Moto Works 2

ここでは、佐野元春の作品のうち、「ナポレオンフィッシュと泳ぐ日」から現在までの作品を紹介します。

ナポレオンフィッシュと泳ぐ日【1989(昭和64・平成元)年6月1日発売、ESCB1326、エピックレコード・エムズファクトリー】
収録曲
1:ナポレオンフィッシュと泳ぐ日-Napoleon Fish Day- 2:陽気にいこうぜ 3:雨の日のバタフライ 4:ボリビア‐野性的で冴えてる連中-Bolivia- 5:おれは最低 6:ブルーの見解-Vision Of Blue- 7:ジュジュ-Juju- 8:約束の橋-The Bridge- 9:愛のシステム-System Of Love- 10:雪‐ああ世界は美しい 11:新しい航海-New Voyage- 12:シティチャイルド-City Child- 13:ふたりの理由
このアルバムはイギリス・ロンドンでレコーディングされたアルバムで、レコーディング・メンバーもロンドンのミュージシャンを起用している。だが、「おれは最低」「雪‐ああ世界は美しい」の2曲だけはザ・ハートランドがレコーディングしている。この作品から詩の中身がちょっと寓話的、もしくは内省的な一面を覗かせている。寓話的な感じがするのが「雨の日のバタフライ」 「雪‐ああ世界は美しい」で、象徴詩の影響が垣間見えるような感じで、全体的にも静かで寂寥感のある幻想世界のような感じがする。で、内省的要素が強いのが「おれは最低」「ブルーの見解」「愛のシステム」だと僕は思う。「おれは最低」はかなり自虐的な叫びのような感じがするし、「ブルーの見解」は朗読形式で歌われていることと詩の内容が自己への洞察、という感じがした。 僕が好きなのは「ナポレオンフィッシュと泳ぐ日」「陽気にいこうぜ」「約束の橋」「新しい航海」「シティチャイルド」で、いずれもポジティブなロックンロールだ。ただ、「新しい航海」に関しては、このアルバムのオリジナル・バージョンもいいと思うが、「ノー・ダメージU」の90’sバージョンの方がドラマティックな展開なので、気に入っているのだが。「約束の橋」はこのアルバムの頃にシングルで 発表されているが、1992(平成4)年にドラマ主題歌になったのを機に再発売され、元春史上最大のシングル・ヒットを記録した。


Moto Singles 1980-1989【1990(平成2)年5月12日発売、ESCB1064,1065、エピックレコード・エムズファクトリー】
収録曲
Disc 1
1:アンジェリーナ 2:ガラスのジェネレーション 3:Night Life 4:Someday 5:ダウンタウンボーイ 6:彼女はデリケート 7:Sugartime 8:ハッピーマン 9:スターダスト・キッズ 10:グッドバイからはじめよう 11:Tonight 12:コンプリケーション・シェイクダウン 13:ヴィジターズ 14:ニューエイジ 15:ヤングブラッズ 16:リアルな現実 本気の現実 17:クリスマスタイム・イン・ブルー‐聖なる夜に口笛吹いて
Disc 2
1:ストレンジ・デイズ‐奇妙な日々 2:アンジェリーナ【スローバージョン】 3:夏草の誘い 4:Looking For A Fight‐ひとりぼっちの反乱 5:ワイルドハーツ‐冒険者たち 6:シャドウズ・オン・ザ・ストリート 7:99ブルース 8:インディビジュアリスト 9:警告どおり 計画どおり 10:風の中の友達 11:約束の橋 12:君が訪れる日 13:ナポレオンフィッシュと泳ぐ日 14:愛することってむずかしい 15:シティチャイルド 16:水の中のグラジオラス 17:雪‐ああ世界は美しい
1980年代の元春の活躍を記したシングルコレクション。シングル曲とアルバム未収録曲で構成されていて、80年代の足跡をたどることが出来る。お勧めは「警告どおり 計画どおり」で、チェルノブイリ原発事件についてのマスコミ報道を批判した曲だ。時代に対して目を向け続けている元春の、冷静な観察眼と怒りを垣間見ることが出来る曲だ。このアルバムも、入門編としてお勧めしたい。


