Spinett(フレンチ モデル)
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鍵盤楽器としては3台目の楽器です。

この上の楽器(1710年Frankreich)がモデルですが、資料としてはこの写真のみで、詳細は解りませんでしたので、じぶんで設計しました。音域はC-d4です。
(訂正)
Frankreich は制作者の名前ではなく、ドイツ語でフランス製という意味でした。恥ずかしい限りです。ある演奏家の方からご指摘を受けました。ですからこの楽器のモデルは【フランス 1710年 作者不詳】 です。

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スピネット Making Spinet No.2

やっと響版を張りました。この行程が済めば、また意欲が出てきます
どうにかここまで来ました。饗板を張り込み、鍵盤を仕込んだところ。ジャックが一本もできていないので、おそらく、音だしは正月休み?


響版周りに4mmX4mmのモールディングを回し、ヒッチピンを打ちさていよいよ弦を張る段階に来ました。昨夜はこの作業を9時頃までやってました。楽器のこととなると、どうしてこんなに気合いが入るのでしょう。
そして年が明けて、今日の元日、今,午前8時、さて、弦を張るぞ?

iBOOKで弦のテンション計算(Excel)しながら、弦のピッチを決めていきます。
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スピネット(Spinet)についてごく簡単な解説(自問自答?)です。英語の辞書で調べますと、1510年、イタリアのジョバンニ・スピネッティという人が、チェンバロと同じ発音構造をもつ鍵盤楽器を考案した、とございます。イタリアの1510年といえば、かの偉大なレオナルド・ダヴィンチが没した(もし違っていたらごめんなさい)頃です。現在でも小型のコンソール型のピアノをスピネットと呼びます。オッタビーノ・スピネットとは、文字通り、通常よりオクターブ高く調律したスピネット、と言う意味です。そして、5度高い楽器もありまして、これは、クイント・スピネットと呼ばれます。

私が今取りかかっている楽器は、この上の楽器(1710年Frankreich)がモデルですが、資料としてはこの写真のみで、詳細は解りませんでしたので、じぶんで設計しました。
オリジナルですと、おそらく、他のこのタイプの楽器に依りますと、最高音のc4あたりの弦長が僅か8.5センチ程度で弦のピッチ(太さ)が0.21ミリなのです。響板の厚さや、レジスター周りの支えの部材、ブリッジにギリギリの位置・・・などの関係で、まず、音が鳴らないのは目に見えています(いえいえ、耳に聞こえています・・・あれ、更に変ですね!)。
そこで、私の場合、どうにか「鳴る楽器」にしようと、c4の弦長を15センチにして、弦を真鍮ではなく、鉄線の0.18ミリでやってみようとしたのです。このあたりが、素人の無謀さ、と言いますか、無知と言いますか・・・・結果としては、オクターブ・ピッチでは高音部に0.18ミリでもてんでダメでした。張力が高すぎて、弦がプチプチ切れてしまします。幸い,切れないとしても、まるで「楽器の音」にはなってくれませんでした。
例えば、ギターとか、いくらハイポジションといっても弦長8.5センチでは鳴らないのは当然だと解って頂けると思います。

結局、最終的には、5度音程の「クイント・スピネット」ということになり、弦のテンション(張力)も適度に収まり、やっと「楽器の音」になってきました。

なお、今回、正月休み中にもかかわらず、色々アドバイスを頂戴した、楽器製作家の島口氏には本当に感謝しております。この場を借りて篤く御礼申し上げます。
また、経過をご報告していきたいと思います。
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スピネットの鍵盤上部のネームボード。
彫刻刀で自分の名前を彫り終えたところ。
鍵盤ディテール   
ナチュラルキー;黒檀  
シャープキー;黒檀とツゲ材の積層


チューニング・ピン ディテール
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スピネットの蓋;マホガニーのツキ板(0.8mm)のはぎ合わせ。一旦これを、3.6mm合板にプレスし、マホガニーのツキ板合板を作ります。そして、檜材を芯材(8mm厚)とし、いわゆるランバーコア合板を自作します。

ジャックの木取り;2段鍵盤の楽器と違い、ジャックが極端に短いので、鉛のおもりを加えても、これ自身の重量が稼げないので、あえて、樫材を使いました。

ジャックに取り付けるタング;ジャムの瓶に入ってます。
なにしろ小さいパーツなので、機械加工のときは、結構危険です

ジャック本体とタングの間に挟む、クッション材;鹿皮です。大きさは4ミリ四方くらいです。まるで内職仕事のようです。一個3円で、100個貼り合わせて300円、って感じかな!

