TIME OUT!【1990(平成2)年11月9日発売、ESCB1111、エピックレコード・エムズファクトリー】
収録曲
1:ぼくは大人になった-A Big Boy Now- 2:クエスチョンズ-Questions- 3:君を待っている-Looking For You- 4:ジャスミンガール-Jasmine Girl- 5:サニーデイ-One Sunny Day- 6:夏の地球-Love Planets- 7:ビッグタイム-Big Time- 8:彼女が自由に踊るとき-When She Danced- 9:恋する男-A Man In Love- 10:ガンボ-Happy Gambo- 11:空よりも高く-Home-
元春の90年代の幕開けを飾るアルバム。だが、詩の内容が前作からくらべるとかなりヘビーになっていて、元春の作品中、一番ダークなアルバムじゃないか、と僕は思う。サウンド的にもシンプルな構成の曲が多く、それが顕著だったのが「ぼくは大人になった」ではないだろうか。どこか、元春が疲れ果ててしまったような印象を感じる。「空よりも高く」では、「家へ帰ろう…」と歌っているが、この一節はそういった元春の心情を
はっきり表しているのではないだろうか。このアルバムは葛藤と苦悩、そういうのが全面から感じられる。
スウィート16‐Sweet16‐【1992(平成4)年7月22日発売、ESCB1308、エピックレコード・エムズファクトリー】
収録曲
1:ミスター・アウトサイド-Mr.Outside- 2:スウィート16‐Sweet16‐ 3:レインボー・イン・マイ・ソウル-Rainbow In My Soul- 4:ポップチルドレン(最新マシンを手にした陽気な子供たち)-Pop Children(With The New Machine)- 5:廃墟の街-The Waste Town- 6:誰かが君のドアを叩いている-Someone's Knocking On Your Door- 7:君のせいじゃない-Cry- 8:ボヘミアン・グレイブヤード-Bohemian Graveyard-
9:ハッピーエンド-Happy End- 10:ミスター・アウトサイド(リプリーズ)-Mr.Outside(Reprise)- 11:エイジアン・フラワーズ-Asian Flowers- 12:また明日…-If We Meet Again-
2年の沈黙の後に発売されたアルバムで、完全にザ・ハートランドをフィーチャーしたアルバム。この作品では、どちらかといえば初期のアグレッシブさが戻ってきたような印象を受けた。タイトルソングの「スウィート16」は、まさしくそんな感じがする。とにかく突っ走れ! そんなメッセージが伝わってくるようだ。で、それと対になっているのが「レインボー・イン・マイ・ソウル」。こちらの方は大人になってから少年、少女期を振り返り、
そこからまた歩いて行くんだ、という決意表明ともいえるような曲だ。印象的なフレーズが「失くしてしまうことは悲しいことじゃない」というフレーズだ。少年から大人へ成長していくにしたがって失ってしまうものも多いけれど、それをばねに強くなっていくものなのだ、というメッセージが感じられる。ぼくはこの2曲がこのアルバムで一番気に入っている。またこのアルバムでは、「TIME OUT!」からのダークな色彩の曲も何曲かある。
「廃墟の街」「ボヘミアン・グレイブヤード」がそんな感じで、前者は本当に廃墟のイメージ、後者は青春時代を「夢を見ていたような気分」と自嘲気味に振り返る感じがしていたように思う。その流れは次の「ザ・サークル」にもつながっていくのだが……。
彼女の隣人【1992(平成4)年11月21日発売、ESDB3345、エピックレコード・エムズファクトリー】
収録曲
1:彼女の隣人-Don't Cry- 2:レインボー・イン・マイ・ソウル-Rainbow In My Soul-
この元春レビューの中で、基本的にアルバムを中心にしてきたけど、これだけはシングルである。実は、この作品は僕が初めて買った佐野元春の作品なのだ。表題曲の「彼女の隣人」だが、歌詞のシンプルさと寂寥感漂うメロディー、そしてエンディングの「Don't Cry…」という元春と女性コーラスのコントラストが非常に印象に残っていて、何度も口ずさんだ記憶がある。ちなみにこの歌は、LAドジャースの野茂英雄投手が登板前に必ず聞いていた曲として、テレビでも取り上げられたことがあった。