TIME OUT!【1990(平成2)年11月9日発売、ESCB1111、エピックレコード・エムズファクトリー】
収録曲
1:ぼくは大人になった-A Big Boy Now- 2:クエスチョンズ-Questions- 3:君を待っている-Looking For You- 4:ジャスミンガール-Jasmine Girl- 5:サニーデイ-One Sunny Day- 6:夏の地球-Love Planets- 7:ビッグタイム-Big Time- 8:彼女が自由に踊るとき-When She Danced- 9:恋する男-A Man In Love- 10:ガンボ-Happy Gambo- 11:空よりも高く-Home-
元春の90年代の幕開けを飾るアルバム。だが、詩の内容が前作からくらべるとかなりヘビーになっていて、元春の作品中、一番ダークなアルバムじゃないか、と僕は思う。サウンド的にもシンプルな構成の曲が多く、それが顕著だったのが「ぼくは大人になった」ではないだろうか。どこか、元春が疲れ果ててしまったような印象を感じる。「空よりも高く」では、「家へ帰ろう…」と歌っているが、この一節はそういった元春の心情を はっきり表しているのではないだろうか。このアルバムは葛藤と苦悩、そういうのが全面から感じられる。


スウィート16‐Sweet16‐【1992(平成4)年7月22日発売、ESCB1308、エピックレコード・エムズファクトリー】
収録曲
1:ミスター・アウトサイド-Mr.Outside- 2:スウィート16‐Sweet16‐ 3:レインボー・イン・マイ・ソウル-Rainbow In My Soul- 4:ポップチルドレン(最新マシンを手にした陽気な子供たち)-Pop Children(With The New Machine)- 5:廃墟の街-The Waste Town- 6:誰かが君のドアを叩いている-Someone's Knocking On Your Door- 7:君のせいじゃない-Cry- 8:ボヘミアン・グレイブヤード-Bohemian Graveyard- 9:ハッピーエンド-Happy End- 10:ミスター・アウトサイド(リプリーズ)-Mr.Outside(Reprise)- 11:エイジアン・フラワーズ-Asian Flowers- 12:また明日…-If We Meet Again-
2年の沈黙の後に発売されたアルバムで、完全にザ・ハートランドをフィーチャーしたアルバム。この作品では、どちらかといえば初期のアグレッシブさが戻ってきたような印象を受けた。タイトルソングの「スウィート16」は、まさしくそんな感じがする。とにかく突っ走れ! そんなメッセージが伝わってくるようだ。で、それと対になっているのが「レインボー・イン・マイ・ソウル」。こちらの方は大人になってから少年、少女期を振り返り、 そこからまた歩いて行くんだ、という決意表明ともいえるような曲だ。印象的なフレーズが「失くしてしまうことは悲しいことじゃない」というフレーズだ。少年から大人へ成長していくにしたがって失ってしまうものも多いけれど、それをばねに強くなっていくものなのだ、というメッセージが感じられる。ぼくはこの2曲がこのアルバムで一番気に入っている。またこのアルバムでは、「TIME OUT!」からのダークな色彩の曲も何曲かある。 「廃墟の街」「ボヘミアン・グレイブヤード」がそんな感じで、前者は本当に廃墟のイメージ、後者は青春時代を「夢を見ていたような気分」と自嘲気味に振り返る感じがしていたように思う。その流れは次の「ザ・サークル」にもつながっていくのだが……。


彼女の隣人【1992(平成4)年11月21日発売、ESDB3345、エピックレコード・エムズファクトリー】
収録曲
1:彼女の隣人-Don't Cry- 2:レインボー・イン・マイ・ソウル-Rainbow In My Soul-
この元春レビューの中で、基本的にアルバムを中心にしてきたけど、これだけはシングルである。実は、この作品は僕が初めて買った佐野元春の作品なのだ。表題曲の「彼女の隣人」だが、歌詞のシンプルさと寂寥感漂うメロディー、そしてエンディングの「Don't Cry…」という元春と女性コーラスのコントラストが非常に印象に残っていて、何度も口ずさんだ記憶がある。ちなみにこの歌は、LAドジャースの野茂英雄投手が登板前に必ず聞いていた曲として、テレビでも取り上げられたことがあった。


