肝・胆・膵
■肝機能
▲肝:生合成
・rER(rough endoplasmic reticulum)で,種々のホルモンの指令下に,
@糖 Aコレステロール Bアルブミン
C凝固因子→U,\,Z,] DChE etc.を産生する
▲肝機能低下時
・アルブミン↓(LCAT↓,γ-グロブリン↑)
・コレステロール(エステル型)↓
・凝固因子(VK依存因子↓,PT延長,フィブリノーゲン↓)
・ChE↓
▲アミノ酸
・芳香族アミノ酸(必須),分枝鎖アミノ酸(非必須)が合成される
・肝機能低下時では,芳香族アミノ酸↑,分枝鎖アミノ酸↓
▲NH3
・NH3は主として腸管で腸内細菌により合成→肝で尿素(尿酸)に分解
・他に筋,腎でグルタミンから合成される
・肝機能低下時ではNH3↑
▲ビリルビン
・間接ビリルビンを分解,グルクロン酸を抱合し,直接ビリルビンに変換
▲胆汁酸
・肝内のコレステロールよりコール酸,ケノデオキシコール酸が合成され,胆汁酸の構成成分となる
・肝機能低下時では総胆汁酸↑
▲胆汁生成と分泌
・胆汁は1日0.5〜1.2L産生 ・通常アルカリ性
・脂肪吸収の促進作用がある
▲細網内皮系
・Kupffer cellによる貪食作用 ・肝機能低下時には,易発熱性
▲血流,予備能
・肝血流量は心拍出量の約25% ・予備能20〜30%で生存可能
■肝機能検査
▲ビリルビン
★総ビリルビン →1.0mg/dl以下
★直接ビリルビン →0.2mg/dl以下
★間接ビリルビン →0.8mg/dl以下
・閉塞性黄疸では直接ビリルビンが腸管に排泄されない
→尿中(便中)ウロビリノーゲン(-)
▲ウロビリノーゲン
・ビリルビンが腸内細菌により還元されてできる
・Ehrlichのアルデヒド試薬(p-ジメチルアミノベンズアルデヒド)と反応→赤色
・L-,I-,D-の3種類がある.糞便中ではL型が主成分
・一部は小腸で吸収され腸肝循環をうけ,また尿にも排泄されるが,大部分は酸化され,ウロビリンとなって便へ排泄される
▲血清膠質反応
・アルブミンの減少とγ-グロブリンの増加を反映する
・慢性肝炎,急性肝炎で上昇,閉塞性黄疸でほぼ正常
・TTT:正常3〜14単位.IgMを反映.A型肝炎の初期に特徴的
・ZTT:正常0〜 4単位.IgGを反映
▲tranaminase
・GOT:10〜37単位.中心静脈域 ・GPT:5〜35単位.門脈域
【GPT>GOT】 【GOT>GPT】
@慢性肝炎 @肝硬変 C肝細胞癌
A脂肪肝 Aアルコール性肝障害 D心筋梗塞
B急性肝炎(回復期) B急性肝炎(初期,治癒期) E多発性筋炎
▲LDH正常値→50〜400単位
T型,U型 心,赤血球
V型 肺
W,X型 肝,骨格筋
▲胆管系酵素
・ALP : 3〜10単位.骨,胎盤,腎,肝
・LAP :20〜50単位
・γーGTP :40単位以下.慢性アルコール中毒で著しく上昇
【上昇】@胆道系病変 A胆汁うっ滞 B肝実質性病変
▲ChE・アルブミンに平行して動く
↓:肝硬変,肝癌 ↑:アルコール性,脂肪肝
■急性ウイルス性肝炎
[A型肝炎] [B型肝炎] [C型肝炎]
疫学 流行性,若年者 散発性,家族性 散発性
ウイルス RNA DNA RNA
感染経路 経口 水平:性交,輸血 輸血後肝炎
垂直:産道 の95%
潜伏期 2〜6週 1〜6カ月 2週〜6カ月
(平均2カ月)
臨床経過 一過性感染で完全治癒 一部,劇症化,慢性化 容易に慢性化
発症が急で症状激しい 垂直感染→キャリア 一部,劇症化
予防 γ-グロブリン HBIG インターフェロン
+HBワクチン ノ効クコトアリ
合併症 再生不良性貧血 Gianotti病
(肝炎治癒後) (掻痒感(-)の
紅色丘疹が四肢末端に出現)
検査(共通) GOT>GPT(初期)(1,000単位)
→GOT<GPT(回復期)→GOT>GPT(治癒期)
ビリルビン(直ビ>間ビ)↑,ALP↑,γ-GTP↑,WBC〜
▲A型肝炎:抗体保有者
・20歳以下 →10%以下
・40歳以上 →80%
▲B型肝炎:キャリア
HBs抗原(+) or HBc抗体>2*10
【診断】
@ 全身倦怠感、悪心、嘔吐、食欲不振、発熱、黄疸、肝腫大、腹部鈍痛をきたし、
A トランスアミラーゼ(数百単位以上)の上昇や、
直接ビリルビンの上昇が見られ、
肝生検にて、balooning cellやacidophilic bodyが見られたら
⇒急性ウイルス性肝炎
・原因ウイルス検索のため、HA抗体(IgM型)、HBs抗原・抗体
HBs抗体(IgM型を含む)、HCV-RNA等のウイルスマーカーの測定を行い、
ウイルスの同定を行う。 <確定診断は血液検査
【治療】一般に保存的治療(安静と栄養補給)が中心で、多くは2〜3ヶ月で治癒する。
