繰り返す
【病態生理】
・ 自己血小板に対するIgG 自己抗体産生に基づく血小板減少症で,主に脾で血小板の破壊が行われる.
→血小板結合性IgGの増加
・ AIHAの血小板版
・ 血小板数の減少、血小板寿命の短縮
→骨髄巨核球の増加
・ 急性型と慢性型がある。特に急性型にはウィルス感染が先行することが多い。
【症状】
・ 皮下出血、歯肉出血、鼻出欠、性器出血が4大症状
特に皮下出血はほとんど全ての症例に見られる。
・ 脾腫はまれ。→巨大脾腫とはならない
・ ITP+自己免疫性溶血性貧血⇒Evans症候群
他の自己免疫に関する疾患に合併することがある。→SLE等
【検査所見】
@末梢血
血小板数減少(10万/ul以下)、赤血球数正常、白血球数正常。
A骨髄穿刺
巨核球の増加←血小板の減少を補うため。
B出血時間延長
←一時止血の障害
C凝固時間正常
凝固系にはまったく問題が無いため、PT、APTT、凝固時間は全て正常
DRumpel-Reed試験陽性
血管の脆弱性を調べる試験。
E抗血小板抗体
⇒血小板関連IgG(PAIgG)が増加する。
【診断】
@幼児の上記道感染後、比較的急激に出血傾向 ←急性型−先行感染あり
(点状出血斑、鼻出血、歯肉出血など)が見られたり、
または20〜30歳代の女性に徐々に出血傾向が見られ ←慢性型−先行感染無し
A末梢血では、血小板寿命短縮、血小板↓↓ 血小板の著減を反映
出血時間延長、血餅退縮能↓を示し、
※凝固系(凝固時間、PT,APTTなど)正常、赤血球・顆粒球系正常、
(出血に伴う二次性貧血を伴うことがある)
Rumpel−Leede試験陽性 ←毛細血管の脆弱性
B血小板結合性免疫グロブリンG(PAIgG)↑、 ←血小板自己抗体
C骨髄では、骨髄巨核球↑のとき、 ←血小板↓を補うため
⇒特発性血小板減少性紫斑病(ITP) を考える。
【治療】
1.急性型は経過観察
2.慢性型
出血症状が出ないくらいまで回復させる。
1選択は副腎皮質ステロイド、第2は脾摘、第3は免疫抑制薬。
3、免疫グロブリン大量療法
γ―グロブリンを大量に点滴静注
→マクロファージのFc受容体がγ―グロブリンによって満たされる。
→血小板に結合した自己抗体を認識できなくなる。
→血小板が貪食から免れる。
→血小板数↑
■Henoch-Schonlein紫斑病
【概念】
アレルギー反応により、毛細血管の透過性亢進をきたし、組織への浮腫と出血を生じる血小板減少性の紫斑病で、アレルギー性紫斑病とも言う。その本態はIgAが関与する全身の細小血管炎である。
・特徴的な紫斑→左右対称,下腿下方前面に好発。 画像で鑑別!!
・アレルギー性の血管炎が原因。
・関節症状が強いとHenoch型 腹部症状が強いとSchonlein型
→腹部症状が強いと第[因子が消費される。
【症状】@特徴的紫斑 A関節症状 B腹部症状
・ 上気道炎などの先行感染を伴うことが多い。
・ IgA腎症との鑑別が必要。約半数の症例でIgAが上昇。慢性腎症に移行する例が多い。(顕微鏡的血尿)
・ Rumpel-Leede試験陽性→確定。
・ 関節症状→関節痛
・ 腹部症状は激痛→急性腹症として発症する事が多い。
【診断】
@ 若年者で、
A 上気道炎に引き続き(溶連菌感染が先行することが多い)
B 四肢伸展側に対称性の紫斑が出現し
関節痛、
急性腹症、時に腸重積、消化管出血、
血尿、蛋白尿がみられ、
C 血小板・凝固系正常の時、
→Henoch-Schonlein紫斑病 を疑う。
・診断は臨床症状と経皮針生検による
【治療】
数週間で自然治癒することが多い。
1.小児→サリチル酸
2.成人→免疫抑制薬、ステロイド
※血小板数は正常⇒血小板輸血は禁忌!!