ノー・ダメージU-No DamageU-【1992(平成4)年12月9日発売、ESCB1342、エピックレコード・エムズファクトリー】
収録曲
1:ニューエイジ-New Age-(THE HEARTLAND VERSION) 2:スウィート16-Sweet16- 3:約束の橋-The Bridge- 4:ジャスミンガール-Jasmine Girl- 5:ヤングブラッズ-Young Bloods- 6:レインボー・イン・マイ・ソウル-Rainbow In My Soul- 7:99ブルース-99Blues-(アンプラグド・バージョン) 8:ジュジュ-Juju- 9:ワイルドハーツ(冒険者たち)-Wild Hearts- 10:シェイム(君を汚したのは誰)-Shame- 11:ぼくは大人になった-A Big Boy Now- 12:ナポレオンフィッシュと泳ぐ日-Napoleon Fish Day- 13:インディビジュアリスト-Individualists- 14:クリスマス・タイム・イン・ブルー(聖なる夜に口笛吹いて)-Christmas Time In Blue- 15:新しい航海-New Voyage-(90’s Version) 16:陽気にいこうぜ(Short Edited Version)
元春の全盛期の代表曲を集めたベストアルバム。ファン、というよりは「約束の橋」で入ってきた新しいファン向けの内容になっているようだ。このアルバムも、佐野元春の入門編として一押ししたいところである。「ヤングブラッズ」「約束の橋」といったヒット曲のほか、「ニューエイジ」「新しい航海」「99ブルース」のニューバージョンが収録されている。実は僕の場合、「ニューエイジ」はこのアルバムのバージョンが好きなのだ。「新しい航海」も展開がダイナミックになっているし。 というわけで、佐野元春を聴いた事がない人はこのアルバムと「ノー・ダメージ」、「20周年アニバーサリー・エディション」から入りましょう!


ザ・サークル-The Circle-【1993(平成5)年11月10日発売、ESCB1456、エピックレコード・エムズファクトリー】
収録曲
1:欲望‐Desire- 2:トゥモロウ‐Tomorrow- 3:レイン・ガール‐Rain Girl- 4:ウィークリー・ニュース‐Weekly News- 5:君を連れてゆく 6:新しいシャツ‐New Shirts- 7:彼女の隣人‐Don't Cry- 8:ザ・サークル‐The Circle- 9:エンジェル‐Angel- 10:君がいなければ
ザ・ハートランドとの最後のアルバムになった作品。「スウィート16」とは打って変わって、ミディアムテンポの曲が多い。詩の内容もがらりと変わり、過去との決別、新たなる地平に立つという決意表明のような曲が目立つ。それが強いのが「君を連れてゆく」「新しいシャツ」「ザ・サークル」だと僕は思う。特に「ザ・サークル」はこのアルバムの中で一番ヘビーなナンバーだと思う。何せ、いきなり「さがしていた自由はもうないのさ」と、諦めとも取れるような出だしなのだ。そして、今までの自分を振り返るような内容が続き、 最後は「少しだけやり方を変えてみるのさ」と、新しい地平に立つ、という意思表示をしているのだ。だが、このアルバムの中で一番悲愴感が漂うナンバーのような気がする。対して、割とポジティブな感じで新しい地平を目指そうという意思を感じるのが「君を連れてゆく」「新しいシャツ」だろう。「君を連れてゆく」は、歌自体がひとつの物語になっているように思う。何もかもを失った一人の男の再生の物語、という感じがする。一方の「新しいシャツ」は、自分のペースで新しい世界へ向かう、という感じであり、その世界の 象徴としてシャツが使われているのだろう、と僕は思う。この3曲は、元春の過去からの決別の宣言だろう、と思う。そのほか、僕が好きなのは「レイン・ガール」「ウィークリー・ニュース」「彼女の隣人」で、「レイン・ガール」は1994(平成6)年にトヨタ・カルディナのコマーシャルソングとしてテレビでオンエアーされている。カルディナと元春が並んで疾駆するシーンが非常に印象的だった。「彼女の隣人」は、シングルとはちょっとアレンジが変わっていた。僕はシングルバージョンの方が好きなのだが……。「ウィークリー・ニュース」は 「シェイム」と同様、怒りを込めたメッセージソングだ。ただこれは、世界中の大きな事件を「対岸の火事」的に傍観する日本人への怒り、とも思えるのだが。ただ吐き捨てるだけではなく、僕たちへの問いかけ、という点が「シェイム」との違いかもしれない。このアルバム、全体的に見ると元春の作品中一番ヘビーなんじゃないか、と思うのは僕だけだろうか。