・安静・臥床(臥床により肝血流寮は約50%増加する)
・必要最低限のカロリー補給、高蛋白食、ブドウ糖、ビタミン剤の点滴投与
▲インターフェロン
【適 応】B型,C型肝炎
【副作用】発熱,肝腎障害,精神症
■A型肝炎
・病初期(1カ月) IgM型HA抗体↑(TTT↑)
・回復期(2,3カ月) IgG型HA抗体↑(ZTT↑)
■B型肝炎
病初期 ・HBs抗原 :キャリアであることを示す
(1m) ・HBe抗原 :感染力が強いことを示す
・HBc抗体 IgM:過去1年間の感染を示す(一過性感染)
病後期 ・HBe抗体 :感染力が弱いことを示す
(5-6m) ・HBc抗体 IgG: 2*10以上→キャリア
2*10以下→一過性感染の治癒
回復期 ・HBs抗体 :治癒を示す.中和抗体
(8-9m)
■C型肝炎
・HCV抗体,HCV-RNA陽性で確診
■B型肝炎ウイルス感染対策
【一般的事項】
@煮沸消毒,乾熱滅菌(132度で10〜15分 or 121度で30分)
Aホルマリン,グルタールアルデヒド,次亜塩素酸(HIVにも有効)
B流水(手指の汚染の時)
【母児垂直感染予防】
HBIG(hepatitis B immunoglobulin)
・有効期間は3カ月
・胎児の体内に侵入したHBVを,高力価のHBs抗体で
中和排除することによりHBV感染を予防する
・出生48時間以内に投与するのが普通
HBワクチン(不活化ワクチンor人工ワクチン)
・人工的にHBs抗原を接種することにより,HBs抗体を
能動的に産生させHBV感染を予防する
・出生2,3,5カ月の3回投与する.必ずHBIGと併用
※母乳を血漿交換するのも有効
※加齢により陰性化しにくい
【水平感染予防】
・HBワクチンを出生3カ月以内に接種する
【HBs抗原陽性血液に暴露した場合】
・48時間以内にHBIGを筋注
↓
・HBs抗原,HBs抗体ともに陰性であることを確認
↓
・HBワクチンを接種する
■劇症肝炎(肝性脳症)
【定義】
@症状発現後8週以内に肝性昏睡U度以上の脳症をきたし,
Aプロトロンビン時間40%以下を示すもの
【原因】
@ウイルス性(B70%>C>A)
A薬剤性(ハロセン,PAS,サルファ剤)
B妊娠脂肪肝
【死因】
肺炎,腎不全,消化管出血,DIC(生存率約20%)
【症状】
@発熱,腹痛,全身倦怠感 ・・・初期症状
A肝性口臭,黄疸,腹水,浮腫
B傾眠,羽ばたき振戦 ・・・肝不全症状
【検査】
@初期にはGOT・GPT↑↑,末期にはGOT・GPT正常
A総胆汁酸↑,アンモニア↑(BUN↑),ビリルビン↑
Bアルブミン↓(2.5g/dl以下),凝固因子↓(PT延長),ChE↓
フィブリノーゲン↓,Fisher比↓(分枝鎖アミノ酸↓),LCAT↓
【増悪因子】
@便秘 ←ラクツロース浣腸
A消化管出血 ←抗潰瘍薬
B感染 ←カナマイシン
C水・電解質異常 ←低K血症にならぬよう(利尿剤にも注意)
D向精神薬 ←どうしても必要ならオキサゼパム,ロラゼパム
【肝性昏睡】
T度 睡眠ー覚醒リズムの逆転.多幸気分,時に抑うつ
U度 指南力障害,異常行動,傾眠.興奮(-)
尿便失禁(-).羽ばたき振戦.医師の指示には従う
V度 興奮,せん妄,反抗的態度,嗜眠.医師の指示に従わない
W度 昏睡.痛み刺激に反応
X度 深昏睡.痛み刺激に反応しない
【診断】
@ 肝炎発症後に、
A 全身症状が強く、食欲低下、易倦怠感が持続し、
B トランスアミラーゼは下がってきたのに、 劇症化の予知
T-bilの継続的な上昇を示し、
C プロトロンビン時間が40%以下となり、 重症度の指標
コリンエステラーゼの低下が見られ
D エコー・CTにて、肝萎縮、肝内部構造の不均一化、腹水所見があり、
E 意識障害、羽ばたき振戦、 ←高アンモニア血症に伴う精神・神経症状
脳波上、三相波が出現してきた時、
⇒劇症肝炎(急性or亜急性型)を考える。
急性型は発症より10日以内に肝性昏睡U度以上の意識障害をきたし、
亜急性型は、発症より10日を過ぎて、肝性昏睡U度以上の意識障害をきたす
【治療】肝に対する治療のみならず、全身管理が重要
@全身管理 (低蛋白食) EL-ドーパ,ブロモクリプチン
Aステロイド (肝細胞壊死の抑制) Fカナマイシン,ネオマイシン
BG-I療法 Gラクツロース浣腸
Cグリセオール (脳浮腫予防) H血漿交換
D分枝鎖アミノ酸(Fisher液.アミノレバン)
△低K血症,アルカローシス
・イオン型アンモニア↑
→アンモニアの脳内への移行,腎尿細管での血中への移行を亢進させる
△Lードーパ,ブロモクリプチン
・L-ドーパ(ドーパミン,ノルアドレナリンの前駆体),ブロモクリプチン(ドーパミン受容体のアゴニスト)はどちらも偽性神経伝達物質の効果を減弱するために用いられることがあるが,有効性は明らかではない
