簡易自作温室作成方法

幼虫の温度管理をする方法で、低温管理を行うため何とか簡単に温室を作る方法についてリクエストが
ありましたので、別コンテンツとして低温飼育温室の作成方法やその他苦心したことなどを作成方法を交えて
公開したいと思います。

まず幼虫の低温飼育についてですが、私はオオクワガタの幼虫飼育においては温度管理がかなり重要な
ポイントになると思います。
幼虫をある一定の期間低温管理することで、幼虫の体内時計のフリーランを防止し、いつまでも蛹にならない
いわゆるセミ化を防ぐのに十分な効果があるのではと思っていますので、低温飼育温室の作成に関しては
オオクワガタ飼育を始めてからいつも考えていました。

そんなことがありまして、私の考えた温室は

・メインで使用している飼育温室は別にあるので、補助的に使用できる温室を作成したい。
・幼虫の低温飼育はもちろん、北海道の厳寒期を成虫が越冬できる温度をキープできるようにも使用したい。
・冬期間など季節外れのペアリングや産卵にも設定温度を変えて使用できるようにしたい。

ということで考えていました。

で、早速温室を作成しようと思ったのですが、いくつかの問題点が発生しました。

・場所が限られているので、移動が簡単にできるような構造にしたい。
・自分の望む温度範囲を検知するサーモスタッドが見つからない。
・なるべく低コストで作成したい(いつもこればっかりですが・・・(^^;

以上3点がいきなり壁になりました・・・

構想では、プラスチックの衣装ケースに断熱性を持たせて、ヒーターを入れるところまでは順調だったのですが
理想の温度帯をコントロールできるサーモスタッドが見つからない!!
熱帯魚用やは虫類用などのペット用では設定温度が高すぎるんですよねえ〜16℃以下の設定がないので
実験で使ってみたい温度帯を再現できない為、1ヶ月位ネットなどをウダウダ見ながら「良いサーモないかなあ〜」
と探す日々が続きました・・・

ところがある日、仕事で建物全てを断熱して野菜などを保管する「保冷庫」にいく機会がありまして・・・
なんとそこで発見しました!!
何気なく壁についている冷房/暖房制御機器を見ているとソレが付いていました、冷房/暖房の切替えが付いていて
空中センサーも付いている優れものです。
メーカーは鷺宮(さぎのみや)製作所の「サーモアイU」というデジタルサーモスタッドでした。
設定範囲は−50℃〜+30℃で温度表示範囲が-55℃〜+40℃という業務用の優れもので、0.5℃単位での細やかな
温度設定が可能な、まさに「KING OF サーモ」といった感じで「もう、これしかない!!」と・・・

で、早速購入したのですが、高い、高いよ・・・ちょっとびっくりの価格でした・・・さすが業務用です。
「なるべく低コストで」という希望がもろくも崩壊しました(^^;
でも「ここでやめるわけにはいかんのだよ!!」ってことで、諭吉2枚!!を出しサーモスタッドを買って制作開始です。

ここで朗報です!! 私がこの温室を作った頃には発売されていなかったのですが、今ではなんと低温飼育魚を
管理できる温度設定幅が広いサーモスタッドがエヴァリスというメーカーから発売になっています!!
温度設定は6〜32℃とまさにジャストです!! いやあ〜良い時代になりましたね・・・

で、早速材料の準備ですが、ここでは1個分を制作するのに必要な材料をリストアップしてみました。


<簡易自作温室資材>


・プラスチック衣装ケース〜1個(ホームセンターで購入)
・スタイロフォーム:厚さ15mm〜1枚(ホームセンターで購入)
・ベニヤ:厚さ5.5mm〜1枚(ホームセンターで購入)
・サーモスタッド 鷺宮製作所サーモアイU〜1台(電気設備資材商社で購入)
・ピタリ適温2号〜1個(オンライン販売で購入)
・露出ダブルコンセント〜1個(ホームセンターで売っています)
・コンセントプラグ〜2個(ホームセンターで売っています)
・リードケーブル:VCT2sq−2C〜6m(ホームセンターで売っています)
・スチールメッシュ〜1枚(100均で購入)
・ステンレスバット〜1枚(100均で購入)
・最高/最低記録付温度計〜1個(ホームセンターで購入)

この他にサーモとコンセントを固定するビスが4本とケーブルを端末処理する圧着Y端子と
圧着ペンチが必要になりますが、ビス以外はなくても良いかなと思います。
デジタルサーモに100Vの電源工事が必要になりますので、電気配線の知識のない方はちょっと厳しいかも
しれませんが、頑張ればできないことはないでしょう!!