※腎炎合併時には、食餌療法(食塩・水分・蛋白の制限)が重要
■循環抗凝固因子
【概念】
→凝結を阻止する血液中を循環する抗体が出現する。
凝固因子やvWDに対する抗体が先天的、後天的に造られてしまい、凝固因子本来の機能を発揮できなくなる。
→そのため凝固時間の延長
後天的の原因
・ SLE、RAなどの自己免疫疾患
SLEの抗体はループスコアアンチグラント(LA)
・ リンパ増殖系疾患やアミロイド-シス
・ 薬剤、妊娠など
【診断】
@輸血を繰り返しうけたり、
あるいは喘息、SLE,リウマチ様の基礎疾患を有した例に、
A鼻出血、性器出血、皮下出血などが見られ、 ←出血傾向
B凝固系検査(APTT)に異常があるにもかかわらず、
正常血漿の補充でこの凝固系検査所見が順調に補正されない時、
⇒循環抗凝固因子 を考える。
【治療】
1.抗体を中和する量を上回る十分量の血液凝固因子濃縮製剤の輸注
2.交代産生抑制のため、ステロイド、免疫抑制剤投与
■DIC:播種性血管内血液凝固症候群
【概念】
播種性血管内血液凝固症候群は一般的にはDIC(disseminated intravascular coagulation syn-drome) と略称されている.本症は悪性腫瘍,感染症,白血病,循環不全などの基礎疾患の存在下に,凝血学的には何らかの引き金の関与により凝固亢進状態が起こり,全身の微小血管内の血栓形成および二次線溶が作動し,血小板,凝固線溶因子ならびに阻止因子の消費をきたす.
【ぶっちゃけた話・・・】
基礎疾患(たとえば,悪性腫瘍,感染症,白血病,循環不全など)があるとおこる.
何らかの引き金(何らかって,何だろうね?)により凝固亢進状態が起こる.→全身の微小血管内の血栓形成がおこる.つまり,カタマル→しかも,二次線溶も作動しする.つまり,血栓が溶けまくり.
凝固するので,血小板,凝固線溶因子あーんど阻止因子は消費される.
【病態生理】
基礎疾患+何らかの誘引
→血管内で凝固系が亢進する。
→細小血管内で微小血栓が形成される。
→微小血栓による循環障害が起こる。⇒臓器症状
→血栓を除去するために二次的に線溶系が亢進する。
→消耗性の凝固障害と線溶亢進 ⇒出血傾向
この機序により、『臓器症状』と『出血症状』が起こる。
基礎疾患
trigger
凝固系活性化 凝固因子、血小板の消耗
出血症状
微小血栓 線溶系活性化
臓器症状
【病因と病気の成り立ち】
DIC
の成因は(1) 組織トロンボプラスチンの増産,(2) 血管内皮の損傷,(3) 血管炎(vasculitis)の3 つが主なものである.
A.組織トロンボプラスチンの増産
胎盤早期剥離や妊娠中毒における胎盤や羊水,広範な悪性腫瘍の病巣,急性前骨髄球性白血病を代表とする白血病細胞内顆粒の血中への放出,また,火傷など組織の強い挫滅破壊による傷害細胞のリソソームなどから,大量のトロンボプラスチン様物質が血管内に放出されてDIC が起こる.
B.血管内皮の損傷
主にエンドトキシンを産生するグラム陰性桿菌や髄膜炎菌,肺炎双球菌などによる重症感染症,敗血症性ショック,またKasabach-Merritt 症候群のような血管内皮細胞の損傷を起こしやすい巨大血管腫などがDIC の原因となる.
C.血管炎
最近では,血管内皮細胞,単球−マクロファージおよび血小板などの細胞間での相互作用で起こる病態と理解されつつある,らしい。
フィブリノイド血管炎を起こす膠原病(特にSLE) などがDIC の原因となる.
【基礎疾患】
敗血症 悪性腫瘍 急性白血病(APL)
劇症肝炎 急性膵炎 産科疾患
心血管疾患 膠原病 脱水症
不適合輸血
【検査所見】
a.末梢血
@血小板数減少
凝固亢進→血栓形成→血栓の材料である血小板↓
A破砕赤血球 ⇒画像診断!!