ザ・ゴールデン・リング-The Golden Ring-【1994(平成6)年8月26日発売、ESCB1516,1517,1518、エピックレコード・エムズファクトリー】
収録曲
Disc 1
1:ガラスのジェネレーション-Crystal Generation- 2:ダウンタウンボーイ-Down Town Boy- 3:ソー・ヤング-So Young- 4:彼女はデリケート-She's So Delicate- 5:アンジェリーナ-Angerina- 6:悲しきレイディオ-Radio Radio- 7:君を探している(朝が来るまで)-Looking For You- 8:ドゥー・ホワット・ユー・ライク(勝手にしなよ)-Do What You Like- 9:グッドバイからはじめよう-The Beginning Of The End- 10:コンプリケーション・シェイクダウン-Complication Shakedown- 11:ワイルド・オン・ザ・ストリート-Wild On The Street-  12:カム・シャイニング-Come Shining- 13:シェイム(君を汚したのは誰)-Shame- 14:ヤングブラッズ-Young Bloods-
Disc 2
1:ワイルドハーツ(冒険者たち)-Wild Hearts- 2:99ブルース-99Blues- 3:インディビジュアリスト-Individualists- 4:ストレンジ・デイズ(奇妙な日々)-Strange Days- 5:新しい航海-New Voyage- 6:ナポレオンフィッシュと泳ぐ日-Napoleon Fish Day- 7:ボリビア(野性的で冴えてる連中)-Bolivia- 8:ブルーの見解-Vision Of Blue- 9:ぼくは大人になった-A Big Boy Now- 10:月と専制君主-Sidewalk Talk- 11:愛のシステム-System Of Love- 12:ジュジュ-JuJu- 13:ジャスミンガール-Jasmine Girl-
Disc 3
1:欲望-Desire- 2:ニューエイジ-New Age- 3:スウィート16-Sweet16- 4:レインボー・イン・マイ・ソウル-Rainbow In My Soul- 5:約束の橋-The Bridge- 6:彼女の隣人-Don't Cry- 7:ロックンロールナイト-Rock&Roll Night- 8:ハートビート(小さなカサノバと街のナイチンゲールのバラッド)-Heartbeat- 9:サムデイ-Someday- 10:空よりも高く-Home-
僕が元春にはまるきっかけになったアルバムで、ザ・ハートランド解散ということで緊急リリースされたライブ・ベストアルバム。収録されているのは「ロックンロールナイト・ツアー」「ヴィジターズ・ツアー」「カフェ・ボヘミア・ミーティング」「ナポレオンフィッシュ・ツアー」「横浜スタジアム’89 夏」「タイムアウト!ツアー」「シー・ファー・マイルズ・ツアー・パート1」「シー・ファー・マイルズ・ツアー・パート2」「ザ・サークル・ツアー」だ。感じとしては「シー・ファー・マイルズ・ツアー・パート2」からの音源が多く収録されている。オリジナルに近いアレンジでも 疾走感が増していたり、オリジナルとは全く違ったアレンジで演奏されているナンバーがあったりと、まさに究極のライブアルバムといえるかもしれない。実を言うと、このアルバムで初めて聴いた曲が圧倒的に多く、後でオリジナルバージョンを聴いた時に違和感を感じた曲がかなりある。「ハートビート」「ストレンジ・デイズ」はまさに典型的な例で、あまりにオリジナルとのギャップが激しくてびっくりした覚えがある。印象に残っているのは「ハートビート」「ソー・ヤング」「悲しきレイディオ」「カム・シャイニング」「ストレンジ・デイズ」「ぼくは大人になった」 「サムデイ」などである。特に「カム・シャイニング」は、横内タケのギターソロが強烈で、何度も聴くうちにはまってしまった。僕の元春ファンへの道は、このアルバムからスタートした、といっても過言ではない。このアルバムも、入門編としてお勧めしたい。ハートランドの歴史が、体感できる。