それと工具は大きなカッターとプラスドライバー、スケール(巻き尺)、ベニヤを切断する
ノコギリとベニヤの角を丸くできる木工作用のヤスリ、金切ノコ(プラスチックを切れるもの)
なんかがあれば良いと思います。


それでは早速製作の工程にいきます、おおざっぱな部分は図解を参照してもらえば分かり易いかと思います。
細かいところは私の製作した写真を参照してもらえれば大丈夫かなと思いますので早速解説します。


図解:低温飼育温室の断面図です(笑




1)まず、プラスチック衣装ケースの中にスタイロフォームを切断してはめ込みしていきます。
  ここで重要なのは衣装ケースは中が丸みがあるので、カッターで上手に面を加工して合わせていく事が
  大事です。
  
  ※スタイロフォームはやや大きめにカットしてはめ込むとぴったりはまるので接着剤は必要ないです。

  それとプラスチック衣装ケースの蓋には出っ張りがありますので、後に保温用中蓋が入る分の隙間を
  考慮して少し下げ気味に加工しておきます。



  
    ちょっと失敗気味ですが、こんな感じで加工します。


2)次に補強用底板ですがベニヤの寸法を測って切断しプラスチック衣装ケースの底にはめ込みます。


3)ベニヤの寸法を測って切断し、保温用中蓋を作成します。
  中蓋は角を丸く加工すると、使用している時に手を引っ掛けて怪我などしないので加工することを
  お勧めします、それとピタリ適温とセンサー用のケーブルの為に切込みを入れておきます。
  この後で保温用中蓋をセットし、衣装ケースの蓋をしてみてロックが掛かるか確認しましょう。
  ロックが掛からないようであればスタイロフォームの上部を少し削って調節します。



   
スタイロフォームは高さを均一に削ると中蓋がピッタリ収まります。


4)保温用中蓋の切込みに合わせて、衣装ケース本体にもケーブル通線用の切込みを加工します。
  この切込みが換気口と兼用になるので加工しておいた方が良いと思います。



    
本体に切込みを入れないとケーブルに傷がついたりします。


5)サーモスタッドと露出コンセントをケース本体にビスで固定し、電源ケーブルを配線・結線して
  サーモスタッドの電源ケーブルとヒーターの負荷側に接続する100Vのプラグを取付けし
  センサーをケースの中に入れれば本体の加工は完成です。



    
サーモスタッドの結線は取扱説明書をよく見てやりましょう!!


6)本体の中にピタリ適温2号を入れて、その上に放熱を促すためのステンレスバットを置きます。
  そしてスチールメッシュを曲げ加工して、上部に5cm程度の空間を作っておけば放熱が均等に
  なると思います。
  100Vの電源を最寄りのコンセントから取り、サーモスタッドとヒーターの負荷側に電源を送ります。
  サーモスタッドの取扱説明書を見ながら現在の室温より高めの温度に設定し試運転の準備です。



  
これが温室の放熱部分です、思ったよりも結構な放熱量がありますよ。


7)コンセントにピタリ適温2号のプラグを差込んで少し放置して熱がステンレスバットに伝わるのが
  確認できたら完成です。
  サーモスタッドの取扱説明書を見ながら好みの設定温度に切替えて使用します。

8)後はお好みで最高/最低記録付温度計をセットしておけばデーター取りできるので便利です。



      
ヒーター用のコンセントはいっぱい増設が可能です。


※同じ要領でケースを作成し、1つのサーモから何個もピタリ適温用の電源は給電が可能ですから
 増設も割と簡単です。(ここが業務用サーモの魅力です!!)
 コンセントにタップをつけておけばヒーターの負荷側の電源の分岐も簡単にできます。
 衣装ケースは同じ仕様で制作してあれば、センサーを入れなくても同じ温度で稼働しています。
 私が実験したところ温度の誤差はだいたい0.2〜0.4℃程度なので全く問題ありません。
 同じタイプの衣装ケースで制作しておけば何個も積重ねて使用することが可能なので便利です。
 今現在は4個製作して同時運転していますが快調に作動しています。



    
こんな感じで、2個の衣装ケースが同時に管理可能です。


※ピタリ適温ですが、このヒーターの中には温度サーモが内蔵されています。
 ただ、設定の温度が非常に高く27〜28℃位にならなければ電源が切れることはないようです。
 そのためサーモスタッドで制御しなければ、衣装ケースの中はかなりの温度になりますので
  注意が必要かもしれません・・・
 この温室を普通に加温するための温室として使う分には問題ないかもしれませんが
 温度の管理が難しいかもしれませんので、ピタリ適温は熱帯魚用などのサーモスタッドと
 組み合わせて使った方が良いような気がします。



       
成虫の越冬用の管理にも使用可能です。


※温室の容量ですが1つのケースで、菌糸瓶であれば1リットル瓶で18本程度収納が可能で
 成虫の越冬管理用に使っても、だいたい12頭位は収納できますので結構便利です。
  
以上、結構長くなりましたが参考になりましたでしょうか?
温室は欲しいけれどスペースに困っていたり、金額的に安く済まそうとしている方であれば
試してみても良いと思います。



   

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