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正月休み以来、中断していたクイント・スピネットの再開です。といっても、時間があまり取れません。とりあえず、こなした分だけのリポートです。スピネットの蓋の大手(面材)貼り付け作業

ジャックレール(ジャックのカバー)完成


スピネットの蓋 キーボード部分の「への字」の蓋実は、これが難しいんです。最初は、楽器本体と角度が僅かにフィットせずに、作り直ししました。

蓋に使う丁番;真鍮板に型紙を貼り付けて、スクロールソーで大まかに切り出します。このあと、彫金用の糸鋸で、キコキコ、シコシコ切り出します。これが、かなり根気のいる作業です。一番の難関が、心棒を入れる、かみ合わせの部分です。前回のベントサイド・スピネットの時は、最も簡単な3枚組でしたが、今回は、5枚組に挑戦してみるつもりです。その後、ヤスリがけとバフ磨きで完成です(順調に行けばのお話ですけど!)

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スピネット用の蝶番が完成しました。真鍮、厚み;1.5MMです。
大蓋用と小蓋用(大豚、小豚ではありません)

軸の組み手を何枚にするかだいぶ迷いました。
初めは5枚組のつもりでしたが、これだと一枚あたりの寸法が5.5mmほどで、逆に強度が落ちそうな気がしたので、4枚に決定しました。 デジカメだと、このような<光り物>がうまく撮れません、どうすれば金属の質感が出せるんでしょう)


スピネットの全体のプランがやっとこ決定しました。こんな感じで ・・・

スタンドの彫刻がどうにか終わりました。脚部は羊の蹄にアーカンサスの、いわゆるカブリオル・レッグ(獣足)です。日本では猫脚という言い方が通っていますが、むしろ猫の脚は少ないです。(P.S)調べたら、猫足 : cat's paw-style leg とありました。

残りの工程としては、弦の最終選定、ジャックの個々の調整。全体としては、塗装と、表の装飾画です。装飾画は、初めての試みですが、自分で挑戦してみようと思っています。
小学校、中学校と絵は得意(のつもり)でしたが、大人になってからは絵筆を持ったことがありません。
でも最近はトールペインティングの本が沢山出ているので、楽器にマッチするような絵柄を探してみようと思っています。ちょっと独学でトレーニングすれば、なんとかなるかな?・・・と、結構甘い考え・・・・あ、そうそう、あとは、突き上げ棒を兼ねる譜面台を作らないといけません。
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弦長の設計が甘かったので、思い切ってナットを剥がして、高音部側を極力レジスター側に寄せました。剥がしたと言ってもこれがまた大変な作業で、鑿と豆鉋で削っていき、ギリギリまで薄くなったところで、キッチンペーパーをひも状にして濡らした物を局部にあて、小手型アイロンをあてて、膠を溶かしていきます。この作業だけで半日かかりました。 スピネットの響板の装飾画です。「イラストレーター」で図案を作りました。いよいよ筆で描いて行きます。アクリルペイントです。昨日シーラーで下地処理をしました。初めての経験なのでかなり緊張してます。うまく描けるでしょうか・・・・ブルーの連続模様が筆を入れる部分です。


一部、塗装が済みました。残りは蓋と譜面台の部分です。

サイドビュー

正面ネームボード、彫刻部分

響板の装飾画

カブリオル・レッグ先端のアーカンサスの彫刻
今後の装飾・・・
1.脚部先端のアーカンサスの彫刻に金箔を押します
2.側板に伝統的な定型の花模様を描きます
3.蓋の内側に、黒猫チッチをモデルにして数体パターン化して配置し、その周りを唐草模様で取り囲むような(まだ漠然としてます)絵を描きます。チッチは目が金色なので、やっぱり目の部分も箔押ししたいで す。
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自作の蝶番を取り付けて組み立てたところです。

譜面台を付けた状態です

これから弦を張ります。ナット位置を修正後の弦長です。(単位;mm)
C=874、F=784, c=624, f=545, c1=412, f1=343, c2=233, f2=185, c3=128