△GI療法
・肝障害抑制効果,肝細胞再生促進効果があるという成績に基づいた治療法
・劇症肝炎を含む急性・慢性肝不全症例に対して行う
・5%ブドウ糖液500mlにグルカゴン1.0mg + インスリン10単位
▲三相波
@肝性脳症 A尿毒症 B糖尿病性昏睡
■慢性肝炎
【概念】
・肝の持続性炎症が6カ月以上続くもの
・多くはキャリアが主(成人初感染からの慢性化は少ない)
【原因】
@ウイルス性・・・C型70%,B型20%
Aアルコール性(10%)が原因
【病理】
@piecemeal necrosis →限界板の破壊.活動性慢性肝炎
bridging necrosis →肝硬変への進展を示す
A非活動性慢性肝炎
小円形細胞浸潤と線維増生による門脈域の拡大.限界板の破壊はない
【検査】
・GPT>GOT(100単位前後) ※重症時はGOT>GPT
・ALP,γ-グロブリン正常
【診断】
@ トランスアミラーゼの上昇が6ヶ月以上続き
(AST<ALTであることが多い)
A組織学的に門脈域の線維性拡大、小円形細胞浸潤がみられ、
門脈辺縁にpiecemeal necrosisが認められた時、
⇒慢性肝炎 と診断する
【治療】
※ 治療の目標は、B型ではe抗原の陰性化と、AST,ALTの安定化を目指す
C型では、HCV-RNAの陰性化と、AST,ALTの低値安定である
@安静,高蛋白食
Aインターフェロン(抗ウイルス剤) →C型の時
Bピシバニール(免疫賦活剤) →B型の時
Cステロイド,免疫抑制剤 →炎症を抑える
▲OK-432
Streptococcus hemolyticus A群V型をペニシリン処理した製剤
免疫賦活作用により,抗腫瘍効果を発揮
ピシバニール Picibanil (R)
■薬剤性肝障害
【分類】・中 毒 性 :薬剤自体あるいはその代謝物による.投与量に比例
・アレルギー性:薬剤に対する過敏反応による. 投与量に無関係
抗生物質によるものが最多
【肝細胞障害型】 【胆汁うっ滞型】 【混合型(肝炎型)】
@テトラサイクリン @EM,サルファ剤 @ペニシリン
A抗てんかん薬:フェノバール A抗精神病薬:クロルプロマジン A抗うつ剤:イミプラミン
B抗結核剤 :INH,RFP,SM B抗甲状腺薬:メチマゾール Bプロピルチオウラシル
C降圧剤 :メチルドーパ Cサイアザイド:クロロチアジド
D免疫抑制剤 :アザチオプリン D蛋白同化ホルモン
E麻酔剤 :ハロセン E血糖降下剤 :トルブタミド
【症状】
@無症状(自覚症状に乏しく,肝機能血液で発見されることが多い)
A発熱,発疹 B黄疸,皮膚掻痒感(特に胆汁うっ滞型)
【検査】
・血液:好酸球増多(>6%).ビリルビン上昇(特に直ビ)
・確診:リンパ球刺激試験(LST),薬剤感受性試験
【診断】
@ 薬剤使用後1日ないし4週に、肝機能障害を認め
A 発熱、発疹、皮膚痛痒、黄疸を来し、
B AST,ALTの上昇が目立ち、 ←肝細胞壊死を反映
胆道系酵素(ALP,LAP,γ-GTP)の上昇が軽度の時、
⇒肝細胞障害性薬剤性肝炎 を疑う。
・ 確定診断はウイルス肝炎の除外と起因薬剤の同定による
薬剤使用歴の問診も重要。
@ 薬剤使用後1〜4週に、肝機能障害を認め、
A 発熱、発疹、皮膚痛痒、黄疸を来し、
B 血液検査で、6%以上の好酸球増加と共に
胆管系酵素の上昇が目立つ時、 ←胆汁うっ帯を反映
⇒胆汁うっ帯型薬剤性肝障害 を疑う。
【治療】
@原因薬剤の中止
Aステロイド ・・・黄疸出現時の1st choice
■原発性胆汁性肝硬変 primary biliary cirrhosis;PBC
【病態】
・肝管の閉塞(-)なのに進行性の閉塞性黄疸→最終的には肝硬変
・自己免疫機序? ・中年女性に多い
【症状】
@皮膚掻痒感(初期症状.黄疸に先行) A門脈圧亢進症状(著明な肝腫,腹水)
【検査】
@抗平滑筋抗体,抗ミトコンドリア抗体,抗核抗体
Aビリルビン↑(直ビ),ALP・LAP・γ-GTP↑(∵胆汁うっ滞)
B総コレステロール↑,総胆汁酸↑,IgM↑,ESR亢進
CGOT・GPT正常のことが多い
【病理】
慢性非化膿性破壊性胆管炎
=chronic non-suppurative destructive cholangitis;CNSDC
中等大の小葉間胆管の変性・破壊とリンパ球・形質細胞の浸潤
【合併】
@皮膚黄色腫 DCREST症候群
ASjoegren症候群 E骨軟化症(VitD吸収↓)
B橋本病 F骨粗鬆症
CRA G夜盲症 (VitA吸収↓)
【治療】
・有効な治療法はない ・ステロイドは無効
・ウルソが有効らしい ・D-ペニシラミンも有効?