ノー・ダメージU-No DamageU-【1992(平成4)年12月9日発売、ESCB1342、エピックレコード・エムズファクトリー】
収録曲
1:ニューエイジ-New Age-(THE HEARTLAND VERSION) 2:スウィート16-Sweet16- 3:約束の橋-The Bridge- 4:ジャスミンガール-Jasmine Girl- 5:ヤングブラッズ-Young Bloods- 6:レインボー・イン・マイ・ソウル-Rainbow In My Soul- 7:99ブルース-99Blues-(アンプラグド・バージョン) 8:ジュジュ-Juju- 9:ワイルドハーツ(冒険者たち)-Wild Hearts- 10:シェイム(君を汚したのは誰)-Shame- 11:ぼくは大人になった-A Big Boy Now-
12:ナポレオンフィッシュと泳ぐ日-Napoleon Fish Day- 13:インディビジュアリスト-Individualists- 14:クリスマス・タイム・イン・ブルー(聖なる夜に口笛吹いて)-Christmas Time In Blue- 15:新しい航海-New Voyage-(90’s Version) 16:陽気にいこうぜ(Short Edited Version)
元春の全盛期の代表曲を集めたベストアルバム。ファン、というよりは「約束の橋」で入ってきた新しいファン向けの内容になっているようだ。このアルバムも、佐野元春の入門編として一押ししたいところである。「ヤングブラッズ」「約束の橋」といったヒット曲のほか、「ニューエイジ」「新しい航海」「99ブルース」のニューバージョンが収録されている。実は僕の場合、「ニューエイジ」はこのアルバムのバージョンが好きなのだ。「新しい航海」も展開がダイナミックになっているし。
というわけで、佐野元春を聴いた事がない人はこのアルバムと「ノー・ダメージ」、「20周年アニバーサリー・エディション」から入りましょう!
ザ・ゴールデン・リング-The Golden Ring-【1994(平成6)年8月26日発売、ESCB1516,1517,1518、エピックレコード・エムズファクトリー】
収録曲
Disc 1
1:ガラスのジェネレーション-Crystal Generation- 2:ダウンタウンボーイ-Down Town Boy- 3:ソー・ヤング-So Young- 4:彼女はデリケート-She's So Delicate- 5:アンジェリーナ-Angerina- 6:悲しきレイディオ-Radio Radio- 7:君を探している(朝が来るまで)-Looking For You- 8:ドゥー・ホワット・ユー・ライク(勝手にしなよ)-Do What You Like- 9:グッドバイからはじめよう-The Beginning Of The End- 10:コンプリケーション・シェイクダウン-Complication Shakedown- 11:ワイルド・オン・ザ・ストリート-Wild On The Street-
12:カム・シャイニング-Come Shining- 13:シェイム(君を汚したのは誰)-Shame- 14:ヤングブラッズ-Young Bloods-
Disc 2
1:ワイルドハーツ(冒険者たち)-Wild Hearts- 2:99ブルース-99Blues- 3:インディビジュアリスト-Individualists- 4:ストレンジ・デイズ(奇妙な日々)-Strange Days- 5:新しい航海-New Voyage- 6:ナポレオンフィッシュと泳ぐ日-Napoleon Fish Day- 7:ボリビア(野性的で冴えてる連中)-Bolivia- 8:ブルーの見解-Vision Of Blue- 9:ぼくは大人になった-A Big Boy Now- 10:月と専制君主-Sidewalk Talk- 11:愛のシステム-System Of Love- 12:ジュジュ-JuJu- 13:ジャスミンガール-Jasmine Girl-
Disc 3
1:欲望-Desire- 2:ニューエイジ-New Age- 3:スウィート16-Sweet16- 4:レインボー・イン・マイ・ソウル-Rainbow In My Soul- 5:約束の橋-The Bridge- 6:彼女の隣人-Don't Cry- 7:ロックンロールナイト-Rock&Roll Night- 8:ハートビート(小さなカサノバと街のナイチンゲールのバラッド)-Heartbeat- 9:サムデイ-Someday- 10:空よりも高く-Home-