THE BARN【1997(平成9)年12月1日リリース、ESCB1849、エピックレコード・エムズファクトリー】
収録曲
1:逃亡アルマジロのテーマ-Theme of ‘Armadillo on the Run’- 2:ヤング・フォーエバー-Young Forever- 3:7日じゃたりない-Seven Days(are not enough) 4:マナサス-Manasas- 5:ヘイ・ラ・ラ-Hey La La- 6:風の手のひらの上-The Answer- 7:ドクター-Doctor- 8:どこにでもいる娘-An Ordinary Girl- 9:誰も気にしちゃいない-Nobody Cares- 10:ドライブ-Drive- 11:ロックンロールハート-Rock and Roll Heart- 12:ズッキーニ-ホーボー・キングの夢-Zucchini-The Hobo King Dream-
本格的にザ・ホーボーキング・バンドをフィーチャーしたのがこの作品。ニューヨーク郊外のウッドストックのスタジオ『ザ・バーン』でレコーディングされたのでこのタイトルがついた。ちなみにプロデュースは元春とアメリカの名プロデューサー、ジョン・サイモンの共同である。どちらかというと60年代後期から70年代のカントリーロックテイストのナンバーが多く、一種のコンセプトアルバムといってもいい。僕がこのアルバムで好きなのは「ヤング・フォーエバー」と「ドクター」、「誰も気にしちゃいない」、「ロックンロールハート」である。「ヤング・フォーエバー」は先行シングルとして発売された曲で、疾走感のあるナンバーだ。若者達へのメッセージソング、という感じであり、「出来るまで遠くまで駆けて行け」というところに僕はこの曲の本質があると思う。この曲はギターが アルバム中一番激しく、パワフルな感じを与えている。「ドクター」はどちらかというと癒しのテイストが加わった曲という感じがする。キーが高いのか、元春のボーカルが若干苦しそうに思えた(^^;)。「誰も気にしちゃいない」は「プラグ&プレイ」を見て気に入った曲で、どこか「シェイム」や「警告どおり 計画どおり」を思わせる感じのプロテストソングのように思えた。「君を守る軍隊が欲しい」という一節が僕の印象に強く残っている。確かに、今メチャクチャな世の中になっているのに誰もそれを気に留めないという時勢に対する皮肉、ともとれる。「ロックンロールハート」は 最初激しいナンバーかと思ったら、「ロックンロールナイト」のような歌物語のような感じで、ブルージーなバラードだった。「この気持ちだけは変わらない」という一節、元春のロックンロール・ソウルは決して不変なのだという意思表示だろうな。ちなみに最後の「ズッキーニ」は元春の作曲ではなく、サイモンが提供している。ブルージーでなかなか良いアルバムだと思うが、セールス面ではずっこけた(^▽^;)。


