障害者支援費利用者からの声
人物名は仮名です

 支援費制度がはじまって3ヶ月余りがたちました。サービスを利用する上で、この3月までと何か変わったことはありますか。
今井さん 支援費制度になってホームヘルプサービスの提供時間の上限が、16時間になりました。障害者及び関係者の努力もあり何とか現状が維持されたというところでしょうか。
本来、障害者に対するサービスの提供は、障害の状況に合わせて対応されるべきもので、時間制限のあるサービス提供で対応できるものではないと思います。
それから、介助者の資格要件の問題で、これまで介助サービスを利用している障害者の多くはホームヘルパーの資格を持たない介助者によって生活を支えられ、それぞれの障害の状況に合わせた介助を求めることができました。
しかし、支援費制度になって訪問介護員(ホームヘルパー)2級以上でないと身体介助ができなくなり、3級では家事援助しか依頼できません。
私たちは、家事援助のみではなく、身体介助を含めた日常生活を過ごす上で必要な介助を求めているのです。大切なのは資格ではなく実質的な介助の内容であって、高齢者向けのヘルパーが多い現状では、どうしても障害者とは違った視点での介助になってしまいます。
私の母はアルツハイマー病だったため、介護のことについて、本人が何も指示できない状態でした。言い方は適切ではないかもしれませんが、高齢者の場合には、先回りした介護の必要性を感じました。
しかし、障害者の介助では、年齢にも幅がありますし、障害者の意思に基づいた介助の必要性が高く、高齢者と同じでありません。これからのヘルパーには、こうしたことを理解した対応が求められると思います。

 障害者に対しては、その障害の状況に合わせた介助が必要であるということですね。具体的にどのようなサービスが必要だとお考えですか。
今井さん そうですね。現在は、例えば映画を見たいと言ってもなかなか対応してくれる状況にはありません。
サービスを利用している間にそうした時間が取りにくいということもあり、そういった意味でも長時間障害者の自宅で介護をする滞在型のサービスの充実が求められると思います。
費用負担についても、できる限り負担が軽くなるよう考えてもらいたいところですね。

 支援費制度になって、サービスを選択し利用できるというしくみになったとされていますが、実感としてはいかがですか。
今井さん 実際に、サービスを選択することは、今の段階では難しい状況もあると思います。
支援費制度になって多くの事業者が指定を受けていますが、人件費や運営に関わる経費と収入等を考え合わせると、事業的にやっていくのは厳しいのではないでしょうか。 また、サービスを利用する障害者の立場からすると、どうしても実績のあるところを選んでしまいます。障害が重度になればなるほど介助のノウハウが必要なので、どこまでできるかわからないところには頼みずらいのです。
実績があるところでないと安心できないということがあるのですが、その事業者が対応できるキャパシティにも限界があり、断られるということもでてきてしまいます。
契約とは、利用者と事業者がお互いにするものであって、障害者が依頼したからといって事業者にできないといわれればそれまでで、そういう実態もあるのです。
ホームヘルプサービスの利用時間を希望どおりとれないという声も、ずいぶん聞いています。
私自身、3月よりもホームヘルプサービスの利用時間が短くなっています。区の判断で、通勤と働いている時間は対象外となってしまったからです。
しかし、介助がなければ働けませんので、職場で介助者を雇用してもらっています。
同じ様なケースで、取り扱いが異なる自治体もあるようです。支援費の支給決定は区市町村の役割であり、判断基準からして区市町村に任されるという支援費制度の特徴が現れていると思います。

 支援費制度への移行に伴った課題についてお話しをお伺いしてきましたが、支援費制度になって良かった点はどのようなことでしょうか。
今井さん 支援費制度になって、施設に入所している障害者も地域で自立した生活をしたいというニーズが高まってきているのではないか、と感じています。
また、障害者自身、もっと自由な時間がほしいということもあります。
これから自立した生活に向かおうとしている人にとっては、自立生活をしやすくなったのではないかと思います。
ヘルパーの人材が豊富な事業者と契約を結べば、その範囲内で事業者にきちんとサービスを提供してもらえますし、これまでに比べるとサービスが探しやすくなったことは利点ですね。
障害者自身にも自立生活に向け、向上心が出てきたと感じています。

 事業者の情報を含め、障害者にきちんと利用できるサービスの情報は伝わっているのでしょうか。また、どのような情報を求めていますか。
今井さん 世田谷区からの情報提供もあり、区内の事業者の情報はつかめますが、どこまでやってくれるのかはまだ、わかりにくいですね。
欲しい情報としては、あらゆる生活面におけるサポートの情報で、どこまで対応してくれるのか、どのような制度があるのかといったことが必要です。
また、それぞれの障害状況にあわせた情報提供も必要です。
しかし、まだまだ情報は不足しています。大切な情報は今も障害者側からアプローチしなければ手に入りません。行政も、もっと情報提供に努めていただけたらと思います。
事業者についても、もっとアピールが必要です。今は実績がないところでも、実績は作り上げるものです。
どういう障害にどこまで対応できるのか等、きめ細やかな情報提供をするとともに、利用者のことをきちんと考え、対応し、実績を作っていこう、という姿勢が伝われば、利用者の選択につながるのではないかと思います。

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