■原発性硬化性胆管炎
【概念】・びまん性炎症により,肝内・肝外の胆道狭窄を生じる
・成人男性に多い
【血液】・ビリルビン↑,ALP↑ ・抗ミトコンドリア抗体(-)
・IgM正常
【ERCP】びまん性数珠状狭窄像
【合併】@潰瘍性大腸炎 A後腹膜線維症
■ルポイド肝炎
【概念】・慢性活動性肝炎に一致し,肝組織のリンパ濾胞様細胞浸潤,
bridging necrosisを認める
・若年女性に多い
・自己免疫疾患(橋本病,RA,CREST症候群)との合併が多い
【症状】@SLE様顔面紅斑 A関節痛 B月経不順
C出血傾向 D黄疸 E腹水
★早期に肝硬変に移行
【血液】・抗平滑筋抗体,LE細胞
・GOT・GPT↑↑↑(>1,000単位)
・ビリルビン↑,γ-グロブリン↑,ESR↑
【治療】・ステロイドが有効
■門脈圧亢進症
【概念】・門脈系の血行障害により門脈圧が異常に上昇(200mmH2O)し,
体循環系の側副血行路(胃・食道静脈瘤,腹壁静脈怒脹)や,
脾腫,脾機能亢進を生じる
・小児では,肝外門脈閉塞によることが多い
【治療】・食道静脈瘤と肝硬変に対する治療が主体
・門脈圧降下剤=バゾプレッシン投与
【肝前性】 【肝内性・類洞前(90%)】
・原因:門脈血栓症,先天性,腫瘍 ・原因:日本住血吸虫症
・門脈圧>肝静脈圧(正常) ・門脈圧>肝静脈圧(正常)
・食道静脈瘤(+),脾腫(+) ・食道静脈瘤(+),脾腫(+),腹壁静脈怒脹(+)
・肝機能は正常 ・肝機能は軽度障害
【肝内性・類洞後】 【肝後性】
・原因:肝硬変 ・原因:Budd-Chiari症候群
・門脈圧<肝静脈圧 ・門脈圧<肝静脈圧
・食道静脈瘤(+),巨大脾腫 ・肝腫(+)
・肝機能は高度障害 ・肝機能は中等度障害
・腹壁静脈怒脹,腹水(+)
※正常では,門脈圧 = 肝静脈圧 = 100〜150mmH2Oとなる
※先天性の門脈圧亢進症では,海綿状血管増生がみられる
■Budd-Chiari症候群
【概念】・肝静脈または下大静脈の閉塞 → 肝後性門脈圧亢進症
・肝静脈圧>門脈圧(→〜↑) ・しばしば,肝硬変を伴う
【症状】@腹水,肝腫:著明,急性型ではショックにいたる
A腹壁静脈怒脹 B下肢の浮腫,色素沈着
C食道静脈瘤,脾腫:軽度
【検査】・肝機能血液:軽度〜中等度異常 ・ICG:延長
【治療】@原疾患の治療:腫瘍,血栓,静脈炎
Aカテーテルによる開通術:下大静脈の膜様閉塞のとき
■Banti症候群
【概念】・原因不明の門脈血流増加による門脈圧亢進症
・中年女性 ・門脈圧↑(but300mmH2Oまで) > 肝静脈圧(→〜↑)
【症状】@巨大脾腫:汎血球減少,骨髄巨核球の出現
A胃・食道静脈瘤 B腹水:軽度
【検査】・肝機能血液:正常〜軽度異常 ・肝硬変(-).胆道系正常
・BSP,ICG正常 ・肝生検:線維化(小葉改築はない)
【治療】@摘脾術→汎血球減少の改善
A選択的門脈圧減圧術(左胃静脈-下大静脈吻合術,遠位脾-腎静脈吻合術)
Bバゾプレッシン,スピロノラクトン,プロプラノロール→門脈圧亢進の改善
■脂肪肝
【概念】
肝細胞中にTG(トリグリセリド)が過剰に沈着した状態。臨床病理的には全ての肝小葉の1/3以上の領域のわたって肝細胞に著明な脂肪滴の蓄積性変化を見るが、その他には顕著な形態学的異常を認めないもの。
【3大原因】
@習慣性飲酒 A肥満 B糖尿病
【その他の原因】
・甲状腺機能亢進症 ・クッシング症候群
・ペラグラ ・ステロイド ・栄養障害
【血液】
・GOT・GPT :正常〜軽度↑
・中性脂肪(TG) :正常〜上昇
・BSP,ICG :正常
・A/G比 :上昇(栄養障害性脂肪肝では低下)
【画像】・CT:low ・エコー:high, bright liver
【病理】脂肪沈着(確診)
【合併症】
・VLDLが肝内より肝外に放出されずに停滞し,脂肪化する
・W,X型高脂血症を呈する.
【診断】
@肥満、大酒家
A
■アルコール性肝障害
【概念】・アルコールの直接的肝障害 & 栄養障害などの間接的肝障害
・飲酒歴:1日3合,5年以上 ・女性のほうが発病しやすい
・初期には脂肪肝を示す
【血液】・γ-GTP↑↑↑(1,000単位とか)
・GOT>GPT・・・ミトコンドリア由来のm-GOT↑による
・GOT/GPT=2 ・中性脂肪↑
・IgA↑ ・ビリルビン↑(最高で10mg/dl)
・ChE↑ ・WBC↑
【病理】・肝細胞周囲線維化(pericellular fibrosis)・・・中心静脈周囲の壊死
・Mallory body=E肝細胞は大きく,細胞質はしばしば空胞化
・アルコール硝子体ともいう
・好酸球を含む巨大ミトコンドリア
【治療】・まずなにより禁酒=ィ肝腫大は著明に改善される
【予後】・門脈圧亢進による食道静脈瘤が最多 ・肝細胞癌の合併は少ない
■Zieve¥ヌ候群
・アルコール性肝炎+高脂血症 ・溶血性貧血 ・黄疸
■肝硬変
【概念】
・種々の肝疾患の終末像 ・慢性,進行性に経過
・小葉の改築(偽小葉),線維性隔壁,再生結節
・ウイルス性80% :C型→70%,B型→20%
・アルコール性10%
【長与・三宅分類】 甲 乙 F
Gall分類 壊死後性 肝炎後性 栄養性
再生結節 大小不同 単・複小葉性 赤色斑点,微細結節
先行病変 亜急性肝炎 慢性肝炎 ア性肝障害,脂肪肝
※肝癌合併多い
【代償期症状】
@クモ状血管腫 D脾腫
A手掌紅斑 E皮下出血・・・毛細血管拡張症
B女性化乳房(∵エストロゲン分解酵素↓) F皮膚掻痒感
Cばち指
【非代償期症状】
@黄疸 E浮腫,腹水(ネフローゼ症候群)
A食道静脈瘤 →低アルブミン血症+門亢症
B腹壁静脈怒脹(メズーサの頭) F消化管出血,DIC
C腹膜炎 G肝性脳症
D消化性潰瘍
【検査】
・血液:@汎血球減少 :脾機能↑による
Aアルブミン↓,γ-グロブリン↑(M峰)→A/G比↓
BGOT>GPT:比が2以上→肝癌?
CALP↑ :高度上昇 →肝癌?
DAFP↑ :肝再生の強いとき.持続高値→肝癌?