凝固亢進→細小血管にフィブリンが析出→フィブリンに赤血球が引っかかり、血管内溶血する。
b.時間測定
@出血時間延長
血小板数↓ →一次止血障害→出血時間の延長
A凝固時間延長
トロンビンの活性化→トロンビン感受性因子である、T、D、[、]V因子が消費される→内因系、外因系両方の凝固時間が延長する。
B赤沈
フィブリノゲンが増加している状態→赤沈促進
フィブリノゲンが減少している状態→赤沈遅延
⇒よってDICでは赤血球沈降速度は遅延する。
【増えるものと減るもの】
凝固、線溶系に関する原材料→減る
複合体、分泌物 →増える
@減るもの
・ フィブリノゲン
・ 凝固因子各種 血栓形成
・ 血小板
・ プラスミノゲン 線溶亢進
・ ATV(凝固阻止物質) 凝固の亢進を抑制するため
・ α2-プラスミンインヒビター(線溶阻止物質) 線溶の亢進を抑制するため
A増えるもの
・ FDP(フィブリンとフィブリノゲンの分解物)
・ Dダイマー (安定化フィブリンの分解物)
*Dダイマーにより、そのDICが凝固優位なのか、線溶優位なのかわかる。
Dダイマー/FDP高値→凝固優位
低値→線溶優位
・ TAT(凝固系の活動性)
・ PIC(線溶系の活動性)
PIC/TAT高値→線溶優位のDIC
低値→凝固優位のDIC
【臨床症状】
臨床的には微小血栓による腎,肺,脳,消化管などの多くの臓器障害のほか,出血傾向などの臨床症状をもたらす症候群である。
@臓器症状
微小血栓の多発→臓器循環不全
腎・・・急性腎不全が起こる。(最重要)
具体的な症状は、無尿、乏尿。
中枢神経・・・昏睡、片麻痺、痙攣麻痺
消化器・・・腸管の広範囲な壊死→大下血
呼吸器・・・成人型呼吸窮迫症候群(ARDS)
循環器・・・ショック、末梢循環乏脈血栓症など
*臓器症状が優位なDICを起こす疾患→感染症(敗血症)、ショック
A出血症状
皮下出血、歯肉出血、喀血、吐血、下血、筋肉内出血、血尿など
*出血症状が優位なDICを起こす疾患→急性白血病(特にM3)
【検査基準】
T.基礎疾患
U.臨床症状: @出血症状 A臓器症状
V.血液成績: @血清FDP値(40μg/ml以上で3点)
A血小板数(5万以下で3点)
B血漿フィブリノーゲン濃度(100mg/dl以下で2点)
Cプロトロンビン時間(時間比が1.67以上で2点)
W.判定:7点以上(白血病その他→4点以上)
X.検査のための補助的血液成績,所見
@可溶性フィブリンモノマー陽性
ADダイマー↑
BTAT(トロンビン・ATV複合体)↑
CPIC(プラスミン・α2PI複合体)↑
D病態の進展に伴う得点の増加傾向
数日での血小板数orフィブリノーゲン↓↓,FDP↑↑
E抗凝固療法による改善
Z.除外規定
@新生児,産科領域のDICの検査には適用しない
A激症肝炎のDICの検査には適用しない
注1:白血病および類縁疾患,再生不良性貧血,抗腫瘍剤投与後など
骨髄巨核球減少が顕著で,高度の血小板↓の場合
→血小板数および出血症状の項は0点
判定は4(DIC),3(疑い),2点
注2:基礎疾患が肝疾患の場合は以下の通り
a.肝硬変および肝硬変に近い病態の慢性肝炎
(組織上小葉改築傾向を認める慢性肝炎)の場合には,
総得点から3点減点した上で判定
b.激症肝炎および上記を除く肝疾患の場合は,そのまま適用
注3:DICの疑われる患者で,
X検査のための補助的血液成績,所見のうち
2項目以上満たせばDICと判定
【診断】
@悪性腫瘍、白血病(APL)、敗血症などの基礎疾患があり、
A突然、皮膚出血性、血尿、消化管出血などが現われ、 ←出血傾向
B血小板↓、出血時間延長 ←血小板消費
CPT・APTTの延長、アンチトロンビン(AT)−V↓ ←凝固因子の活性化・消費
D血漿フィブリノーゲン低下、赤沈亢進、破砕赤血球増加、 ←微小血栓形成
E血漿プラスミノーゲン↓、FDP↑↑、D−ダイマー↑など ←二次線溶亢進
を認める時、
⇒D
I C を考える。
【治療】
原疾患の治療が最優先であり、平行してDICの治療を行う
1.AT−V値が50%以下の場合は、AT−Vを補充した後ヘパリンを投与する。
AT−V値が50%以上の場合には、ヘパリンをまず第一に投与する。
2.その他、凝固因子(新鮮凍結血漿)の補充、
血小板が3万以下では血小板輸血(濃厚血小板浮遊液)
■TTP(血栓性血小板減少性紫斑病)
【概念】
・小血管内皮障害→血小板血栓が多発→血小板↓→骨髄で巨核球↑
・20〜30歳の女性に多い
・DICへの移行が多い
※膠原病と関連する ※一般に予後不良
【病態生理】
・微小血管の血管内皮細胞障害が背景にある。
・内皮細胞障害→血小板凝集亢進→微小血管内硝子様血栓→TTP特有の症状
・血小板凝集は亢進するが凝固線溶系の亢進は少ない⇒DICとの鑑別
→消耗性に血小板数は減少するが、フィブリノゲンなどの凝固因子が減少することは少ない。
・血栓形成→血小板減少→骨髄の巨核球造血は更新→巨核球数は増加
【症状】
@出血傾向,頭痛,発熱・・・初発症状
A溶血性貧血
B精神神経症状 ・・・抑うつ,興奮,意識障害,脱力感
C腎障害 ・・・血尿,蛋白尿
【検査所見】
@ 血小板減少
→代償的に骨髄の巨核球が増加。
A 溶血性貧血
→・LDH↑
・間接ビリルビン↑
・ハプトグロビン↓
・網赤血球↓
TTPに特徴的な『破砕赤血球』の出現→画像診断!!