ストーンズ・アンド・エッグス-Stones and Eggs-【1999‐平成11‐年8月25日リリース、ESCB2022、エピックレコード・エムズファクトリー】
収録曲
1:GO4 2:C'mon 3:驚くに値しない-No surprise at all- 4:君を失いそうさ-I'm losing you- 5:メッセージ-The Message- 6:だいじょうぶ、と彼女は言った-Don't think twice it's over- 7:エンジェル・フライ-Angel fly- 8:石と卵-Stones and Eggs- 9:シーズンズ-Seasons- 10:GO4 Impact
「THE BARN」から2年近くの間を空けてリリースされたアルバム。この作品は僕が聴いた感じではかなり実験的な要素が強いアルバム、という印象がある。まず、キーボードやコンピューター・プログラミングまで元春がほとんどやっている、ということだ。基本的にレコーディングセッションはホーボーキング・バンドのメンバーが主体になっていはいるのだが、中にはすべての楽器の演奏が元春だけ、というのもあった。それが「GO4」、「驚くに値しない」「石と卵」の3曲である。「GO4」「驚くに値しない」はヒップホップ色の強い作品で、歌い方もどちらかというとラップに近い感じがする。さらに「GO4」はDragon Ashの降谷“kj”建志、BOTSによるSteady&Co.によってリプロダクトされており、これが10曲目の「GO4 Impact」となっている。他のナンバーでは「C'mon」が印象的だった。現在の状況を憂いながらも 「よくあることさ」と、どこか諦めにも似たような感じがした。僕の場合、デジタルヒップホップの「GO4」、「驚くに値しない」の印象があまりにも強すぎ、他の曲はあまり印象に残らなかった。


ザ・サン-THE SUN-【2004‐平成16‐年7月21日発売、POCE-9380(初回盤)、POCE-3800(通常盤)、デイジーミュージック・ユニバーサル】
収録曲
1:月夜を往け-Moonlight- 2:最後の1ピース-At the end of the world- 3:恵みの雨-Gentle Rain- 4:希望-Hope- 5:地図のない旅-Trail- 6:観覧車の夜-Joy and Fear- 7:恋しいわが家-The Homecoming- 8:君の魂 大事な魂-Sail On- 9:明日を生きよう-Lost and Found- 10:レイナ-Leyna- 11:遠い声-Closer- 12:DIG-In our time- 13:国のための準備-For the country- 14:太陽-The Sun-
24年在籍していたエピックレコードから離れ、独立レーベル「デイジーミュージック」第1弾としてリリースされた5年ぶりのアルバム。そして、元春の21世紀第1弾アルバムでもある。レコーディングセッションはホーボーキング・バンドのメンバーが中心で、「観覧車の夜」は高橋ゲタオ他のセッションが組まれている。さて、気になる曲の方だが、初期のシティ・ポップスとはまた違う渋いロックが多い。初期を彷彿とさせるのはシングルにもなった「月夜を往け」で、サウンドも軽快である。僕にとって印象が強いのが「恵みの雨」「地図のない旅」「観覧車の夜」「国のための準備」で、特に「国のための準備」は元春にしては珍しく凄まじいくらいにストレートな警告とも言える内容の詩を叫びまくっていた。で、「地図のない旅」は、シンプルなサウンドに否定形が多いがどこか諦めてはいない感じの詩が印象的だった。 「観覧車の夜」は、サウンド的には結構ファンクなブラス・ロックという感じなのだが、混沌とした世界の情景描写と言う感じの詩とのギャップが対称的な感じがした。他にも、先行シングル曲「君の魂 大事な魂」はバラードであれど詩の中身は力強くて思わず感情移入してしまったし、「希望」はこのアルバムの中で一番私小説的な意味合いの強い曲で、一人の男の夢を淡々と語っているようなバラードだった。全体的に、元春の詩の感じが前とかなり変わったように思う。この作品のレコーディング中にあのアメリカ同時多発テロ事件が起こり、ショックのあまり曲作りができなくなったという時期を乗り越えて製作されただけあって、混沌とした状況下でも希望だけは捨てるな、という想いが強く出ているような気がしてならない。タイトルソングともいえる「太陽」の中に「夢見る力をもっと」という1節があるが、それがこのアルバムのコンセプトであり、全編を通して伝えたいことのように思える。


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