EBSP,ICG:著明な延長
FPT♂長
G補体↓ ※肝機能をよく反映するのは,A,F
・肝シンチ :flying bat sign
・CT・エコー :右葉萎縮,左葉の代償性肥大,脾腫
・選択的腹腔動脈造影(SCA):肝内動脈の狭小化,蛇行によるcork skrew
・腹腔鏡 :大小様々の結節がびまん性にみられる
・病理 :にくずく肝(うっ血性肝硬変のとき)
【治療】
@腹水,浮腫≠フ治療
(肝血流量↓が目的.過度に行うと高NH3血症→肝性昏睡)
・安静,高蛋白食,食塩制限,水制限,フロセミド,スピロノラクトン
・生食輸液はNaを多く含むので禁忌.アルブミン製剤
A肝性脳症≠フ治療
B食道静脈瘤≠フ治療
C消化管出血(潰瘍)≠フ治療
【予後】多くの症例において,進行性で予後不良
ただし,5生率は60%以上
【死因】@原発性肝癌の合併
A食道静脈瘤破裂
B肝性昏睡(肝不全)
■HCC
【概念】
・B型肝炎からの移行が多い
・肝硬変を合併:85%.乙型,肝炎後性
【症状】
@発熱(不明熱),血性腹水,腹痛,ショック(進行癌の特徴)
A腹腔内出血,消化管出血 ・・・凝固因子↓による
B肝硬変症状 ・・・黄疸は早期にはみられない
※癌性腹膜炎は少ない
【検査】
・血液:GOT>GPT ALP↑↑(特にALP-2)
LDH-5↑ γ-GTP↑
AFP↑↑,PIVKA-U↑▼・・腫瘍マーカー
・肝シンチ(99mTc-フチン酸)→hot spot
・C T:単純→low density 造影→high density
・エコー:モザイクパターン
・選択的腹腔動脈造影(SCA)
→hypervascularity.これで転移性との鑑別が可能
【転移】
血行性に肺転移(リンパ行性は少ない) ※骨転移は起こしにくい
【治療】
・TAE:門脈本幹及び1次分枝に腫瘍塞栓があるときは禁忌
・PEI:微小肝癌に対して
・抗癌剤:5-FU,マイトマイシン,アドリアマイシン
【手術適応】
@総ビリルビン <3
Aアルブミン ≧3
BICG <35%
【Child分類】 A(軽症) B(中等症) C(重症)
ビリルビン 2.0以下 2.0〜3.0 3.0以上
アルブミン 3.5以上 3.5〜3.0 3.0以下
腹水 (-) コントロール可 コントロール困難
脳神経症状 (-) 軽微 重症〜昏睡
栄養状態 大変よい よい 悪い〜消耗
※外科的な肝右葉:左葉の境界=Cantlie$(下大静脈−胆嚢線)
※鎌状間膜→肝左葉の外側区域と内側区域の境界
■転移性肝癌
【概念】
・肝疾患中最多 ・胃癌からの転移が最多(経門脈的)
・結節型で多発性のことが多い(腫瘤形成型)
・肝硬変の合併はない
【検査】
・AFP(-) ・CEA(+)
・造影CT :low density,中心壊死,石灰化
・血管造影 :hypovascular
【治療】
手術療法 ※原発巣が根治し,遠隔転移なく,転移巣が限局しているとき
■肝血管腫
【概念】・肝良性腫瘍中最多 ・中年女性に好発
・巨大血管腫+DIC(Plt↓)→Kasabach-Merritt¥ヌ候群
【検査】・単純CT:low density
・造影CT:high density,周囲は斑点状♂A影
・血管造影:静脈相でpooling綿花状濃染=Chypervascular,tumor stain
・エコー :高エコー
・肝シンチ:cold area
■肝膿瘍
【化膿性肝膿瘍】
・E.coliによる ・多発性.右葉に多い
・膿瘍は黄色 ・60歳代に多い
・経胆道(最多),経門脈的に感染 ・横隔膜下膿瘍を合併しやすい
【アメーバ性肝膿瘍】
・赤痢アメーバによる ・単発性.右葉に多い
・膿瘍はチョコレート状 ・30〜50歳の男性.同性愛者
・経門脈(大腸)的に感染(経口,性交感染)
・細菌感染,穿孔,腹腔内破裂を合併しやすい
【症状】@弛張熱 A右季肋部痛 B肝腫大
※化膿性の方が急性で重篤 ※黄疸,腹水はまれ
【検査】・CT :low density
・エコー :低エコー,石灰化
・内視鏡 :タコイボ状(アメーバ性)
・肝動脈造影 :avascular ※肝生検はしない
【治療】・化膿性 →抗生剤,外科的切開排膿
・アメーバ性 →メトロニダゾール,外科的吸引排膿
■肝嚢胞
【概念】・包虫症(エキノコッカス症)による
・腎嚢胞を高頻度に合併(60%)
・肺胞虫症合併時には,血痰が特徴的
【検査】・X 線:肝内石灰化(卵殻状)
・CT:low density
・エコー:内部エコー消失,後部エコー増強,辺縁平滑で鮮明な後壁
・血管造影:avascular
・補体結合反応で確診
【治療】・対症療法 ・破裂をのぞけば,緊急切除の必要はない
・内科的に有効な治療法はない
■肝損傷
【概念】交通事故などの非開放性損傷(上腹部の鈍的外傷)の中で,
脾とともに腹腔内出血の原因となる
【分類】@真性肝断裂 :最多.経被膜性肝断裂
A被膜下肝断裂 :被膜下血腫を作る
B中心部肝断裂 :肝嚢胞,肝膿瘍,血性胆汁の原因となる
■黄疸★総ビリルビン値が1.0mg/dl以上
■肝前性黄疸 ★尿中ウロビリノーゲン(+),尿中ビリルビン(-)