B 凝固線溶系は正常なことが多い。
PT、APTTは正常
FDPの増加はDICほど典型的ではない。
C 腎障害による所見
血尿、蛋白尿、血中BUN↑、血中クレアチニン↑
【診断】
@発熱、頭痛で発症し、
A多数の破砕赤血球を認める溶血性貧血(微小血管障害性)
B血小板減少による出血傾向(血小板減少性紫斑病) 5徴
C多彩、消長を示す中枢神経症状(抑鬱、興奮、意識障害、運動麻痺)
D腎障害(蛋白尿、血尿)をきたす時、
⇒血栓性血小板減少性紫斑病(TTP) を考える。
・確定診断は歯肉・骨髄生検における微小血管内
のPAS陽性硝子様物質(血栓)の証明による
【治療】
血漿輸注ないし血漿交換がfirst choice(これにより予後は改善している)
1.新鮮凍結血漿の投与を行い、効果が無い場合は血漿交換療法を行う
2.ステロイド、抗血小板薬(アンピシリン、ジピリダモールetc)
免疫抑制剤の併用
※血小板数が少なくても血小板輸血は禁忌!!
3.DICが合併すれば、抗凝固薬(ヘパリン) ※合併が無ければ禁忌!!
▲ジピリダモールdipyridamole
・血管拡張薬(特に冠血流量増加) ・アデノシンデアミナーゼ抑制
・組織内アデノシン(生理的冠血流量調節因子)↑によって冠血管拡張
・大量により血小板凝集抑制 ・長期→心筋における副血行路↑
・狭心症,心筋梗塞,冠不全 ・ペルサンチンPersantin(R)
■血友病
【概念】
凝固因子の先天的欠乏により、出血傾向を示す疾患。
・ 遺伝形式は伴性劣性遺伝 →発症するのは男のみ!!
・ 血小板の『数』と『機能』は正常
・ 血友病Aは第[因子、Bは第\因子の欠損によりおこる。
→両者ともに内因系因子 →APPT延長、PT変わらず。
・ 発症比率はA:B=5:1。
【症状】
@関節腔内出血,筋肉内出血(深部出血)
A関節拘縮,関節偽嚢腫・・・発症1年で骨萎縮,変形性関節症様症状を呈する
※抜歯後の止血困難により発見されることが多い
【検査】
内因系の凝固時間を反映する検査のみが異常を示す。
→APTT延長 PT変わらず。・・・vWDと同じ。
→出血時間は正常。 ・・・vWDと異なる。
【診断】
@男児で幼児期よりの ←伴性劣性遺伝
A関節血腫、筋肉内血腫による疼痛性の腫脹、深部組織への出血 ←出血傾向
抜歯後の止血困難を呈し、
B血小板数正常、血小板機能正常、出血時間正常、 ←血小板数正常
PT正常、APTT延長、全血凝固時間延長をきたす時、 ←内因子凝固系の異常
⇒血友病 を考える。
※血友病A.Bの遺伝形式(伴・劣)、臨床症状は全く同一であり、両者の鑑別はZ因子、\因子を個別に測定して比較検討する。
【治療】
@血友病A:[因子製剤(クリオプレシピテート)または新鮮血漿輸血
A血友病B:\因子製剤または保存血輸血
第[因子は保存に対して不安定、第\因子は安定
→血友病Aでは、新鮮血漿しか用いることが出来ない。
血友病Bでは保存血漿も使える。
実際には第[、\因子の濃縮製剤による補充療法を行う。
→HIVなどのウィルス感染症に注意
■ビタミンK欠乏症
【概念】
ビタミンK欠乏により、Vit.K依存性の凝固因子(U,Z,\,]など)欠乏状態をきたし、出血傾向を呈する。
抗生物質投与の副作用、閉塞性黄疸、母乳栄養児の特発性ビタミンK欠乏症(新生児メレナ)で起こる。
【診断】
@母乳栄養児、経口摂取不良、消化管吸収不良患者・広域抗生物質長期使用者に、
A出血傾向が見られ、
BPIVKA−Uの増加があり、
CPT・APTT延長、血小板数→、出血時間正常のとき、
⇒ビタミンK欠乏症 を考える。
【治療】
Vit.Kの投与
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