僕が元春にはまるきっかけになったアルバムで、ザ・ハートランド解散ということで緊急リリースされたライブ・ベストアルバム。収録されているのは「ロックンロールナイト・ツアー」「ヴィジターズ・ツアー」「カフェ・ボヘミア・ミーティング」「ナポレオンフィッシュ・ツアー」「横浜スタジアム’89 夏」「タイムアウト!ツアー」「シー・ファー・マイルズ・ツアー・パート1」「シー・ファー・マイルズ・ツアー・パート2」「ザ・サークル・ツアー」だ。感じとしては「シー・ファー・マイルズ・ツアー・パート2」からの音源が多く収録されている。オリジナルに近いアレンジでも
疾走感が増していたり、オリジナルとは全く違ったアレンジで演奏されているナンバーがあったりと、まさに究極のライブアルバムといえるかもしれない。実を言うと、このアルバムで初めて聴いた曲が圧倒的に多く、後でオリジナルバージョンを聴いた時に違和感を感じた曲がかなりある。「ハートビート」「ストレンジ・デイズ」はまさに典型的な例で、あまりにオリジナルとのギャップが激しくてびっくりした覚えがある。印象に残っているのは「ハートビート」「ソー・ヤング」「悲しきレイディオ」「カム・シャイニング」「ストレンジ・デイズ」「ぼくは大人になった」
「サムデイ」などである。特に「カム・シャイニング」は、横内タケのギターソロが強烈で、何度も聴くうちにはまってしまった。僕の元春ファンへの道は、このアルバムからスタートした、といっても過言ではない。このアルバムも、入門編としてお勧めしたい。ハートランドの歴史が、体感できる。
THE BARN【1997(平成9)年12月1日リリース、ESCB1849、エピックレコード・エムズファクトリー】
収録曲
1:逃亡アルマジロのテーマ-Theme of ‘Armadillo on the Run’- 2:ヤング・フォーエバー-Young Forever- 3:7日じゃたりない-Seven Days(are not enough) 4:マナサス-Manasas- 5:ヘイ・ラ・ラ-Hey La La- 6:風の手のひらの上-The Answer- 7:ドクター-Doctor- 8:どこにでもいる娘-An Ordinary Girl- 9:誰も気にしちゃいない-Nobody Cares- 10:ドライブ-Drive- 11:ロックンロールハート-Rock and Roll Heart- 12:ズッキーニ-ホーボー・キングの夢-Zucchini-The Hobo King Dream-
本格的にザ・ホーボーキング・バンドをフィーチャーしたのがこの作品。ニューヨーク郊外のウッドストックのスタジオ『ザ・バーン』でレコーディングされたのでこのタイトルがついた。ちなみにプロデュースは元春とアメリカの名プロデューサー、ジョン・サイモンの共同である。どちらかというと60年代後期から70年代のカントリーロックテイストのナンバーが多く、一種のコンセプトアルバムといってもいい。僕がこのアルバムで好きなのは「ヤング・フォーエバー」と「ドクター」、「誰も気にしちゃいない」、「ロックンロールハート」である。「ヤング・フォーエバー」は先行シングルとして発売された曲で、疾走感のあるナンバーだ。若者達へのメッセージソング、という感じであり、「出来るまで遠くまで駆けて行け」というところに僕はこの曲の本質があると思う。この曲はギターが
アルバム中一番激しく、パワフルな感じを与えている。「ドクター」はどちらかというと癒しのテイストが加わった曲という感じがする。キーが高いのか、元春のボーカルが若干苦しそうに思えた(^^;)。「誰も気にしちゃいない」は「プラグ&プレイ」を見て気に入った曲で、どこか「シェイム」や「警告どおり 計画どおり」を思わせる感じのプロテストソングのように思えた。「君を守る軍隊が欲しい」という一節が僕の印象に強く残っている。確かに、今メチャクチャな世の中になっているのに誰もそれを気に留めないという時勢に対する皮肉、ともとれる。「ロックンロールハート」は
最初激しいナンバーかと思ったら、「ロックンロールナイト」のような歌物語のような感じで、ブルージーなバラードだった。「この気持ちだけは変わらない」という一節、元春のロックンロール・ソウルは決して不変なのだという意思表示だろうな。ちなみに最後の「ズッキーニ」は元春の作曲ではなく、サイモンが提供している。ブルージーでなかなか良いアルバムだと思うが、セールス面ではずっこけた(^▽^;)。