・肝機能軽度異常
【溶血性黄疸】貧血,脾腫,舌の脂肪黄染(∵老廃赤血球の過剰崩壊)
■肝性黄疸 ★尿中ウロビリノーゲン(+),尿中ビリルビン(+)
【体質性黄疸】先天性ビリルビン代謝異常による,肝機能正常
・Gilbert, Crigler-Najjar →間ビ優位
・Dubin-Johnson, Rotor →直ビ優位
【肝細胞性黄疸】
・肝細胞の障害による ・直接型優位
・ウイルス性,アルコール性,薬剤性,Weil病
・総コレステロール↓,GOT・GPT↑
【肝内胆汁うっ滞】
・ビリルビンの毛細胆管への排泄障害による(肝内胆管は縮小)
・直接型優位 ・ウイルス性,薬剤性,PBC,PSC
・総コレステロール↑,ALP・γ-GTP・LAP↑ ・皮膚掻痒感
■肝後性黄疸 ★尿中ウロビリノーゲン(-),尿中ビリルビン(+)
【閉塞性黄疸】
・胆道系の機械的閉塞による.肝内胆管は拡張
・直接型優位 ・胆石症,胆道癌,膵頭部癌
・総コレステロール↑,ALP・γ-GTP・LAP↑
PT延長,皮膚掻痒感,発熱,右季肋部痛
■Gilbert症候群 ■Crigler-Najjar症候群
・間ビの摂取障害& ・グルクロニルトランスフェラーゼの欠損
グルクロニルトランスフェラーゼの部分欠損 ・完全欠損→T型,常劣 ・部分欠損→U型,常優
・間ビ優位.Bil.≦5mg/dl ・間ビ優位.Bil.20〜45mg/dl
・動揺性黄疸 ・核黄疸
・成人.常優.予後良好 ・新生児
・黄疸(眼球黄染)以外に無症状 ・sunset phenomenon(眼球下方偏位)
・BSP,ICG正常 ・BSP,ICG正常
・肝組織正常 ・門脈域軽度線維化=ゥこれにのみ要治療
・尿中ウロビリノーゲン強陽性 @光線療法 A交換輸血
・肝機能正常 ・肝機能正常
・肝酵素誘導(フェノバール)で黄疸軽減
■Dubin-Johnson症候群 ■Rotor型高ビリルビン血症
・直ビの毛細胆管への排泄障害 ・直ビの毛細胆管への排泄障害
・直ビ優位.Bil.5〜10mg/dl ・直ビ優位.Bil.5〜10mg/dl
・思春期.常劣.予後良好 ・幼児期.常劣.予後良好
・軽度の肝腫大,黒色肝 ・軽度の肝腫大
・BSP再上昇,ICG正常 ・BSP,ICG著明な延長
・肝細胞内褐色色素顆粒 ・肝組織正常
・肝機能正常
・体質黄疸中で最多
■新生児生理的黄疸
・胎児赤芽球崩壊,グルクロン酸抱合活性↓→間ビ優位に総ビリルビン↑
・総ビリルビン≦15mg/dl(直ビ≦3mg/dl)
・生後2日〜2週にみられるのが正常
・治療:@経過観察
A交換輸血・・・a)総ビ≧20mg/dl or b)溶血 で適応
■新生児黄疸をきたす疾患
【間ビ優位】
@出生後24時間以内 →血液型不適合(新生児溶血性疾患),子宮内感染
Aピークが長い場合 →特発性高ビリルビン血症
B2週以上持続 →母乳性黄疸,Crigler-Najjar症候群,クレチン症
【直ビ優位】
@2週以上持続→新生児肝炎,先天性胆道閉鎖症,敗血症,ガラクトース血症
■Rh血液型不適合★間ビ↑
・Rh(-)の母親がRh(+)の子を妊娠した時
・初回妊娠では生じない
・胎児水腫,重症黄疸,重篤な溶血→Hb↓,網赤血球↑,赤芽球↑
・直接Coombs試験(+)
・血清抗Rh抗体産生
・第1子分娩直後に抗Rh抗体グロブリンを投与し,感作を予防する
・Rh(-),ABOに関しては児と同型血の交換輸血
■ABO血液型不適合★間ビ↑
・O型の母親がA,B型の子を妊娠した時
・初回妊娠でも生じる
・症状は軽い:黄疸,貧血→Hb↓,網赤血球↑,赤芽球↑
・直接Coombs試験(-)〜弱(+)
∵抗Rh(D)抗体にくらべ,抗A抗B抗体は血球との結びつきが弱い
・O型血球+AB型血漿の交換輸血
■母乳黄疸★間ビ↑
・母乳中のプレグナンジオールが肝でのグルクロン酸抱合を抑制
・遷延性黄疸
・母乳中止で黄疸が軽快するが,母乳中止の必要はなく,
児も健康で核黄疸を起こすことはない.経過観察する
■ビタミン過剰症 hypervitaminosis
・水溶性ビタミンは,尿から排泄されるが,
脂溶性ビタミン(A,D,K)は肝臓に貯蔵されるため,過剰毒性が発現
・K3,K4過剰→間ビ優位の新生児黄疸の原因となる
■胆石症
【コレステロール胆石】 【ビリルビン胆石】
原因 胆汁成分(コレステロール)の変化 胆道炎(胆道感染症)
性差 40〜60歳の女性 なし
分類 純コレステロール石,混合石,混成石 ビリルビンCa石が多い
誘因 食事が誘因となる
基礎 糖尿病,肥満,高脂血症 肝硬変,溶血性貧血
好発 胆嚢 総胆管,肝内,Rokitansky-Aschoff洞
割面 灰白色,放射状割面 茶褐色,層状割面
症状 silent stoneのことが多い 腹痛,発熱,黄疸が著明.Murphy sign
造影 単発性,帯状浮遊胆石 多発性
Mercedes-Benz sign
確診 エコー:acoustic shadow PTC,ERCP
後部エコー減弱
治療 @ケノデオキシコール酸,ウルソデオキシコール酸 @ヘキサメタリン酸ソーダ APTCDで減黄
直径<15mm,胆嚢造影良好 B胆嚢摘出術+総胆管切開術