弦の先端の処理です。これをピンにひっかけて張っていきます。
この写真は、判りやすくするため、φ=1mmの真鍮線で仮に巻いたものです。

脚の先端のアーカンサスの彫刻に、金箔の下地処理をしました。
凹凸のある彫刻部分に金箔だけで張り込んで行くのは、素人には至難の業です。下地を真鍮粉で施しておくと、いざ金箔を押したとき、多少、入り隅部分を取り残しても、さほど目立たないし・・・という姑息なやり方です。彫刻部分の1mmくらいの溝や立ち上がりに、これに合わせた金箔を切っていく作業だけでも気が遠くなります。高度な技法で、金箔を「水張り」して「瑪瑙棒仕上げ」する方法がありますが素人は到底できませんので、ちょっと安易な、ゴールドサイズをタンポで薄く引いていきます。
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【巻線を作ってみよう】の巻
このスピネットの低音部は、小型楽器ゆえ弦長が短すぎるので、既存では最適な弦が入手できません。そこでいよいよ巻き弦を自作します。今はとりあえず、あり合わせのを張ってます。なにしろ、ここまでは全て自作してきたので、わざわざドイツの弦メーカーに特注弦を発注するのはしゃくですから・・・実はお金もかかるので・・・・でも、この弦を自作するには、まず装置から作ります。

【THE MACHINE FOR MAKING OVERSPUN STRINGS, DIDEROT & D'ALEMBERT: "ENCYCLOPEDIE ...", PARIS 1751-80】

理想は、ピアノの巻線機のように両軸駆動が理想ですが、この絵を参考に、最も安易な装置を作りました。

これが駆動部です。
初めは木工旋盤(3相200V)を利用して実験しましたが、どうしてもフットスイッチが欲しいとか、
更に回転数を落としたほうがいい、という事が解ってきました。動力モーター用の中間スイッチとか、周波数を可変するインバーターとか、かなり高いです。インバータの値段だけで、両軸駆動の装置の部品代が全て買えてしまいます。急遽、100V用のドリルを使うことにしました。A.C100V用インバーターは8000円位で買えるのですが、道具箱に、調光用の可変スイッチが余っていたので、試してみたら、かなり低速に可変できました。トルクはさほど必要ないのでこれで十分でした。駆動部と受け部を別個に作り、作業台に任意の位置にクランプで固定するだけです。

反対側です。ベアリングを利用しました。芯線がΦ=0.5~0.6mm位だと、捻れずに十分に追随して回転してくれました。

試しの巻線です。芯線Φ=0.6mm真鍮にΦ=0.28mmの銅線を巻きました。ここで、大事なことに事に気がつきました。巻線に使う細い銅線が、ボビンに巻かれた状態でスムーズに繰り出せるようにするのが最重要です(当たり前か!!)ボビンも自作しなくては・・・・・
 今のところ、新たに買った物は、内径4mmのベアリング(450円)、100V用のフットスイッチ(760円)だけです。
友人から借りてきた、ピアノ設計の本に、巻線についての詳細な記事があるので、これを検討しなくていけません。楽器製作の友人は、チェンバロの弦のテンションは弱いので、計算なんかいらない、適当に巻いてみて張ってみるのが一番・・・と言ってますが、そりゃ知っててやるのと、私のように初体験のものが試すのとでは大きな違いがあります。とにかく、計算式も当たってみます 
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【巻弦を作ってみよう】の巻
最低音C用の巻き弦を芯線真鍮Φ=0.52mm,銅巻線Φ=0.35mmに変更しました。質量が増えた分、最初の巻線Φ=0.28mmよりは少し改善されたかも・・・・,でもチェンバロ属一般に言えるのは、最低音に関しては鳴りにくいと言うことです。
ですからこの楽器で最低音のCを鳴らしたいときは、設計段階で、もう一音加えてHHまでにする方法もあります。その分、楽器が大きくなりますが・・・・
後はジャックの爪の調整です。せめて巻弦の部分を、鳥の羽根にしてみようかと思っています。
ちなみに現在使っているのは、デルリンと呼ばれているプラスティックです。

結果は
C;芯線Φ=0.52mm巻線Φ=0.35mm
Cis〜 F;芯線Φ=0.52mm巻線Φ=0.28mm
Fis, G;芯線Φ=0.44mm巻線Φ=0.28mm
となりました。
Gの音は単線と巻線、最終的にどっちにするか、タングの調整次第かもしれません

ジャックの材料;樫材です、スピネット用のジャックは構造上、とても短いので、少しでも重量を増すために重い材料を使い、更に鉛のおもりを埋め込みました。
スプリング;熊の背中の毛です。タング;ペアー(梨の木)


後は装飾画を入れるだけで
 

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