※肝障害のおそれがある +Tチューブドレナージ
A胆嚢摘出術・・・胆嚢内胆石 C肝切除術・・・肝内胆石
☆他に,デヒドロコール酸,COMT阻害剤,硫酸マグネシウム☆
■胆石合併症
@胆嚢癌 :コレステロール胆石の時.胆嚢摘出術
A内胆汁瘻 :胆石による胆嚢十二指腸瘻.老年女性に多い
腹部X線にて胆管内ガス像.胆汁瘻閉鎖術
B胆石イレウス :胆石による回盲部などの閉塞
腹部X線にて麻痺性イレウス像
C胆嚢水腫 :胆嚢頸部 or 胆管の嵌頓→白色胆汁が充満
D胆嚢摘出術後症候群:胆摘後に右季肋部痛をくり返す
・原因→胆嚢頸部遺残,胆石遺残,胆石再発,瘢痕による総胆管狭窄
・治療→内視鏡的乳頭切開術
EMirizzi症候群
胆石の胆嚢頸部嵌頓及び炎症の波及により総胆管狭窄
上行性胆道感染,肝膿瘍の合併あり
F急性膵炎
■胆道炎
【概念】・腸管内からの上行感染が多い
・大腸菌が最多で,多くは複数菌感染のことが多い
【急性胆嚢炎,急性胆管炎】
・腹痛,発熱,黄疸=Charcot≠フ3徴
・重篤化すると穿孔,腹膜炎をきたす
・Murphy£・候陽性
右季肋部を圧迫したまま深呼吸→痛みのため呼気できない
【慢性胆嚢炎】・軽度の腹痛,消化器不定愁訴
【検査】・胆道造影(経静脈性,排泄性)
・胆道シンチ(99mTc-HIDA)→陰性(総ビ値2〜4mg/dl以上の時)
【治療】@安静,絶食,抗生剤(セフェム系,ペニシリン系)
↑急性胆嚢炎に対し少なくとも1〜2日投与
A胆嚢摘出術: a)改善が保存的療法でみられない
b)急性壊疽性胆嚢炎
c)穿孔性胆嚢炎
※急性壊疽性胆嚢炎は胃癌根治術後に発症することがある
※慢性胆嚢炎はRokitansky-Achoff sinusの粘膜内侵入が特徴
Rokitansky-Aschoff sinus
・胆嚢の体部や底部にみられる
・粘膜上皮層が筋層にまで達して深い洞状になったもの
・しばしば細菌の繁殖巣となり,胆嚢炎の原因となることがある
negative gallbladder=£_嚢造影,胆道シンチで陰性
@胆道炎 A胆石症 B胆嚢癌
■急性閉塞性化膿性胆管炎(AOSC)
【概念】
・胆石などによる総胆管閉塞に,胆道感染(大腸菌,クレブシエラ)が生じたもの
・胆道内圧の上昇により細菌が血中に移行しやすい
【症状】
Reynolds≠フ5徴
@腹痛 A発熱 B黄疸
Cショック D意識障害
【治療】
@PTCD・・・早急に行う
A内視鏡的乳頭括約筋切開術(EST)
B外科的胆道ドレナージ(総胆管切開術+Tチューブドレナージ)
※いずれにしても予後不良で死亡率が高い
【合併】肝膿瘍,消化性潰瘍,急性腎不全,ショック,DIC
■胆管癌
【概念】
・分化型腺癌が多く,肝外胆管由来で胆嚢癌の2倍の頻度がある
・胆石症との関係は少ない
【症状】
@黄疸 :進行性の閉塞性黄疸.直ビ優位
ACourvoisier徴候:無痛性胆嚢触知.3管合流部以下の胆管癌
B肝腫大
※再発・転移は,肝・リンパ節に多い ※肝硬変はみられない
【検査】
・Bil>3.0mg/dl ・ALP,LAP,γ-GTPの上昇
・PT延長 ・尿中ウロビリノーゲン陰性
・便中Schmidt反応(=便中ビリルビン)陽性・・・肝外胆管閉塞症状
・AFP(-),CA19-9(+) ・血管造影→hypovascular
・PTC,ERCP,エコー →総胆管の拡張,閉塞
【治療】
・PTCDによる減黄の後,手術適応のあるものに対して行う
・上部胆管癌・・・胆管切除術(+肝切除術)
・中部胆管癌・・・胆管切除術or膵頭十二指腸切除術
・下部胆管癌・・・膵頭十二指腸切除術
※一般に予後不良 ※予後が一番よいのは,下部胆管癌
■胆嚢癌
【概念】
・原発性腺癌が多い
・胆石症の合併が多い →50%以上
・高齢女性
【症状】
・早期には症状が乏しい ・・・腹痛,腹部腫瘤,黄疸
・Courvoisier徴候(-)
・症状出現時には周囲(リンパ節,肝,胆道,十二指腸)に直接浸潤していて予後不良のことが多い
【検査】
・CT,エコー:胆嚢壁肥厚,腫瘤形成
・胆嚢造影 :陰性
【治療】
・拡大胆嚢摘出術 ・拡大肝右葉切除術
■急性膵炎
【概念】・膵酵素が活性化され,膵組織を自己消化
【原因】@特発性 :40%
A胆石症 :30%.女性.膵管内結石
Bアルコール :20%.男性
・副甲状腺機能亢進症,高脂血症,ムンプス
・アザチオプリン,ステロイド,L-アスパラキナーゼ,サイアザイド
【症状】@腹痛:心窩部〜背部に持続痛.前屈位で軽減,仰臥位で増強
アルコール,脂肪食,暴飲暴食で増強
A発熱,悪心,嘔吐,腹満感
B腹膜刺激症状(筋性防御)
C麻痺性イレウス症状
D皮膚出血斑: Cullensign (臍周囲)
Grey-Turnersign (左側腹部)
EMOF:ショック,呼吸不全,乏尿(ARF),腹膜炎,
DIC,腹水,膵仮性嚢胞,閉塞性黄疸,テタニー
【血液】・血清アミラーゼ↑:ピークは24〜48時間,1週間以内に正常化
・尿 アミラーゼ↑:長く持続 ※アミラーゼ↑は重症度とは比例しない
・アミラーゼ/クレアチニンクリアランス比(ACCR)↑
・代謝性アシドーシス,血清エラスターゼI↑,ホスホリパーゼA2↑
【重症度】
@WBC 20,000 /mm*3 以上
Aクレアチニン 2 mg/dl 以上
BHt 50 % 以上
CLDH 700 IU/l 以上
DFBS 200 mg/dl 以上
EK 5.1 mEq/l 以上
FCa 7.5 mg/dl 以下
GPaO2 60 mmHg 以下
☆このうち2項目以上で重症 ※F,Gだけ以下
【X線】3徴→ colon cut-off sign(横行結腸中央部のガス像中断)
sentinel loop sign(臍周囲の左上腹部空腸ガス像)
左胸水
【CT】これが最も確実.膵腫大
【エコー 】膵腫大=低エコー ※ERCP,P-Stestは増悪させるため禁忌
【治療】@絶食,胃液吸引 :膵液分泌の抑制
AH2-blocker,抗コリン剤:疼痛対策(モルヒネは膵型AMY↑のため禁忌)
B広域抗生物質
C蛋白分解酵素阻害薬(メシル酸ガベキサート,アプロチニン)
D胆道減圧術,ドレナージ:急性腹症,後腹膜血腫,乳頭部結石嵌頓の時
ただしショック時は禁忌
■慢性膵炎
【概念】膵実質に線維化,石灰化等の不可逆性の変性をきたした状態
【原因】@アルコール・・・最多.50%以上.膵石症の合併が多い
A胆石症
【症状】@腹痛 :心窩部〜背部痛(∵膵液のうっ滞,随伴性炎症)
A糖尿病様症状 :軽症が多い,膵石症の原因にもなる
B脂肪便,体重減少,胸水,腹水
【検査】・血清アミラーゼ↑,尿アミラーゼ↑・・・外分泌機能が廃絶すると↓
・便中脂肪↑・・・膵酵素(リパーゼ)↓により脂肪分解↓
・X線 :膵に一致した石灰化←膵石症(炭酸石灰,リン酸石灰)
・ERCP:主膵管とその分岐に拡張,不整像
・P-Stest(パンクレオザイミン-セクレチン試験)
@液量
A最高重炭酸塩濃度 ※1つ以上の低下で外分泌機能低下
Bアミラーゼ総分泌量
【治療】@急性増悪期には急性膵炎の治療に準ずる
A禁酒,脂肪食制限
B膵管空腸側々吻合・・・膵石症,膵仮性嚢胞の時適応
■膵嚢胞
【概念】・液状内容物を含有する膵嚢胞性腫瘤
・嚢胞壁が上皮で被われている真性嚢胞 & 上皮がない仮性嚢胞
・膵炎後性仮性嚢胞が最多
・腫瘍性真性嚢胞は膵体尾部に好発し,中年女性に多い
【症状】@腹痛(右季肋部痛),腹部腫瘤
臨床的悪性度は低く,仮性膵嚢胞は自然消失するものがある
A気管支拡張症,慢性気管支炎
膵嚢胞性線維症のとき
【検査】・血清・尿アミラーゼ↑・・・正常化したアミラーゼの再上昇による
・C T:これで確診.low densityの薄い壁で被われる
・ERCP:無血管野.真性と仮性の鑑別は困難
・血管造影:血管圧排像
【治療】@脂肪食制限 ・・・仮性嚢胞に対して
A嚢胞消化管吻合術(内瘻形成術)・・・巨大仮性嚢胞に対して
B嚢胞摘出術 ・・・真性嚢胞に対して
■膵癌
【概念】
・膵管上皮由来の腺癌が多く(80%以上),ついで腺房細胞癌
・膵頭部領域に多い
・60歳以上の男性に多い
・増加傾向
【症状】
・膵頭部癌 @進行性黄疸 ACourvoisier徴候 B白色便
・膵体尾部癌 @著明な腹痛,腹水 A体重減少 B糖尿病様症状
※膵頭部癌の方が膵体尾部癌より早期に症状を現すため,予後良好
【予後】
十二指腸乳頭部癌>胆管癌>膵頭部癌>膵体尾部癌
良←・・・・・・・・・・・・・・・・・・・→悪
【転移】
肝>リンパ節(上膵十二指腸 a.領域:膵頭部癌)>肺
多←・・・・・・・・・・・・・・・・・・・→少
【検査】
・ALP・LAP・γ-GTP↑,LDH↑
・血清:尿アミラーゼ↑(末期には↓になることもある)
・腫瘍マーカー:CEA,CA19-9,血中エラスターゼI↑
・ERCP :主膵管の閉塞,狭窄像
・PTC :閉塞性黄疸を伴うとき施行
・CT,エコー :進行癌の広がりを検索
・SCA(選択的腹腔動脈造影)
無血管野,脾動脈の走行異常(これで確診)
【治療】
@膵頭十二指腸切除術(膵頭部癌に対して)
・閉塞性黄疸のある時は術前にPTCDで減黄.門脈も合併切除
・再建術:Child法(最多),Whipple法,Cattell法
・術後合併症:膵空腸縫合不全
A膵体尾部切除術,膵全摘術(膵体尾部癌に対して)
・脾も合併切除
・切除可能例は極めて少ない
・全摘後:代謝性アシドーシス
【5生率】
10% ※膵嚢胞腺癌,インスリノーマは,hypervascular
■十二指腸乳頭部癌
【概念】十二指腸乳頭部に発生する癌
【原発】@十二指腸
A胆 管
B膵 管
【症状】@無痛性の動揺性♂ゥ疸:初発症状
ACourvoisier徴候 :無痛性胆嚢触知
B発熱 :総胆管出口の狭窄による
【検査】・低緊張性十二指腸造影 :十二指腸辺縁の腫瘤像
・ERCP,PTC :総胆管拡張,胆嚢腫大
【治療】・膵頭十二指腸切除術・・・術前にPTCDで減黄
・再建術 ・Child法 :膵→胆→胃 スタイル
・Whipple法 :胆→膵→胃 淡 水
・Cattell法 :胃→膵→胆 マスター
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